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2009年11月30日月曜日

日本版FCCを考えるシンポ

■YouGo3.0 日本版FCCを考えるシンポ

11月19日、慶應義塾大学三田キャンパスで、日本版FCCを考えるシンポが開催されました。
登壇者は、ぼく、國領さん、岸さん、池田信夫さん、佐々木俊尚さん。司会は金さん。
ぼくは反対急先鋒なのでちょいと口数が多かったかもしれません。
いつもの繰り返しですけど、話した中味をメモっておきます。
・会場の意見を聞くと、どっちでもいいという意見が多い。そのとおり、このテーマは「どうでもいい」問題。急ぎ案件ではない。
・民主党政権が行うべきは3つ。融合と緩和とソフトパワー。だから、情報通信法の策定、電波の開放、コンテンツ流通促進を説いた政権indexはすばらしい。これを先にどんどんやってほしい。
・しかしその中に日本版FCCも書かれている。そんなの作ったら3つの政策は達成できない。独立させたら政権の言うことを聞かなくていいのだから。根本的な矛盾。
・この問題に関心があるのは、この問題で役人を辞めたから。12年前の橋本行革で通信放送独立委員会構想を政権が提示。郵政省で担当していたぼくは独立させたら危ないと考えて反対。結果、通信放送行政は政権の真ん中に置くという真逆の結論となり現総務省に落ち着いた。でも小役人が政権にたてついた責任もありぼくは辞職。以来こだわっている。
・今回、日本版FCC、原口大臣版FCC、ACCJのいう日本版Ofcomなど案が錯綜。その目的も、中立確保、透明性、利用行政シフト、事後規制、放送規制強化などバラバラ。
・懸念は3つ。官僚主導、規制強化、二重行政。
・官僚主導。独立とは官僚が好きにできるということ。危険。そしてなぜ通信だけそうするのか。いっそ道路も福祉も教育も独立させたらどうか。
・規制強化。FCCも仏CSAも英Ofcomも放送にきつい規制。規制専門組織を作ったら一生懸命規制するに決まってる。
・二重行政。振興と規制に分離すると、420人vs278人の組織。25年間の規制緩和で振興のほうが大きい。インフラ整備も青少年ネット安全も組織が分断されると、通信会社もユーザ団体も板挟みになって迷惑。
・FCC論者は、この懸念を払拭するとともに、それを上回るメリットを立証しなければ無責任。分離したらこの行政がこのように良くなるという事例を一つでもいいから教えてもらいたい。抽象論ばかりで誰からも具体論を聞いたことがない。
・そのせいか原口大臣も放送規制監視+許認可権ナシと言い換えている。これなら害は小さい。ただし過去25年の放送行政指導は35件、年平均1-2件だから、放送規制監視はあまり出番がない。
・Ofcomに至っては、イギリスの通信産業は失敗しているし、与野党ともデメリットを認めている。それを日本に輸入する理由を主張者は明らかにすべき。
・規制振興を分離すると行政が透明になるという主張があるが、理由不明。透明にしろというのは政治圧力で仕組みを作らなければムリ。独立したら不透明になる。人事院や日銀はどれほど透明なのか。上場企業は株主や証券会社や監査役の圧力で経営が透明だが、非上場子会社を作ったらそこは不透明になる。
・規制振興を全官庁で分離するというなら主張としてはまだわかる。文化庁の著作権行政と芸術振興、経産省の電力エネルギーと産業振興、厚労省の人材派遣規制と職業訓練支援とを分けて、つまり霞ヶ関の役所を倍増する、と主張すべき。
・それより会計検査院の権限強化を求めるのがよい。昨年の検査報告では2364億円の税金無駄遣いを指摘していて、それに実効性を持たせる方が事業仕分けのパフォーマンスより重要だ。フランスではENAの上位卒業生が会計検査院に進む理由を考えよう。
・あるいは総務庁の行政監査を独立させ、全ての官庁の仕事をチェックし勧告する権限を強化すればよい。原口大臣版FCCはそこに含まれる。
・あるいは電波オークションを導入して周波数割り当ての透明化を図るほうが組織独立より効果的。
・メディアの行政組織に問題があるとすると、分離論よりも、タテ割り。かつて郵政省の通産担当がぼくだったころ、通産省の郵政担当が岸さん。戦争の最前線。もめごとがあると殴り合うフリをしつつ二人で飲んでいた。そういう芸当は今の霞ヶ関にはみられない。
・知財本部、IT本部、文化庁、経産省のIT部門、総務省の通信放送部門を合体して「文化省」を作ろう。
・そして、やるなら、もう一度大幅な省庁再編を。地方省、教育労働省、農商務省、福祉省、環境資源省。それでコスト削減すればいい。
・いずれにしろ組織論は、融合と緩和とソフトパワー、この3つの仕事をしてからでいい。政策の優先順位を考えよう。

2009年11月29日日曜日

アニメの殿堂を考える -3

■Pop アニメの殿堂を考える -3


メディア芸術の振興には何が必要でしょう。ぼくは3つあると考えます。

1) 人材育成
・アーティストの支援。センター構想に予定されていた100億円がもしあるのなら、ぼくなら1000人のアーティストの卵に1000万円ずつ回して、これで3年食え、3年間作り続けろ、とします。建設会社やデベロッパーに回すより創造的です。ただし建設国債を前提とする補正予算だとスキームがムリかもしれませんが。
・アニメや作曲ワークショップの支援と、図画工作・音楽の時間増に当てます。

2) 海外展開
・メディア買収。ファンドを形成し、海外のチャンネルを押さえていくのが効率的です。電波利用料650億円の一部を回せばよい。
・オタクサイトの買収。ジャパン・ポップのファンが作るサイトやブログを、片っ端から英仏西中韓語に翻訳してあげましょう。1億円もあれば相当パワフルな情報発信になります。公的機関が懸命にサイトを作っても見てもらえません。

3) 文化行政強化
・文化省を作ろう。ポンピドーはポンピドーセンターを遺し、ミッテランはミッテラン図書館を遺しました。大統領は文化を遺す。日本の首相は何を遺してきたのか。文化行政強化は政治の意志の問題です。

ぼくの考えるセンター構想ですか?
ぼくはセンター、集中ではなくて、ディ・センター、分散がいいと思います。
欧米で浮世絵ファンが多いのも、ジヴェルニーのモネの家や、ボストン美術館などに分散・保存され、アクセスができるからで、東京で集中管理していたら世界的には広がりませんでした。そういうものにネットやデジタル技術でもっとアクセスしやすくするのが戦略でしょう。

作家、権利者、ユーザ、ファン、オタクたちが何がしかのモノを持っています。それらをきちんと分散・保存してもらえばいい。保存にお金がかかるなら、その保存費を工面すればいい。そして、そのデータベースを作り、それをネットワーク化する。
つまり、メディア芸術列島といいますか、一億総メディア芸術センターを目指す、ということです。
政策としては、各個人に10ギガぐらいずつバーチャルな空間・倉庫を割り当ててあげる、ということかと思います。

気になった発言。

■ICC畠中さん。
「ICCの理念は、コミュニケーションというテーマを軸に、科学技術と芸術文化の対話を促進し、豊かな未来社会を構築すること。」
それってデジタルサイネージコンソーシアムと全く同じです。

■京都マンガミュージアム吉本さん。
「ウチは寄贈本が10万冊もある。ガロのようなマンガは集まる。だけどアクションのようなB級誌は捨てられて、集まらない。センターはやめて、全国各地の小学校をマンガミュージアム化するのがいい。そして、そこを著作権特区にする。」
おお、著作権特区、やりましょう。かつて岡山県庁にいた高井さんが文化庁に提案して蹴られた案件。
民主党政権、乗らない?

■東大小林さん。
「文化庁に文化政策まかせてていいのか?}
文化がやりたくて文部科学省入るんじゃないからね。文化政策を東大法学部でたひとたちがやってるんだからね。
なんとかしたいですね。

2009年11月27日金曜日

アニメの殿堂を考える -2

■Pop アニメの殿堂を考える -2


さて、文化庁によれば、国の予算に占める文化予算の比率は、韓国が0.93%、フランス0.86%。抜きんでています。ドイツ0.25%、イギリス0.24%。これに対し日本は0.13%。アメリカはもっと低くて0.03%なのですが、アメリカは寄付税制などで民間資金を公的活動に再配分する政策を採っていますから政府の直接支出は少ないのですね。韓国は来年度1.0%まで引き上げるそうです。日本の気合いのなさが目立ちます。


コンテンツ政策を乱暴に分類しましょう。民間主導か政府主導か。産業政策か文化政策か。これでタテヨコの座標を作ると、まずアメリカは民間主導の産業政策。ハリウッド集中型。対照的なのがフランス。政府主導の文化政策。芸術中心型。これとは別のスタイルが韓国。政府主導の産業政策。ポップカルチャー集中型。

これらに対し軸がハッキリしないのが日本です。私は日本はこれらとも違い、民間主導の文化政策で行くのがよいと思います。ポップカルチャー集中型です。大衆の審美眼と表現力という力を活かし、文化として引き上げていく。
この点、「国立メディア芸術総合センター」は伝統芸術の権威からポップに政策的視線を引き寄せた点では正解だったと思います。

では何が問題なのか。先日、ガンダムの冨野由悠季さんに聞いたら「ポップがおかみにすり寄ってどうする」とおっしゃってましたが、すり寄りかたの問題なのでしょう。ぼくは中味というか、マスコミが流したイメージが悪かったんだと思います。センターの構想は、
1)ハコを作って、2)固定して、3)保存して、4)集中させて、5)リアルなモノを作って、6)国内に置く、というものだ、という具合のイメージが流されました。ぜんぶ逆だと思うんです。

ポップに必要なのは、1)ヒトに力を入れて、2)変化を絶えずとらえて、3)生産に力を入れて、4)分散させて、5)バーチャルで、6)海外に持って行く、ということ。だから政権交代でセンター構想が凍結となったのはやむを得ない。
代わりに現政権は、NTT ICCや京都国際マンガミュージアムなどによるメディア芸術コンソーシアムを作ってアルス・エレクトロニカなど海外の機関と連携させたり、来年度の予算で人材やソフト支援に重点配分しようとしたりしています。いい方向だと考えます。
(つづく)

2009年11月25日水曜日

アニメの殿堂を考える -1

■Pop アニメの殿堂を考える -1


シンポ「国立メディア芸術総合センターを考える」@静岡文化芸術大学に参加しました。
国営マンガ喫茶、アニメの殿堂などと揶揄され、自民党政権の組んだ補正予算は潰されましたが、改めてその意味を考えてみようとするもの。
コーディネイターは三菱UFJリサーチ&コンサルティング太下義之さん、パネリストは東京大学 小林真理さん、NTT ICC畠中実さん、京都精華大学/京都国際マンガミュージアム吉村和真さん、そしてぼく。

以下、ぼくが話したことがらです。
ぼくは日本のコンテンツやポップカルチャーを世界にどう浸透させるかに関心があります。
7月にパリで開かれたジャパン・エキスポには4日間で16万人が来訪、日本の女子高生やガングロを真似たコスプレもたくさんいました。名古屋で毎年開催される世界コスプレサミットにも世界中からジャパンクール・ファンが集います。いつの間にか日本はポップの本場になっていたわけです。

しかし日本コンテンツの総収入に占める海外売上比は2.5%。アメリカの17%には遠く及びません。テレビコンテンツの2次流通は13%に過ぎず、コンテンツ流通市場も未整備です。海外から注目を集めている今が絶好のチャンス。自民党政権下の政府はコンテンツ産業を5兆円増やすと宣言しましたが、国内市場が縮小しているなかで海外市場を開拓しない限り夢物語です。

さて、コンテンツ政策についてぼくが取り組んでいることは大きく分けて2つあります。
1つは政策・プロジェクトの企画・実行。コンテンツの生産・流通環境を整備するため、1)情報通信法:法整備、2)コンテンツ取引市場:市場整備、3)ユビキタス特区:規制緩和、4)デジタルサイネージ:メディア開発、といったことがらを政府や国会に提言したり、手足を動かしてプロジェクト化したりしています。

もう1つは教育。コンテンツ生産力を高めるべく創造力・表現力を底上げしたい。すべての子どもがアニメ作りや作曲ができるようにしたい。そこで、アニメ作りワークショップや音楽ワークショップを開発したり実施したりしています。


これらはポリシー活動として進めているのですが、産・官・学のうち、学の役割が日本では小さかったきらいがあります。学もがんばろう、ということで、昨年、コンテンツ学会を立ち上げた次第です。

2009年11月24日火曜日

ネット配信と権利処理

■YouGo3.0    ネット配信と権利処理


「著作権保護期間70年への延長実現に最大限努力します。」
この発言にはのけぞりました。11月18日に開かれたJASRAC創立70周年記念祝賀会での鳩山首相の発言です。
http://internet.watch.impress.co.jp/docs/news/20091118_329858.html
ことの善し悪しはともかく、なんとまぁ軽い意志決定だなぁと。数年がかりでぼくらも民間サイドで議論を重ね、文化審議会や知財本部などの場でも激論を交わしてきました。でも結論は出ず、先送りの形になっていたのですが、パーティー会場でやすやすと首相が政策転換を宣言してしまう。政権交代とはこういうことなのか。政治主導というのは民間無視も含むのか。と思ったわけです。
首相をパーティーに連れてきたのは松野頼久さんだそうですが、その過程で、だれがどういうインプットをしてそういうことになったのか。意志決定メカニズムを探ろうと思います。
会場には与党・民主党幹部が居並ぶとともに、森喜朗元首相など自民党の大物もいて、音楽業界、放送業界などの幹部、霞ヶ関の幹部も勢揃い。JASRACの政治力に海外の来賓も目を丸くしていました。

さて、そのJASRAC主催で、その翌日、「ネット配信のビジネスモデルと権利処理システムの構築に向けて」と題するシンポジウムが東京国際フォーラムで開かれました。
ぼくが司会のパネルディスカッション。登壇者はNTT伊能美和子さん、NHK関本好則さん、慶應(の肩書きで)夏野剛さん、JASRAC菅原瑞夫さん。会場は600名の席が埋まり、ニコニコ生中継も4000アクセスを超えていました。この問題はいつも関心が高いですね。
その模様はここ↓に報じられていますので詳しくは述べませんが、ぼくが整理した事項を簡単にメモしておきます。
http://itpro.nikkeibp.co.jp/article/NEWS/20091119/340800/

メディア融合は過去20年にわたり議論してきました。2006年に世界が大きく動いたのに対し、3年遅れで日本も始動。NHKオンデマンドや民放各局のネット配信が本格化。JASRACもニコ動やYouTubeと提携し、風景が変わりました。著作権情報集中処理機構(CDC)も立ち上げに向かうなど民間も動いています。
しかしビジネスモデルを作るのは難儀。パッケージからネット流通へ、アナログからデジタルへという基調はあるものの、コンテンツ市場14兆円は昨年3%の縮小。デジタルサイネージやマルチメディア放送など新しいメディア開発の動きがある一方、テレビ、PC、ケータイの3スクリーン同時利用派が増えるなど、ユーザの視聴行動はより早く変化しています。
そうした変化の中、著作権処理も難渋。ユーザはコンテンツが流通していないと文句を言い、権利者はコンテンツが不正に流通しすぎていると文句を言う。政府の会議でも、フェアユース、ネット権、録音録画補償金などの議論は重ねられるが一向に結論にたどりつきません。民主党政権も何をどうしたいのか、まだ道筋が見えません。

そこで、シンポでは、以下のテーマでクロストークしました。
1.成功してるのは何? 
 IPTV, BeeTV, BBC, hulu, i-mode, ニコ動?
2. ビジネスモデルはどうなる?
 広告か有料か?販促費は?サーバコンテンツへ?
3. 本命メディアは?
 PC? TV? モバイル? クロスメディア?
4. ユーザの変化は?
 タイムシフト?プレースシフト?3スクリーン?
5. 成長メディアは?
 CGM? SNS? デジタルサイネージ?
6. 流通より生産?
 新コンテンツの担い手は? 資金の出し手は?
7. 権利処理の課題は?
 CDCはどうなる? NHKオンデマンドの問題は?
8. 政策の展開は?
 ネット権、フェアユース、補償金、ダビ10、民主党?
9. それぞれの決意は?
 NTT, NHK, 慶應, JASRAC?

結論。テーマはまだまだ拡大します。議論は終わりません。なのでまた今度。ですね。

2009年11月23日月曜日

紙をなくそう -3

■Net 紙をなくそう -3



では政策はない? ありますよ。メディアを開発することです。
規制緩和により、企業ユーザーや個人がコンテンツを使える「場」を形成することです。
日本史上最大(最善ではない)のコンテンツ政策は?
答え:「田中角栄郵政大臣の民放多局化」。
免許をバンバン出して放送局を創ったことで、番組産業が拡大しました。これに次ぐ政策はCS放送解禁です。いまコンテンツにとって求められるのは、こうしたダイナミックで「手触り感」のある政策。デジタルサイネージやモバイルIP放送といった新メディアを開発すること。モバイルのプラットフォームやコンテンツレイヤーをオープン化するといった新ビジネス領域を用意すること。テーマは多いです。

そこで大事なのは、従来のエンターテインメント産業政策から、「利用政策」に重心を移行することです。メディアが多様化し、ユーザー主導の市場が形成されています。行政も提供者、供給者の望むことをすくい上げるより、企業・個人ユーザーが望むことを実現していくことに視点を変える。産業の拡大は、その結果でいいんです。
公的分野のコンテンツ化や、個人コンテンツの市場化は、企業や個人が全メディアを容易に使いこせる環境を作ることで達成します。利用環境の整備です。

もう5年ほど前のことですが、内閣官房、総務省、経済産業省、文部科学省のコンテンツ担当課長が並ぶシンポで、「コンテンツの利用者を所管するのは誰か」と聞くと、「誰もいない、必要ない」という答えが堂々と返ってきてのけぞりました。自民党政権の性質を表していますね。そのときの経産省の課長は今回民主党から立候補、当選して中央に乗り込んで来ています。大丈夫でしょうか。
(デジタルの手触り 十番勝負 第六番改訂)

2009年11月21日土曜日

紙をなくそう -2

■Net 紙をなくそう -2



コンテンツ市場に伸びしろがないわけではありません。
2つあります。海外と非エンターテインメントです。
まず海外マーケット。アニメ、ゲームなど輸出力のあるポップ・コンテンツをアジアなどに発信すること。そのために、海外のテレビチャンネルを確保したり、放送局を買収したりする。ファンドを形成してそれを後押しする。同時に、海賊版対策をしっかりやれ、日本文化規制を解け、と海外に対して政治交渉する。コワモテの政策をガチンコで進める。

その際、競争力のないジャンルは捨てる。韓国政府がやっているように、日本も強みのあるマンガ、アニメ、ゲーム、ケータイ、ロボットといった分野に集中すべき。ビジョンとは何かを捨てることだ。手法としても、終わった産業界に補助金をつけるような昭和な施策をとることもない。海外で人気の日本のオタクサイトを数カ国語に翻訳していく(ン千万円でかなりの効果)など、少ない資金で大きな効果が得られる施策に力を入れればよい。
現在、コンテンツの国内市場に対する海外収入比は2.5%。アメリカの17%は遠い目標としても、せめて10%には高めたいっす。

もう1つは、非エンターテインメントの拡充。特に、教育、医療、行政といった公的な分野をオンライン化し、活動をコンテンツ化すること。年間の教育コスト20兆円、医療コスト30兆円、中央政府コスト200兆円。それらの1%がコンテンツ化すれば、2.5兆円の市場が生まれます。行政の役割です。民主党さん得意なんじゃないですか。これは、コンテンツ=エンターテインメント産業と定義してきた政策を転換して、政策のテリトリーを大きく広げることを意味します。

同じく期待されているのが、個人の生産するコンテンツを産業化すること。CGM、SNS、メールといった通信メディアをコンテンツ産業としてとらえる。総務省が毎年実施している情報流通量の計測「情報流通センサス」に基づいて計算すると、過去10年間の日本の情報発信量は20倍。爆発的に情報量は増えているんですが、まだそれをビジネス化できてはいません。
(つづく)

2009年11月19日木曜日

紙をなくそう -1

■Net 紙をなくそう -1



紙をなくしましょう。
紙、CD、DVDを日本は世界に先駆けてなくす。全コンテンツをデジタル機器+ネット流通で利用できるようにする。全番組をテレビ、PC、ネットでアクセスできるようにする。そうしましょう。
現在、全コンテンツの売り上げに占める紙やCD、DVDなどパッケージの比率は49%。施設サービス経由が12%。放送・通信による流通は39%。2015年にはこれを75%にまで高めましょう。
政府はコンテンツ市場15兆円を「5兆円増やします」などといいます。それはできない相談ね。国内市場の伸びは過去10年で7%程度。過去30年間で見てもGDPとの相関係数はほとんど1。コンテンツ市場が大きく伸びて、日本がエンターテインメント天国になる設計は、妄想に似た願望でしかありません。

むしろエンターテインメント産業が底割れすることを心配すべき。ローカルの新聞社やテレビ局は疲弊している。出版も苦しい。エンタメ産業の大もとがガタガタしています。一方、ネットビジネスはまだもうかりません。広告費が海外流出する懸念もある。国内エンタメ需要が5兆円伸びるという願望はどうすれば青写真になるのでしょう。 
現に先日発刊されたデジタルコンテンツ白書では、昨年度のコンテンツ市場はマイナス成長という報告をしてるじゃないですか。せっかく政権交代したんだから、5兆円伸ばします看板を引っ込めて、構造不況業種でした宣言したほうがリアリティーあるっすよ。経産省が作ったJDC信託はダメになるし、このままでは誰もついていかないですよ。

しかしね、昔の霞ヶ関だったら信じられないですね、肝いりの会社つぶすなんて。むかしアスキーが潰れそうになったときなんか通産も郵政も金融筋に走り回りましたよ。あのころが最後かなぁ信頼できる政府ってえのは。国の信頼も取り戻したいです。
(つづく)

2009年11月18日水曜日

日本型サイネージを作ろう -2

■Net 日本型サイネージを作ろう-2



ただ、市場は未成熟。成功事例も少ない。期待が過熱している面は否めません。現状はハードウエア先行。コンテンツがどのように追いついてくるのかが成長のポイントとなります。
80年代、都市型ケーブルテレビが勃興したころ、あるいはハイビジョン放送が始まるころのニューメディアブームの状況に似ていますねぇ。サイネージも「コレは!」という独自コンテンツをうまく獲得できるでしょうか。
よどむ空気をチェンジしよう。
米国では2009年、期待を一身に受けてオバマ民主党政権が船出し、ブッシュ共和党政権に幕が引かれました。新政権はITを戦略課題と位置づけています。そして日本でも政権交代が行われました。そして未曾有の経済危機。
この状況は、90年代前半のマルチメディアブームと酷似していませんか。
93年、米国ではパパ・ブッシュ共和党政権からクリントン民主党政権に移行し、情報スーパーハイウエー構想を推進しました。そして日本では55年体制が崩壊し、細川政権が誕生しました。バブル経済がはじけ、経済は見通しが立たない。その突破口がマルチメディアだったわけです。産業界は投資を集中させ、その結果、インターネットとケータイが爆発的に普及しました。デジタルサイネージは、マルチメディアからITブームへと広がった流れを再現できるでしょうか。

2009年6月、日本初となるデジタルサイネージ専門イベント「デジタルサイネージジャパン2009」を幕張メッセにてネットワーク総合展「Interop Tokyo」などと同時開催しました。13万人の来場者。デジタルサイネージジャパンは予想以上の熱気に包まれました。
その、新しい産業の勃興を政府はきちんと汲み取ることができるか。なにしろ鳴り物入りのマニフェストにIT関連は「ネット選挙解禁」しか書かなかった民主党ですから、ヒジョーに心許ないのですがね。

先日、大連で開催されたサマーダボス会議に竹中平蔵さんらと参加したのですが、温家宝主席のスピーチは、「経済成長、イノベーション、技術開発、IT」でしたよ。鳩山首相が登壇したら「子育て支援、年金、脱官僚」だったでしょうか。そこで、日本型デジタルサイネージ、とでも言ってくれるんなら、光もさすだろうにというところであります。
(デジタルの手触り 十番勝負 第二番改訂)

2009年11月16日月曜日

日本型サイネージを作ろう -1

■Net 日本型サイネージを作ろう-1 



デジタルサイネージ。
3つの産業が熱い視線を送っています。ディスプレー業界、通信・ネットワーク業界、広告業界です。家庭の薄型テレビ需要に飽和感がただようなか、地上デジタル放送への完全移行後に広がる屋外や公共空間の市場を求めるディスプレー製造業。次世代ネットワーク「NGN」の家庭向け以外のアプリケーションを求める通信業。「4大マス媒体」の広告市場が縮小し、ネットと販売促進費にシフトしつつある広告業。
これらが新しい一つの交点に注目しているわけ。

ぼくが理事長を務める「デジタルサイネージコンソーシアム」は、昨年で総額650億円とされる市場規模が、2015年には1兆円に達すると予測しています。それは、日本的な発展シナリオをあてこんでるんです。薄型ディスプレーの製造力は高い。光ファイバーやモバイル通信網などデジタルネットワークの整備と利用は世界最先端。ポップで軽快なコンテンツを制作する力もトップクラス。三拍子でそろっている国は他にないと言ってよいからです。

さらに、日本には、欧米にない多くの持ち物があります。
例えばケータイ。ガラパゴスと揶揄されるほど高度に発達したモバイル通信がサイネージと合体する。マス向けの大型画面と、個人の手のひらのケータイ端末とを連動させて情報を流す。ケータイの課金機能を活かして購買にもつなげる。
そして、自動販売機。国内に560万台が配備され、年間売り上げが7兆円にのぼる自販機も有望なサイネージの舞台。24時間、電源オンで、ネットでつながる。自販機の中に液晶画面が埋め込まれたサイネージとなり、商品やキャンペーンの情報が流され、おカネが動く。日本特有の光景ですね。

ほかにも、赤ちょうちんがしゃべって光ったり、制服の裏地がサイネージだったり、「痛車」に描かれた萌えキャラを動画にしたり、そんなクールジャパン的な空想もしてみたくなります。てゆーか、実際そーゆーのをぼくは開発しようと思います。
(つづく)

2009年11月14日土曜日

融合法制は単なる入口 -2

■YouGo3.0 融合法制は単なる入口-2



地デジ整備は100年に1度と言われる大きな電波資源が生まれるチャンス。これを展望した法体系の見直しは構造転換のラストチャンスでしょう。コンテンツ層の制度をいじることにより、新聞・放送業界からも、ネット利用者からも理解を得られぬ結果に終わり、電波を規制緩和するチャンスを逃してはいけません。
やるか、やらないのか、太い政治判断が必要なのです。
そのためにも、法体系見直しで、国民にとってどんなメリットがあるのかを具体的に示す必要があります。ホワイトスペースを使って通信放送混合サービスを実現したり、アナログ跡地で50兆円ビジネスを生んだりするということですな。国民の合意を得て、国会で成立させるためには、手触り感のある実像が求められるわけです。


では着地点はどこか。「レイヤー別一本化」にどこまで近づけられるか。今回どうしても達成すべき点は何か。政治的に折り合える現実解はどこか。ぼくは以下のあたりと考えました。
・ 通信放送融合型の電波免許を導入すること

・ 従来型の規制が残る「基幹放送」を放送普及基本計画の対象範囲に限定すること
・ それ以外の放送の番組規制、マスメディア集中排除等を緩めること

・ 放送のハード・ソフト一致、分離の選択肢を地上波、衛星、有線の全てに認めること

・ 放送と通信のサービス層のスキームを一本化すること

・ 放送のコンテンツ層を放送法/電気通信役務利用放送法スキームに一本化すること


これにより、通信放送を横断するサービス展開が容易となるとともに、有線テレビジョン放送法など5本程度の法律が廃止され、レイヤー別に大ぐくりできます。コンテンツ層は実質的に大きくいじりません。
せめてここまでは達成したい。実際、審議会答申はこの線で収まりました。そしてどうやら放送業界も通信業界も、強い異論はなさそうで、まぁこんなところか状態の模様。あんなに強い反発があったものの、それぞれ不満を残しつつも何とか着地点にたどり着いたようです。
80点つけていいでしょう。残り20点は、まだ法案が成立していないという10点と、施行してからの効果が見えていないという10点。


それより、この手当てをもう済ませ、ぼくたちは次のステージに進まなければなりません。例えば、通信・放送法と著作権法との折り合いをどうつけるのか。薬事法や公選法などの情報規制との関わりをどうほぐすのか。条約との関係もあります。情報の流通に国境がないなか中で、国内法はどこまで規定すべきなのか。
通信・放送の規制法を直す以上に難しい問題ばかりです。
通信・放送法制のリニューアルは20世紀が投げかけたデジタル化、IP化という問いに対する宿題。21世紀も10分の1を過ぎます。ネットワーク整備のフロントランナーである日本は早く宿題を解く責務があります。
(デジタルの手触り 十番勝負 第九番改訂)

2009年11月12日木曜日

融合法制は単なる入口 -1

■YouGo3.0 融合法制は単なる入口-1


2007年2月、総務省「通信・放送の総合的な法体系に関する研究会」で、ぼくは通信・放送という縦割りの二分法をコンテンツやネットワークといった横割りのレイヤー(層)別編成にすることを提案しました。
その後、現在9本ある規制法を1本にまとめる案も提示し、2007年12月には「レイヤー別一本化」という「情報通信法」構想が報告として採択されました。2008年からは情報通信審議会が引き継ぎ、2009年8月には法案提出に向けた答申がとりまとめられました。

「レイヤー別一本化」構想には、左右さまざまな立場からおしかりもいただきました。その多くは誤解に基づくものでした。まず、ネットワークやサービスの規制改変は産業秩序や放送文化を壊す、という批判。だが私たちが提案したのは「規制緩和」。放送と通信の相乗りビジネスを認めるといったことです。
例えば放送局に対しては、昼間はテレビ、晩はケータイといった電波の使い方を認めて、事業機会を拡張する。放送が使っているアナログ周波数の跡地や新しい周波数帯を巨大なサービス機会にしていく。こうして新しい放送文化が生まれるようにするのです。
だから、放送側にほめられて、通信陣営からは放送優遇を批判されるに違いない。ぼくはそう見込んでいました。しかし結果は逆。放送からは危険思想とみなされました。「今のままがいい」という意見でした。それだと通信などに対しても規制緩和を提案しているので、地上放送だけがキツい規制で残ってしまう。いいのかなぁ。

一方、議論はネットワークやサービスの層よりも、コンテンツの層に集中しがちでした。ウェブサイトなどにも法の網がかかるという懸念がメディア業界からもネット系からも噴出しました。ぼくもこの議論は警戒しました。日本は放送番組を含めコンテンツ規制が緩い。だから正面から論ずると規制強化論に傾きがち。むろんルール化が必要な面はあります。しかし時期が悪い。ここで官製不況を上乗せすることはないでしょう。有害情報規制に対する国会の対応を見ていると、情報統制への流れも助長しかねません。
それよりも、コンテンツ層とネットワーク、サービス層の垂直統合ビジネスと水平分離ビジネスについて、選択肢を増やす設計をすることの方が重要。地上波の放送では垂直統合モデル(ハード・ソフト一致)のみしか認められておらず、通信衛星では水平分離モデル(ハード・ソフト分離)のみしかないが、有線ではいずれも制度的な選択肢があります。いずれも有線のように事業者が選べる選択制モデルにしたらいいんです。

今回、法体系を見直すのは、利用者がより豊かなサービスを利用できて、経済や文化が発展する環境を用意するためです。タテをヨコにしたり、9本を1本にしたりすることが目的なのではなく、そうしたチャンスにしか実施できない大胆な規制緩和を行うことに眼目があります。経団連は総務省研究会よりも過激な緩和プランを提言したが、そういう要望がどこまで具体化できるかが問われているわけです。
(つづく)

2009年11月10日火曜日

融合は通信の番 -2

■YouGo3.0 融合は通信の番 -2  


 3年のビハインドながら、2008年に空気が変わりました。
 NHKは08年末、「NHKオンデマンド」をスタート。民放では11月に、日本テレビ放送網とアミューズがドラマのネット配信を開始。12月には、日本テレビ、吉本興業、電通が「Joost」にチャンネルを開設して、「進め!電波少年」などを米国向けに提供開始。フジテレビは11月、「爆笑レッドカーペット」などをNHKに先駆けて有料で配信。

 角川グループもYouTubeでアニメ、映画などを配信。日本音楽著作権協会(JASRAC)は、「ニコニコ動画」を運営するドワンゴと包括的な利用許諾契約を締結。吉本興業は「ファンダンゴTV」をCS放送からブロードバンド配信に移行。エイベックスグループはYouTube上にチャンネルをスタート。放送を支えてきた作り手が自らインターネットをベースとするビジネスに移っています。

 今年9月には、TBSとテレビ朝日がGoogleと提携、公式チャネルでニュースを流すと発表。フジテレビと日テレはGyaoに出資するという報道がありました。

 日本は遅かった。それはテレビのビジネスモデルが最高だったからです。ネットに進出したところでもうかるわけでもなく、非合法コンテンツがあふれるネット空間に踏み出す利益が感じられなかったのです。

 でも、もう終わりました。業界同士のせめぎ合いをしているうちに、視聴者やスポンサーが先に動き始めました。若い視聴者は、もうオンエアをそのまま観ずに、ハードディスクに録画してCMを飛ばして観るか、ネットでYouTubeを観る。テレビとPCとケータイを同時に開く3スクリーン世代が登場していて、ユーザー行動的には融合は完成しつつあります。それではとスポンサーはCM出稿を抑え、ネットや海外のサイトに広告を振り向けます。
 テレビが囲い込んで守る戦略は、明日を打開するものではなく、寿命が1日延びるか2日延びるかという延命措置になってしまいました。

 米欧はテレビ番組を中心にネット映像ビジネスを展開します。結局、CGM(消費者発信メディア)の素人動画よりプロの番組。ほとんどの番組を使ってネットビジネスが試行されています。日本はテレビのコンテンツがまだ一部しか出てきていませんが、本気で出てきたら軸になります。「合法+ビジネス」の条件整備を進めなければなりません。

 問題は、通信業界です。コンテンツを欲する通信側がどこまでリスクを取り、コストを払って、コンテンツビジネスに本腰を入れるか。攻守ところを変えて、そちら側の本気度が問われています。次世代携帯のインフラに1兆円を投資するという話は聞きますが、コンテンツに資金を投じる話は聞こえません。日本の通信業界が及び腰なら、海外のメディア企業が動いてきます。現にその兆しは濃厚です。
 放送にしろ通信にしろ、いかに融合するかの段階は過ぎました。互いに融合した後の展望を描きたいですね。
(デジタルの手触り 十番勝負 第十番改訂)

2009年11月8日日曜日

融合は通信の番 -1

■YouGo3.0 融合は通信の番 -1


「融合」がキーワードになったのは05年。
ホリエモンがニッポン放送の株を取得し、楽天とTBSが攻防戦を繰り広げました。ソフトバンクやKDDIが通信回線を使って有線放送に乗り出し、USENは映像サイト「GyaO」を立ち上げました。06年にはケータイ向けのワンセグが始まりました。
だが日本の放送局は、融合に消極姿勢でした。そして欧米に水をあけられました。

YouTubeが世界を席巻し、iTunesも05年からビデオを扱い始めました。06年1月、米国でグーグル、ヤフー、マイクロソフトが、アップルに続き映像配信ビジネスを発表。ネット企業が世界市場を牛耳ると宣言しました。
米放送界の動きは速かったですね。CBSは直ちにグーグル、ベライゾン、コムキャストの3社と提携。NBCもアップル、アマゾン・ドット・コムなどと提携、NBCは08年にはニューズ・コーポレーションとともに配信サイト「hulu」をスタートさせ、YouTubeへの対抗姿勢を見せています。
米国以上にテレビ局が前面に出ているのが欧州。
英BBCは07年3月、YouTubeにチャンネルを設置することで合意。見逃し番組をダウンロードできるサービス「iPlayer」も07年にスタート。フランステレビジョンはフランステレコムと提携し、ドイツではZDFやARDがドイツテレコムと提携しました。国営・公共放送局主導の融合戦略です。

そして07年、メディア業界の再編が進展しました。
フォックスを持つニューズ・コーポレーションがウォールストリート・ジャーナルを発行するダウ・ジョーンズを買収。通信社のロイターとトムソンの経営統合。08年にはマイクロソフトとヤフー、グーグルを巡る攻防。通信と放送の融合という狭い話ではなく、新聞、通信、出版、コンピューターなど、メディア全体を巻き込む世界的な再編劇。
ここに日本企業は登場しません。
やれ融合だ、いや連携だ、と言葉遊びをしていた日本。
ここまでは3年のビハインドでありました。
(つづく)

2009年11月7日土曜日

IPDCフォーラム -3




■Net IPDCフォーラム -3

 先日、IPDCフォーラム第一回勉強会が慶應・三田キャンパスで開かれました。
 フジテレビ岡村さん=ISDB-TmmKDDI猪澤さん=Media FloFM東京仁平さん=ISDB-Tsbのモバイル向けマルチメディア放送を用意する3陣営の揃い踏み。
 3陣営ともIPをサポートするIPDC事業者ですが、ビジネス構想に火花が散る中、私の司会で構想を聞いてみました。

岡村さん:
 端末を揃えることが大事だ。モバイルに限らず、多彩な種類の端末が欲しい。ISDB-Tmm14.5MHz33セグメントをフルに使え、双方向利用も可。インフラのコストを下げることが重要。33セグメントでも17セグメントでもインフラコストは
同じだから、2つに分けるとコンテンツ委託コストは倍になる。
 Docomoとの連携という通信・放送連携モデルだが、著作権などのビジネスモデルには共通認識があり、うまく行っている。

猪澤さん:
 沖縄のユビキタス特区で、ケータイやクルマやサイネージ向けの放送を実証実験中。これまでネットワークや設備寄りの実験だったが、コンテンツの実験フェーズに入っていく。
 Media FloはアメリカではVerizonAT&Tがストリーミング放送を行っているが、アナログ停波の遅れもあり、課題は多い。エリア展開はこれからだし、日本のユーザがワンセグ視聴に慣れているのと異なり、アメリカのユーザにとっては映像視聴は新規。イギリスでも近くサービスインするのだが、日本はいいポジションにいると考えている。

仁平さん:
 107日にV-Lowの企画会社を全国で6社設立した。幕張のCEATECでは、マルチメディア放送ビジネスフォーラムでブースを展示、ケータイやクルマやフォトスタンドで新聞・チラシを放送する可能性を見せた。電子ペーパ、サイネージ、ゲーム機も視野に入れている。
 陣営に通信キャリアがいないので、端末をどうするか。キャリア等からはサービス次第という指摘を受けているが、無料サービスを中心に面白いものを展開していく。


 サービスとコンテンツのイメージをもう少し突っ込んで聞いてみました。

岡村さん:
 ロングテールではない、編集されたコンテンツを考えている。1000万台を早く達成しないとね。

猪澤さん:
 IPだからといってバラ色になるわけではないが、通信・放送のマルチ利用や連動番組が可能になる。サービスやコンテンツはこれから開発する。

仁平さん:
 高度化されたウィジェット利用のイメージ。つまり、何が生まれてくるかわからない、ということ。オープンなアプリ開発を志向する。


 テレビでもネットでもない、IPTVでもない、別の新しいメディアを目指すということのようです。


2009年11月5日木曜日

IPDCフォーラム -2

■Net IPDCフォーラム -2

しかし、IPDCを核とした新たなサービスや産業の創出には、制度面、サービス・ビジネス面、技術面で解決しなければならない各種課題が山積しています。
2008年度、IPDCフォーラムの前進であるNICTの次世代IPネットワーク推進フォーラム内に設置された「新ビジネス検討WG」では、今後の早急な取り組みが必要な課題として以下のものが挙げられました。

制度分野
①放送の仕組みをコンテンツデリバリーの一方式として利用(放送の通信的な利用)するための制度枠の創設
②放送の通信的な利用時における放送規律との整合性の整理や著作権問題等

サービス・ビジネスモデル分野
①放送の通信的な利用により可能となる新しいサービスやビジネスの積極的な創出
②そのための実証実験などの機会の積極的な後押し(特区制度のより積極的な活用等)

技術分野
①マルチメディア放送の相互接続性の向上を目的としたテスト環境の提供など
IPDC部分の上に乗るベアラ非依存のサービス提供レイヤなどの仕様策定
③上位層部分や、固定・移動問わずに利用可能な技術仕様の策定活動そのものの在り方

その他
①スケーラブルなコンテンツデリバリーネットワークの在り方の検討、それに伴うコンテンツ流通の在り方の検討
②それに伴うIPDC自体の概念拡張(通信・放送、モバイル・固定を問わない配信路の使い分け等)

そこで、各課題ごとに、主なステークホルダーとの議論、実験推進の場を用意し、強力に課題解決を推進するための民間任意団体を設立すべき、という提言に至ったのです。
これを受け、IPDCを共通基盤とした新サービス・新産業の創出を推進するための民間任意団体として、「IPDCフォーラム」を20096月に設立しました。私が代表を務めています。
http://www.ipdcforum.org/
活動内容は以下のとおり。
(1)IPDCの認知・普及促進
(2)新サービス、新産業創出における課題の抽出
(3)国内外における動向調査 
(4)IPDCに関する包括的な議論の場の提供
会員は以下のとおりです。
株式会社アスコン
株式会社eTEN
株式会社ISAO
伊藤忠テクノソリューションズ株式会社
株式会社エフエム東京
エル・エス・アイ ジャパン株式会社
京セラコミュニケーションシステム株式会社
クアルコムジャパン株式会社
慶應義塾大学大学院メディアデザイン研究科
KDDI株式会社
株式会社CSKIS
ジュニパーネットワークス株式会社
セガサミーホールディングス株式会社
株式会社スペースシャワーネットワーク
株式会社テレビ神奈川
株式会社電通国際情報サービス
日本電気株式会社
株式会社ネクストウェーブ
ネットワンシステムズ株式会社
株式会社博報堂DYメディアパートナーズ
株式会社日立製作所
フジテレビジョン株式会社
株式会社毎日新聞社
株式会社マルチメディア放送
三井物産株式会社
モバイルメディア企画株式会社
UQコミュニケーションズ株式会社
株式会社読売新聞東京本社
ご関心があれば、ぜひ下記にご連絡を。
     office@ipdcforum.org

2009年11月3日火曜日

IPDCフォーラム -1

■Net IPDCフォーラム -1

改めて、IPDCフォーラムについてご案内します。
IPDC(IPデータキャスト)は、今まで、インターネットの世界で利用されてきたIP(インターネットプロトコル)を通信、放送の区別なく、あらゆるデジタルインフラでのコンテンツデリバリープロトコルとして利用すること、また、そのプロトコルを利用したサービスのことです。


通信がアナログからデジタルになり、IP化されたのと同様に、放送もデジタル化を契機としてIPが乗ろうとしています。
通信の分野では、次世代の固定電話、携帯電話における通信規格(NGN/LTE)において、IP技術が採用されることが決定していますね。有線も無線もIPに移行します。放送の分野ではまず有線でIPマルチキャスト=IPTVが広がりをみせようとしています。
そして、いよいよ放送の無線の分野でも、IPが乗ろうとしているわけです。
2011年のアナログテレビ放送波停止後に開始される「携帯端末向けマルチメディア放送」で事業展開を予定している各社からも、3つのシステム全てにIPパケットを放送波で伝送する仕組みが提案されています。
これをIPDCと総称します。
いよいよ通信・放送、有線・無線をIPで横断するビジネスが明らかになりつつあるわけです。

これによる新しいサービスは何か。
ケータイ向け放送には既にワンセグデータ放送がありますが、これと比較すると、IPDCでは、「表現力の向上」と 「多様な制作・運用環境」の2つが格段に向上します。
例えば、既存のデータ放送は、映像・音声に連動した情報をテキスト主体で表示していて、あくまで番組(映像音声)のサブという位置付け。
IPDCでは、映像/音声とそれ以外のデータを同じ扱いで送出するため、複数情報の共通画面内への表示がより柔軟に行えます(オーバレイ表示)。
また、データ本体とレイアウト情報を分離して配信することも可能なことから、受信デバイスに応じ、より自由度の高い画面表示が可能となります(デバイス別選択受信)。
待ち受け時にIPDCを受信すれば、iチャンネル等よりも即時性に優れた情報を常に表示させることも可能です(待ち受け受信)。
ウィジェットも高度化します。株価ウィジェットでは、随時最新の情報を表示したり、指定した銘柄の株価をリアルタイム表示する、といったことです。

受信機はケータイだけではありません。
デジタルサイネージやchumby、フォトフレームのような家庭内端末も想定できます。IPDCを使うことで基本料金の発生しないデータ配信プラットフォームが実現するわけです。ニュースや天気予報など即時性のある情報を大量の利用者に送るには「IP+放送」でしょう。
例えば「しゃべるぬいぐるみ」が、「今日は関東でサクラが満開!花粉の飛散も多いみたいですよ~」とお話してくれたら。

全国向けの情報は放送による全国一斉IPマルチキャスト。
特定地域向け情報は特定エリアのみ放送配信。場合によってはスポット放送なども考えられます。
登録型コンテンツは通信を利用。ただし、登録者数によっては放送による限定受信を利用。P2Pで他ユーザへの二次配信も。
そんなイメージですね。通信と放送を合体して、コンテンツや送信相手によって柔軟に使い分けるわけです。

このように、今「IP」を共通の土台として通信・放送の融合が進む機運となっています。IP技術は通信の世界でコストの低減、フラット化とサービスへの新しい付加価値という2つの側面でもメリットをもたらしました。そして放送の世界でもIP技術は汎用性を通じたコストの低減と新しいサービスの可能性という2つの恩恵をもたらし、その結果として放送産業を変貌させる起爆剤になり得ると期待されます。


2009年11月1日日曜日

電波オークション -3

■電波オークション -3


さて。電波オークションに関連して、いろいろ質疑もありました。

1. オークションで産業は発展するの?
利用効率はアップするし、新しいサービス開発のインセンティブも向上します。
でもその前に、この周波数はITS向け、これは放送向け、といったことを決めることがもう制度として崩壊しています。
そうは言っても総務省を叩いてばかりでもしょうがない。
ぼくが所属していたころの電波行政は評判が悪かったっすよ。
不透明、恣意的、ガンコという評判。
でも、この10年で電波行政はよくなりました。
池田さんに叱られることも減りましたね。
審査は透明で厳しくなされています。
そこで役所としては、オークション制度を、どう持って行けばいいのか悩むわけです。
オークションは「イヤだ」という業界があります。通信業界。
「やってくれ」という業界はまだ見あたらない。
それを勝手に役所が「やりましょう」とはならないですよ。
政治も動きますまい。
オークションの最大の問題は、「その制度のスポンサーはだれ?」ということです。

2.ホワイトスペースどうするの?
オークションは一部の帯域。アナログ跡地のケータイ40MHzITS10MHzあたりでしょう。
ホワイトスペースはもっとでかい。
スポットワンセグ、IPDC、デジタルサイネージといった業界が「使わせてくれ」と手を挙げています。
アメリカでは10月22日、バージニアのスペクトラム・ブリッジ社がラスト1マイルのブロードバンド・サービスを開始しました。
日本の場合、ブロードバンド需要よりもミニ放送的な利用ニーズが高いでしょう。
オークションの議論は、またトライアルの設計でよいのですが、ホワイトスペースは実ビジネスとして、早く結論を出す必要があります。
そして、ホワイトスペースの開放は、政府としてデメリットがないので、議論が進むでしょう。
となると、これに反対する放送業界がどう出るか。
電波を欲しがっている業界=スポンサーがどう担ぐか。
その間に立って、政治がどう調整するのか。
ポイントはこの1点です。

3.日本の戦略は?
ものづくり力と文化力の双方を持っていることが日本の強みです。
その産業文化力の総合性を世界に発信することです。
この政権に望むのはわずか3点。
・融合推進
・規制緩和
・ソフトパワー強化
ところが融合法制は先送りというし、電波の規制緩和も先送りといいます。