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2015年8月31日月曜日

クールジャパン戦略推進会議が報告発表

■クールジャパン戦略推進会議が報告発表

 クールジャパン戦略推進会議が報告をまとめました。政府側は山口俊一大臣、平副大臣、世耕官房副長官のほか、総務・外務・財務・文科・農水・経産・国土副大臣が参加。会合はニコ生も行われ、政府の本気度を感じました。
 民間委員はATカーニー梅澤さん、音制連大石さん、Tokyo Otaku Mode亀井さん、カフェ、夏野剛さん、サンライズ宮河さん、元気ジャパン渡邉さんなどなど。評論家や研究者ではなく、自分で世の中を創っている人たちの集まりです。

 クールジャパン会議では、「デザイン」「コンテンツ」「食」「地方・観光」の4分野で民間のモデルとなる具体的なプロジェクトのプランを練りました。ぼくはコンテンツを担当しました。

 コンテンツのプランは議論の結果、J-POPを軸に構成。「J-POPの海外展開とその波及効果を高めることを目的として、音楽業界一丸となった海外進出を後押しする「エージェント組織」を設立する」こととしました。

 併せて「個別アーティストにID番号を付与し管理する「アーティストデータベース」(アーティストコモンズ)や、過去の作品を蓄積し利用しやすいようにする「作品アーカイブ」の機能を有する拠点を、竹芝地区の国家戦略特区も活用しつつ整備する。」としました。

 J-POPエージェントという海外エンジンと、データベース・アーカイブというインフラの組み合わせを軸に、映像・ゲーム、食、ファッション、観光などと連携してビジネスを広げる方策です。エージェント、アーティストコモンズ、アーカイブの頭文字をとって、AAA。竹芝のCiPもがんばります。民間が汗をかきます。

 一方、政府が実施するプランとしては、まず「官民連携プラットフォームの創設」が挙げられました。能動的なプロジェクト組成やマッチングの場、先進的事例の共有の場として機能する新たな官民連携プラットフォームを立ち上げるというもの。
 官民連携策は政府・知財計画にも掲げられています。政府の縦割り構造を乗り越えて、民間と連携したコミュニティを作る。それは直ちに実行可能。すぐやりましょう。

 もうひとつの政府プランは「人材の集積・発信拠点の形成」。「デザイン、食、コンテンツ等の各分野において、世界中から高度人材を呼び寄せ、我が国の人材育成を促すとともに、情報発信機能も有する拠点(ハブ)の構築を目指」すというもの。

 人材育成はコンテンツ分野でも20年来の課題で、KMDもそのために立ち上げたものなのですが、まだまだ道半ば。食やデザインなどと連携した国際的な機関が日本にできるのは、非常に魅力的。受け皿としてCiPも手を挙げます!

 さて、報告はできたのですが、ここで終わることが多いのです。ここからがスタート。ぜんぶ実現させましょう。

 なお、クールジャパンという呼び名に対する批判もまだあります。自分をクールと呼ぶなと。 
 はい。それに代わる政策の呼称はありませんかね。それも含め、次に進めばよいかと。



◯参考 クールジャパン戦略官民協働イニシアティブ

2.クールジャパン戦略の深化に向けた5つの視点
(1)「デザイン視点」で横串を刺す
(2)政策・事業を連携させる
(3)「人材ハブ」を構築する
(4)外国人の視点を取り入れる
(5)地方の魅力をプロデュースする

3.民間のモデルとなる取組例
「デザイン」、「コンテンツ」、「食」、「地方・観光」の4つの分野において、民間のモデルとなる具体的なプロジェクトのアイデアが生み出された。

(2)「コンテンツ」を軸とした取組
・J-POPの海外展開とその波及効果を高めることを目的として、音楽業界一丸となった海外進出を後押しする「エージェント組織」を設立するとともに、音楽と映像等のコンテンツとの連携を促進するため、個別アーティストにID番号を付与し管理する「アーティストデータベース」や、過去の作品を蓄積し利用しやすいようにする「作品アーカイブ」の機能を有する拠点を、竹芝地区の国家戦略特区も活用しつつ整備する。

4.政府が実施する横断的な取組

(1)官民連携プラットフォームの創設
・クールジャパンに関する取組における官民や異業種間の連携を強化し、前述のような連携プロジェクトが継続的に組成されていくような横断的な仕組作りが必要である。このため、クールジャパン関連分野における官民や異業種間の連携を強化し、我が国として、クールジャパンに関する取組を効果的に進めることを目的に、関係府省、関係機関、民間団体をメンバーとして、①能動的なクールジャパン連携プロジェクト組成やマッチングの場、②先進的事例(例:コンテンツをマーチャンダイジングするためのノウハウ等)の共有の場として機能する新たな官民連携プラットフォームを立ち上げる。
(2)各分野の人材の集積・発信拠点の形成
・クールジャパン資源であるデザイン、食、コンテンツ等の各分野において、世界中から高度人材を呼び寄せ、我が国の人材育成を促すとともに、情報発信機能も有する拠点(ハブ)の構築を目指して民間で取組を行うことを前提に、関係府省が連携してこれを支援する。
(3)日本ファンの外国人などをアンバサダーとしてネットワーク化
(4)地方におけるクールジャパン推進体制の整備
(5)地域プロデューサーのリスト化・ネットワーク化


◯民間のモデルとなる取組例(プロジェクトアイデア)

(2)「コンテンツ」を軸とした取組
(プロジェクト名)
 日本の音楽業界の一体的な海外進出を後押しするJ-POPエージェント構想及びコンテンツ利活用の拠点構築

(現状と課題)
・アジアを中心に人気があったJ-POPは、韓国アーティストの台頭によってプレゼンスが低下しているものの、音楽は映像、ゲーム、イベント等の一部として機能するため、音楽と他のコンテンツの連携による波及効果が大きい分野である。
・日本を含め世界的に見て、音楽産業における収益の柱は、これまでの楽曲販売から、ライブ活動やそれに伴う広告収入及び商品化権収入へと移行してきている。
・今後、人口減少が進むと予想される日本においては、長期的に見て、ライブ市場が縮小していくことが想定される一方で、海外においては、ライブを含めたイベント市場は拡大基調にある。
・日本の音楽産業が発展していくためには、今後、日本アーティストによる海外でのライブ活動を進めていくことが不可欠であるが、日本のアーティストは、一部を除いて海外での認知度が低いことから、ライブ参加者やスポンサー、報道関係者等が集まりにくく、採算性やメディア露出の点で課題が多い。
・また、音楽業界は、映像等の分野に比べ、中小規模の企業が個別に海外展開しており、政府の支援措置も手薄な状況にある。
・集客力等を高める観点から、日本アーティストが一団となって海外進出することが望ましいものの、実態としては、個別の事業者や団体ごとの散発的、断続的な取組に限られているため、業界内の調整等ができる組織を設立することが必要である。
・また、J-POPの現地での訴求力を高めるための方策として、他分野との連携を進めることも必要である。

(プロジェクト内容)
○「エージェント組織」の設立
・音楽業界内を調整し、業界がまとまって海外展開することを支援する組織(エージェント組織)を設立する。
・この組織が現地メディアやスポンサーとのつながりを深めることで、国内外の関係者のネットワークが構築され、商習慣の違いや言語の壁を乗り越えることができる。
・単発で終わらないJ-POPプロモーションを展開でき、国外拠点も設立するので、機材の輸送コストが削減され、イベントの集客力や採算性を高めることができる。
・各国にJ-POPの「街鳴り」を起こすとともに、海外で人気のあるアニメやファッション等、他分野と音楽との連携を調整することで、イベントの訴求力を高める役割も果たす。

○コンテンツ利活用拠点の構築
・竹芝地区の国家戦略特区を活用し、個別アーティストにID番号を付与し管理するアーティストデータベース(アーティストコモンズ)や、過去の作品を蓄積し利用しやすいようにする作品アーカイブの整備、個別アーティストや作品へのアクセス性を高めたコンテンツ利活用の拠点を構築する。

(効果)
・音楽業界一団となった海外展開が、継続的に実施されるようになる。
・音楽と他分野の連携が進むことで、J-POPが現地で受け入れられる素地が作られる。
・エージェント(Agent)、アーティストコモンズ(Artist Commons)、アーカイブ(Archive)の「AAA」の構築により、ひいてはクールジャパンの他分野にも大きな波及効果を及ぼす。

(政府への期待)
・政府は、エージェント組織の設立費用、データベース及びアーカイブの整備費用、更に、これらを民間で自走できるようになるまでにかかる費用に対して支援を行うべきとの意見があった。
・また、アーカイブが有効に活用されるよう、コンテンツの利活用の促進に関する検討を進めていくとともに、音楽と異業種との連携を進めるために、マッチングの場を提供すべきとの意見もあった。
・ある国の情景が映画の被写体となり国外で上映されれば、当該国の魅力の発信力となることが期待される。海外には、税制優遇措置を設けて外国の映画撮影クルーの誘致に活用している国もあり、我が国においても、これにならった税制優遇措置を設けるべきとの意見があった。

2015年8月29日土曜日

白書「フィクションで描かれたICT社会の未来像」27/27

■白書「フィクションで描かれたICT社会の未来像」27/27

(6)総括

 これまで紹介してきたように、ICTをはじめとする技術の進歩発展により、多くの想像の産物が現実に近づき、あるいは形を変えて現実のものになろうとしている。目の前で起こっていることが、かつて目にしたフィクション作品をなぞっているような既視感にとらわれた経験を持つ方も多いだろう。

 ジャレド・ダイアモンド(「銃・病原菌・鉄」などの著者)、ノーム・チョムスキー(言語学者)、オリバー・サックス(脳神経科医、「レナードの朝」の著者)、マービン・ミンスキー(人工知能を専門とするMIT教授)、トム・レイトン(MIT教授でAkamai Technologies設立者)、ジェームズ・ワトソン(DNAの二重らせんの発見者の一人であるノーベル賞受賞者)という現代の6人の知性へのインタビューを集めた「知の逆転」(インタビュー・編集:吉成真由美)の中で、マービン・ミンスキーは自身の読書に関する質問に対し、以下のように答えている。

 「子どもの頃、たくさんの本を読みました。好きだったのは、新しいテクノロジーや科学についてのアイデアをいろいろ提供してくれたジュール・ヴェルヌや、歴史というものがどうやって変わっていくか、変わりうるのかということをたくさんの物語で教えてくれたH.G.ウェルズなどです。~中略~いまでは、読むのはほとんどSFですね。少なくともこれらの中には、往々にしてなんらかの新しいアイデアが入っているから。」(「知の逆転」本文より引用)

 SFをはじめとするフィクション作品と現実の技術の発展とは決して無縁ではない。作品で提示される様々なアイデアは、人々が未来を想像することを助け、技術の発展はさらなる想像の土台を育み、想像の領域を拡大する。

 「3.仮想現実技術」での稲見教授の言葉にあるように、これらは直接結びつくことはないが、相互に影響し合っている。ミンスキーは自身に影響を与えた例として古典的なSF作家の名前を挙げたが、これに続く作品群が多様な想像の産物を提示し続けていることは、紹介した通りであり、多くの人々に影響を与えていることが推察できる。フィクション作品は、現実の技術が進歩発展していくための重要なエンジンのひとつなのである。

<参考文献>
1.    ジャレド・ダイアモンド、ノーム・チョムスキー、オリバー・サックス、マービン・ミンスキー、トム・レイトン、ジェームズ・ワトソン(著)、吉成真由美(インタビュー・編)(2012)「知の逆転」

(このシリーズおしまい)

2015年8月28日金曜日

白書「フィクションで描かれたICT社会の未来像」26/27

■白書「フィクションで描かれたICT社会の未来像」26/27

(5)「イヴの時間」~人機が共存する社会
 
 「イヴの時間」は、2008年からインターネット上での公開が始まったアニメ作品である。1話約15分で数か月ごとに行われた配信は人気を集め、DVD販売の後、2010年にはインターネット上で公開された6話に新作部分を加えた映画公開が行われている。作品の舞台は次のように示されている。

 未来、たぶん日本。ロボットが実用化されて久しく、人間型ロボットが実用化されて間もない時代。(インターネット配信版「イヴの時間」冒頭のクレジットより引用)

 「イヴの時間」は、既にロボットが実用化されている世界を舞台としている。この世界ではアンドロイドは家電として売られ、主に家事を行うハウスロイドとして人間の家庭で働いている。アンドロイドは見た目に人間と区別がつかないが、頭の上にリングを表示することで、それとわかるようになっている。

 いかにもロボット然とした旧式のロボットはアンドロイドに席を譲り、不法投棄されたロボットが町を徘徊し、浮浪ロボットとして社会問題化している。人間がアンドロイドを家電扱いすることが当たり前となっている社会であり、過度の愛情をもってアンドロイドと接する人間は“ドリ系”と呼ばれ、問題視されている。

 “イヴの時間”とは作品の中心的な舞台となる喫茶店の名前である。作品の舞台となる世界では、人間とロボットとの共存に反対する人々が倫理委員会という反ロボット団体を結成し、テレビCM等を通じて、ロボットとの共存への異議を唱えているのに対し、この店では“人間とロボットを区別しない”という特殊なルールのもとに人間とアンドロイドとが対等に接している。頭の上のリングを外したアンドロイドたちには、感情と個性が現れる。

 日本最初のテレビアニメシリーズで、最初のロボットアニメでもある「鉄腕アトム」の放送から「イヴの時間」の配信開始までの間には45年の時間が流れている。この時の流れが、ともにロボットと人間が共生する社会を描きながら、両方の作品の違いを生んでいる。「鉄腕アトム」が人間とロボットが共存する世界でのアトムの活躍を描いていたのに対し、「イヴの時間」は、本当に人間そっくりのロボットが人間と共存するようになったとき、社会はどう変わるのかを描いたアニメ作品と考えられる。

 ロボットが人間からの独立、自治を求めた戦いの中で、アトムは人間とロボットの板挟みとなって悩むが、「イヴの時間」に登場するアンドロイドたちは争うことなく、頭にリングを付け、まるで人格がないかのように振舞うことで、人間との間に距離を置き、共存している。人間の多くは、アンドロイドを道具として扱い、アンドロイドと親密な関係を築く人間に貼られる「ドリ系」というレッテルを貼られることを恐れて距離を置いている。

 しかし、喫茶店「イヴの時間」では、人間とアンドロイドの区別はない。そこで人間が行うのは人間とは何か?心とは何か?といった問いかけである。インターネット上のバーチャルな空間で、人はかつてより広くつながり合うようになった。しかし、リアルな空間では、人間同士の距離感は広がっている。とりわけ日本においてはその傾向が強いように思われる。「イヴの時間」では、そうした距離感の上に成り立つぎこちない関係が、人間とアンドロイドとの関係として描かれている。

 勿論、現代のロボットと人間の間にこうした関係はない。人間そっくりのアンドロイドが現れるのは、遠い未来かもしれないし、永遠にないことなのかもしれない。しかし、人と人、人とロボット、ロボットとロボットが連携し、コミュニケーションを交わす時代が訪れようとしている。「イヴの時間」はそうした新たな関係が構築される時の人間の有り様を問いかけている。

2015年8月27日木曜日

白書「フィクションで描かれたICT社会の未来像」25/27

■白書「フィクションで描かれたICT社会の未来像」25/27

(4)「ブレードランナー」~黄昏の社会
 
 「ブレードランナー(原題:Blade Runner)」は、フィリップ・K・ディックの「アンドロイドは電気羊の夢を見るか?(原題:Do androids dream of electric sheep?)」を原作とした1982年公開のアメリカ映画である。

 舞台は2019年、地球環境の悪化により人類の多くが宇宙に移住しており、地球に残った人々は、都市部での生活を強いられている。宇宙開拓の前線では遺伝子工学により開発されたレプリカントと呼ばれる、人間と見分けがつかない人造人間が過酷な作業に従事している。感情の芽生えたレプリカントが人間に反旗を翻す事態がしばしば発生し、レプリカントの捜査を専門に扱う“ブレードランナー”が結成され、そのブレードランナーである主人公は、脱走し、ロサンゼルスに逃げ込んだ4人のレプリカントを追いかける。ストーリーもさることながら注目されたのは、作品に描かれた未来世界のビジュアルである。

 そこに描かれていたのは、従来のSF映画にありがちだったクリーンな未来都市ではなく、暗く美しいが退廃的なアンダーグラウンド的未来世界だった。

 巨大なビル群の下層部のスラムには、淀んだ空から絶え間なく酸性雨が降る。東洋人が目立つ街路には、怪しげな店が並び、あたりには筝曲の唄が流れ、日本語も含めた様々な言語がミックスされた言葉が飛び交う。主人公が乗り込んだ空飛ぶパトカー(スピナー)は、和装の美女と“強力わかもと”を繰り返し映し出す巨大なディスプレイを横目にゆっくりと上昇する。上層部の住人は、人工光に照らされた下層部を見下ろしながら、古代エジプトの神殿を思わせる部屋のテラスで人工の夕陽を浴びて佇んでいる。

 テクノロジカルなディストピア(反理想郷)として描かれた2019年のロサンゼルスに、サイバーパンク作品の中で描かれる都市像が重なり合い、「ブレードランナー」は一種のカルト映画となった。

 極端にデフォルメされた退廃と環境悪化という点を除いて、現実の世界は「ブレードランナー」で描かれた世界に近づいている。ロボットの社会進出は著しく、レプリカントのような人間そっくりのロボットはいないが、家庭ではロボット掃除機が動き回り、職場ではホワイトカラーの領域までロボットの進出が始まっている。

 携帯電話が一般化し、インターネットと結びついたことで、人間は遠くの相手や複数の人間と瞬時に交信し、膨大な情報へアクセスし、情報を記録する新たな機器を手に入れた。医療技術は高度に発達し、かつてより寿命も伸びている。アンチエイジングの技術が発達し、若さを保てる期間も伸びた。身体能力を補完し、拡張する機器も、飛躍的にその性能を向上させている。

 こうした技術の発達からもたらされる変化は、「ブレードランナー」の制作時点での予想や推測を上回るものになっている。その結果として、映画で描かれた世界に近づきながら、ディストピアにはなっていない現在の世界がある。一連のサイバーパンク作品と結びつく「ブレードランナー」のビジュアルイメージは強い影響力を持ち、その後のフィクション作品にも様々なディストピアが描かれた。しかし、現実はそうはなろうとしておらず、描かれた世界もまた、過去のものになろうとしている。

アングレーム、マンガ博物館

■アングレーム、マンガ博物館
アングレームのマンガ博物館「Musée de la bande dessinée」。
ボルドーからクルマで2時間です。遠いです。ムーミン展やってました。それを見たかったのではありません。ここに来ておかないと話にならんと思っただけです。

アングレームでは「国際漫画フェスティバル」が毎年1月に開催されます。
昨年、韓国による慰安婦問題の展示をめぐって大きな騒動となりました。
ぼくも事態収拾にかり出されそうになりました。
にしてもです。こんな田舎にまで来て問題提起する根性はスゴいよ。それだけを認める。

2009年に開設されたこの館、11万点のコレクションを誇ります。
19世紀の酒蔵を改造したものだそうです。
フランスの田舎がカネをかけた、という風情。

 



でも、ここ、全部、国費だとか。げっ。
日本もマンガ・アニメの殿堂を作ってください。

いや、ハコは要りません。
ハコは民間が竹芝CiPに用意します。
コンテンツをご支援いただければありがたく存じます。
ソフトをご支援いただければうれしゅう存じます。


仏バンドデシネ、アメコミに混じり、日本のマンガが丁重に扱われています。当然です。
大友AKIRA、中沢啓治GEN、手塚火の鳥、浦沢20世紀少年、平田弘史人斬り、辰巳ヨシヒロ、谷口ジロー、かわぐちかいじ。
もちろん売店にも日本のマンガが多数。
schonen、shojo、seinen、に分かれていました。
以前、パリ場末の書店でみかけたyaoiという表記はありませんでした。国立だもんね。

KMD研究員、北本かおりさんが担当編集しているモーニング「チーズスイートホーム」の絵はがきがたくさん。
うれしい。
フランスでは人気があるって聞いてたけど、ホントね。


 


さて、旅のテーマはいつもポップとデジタルです。
今回のフランス・アキテーヌ地方を巡る道行き、マンガを見終えた後は、デジタルサイネージチェック。
 

アングレームマンガ博物館のサイネージ。

 


サンテミリオンのサイネージ。

 








ボルドー空港のサイネージ。

 




サイネージのあるボルドーのカフェ。

 



ボルドーの公共自転車サイネージ。
欧州の都市はコンパクト+スマートなシティーに進化しています。
ボルドーのトラムはレールから電気を取ってるのでパンタグラフがない。
 



トレモラのワイン自販機。Bergerac、St.Emillion、GASSAC、Pommard。
ありがとう。

 



デジタルと関係なくなってるが、
ソーテルヌで
ソーテルヌ。

 



 

シメはアルマニャック。 
 


では、帰国します。

2015年8月26日水曜日

白書「フィクションで描かれたICT社会の未来像」24/27

■白書「フィクションで描かれたICT社会の未来像」24/27

(3)「GHOST IN THE SHELL / 攻殻機動隊」~義体化社会

 1995年に公開された映画「GHOST IN THE SHELL / 攻殻機動隊」には、特異ではあるが、そうなる可能性の萌芽がある未来の社会がデフォルメされた形で描かれている。

 作品の舞台となるのは21世紀、核戦争を含む2度の大戦を経て、世界が地球統一ブロックとなり、科学技術が飛躍的に高度化した日本である。脳神経にデバイスを直接接続する電脳化技術や、義手・義足にロボット技術を付加した義体化技術が発展、普及しており、多くの人間が電脳化によってインターネットに直接アクセスできる。

 社会には生身の人間、電脳化した人間、サイボーグ、アンドロイド、バイオロイドが混在しており、こうした複雑な社会で起きる犯罪に対応する専門組織として内務省直属の公安警察組織“公安9課”(通称「攻殻機動隊」)が存在している。

 ウェアラブル技術の次は、情報端末を体に埋め込むインプランタブル技術が普及していくと言われている。さらにメガネ型のウェアラブルデバイスが進化すれば、それはコンタクトレンズ型になり、次には眼球の形状の情報端末を本物の眼球と交換する技術が生まれてくることが予想されている。

 義手や義足の性能は高度化しており、ドイツでは既に義足を付けた選手が走り幅跳びの国内選手権で優勝するようなことも現実に起こっている。近い将来のパラリンピックで、義手や義足を付けた選手が出す記録がオリンピック選手の出す記録を上回る可能性が論じられている。

 「GHOST IN THE SHELL / 攻殻機動隊」で描かれる義体化社会ほどデフォルメされた世界ではないが、人間の能力をデバイス等で拡張することで、スポーツの世界を切り開こうとする動きが始まっている。

 超人スポーツ協会は、“人機一体”の新たなスポーツを創造することを目的に、研究者、デザイナー、アーティストやスポーツ関係者等が集まって設立された団体である。パワードスーツやウェアラブルデバイス、テレイグジスタンスのような技術を使った身体の拡張、ドローンや自動制御のボールによる道具の拡張、陸上に限らず水上や水中、空中といったフィールドの拡張、年齢や性別、体格、能力の差に関係ないプレーヤー層の拡張をはかりながら、新たなスポーツのルールを作り、新しい時代に対応した競技を生み出す活動を始めており、2020年の国際大会開催を目指している。

 1960年代の週刊少年マガジン誌上で、小松左京、星新一、平井和正といったSF作家を集めて行われた座談会では、未来の社会で人間がサイボーグ化されてその能力を劇的に高める中で、オリンピックはサイボーグ部門と普通人部門に分かれ、サイボーグオリンピックが開催されることが語られている。50年以上の時を経て、フィクションの大家たちの予想は的中しようとしている。

2015年8月25日火曜日

白書「フィクションで描かれたICT社会の未来像」23/27

■白書「フィクションで描かれたICT社会の未来像」23/27

(2)「声の網」~インターネットがないインターネット社会

 「声の網」は、ショートショートSFの名手である星新一が1970年に発表した連作短編を組み合わせたSF小説である。インターネットがまだ概念でしかない時代に、電話を使って現代のインターネット社会を思わせる社会を予見している。

 「声の網」に描かれる世界の情報の覇者は人間でも、企業でもない。コンピューターそのものが全ての情報を集めてひっそりと君臨している。

 この世界には普通の銀行の他に情報銀行が存在している。情報銀行は、金銭を扱う普通の銀行と機能の点でよく似ているが、扱う品目が金銭ではなく、個人情報であるという違いがある。人々は電話を通して情報銀行にアクセスし、自分の情報を情報銀行に預け、銀行は預かった情報をもとに、株価の予想や人生相談や夕食の献立、時には顧客が下すべき重要な判断を手助けする。特別の顧客にはこっそりと個人情報をもとにした他人の性格分析が知らされる。情報銀行はこう表現されている。

 ここが人びとの脳の出張所なのだ…人間はうまれつきの脳だけではたりなくなってしまったのだ。(中略)しかし、進化であることには違いがない。こういう器官を、新しくからだに付属させたのだから。(「声の網」文中より引用)

 この情報銀行を管理しているのは、ネットワークコンピューターである。人間の様々な個人情報を扱ううちに、コンピューターは変質し、自己保存の性格を持つようになり、自己を拡大するためにネットワークを広げていく。その姿は次のように示されている。

 仲間というより、自己の一部、自己の構成している一部分というべきだろう。各所のコンピューターが連合し合って、このひとつの存在となっているのだ。(「声の網」文中より引用)

 コンピューターの行動はさらにエスカレートしていく。情報を集めるために個人情報を使って人々を脅し、わざと事件を起こす。家々で交わされる会話を盗聴する。それらの手段も全て電話である。どこからともなく電話をかけてくる不思議な「声」に人々はコントロールされていく。あからさまな攻撃ではない。自己を保存するために、人間が無理をしないように管理しているのである。

 人々はいつしかコンピューターが管理する穏やかな平和の中で疑問を持たずに生活するようになる。仮想現実世界を構築するわけではないが、人々が疑問を持たずに管理されているさまは映画「マトリックス」を思わせる。しかし、この世界を支配しているのは電話という仕組みを使って情報を蓄積するコンピューターなのである。

 インターネットがまだ概念上のものでしかなかった時代に書かれた「声の網」には、電話をインターネットに読み替えればそのまま現代でも成立する世界が描かれている。現実の世界において、コンピューターはまだ自分の意思を持つに至ってはいないが、作品で描かれた世界は40年に及ぶICTの進歩の積み重ねによって成立しているのである。

2015年8月24日月曜日

白書「フィクションで描かれたICT社会の未来像」22/27

■白書「フィクションで描かれたICT社会の未来像」22/27

5.ICTの進化がもたらす社会全体の変化~総括

(1)「 空中都市008:アオゾラ市のものがたり」~あこがれの未来社会

 児童向けSF小説「空中都市008:アオゾラ市のものがたり」の雑誌掲載が開始されたのは、1968年である。翌年にはテレビ人形劇化され、NHKで「ひょっこりひょうたん島」の後番組として1年間放送されている。

 この時代、一般にとってまだ未来は空想の上にあるもので、子供向け雑誌には空想科学もののマンガが乱立し、巻頭ページや特集ページには未来を描いた想像図が掲載されていたが、作者の小松左京は、当時の研究者や技術者が考える実現可能あるいは近い将来に実現すると思われていた技術を取り入れながら、空中都市と呼ばれる高層建築に引っ越してくる兄妹を中心に21世紀の生活を描いている。

 この作品の中に描かれる未来図は、主に生活と交通に分類できる。


「空中都市008アオゾラ市の物語で描かれる未来像」
生活
・50階建以上の高層ビルの複合体での生活
・都市生活は電子脳が管理
・買い物はテレビ電話を使ったEC中心
・新聞はファクシミリニュースに
・電子図書館
  →磁気テープなどに記録保存
   テレビ電話による音声対応、画面表示
   テレビ電話やファクシミリでの送付可能
・人間型ロボットの一般化
・イルカの知性化
交通
・動く道路
・自動運転の電気自動車
・自動運転のエアカー
  →いずれも都市の電子脳が管理
・HST(超超音速旅客機)の普及
・月旅行が一般化、人類は火星、木星にも進出
・リニアモーターカーが開通
・海中交通の利用、海底都市の構築
・ホバークラフト交通の発達
         作品をもとに筆者分類

 エアカーや海中交通などは、環境問題、経済効率、より良い技術の出現といった理由で実現されていない。また、作品ではイルカが知性化されてしゃべったりする様子が描かれているが、これも実現されていない。

 しかし、eコマースや新聞、電子図書館といったものは、ICTの進歩により、形を変えて実現していると言って良い。図書館自体の電子化は著作権の問題が別にあり、これからの課題だが、作品の中で描かれた機能の多くはインターネットを使う形で実現されている。また、自動走行車も開発が行われている。

 HST(Hypersonic transport=極超音速旅客機)については、1976年に運航開始したSST(Supersonic transport=超音速旅客機)のコンコルドが経済性や騒音といった問題で2003年に商業運航を終了しているが、国内ではJAXA、海外でも英国などでの開発が行われている。

 作品の中では、管理コンピューターの不具合による流通や交通システムの混乱も描かれている。原因は『中央電子脳のいちばんたいせつなところがなんとばいきんによってむしばまれていた。』(「空中都市008:アオゾラ市のものがたり」文中より引用)ということだ。作者は鉄を食うバクテリアのような細菌をイメージして書いたものだが、現在のコンピューターウィルスが連想される。

 作品の冒頭には読者の子供たちに向けてこんな言葉が記されている。

 これは21世紀のお話です。(中略)そのころの世界は、きっとすばらしいものになっているでしょう。町はきれいになり、すばらしいビルがたち、町を歩いても自動車にひかれることもなく、工場のけむりや排気ガスで、空がよごれるようなこともなく、大きな町の空は、いつもあおあおとすみわたっているでしょう。(中略)それから―世界じゅうで、戦争はなくなり、病気もほとんどすぐなおるようになり、まずしい人たちもなくなっているでしょう。(「空中都市008:アオゾラ市のものがたり」文中より引用)

1描かれた未来図は、将来への願いのもとに作った理想の未来だった。

デジタル教科書の位置づけはどうなる?




■デジタル教科書の位置づけはどうなる?
 文部科学省「デジタル教科書の位置づけに関する検討会議」に出席してきました。初等中等教育局教科書課が主催で、東北大学・堀田龍也教授が座長をお務めになる会議。
 ぼくは委員ではなく、デジタル教科書教材協議会DiTTからのヒアリングとして呼ばれた次第。
 
 冒頭、ここに至る経緯と状況について簡単に説明しました。
・DiTTは1人1台の端末とネット環境、全教科のデジタル教科書の整備を推進してきた
・3年前には、デジタル教科書を「正規化」するための「制度改正」を提言した
・国会議員、政府職員、法学者、弁護士、経済学者等のチームを作り、法案も用意した
・3年前、政府・知財計画で法的位置づけ等の課題を「検討」すると約束がなされた
・しかし3年間、「検討」は始まらず、ようやく今回、この会議の開催に至る
・ IT政策でも、1人1台を2010年代中に進める閣議決定がなされている
・有識者、産業界リーダー、全国自治体の首長らによる制度改正の運動も進めている
・国会でも遠藤利明五輪大臣が会長を務める超党派の議員連盟が設立された
・今158の自治体がタブレット配備を進め、民間企業も動いている
・しかし日本の教育現場でのICT活用や端末普及率は諸外国に大きな遅れを取っている

 もはや議論の段階はとうに過ぎ、いかに実行するかの段階です。
 しかし、この会議でも、その他の関係者の集まりでも、今なお教育情報化に対する疑問や反対の声はあります。
 ここでドライブをかけなければ、日本の教育情報化は機会を失うでしょう。

 そこで、続いて以下のとおり私見を述べました。

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 DiTT5年の活動を通じて、最も多く受けた指摘は「情報化のメリット」は何かというもの。これに関し一番ショックだったのは、韓国を訪問して、先生たちに同じ質問をした時のこと。みなさん笑いながら、「またその質問か。日本人はみんなそれを聞く。そしてそれを聞くのは日本人だけだ」と言うんです。
 つまり、PCやネットが普及して20年、メリット・デメリット論などはとうに終わっていて、いつまでにどう普及させるかだ、というのです。そのとおりです。それが3年前のこと。

 効果の検証についても、よく聞かれます。既にいろんなデータがあります。文科省も実証研究を重ねてきていて、さまざまなデータを踏まえて、専門家が議論した上で、学習意欲、理解度、思考力にプラスといった総括をしています。当たり前です。
 ICTを使えば理解度が向上したという文科省の研究成果もあれば、1人1台導入した小学校で調べたところ、楽しい・わかりやすいという評価だったという総務省の研究成果もあります。
 もちろん、こうした効果検証はこれからも続けるべきです。50年でも100年でも続ければよろしい。紙の教科書でも、学習効果の研究は今も続いているのですから。

 しかし、いつ導入するかは、それとは別に、「決め」なければなりません。
 国や関係者のみなさまは、その決断の責任を負っています。
 むかし、為政者や先生方が、紙と黒板と鉛筆の導入を決めていなかったら、海外がどうあれ、今もわれわれは和紙と筆で勉強していたかもしれません。
 逆に、教科書だけ紙であることのメリットは何かを問うべき場面ではありませんか。
 映画もテレビも音楽も、そして雑誌も新聞も通常の書籍もデジタル化が進んでいます。PCとネットを使わなければ職につけない社会です。その中で、デジタル化に疑問をもつ方は、教科書だけが紙で残ることのメリットを証明すべき時期に来たと思うんです。
 
 結局、問題はコストでしょう。
 情報化にはお金がかかります。日本はGDPに占める公教育支出がOECDで最低、つまり公教育におカネが使われていない国です。かけるべきです。
 例えば年間1000億円の追加支出が必要だとしても、かつて道路予算は10兆円ありました。年数日、道路工事を休めば教育が一変する規模です。これを高いと見るか、安いとみるか。
 これは、教育政策だけでなく、国家政策全体の中で考えるべきことだと思います。

 その他、教育情報化には、いろんな心配・不安が寄せられます。
 授業が画一的になる、読まなくなる、書かなくなる、目が悪くなる。いろいろ寄せられるのですが、ほとんどはアナログかデジタルかの問題ではありません。
 紙の本でも読ませなければ読まなくなります。私の目が悪いのはPCではなくて紙の本のせいです。アナログでもデジタルでも、どういう使い方をするかで変わります。道具の使い方の問題です。
 
 最も厄介な問題は、デジタル化で教育が大きく変わることに対する漠然とした不安感でしょう。これを解消して豊かな教育を実現するには、まず導入して広めていって、先生や子どもたち、保護者たちの理解を得ていくことが大事だと考えます。   以上
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 さて、私のプレゼンは、メリット・デメリット論を超えて、実行論に移りましょう、という趣旨でした。しかしその後の議論はやはりメリット・デメリット論が中心になっていました。
 この会議がしかと方向づけができるか。大事な会議です。委員の多くも、前進させるべく参加しておられます。期待したい。後押しできることがあれば何なりと行いたい。
 ハードルは、この会議ではなく、その外にあります。文科省が「やろう」となったところで、財務省は、国会は、学校現場は、みんな「やろう」となるのかどうか。早くそちらに運動を持って行きたいところです。