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2016年7月28日木曜日

通信文化:ブエノスアイレスと大阪の巻

■通信文化:ブエノスアイレスと大阪の巻
  郵便関係者向けコラムの2です。

 

 最も遠い国の一つ、アルゼンチン。首都、ブエノスアイレス。いい空気、という意味だ。タンゴがある。マラドーナが育った。「母をたずねて三千里」で、母をたずねた。妙にそそる。

 そそられて、行ってみた。地下鉄に乗った。すると激しい既視感に襲われた。この懐かしさは何だ?えんじ色の車内を見回した。あれっ、コレ阪急電車やないか?

 そう、古い阪急の車体だった。阪急の車両が第二の人生を、いい空気で送っていたのだ。


 初めての阪急は小学校4年生だった。時は大阪万国博覧会。住んでいた京都から、確か淡路駅まで乗って向かった。こんにちは。こんにちは。世界の、国から。1970年の、こんにちは。三波春夫さんが朗々と西暦を歌い上げてくれたおかげで、あれが45年前のイベントだったことを忘れない。

 母と二人だった。チケットが今も手元にある。母のには「大人」、私のには「小人」とある。昔は子どもの券にはたいてい子どもではなく小人と書いてあった。小さい人だから、仕方がない。

 その脇には「人類の進歩と調和」と記されている。人類は、進歩するものだった。そうだボクらは進歩を当たり前だと思っていた。未来は明るかった。空をエアカーが飛び、宇宙都市や海底都市に人が住み、テレパシーで交信する。未来、早よ来い、と思っていた。

 今の子どもたちに「未来は」と問うと、核戦争とか、酸性雨とか、難民とか、身もふたもないことを言う。彼らにとって地球は滅亡に向かっている。進歩も成長もしないようだ。確かに彼らが生まれてから、日本は成長していない。彼らが未来に期待できないのは大人のせいであって、小人のせいではない。私たちが未来を提示できていないのだ。


 万博。人気のアメリカ館やソ連館は列が長蛇すぎて無理。結局、並んで入れたのは、住友童話館と、360度の映画を見せてくれたみどり館の2つ。万博は、その一度だけ。数十分で行けるとはいえ、母にも、周りの大人にも、何度も連れて行く余裕はなく、子どもだけで行くのは学校が禁じていた。
 
 阪急で河原町駅に戻った。へとへとだった。出たところの店で、二人してラーメンをカウンターですすった。うまかった。めったに外食もしたことがなかったから、リアルに覚えている。その店はいま「天下一品」になっている。

 45年前、そうやって精一杯、小人に未来を見せてくれた。おかあさん、ありがとう。ぼくはまだ小人たちに、未来を見せられていません。

2016年7月25日月曜日

知財本部:やっぱり紛糾しました〜

■知財本部:やっぱり紛糾しました〜

 次世代知財システム検討委員会。とりまとめ会合。のはずだったが、とりまとめられず、今回と次回の2回かけて落としこむ。それもまだ怪しいのですが。


 アジェンダは、フェアユース、AI、3Dプリンティング、データベース。

 事務局案。IoT、ビッグデータ、AIなどデジタル・ネットワークの発達を最大限に活用することで、新たなビジネス・イノベーションを促進するとともに、社会を豊かにする新しい文化の発展に結びつけていくための次世代の知財システム。
 これは合意。

 ネット化に対応する仕組みとしては、米国型フェアユース、英国型フェアディーリングなど柔軟な権利制限、拡大集中許諾、裁定制度の拡充、報酬請求権化などさまざまな手段を検討し、新システムを構築する方向。

 AIが生む創作物に関しては、保護策とプラットフォーム対策を検討するとともに、世界に先駆けて取り組んでいる日本の議論を海外発信する、という案。

 国境を越える侵害問題について、リーチサイトへの法制対応を進める。オンライン広告についても手を打つ。対策の実効性を高めるためにプラットフォームとも連携する。という案。

 これら事務局案に対し、委員から意見が噴出しました。その多くは、より果敢で前向きな記述を求めるものです。ぼくの趣味に合います。

瀬尾委員:著作物の基本的考え方が変化している。創作の「意思」を持たず現われる情報を、著作物とするかどうか、どう扱うかが重要。

水越委員:国際プラットフォームに対抗するというトーンの記述が目立つが、自らプラットフォームを構築・展開する、よりアクティブな方向性の政策を打ち出すべき。

喜連川委員:AIで創作が萎縮・後退するというメッセージを出すより、AIを使いこなし、高度なコンテンツを生んでいくという方向性を出すべき。

 紛糾したのはフェアユースの扱いです。
 フェアユース導入の方向性を明確にすべき。多くの委員のフェアユースへの思いを反映すべき。という意見と、アメリカ型のフェアユースには反対、という意見が対立しました。

 ぼくが言い訳しました。

「次世代知財システムを生むというわれわれの思いとミッションを書き下したい。大胆に攻めたい。一方、事務局としては慎重を要する事情がある。本委員会は通常の役所の懇談会と違い、アウトプットが知財計画に直結するため。
 

 委員コンセンサスとして思い切り書き込みたい部分もあるが、知財計画として政府が責任をもって行動すべき事項を書き込むというミッションもあるため、その連立方程式を解きたい。幸い、われわれにはあと1回議論のチャンスがある。」

 さて、収まると思いきや、最後に爆弾提案がありました。

瀬尾委員:(1970年の)制定以来、タコ足で落とし込んできた著作権法を、50年ぶりに大改正すると宣言するのはどうか。

 あちゃ〜。大好き。こういう提案。

福井委員:著作権法がお茶の間法になった。ところが、専門家が読んでもわからない法律になった。「誰でもわかる著作権法」を作るべきだ。

 あちゃ〜。大好き。こういう提案。

 さて、この提案も含め、最後、どう落とし込みますか。
 もう座長の腕をとうに超えて、事務局の思惑も超えて、結論は、時代が決める。
 そんなかんじ。

2016年7月24日日曜日

ポケモンは、ハードパワーと化すか?

■ポケモンは、ハードパワーと化すか?

狂騒曲というのは、こういう場面に使うことば。22日金曜に配信が始まって2日間、街中でポケモンが鳴りっぱなしです。
 「ポケモンGO狂騒曲」 アプリランキング1位に (日本経済新聞)
 npx.me/bT3t/octu

配信の翌日にはさっそく日本の投稿が世界トップに立ったとのことです。 
 ポケモンGO、ツイート今年最多 午前中で終業の会社も (朝日新聞デジタル)
中でも日経は熱い追っかけぶりを示し、産業としての期待感を煽っています。 
 ポケモン、兜町・日銀・国会で相次ぎ出現 東証は「ポケストップ」に (日本経済新聞)

政府も注目、官邸も即日メッセージを発しました。
 「もう見つかってるんですか...」 菅官房長官も驚いた官邸ポケモン報告 (J-CASTニュース)

イングレスの遺産が与党に加担した一方、
 ポケモンGO:自民党は「永遠の与党」? 画面に文字表示 (毎日新聞)

元民主くんも呼び覚まされることになりました。 
 自民党を「永遠の与党」と表示、政界に波紋 民進党は説明スルー元民主くんが任天堂にお願い (産経ニュース)



熱い期待に対し、心配もかまびすしい。政府はスタート前から注意喚起しています。
 政府が「Pokemon GO」に異例の注意喚起 「ポケモントレーナーのみんなへのおねがい♪」

姫路城、スカイツリーは注意を呼びかけ、
 ポケモン 初の週末で観光施設などは注意呼びかけ (NHKニュース)

熊本城は抗議し、
 ポケモン 立ち入り規制の熊本城外すよう市が任天堂に抗議 (NHKニュース)

原子力規制委員会もご登場、
 「ポケモンGO」 原発の事業者に注意呼びかけ (NHKニュース)

出雲大社は禁止です。
 ポケモン 出雲大社が境内での使用禁止に (NHKニュース)

ちまたでもさっそくこぜりあい。騒動ユビキタスです。
 ポケモン 団地に無断立ち入り 住民と口論に (NHKニュース)



やだなぁ。青少年ネット利用のときのように、官邸ドローン事件のときのように、やすやすと、ポケモンGO禁止法なんてものができたりしないだろうなぁ。社会的な不安が持ち上がると、とりあえず規制って風潮が続いているからなぁ。

だって、効用も認めてやりたいんです。暗くこもったゲームの殻を破って、みんなをオモテに連れ出す。歩き回らせて、健康にする。それはwiiがゲームを健康マシンに換えようとした、その延長です。
 麻生氏「引きこもりが外に出た」ポケモンGOで発言(共同通信)

そして姫路城や熊本城や原発や出雲大社や団地や官邸に人を呼び寄せる、街や観光地や店の賑わいをもたらす起爆剤にもなります。
ポケモンGOのエンジンであるイングレスがそうであったように。

そう、イングレスのビジネスモデルは、スマホゲームがガチャで稼ぐのとは違い、チェーン店などとの提携によるB2B。ポケモンGOも基本はそれを踏襲するようです。
 日本マクドナルド、「Pokemon GO」コラボ内容を明らかに 国内約2900店舗が「ジム」「ポケストップ」に(ITmedia)

その狙いは売上・利益じゃないんじゃないですか。インフラとして広く使わせ、ビッグデータを吸い上げて、より大きなビジネスに展開していく。イングレスをポケモンGOに展開したように、他の用途にも拡大していく。まだ見ぬ価値に結びつけていく。
 任天堂、「Pokemon GO」大ヒットも業績への影響は限定的”(CNET Japan)

運営主体のナイアンティックの狙いと、ポケモン社や任天堂の戦略が合致しているかどうかは存じませんが、このゲームが持つ価値は、目先の数字に表れないところにあって、その読み方で大きさが変わります。



無邪気に浸透し、無防備に出没する彼らは、リアルな世界に改めて厳しい目を向けさせます。意図しなくとも政治的な意味も持ち始めます。
 ボスニアのNGO、「ポケモンGO」しながら地雷地帯に入らないよう警告 ピカチュウが地雷踏むGIF動画も(ねとらぼ)

北から南に誘導するポケモンを国境付近に大量に配備する。これを阻止するため北はポケモン弾圧を徹底する。紛争が勃発する。そんな空想も許されましょう。
 ポケモンGO、北朝鮮は利用可? 境界線付近に韓国の若者殺到(北海道新聞)

かつてジョセフ・ナイ ハーバード大学教授は、国際政治上の概念として、軍事・経済などの「ハードパワー」に対し、文化力たる「ソフトパワー」を提唱し、日本はポップカルチャーの力を活かすべきと指摘しました。クールジャパン論はこれに乗って盛んになったのです。

一方、その議論には常に、「マンガアニメゲームが日本向けのミサイルのボタンを止めてくれるのか」というせせら笑いが伴っていました。

ポケモンの誕生から20年。当時ぼくはアメリカでその熱狂を見ました。世代が巡り、改めてポケモンが世界で大人気を博するのは元気が出ることです。クールジャパン再び。

ただ、今回の破壊力は、はなからエンタメの枠を超え、従来のビジネスのモデルも超え、社会をざわつかせるだけでなく、国際関係にもさざ波を立てるかもしれない。ソフトパワーがハードパワーに転化する例になるかも、なんて思いを抱かせます。


しばし目を凝らしておきましょう。

2016年7月21日木曜日

通信文化:リヨンの巻

■通信文化:リヨンの巻
  雑誌「通信文化」に、郵便関係者向けコラムを少々つづりました。いくつか抜粋します。その1。

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 日本で初めて映画が上映されたのは、京都。鴨川の脇にある立誠小学校という公立の学校だそうだ。廃校となったその建物で昨秋に開かれた京都国際映画祭で聞いた。失われた小学校で、映画という文化を遺す。なかなかやるな。美しい心意気だ。

 映画が誕生したのは、京都で上映された2年前、1895年。フランスの南東部、リヨンでのこと。リヨンの街は、ローヌ川とソーヌ川が真ん中を走り、合流する。二本の川が合流して中央を貫く京都に似ている。川の周辺をはう路地の工房で絹織物が栄えたのは、西陣を思わせる。

 その地で映画を発明したのは、オーギュストとルイ。リュミエール家の兄弟だ。マラソンの宗兄弟。野球の金田兄弟。鳩山兄弟。源頼朝・義経。いとし・こいし師匠。日本にも偉大な兄弟はいるが、フランスにもいるのだ。

 聖地を訪れよう。20世紀の世界を幸せにした映画という発明。それを生んだ兄弟は英雄だ。120年前から生まれてきたフィルムは劣化が進み、多くの作品が失われていくことが問題視されている。その文化をどう遺すのか。そして英雄たちはどう讃えられているのか。

 果たしてリュミエール兄弟のおうちと工房はしかと保存されていた。だが、リヨンの町外れにつつましく遺る建物を訪れる人影はまばらで、ちょいと拍子抜け。


 それよりも、リヨンの空港に降り立って気がついたのは、より強い光の当たる英雄がいることだ。空港名、サン=テグジュペリ。そう、「星の王子さま」の作者である。その名が玄関の冠になっているのだ。2000年に彼の100周年を記念して改名されたという。1995年の映画100周年にリュミエール空港になる、ことはなかったのだ。

 リヨン市の真ん中に位置するベルクール広場には、ルイ14世と並び、サン=テグジュペリの銅像が置かれている。リュミエール兄弟の像はない。

 思い出した。ユーロが導入される前に流通していた50フラン札。サン=テグジュペリの肖像と、星の王子さまのイラストが描かれたかわいらしいお札だった。ユーロ導入は1999年。フランが失われるタイミングで、空港名を変えたわけだ。

 日本にも夏目漱石や樋口一葉のように紙幣に描かれる文人はいるが、空港の名前に据えられた人はまだいるまい。まぁ、高知龍馬空港や米子鬼太郎空港ってのもあるから、そう遠くなく実現するかもしれんが。


 サン=テグジュペリが英雄視されるのは、すてきなお話を紡いでくれたから、だけではない。彼の本職は郵便飛行士。ひとびとの大切なメッセージを運ぶ聖職だったのだ。戦時中も危険を冒して飛行を続け、飛び立って行方しれずになったのが最後となった。

 映画に比べれば、一つ一つの手紙は、かすかな存在かもしれない。でも、一つ一つが、大切な人に向けられた、自分だけの、かけがえのない言葉。それらをまるごと抱えて、銃弾の降る夜の地中海を飛んでくれる。その仕事を英雄と呼ぶ。フランは失われても、空港を遺す。

 なかなかやるな。リヨンの心意気に、乾杯した。

2016年7月18日月曜日

知財本部:コンテンツ産業の基盤強化策

■知財本部:コンテンツ産業の基盤強化策 
 知財本部委員会。
 これまで海外展開策に力を入れてきましたが、今回は「産業基盤強化策」。資金調達、取引適正化、技術開発、人材育成が論点。

 経産省が地道な施策について報告。
 マンガ・アニメのデジタル技術開発、プロデューサ人材育成、アニメ下請ガイドライン整備。 

 総務省から興味深い報告あり。
 放送コンテンツ輸出は2010年66億円が2014年144億円に。成果大。うちアニメが55%を占め、アジアが67%を占める。

 総務省が施策効果の検証モデルを提示。10億円の予算で波及効果93億円。インバウンド53、アウトバウンド40億円との報告。

 こういうデータによる検証は重要です。

瀬尾委員:リアルをバーチャルにするだけでなく、バーチャルなコンテンツをリアルの場に展開する。制作拠点を置いて、イベントを作り、地域を活性化する。こうした組み合わせを検討することが重要。

迫本委員:市場メカニズムの基盤整備を。税・会計制度のような市場中立的な施策が重要。コンテンツは経済波及効果が大きく、かつ、文化政策・外交。広い国益という認識が重要。

 いずれも完全同意します。

竹宮委員:どういう人材がどの程度必要なのか、産業界の需要を明確にしたい。人材育成の指標が必要。

杉村委員:クルマは車種というよりトヨタ、日産、ホンダという名前で売っている。コンテンツ企業も国際的ブランディング政策が必要。

 さて、ここで想定外の大胆な提案がありました。


大崎委員:米フィンシンルールの導入策を考えるべき。制作会社の資金調達、テレビ番組の活性化のためにも有益。

 フィンシンルールというのはかつて米国が適用していた放送局規制。簡単に言えば、放送局による番組制作・保有の規制で、いわば緩いハード・ソフト分離策。放送局に枠をハメていたことがハリウッド隆盛の大きな要因だと見られています。

 日本にはフィンシンルールのような放送局規制はなく、だから放送局は制作・調達パワーを持ち、映画業界とのパワー逆転に至ったと見ることもできます。

 フィンシンルールを持ち出すことは、放送局を色めき立たせることになります。それをテーブルに出せるのは吉本興業・大崎さんしかいないかなw

 これに対し、放送局代表の重村さんが反発するかと思いきや。

重村委員:フィンシンルールのもととなるシンジケーションマーケットが日本にはない。テレビ局から制作会社に回る資金が放映権か制作権かを含め、議論する時期ではないか。

 さすが上手です。制作・流通分離を進めるには、コンテンツを流通させる市場の形成がセットとなります。それを先に整備するというアクティブな政策が大事ですね。それ、やってみたいなぁ。

 というのも、今から8年ほど前、テレビ局の番組調達規制やコンテンツ取引市場の形成は総務省で議論されたことがあったんです。結局、具体的な施策には至りませんでしたが、政策オプションとしてかなり煮詰めるところまで行きました。

 コンテンツ流通市場。デジタル特区CiPで改めて構想してみようかな。

2016年7月14日木曜日

デジタルマンガキャンパスマッチ2015

■デジタルマンガキャンパスマッチ2015

 デジタルマンガキャンパスマッチ2015 授賞式@五反田。
 実行委員長を務めました。
 受賞者のみなさま、おめでとうございます。

 デジタル時代のマンガ家の発掘・育成を目的とする学生作品コンテストです。
 今回が2回めとなります。

 前回の模様はこちら。

「デジタルマンガキャンパス・マッチ授賞式」
 http://ichiyanakamura.blogspot.jp/2015/06/blog-post.html

「デジタルマンガキャンパス・マッチ2014」
 http://ichiyanakamura.blogspot.jp/2014/11/2014.html


 昨年は1350作品、今年は2064作品の応募。
 参加校は71校が122校に増加。高校、中国・フランスからの応募も。
 参加コミックはサンデー、マガジン、マーガレット、ヤンジャンなど33編集部が36に拡大。
 DNP、セルシス、ワコムなど協賛9社。
 2回めにして成長をみせています。

 審査委員は里中満智子先生はじめ一線のプロの先生方。
 大賞、ちばてつや特別賞、優秀賞、奨励賞などが贈られます。

 大賞にはカルビ佐藤さん(大日本マンガ塾)「ジュピター」が選ばれました。
 ちばてつや特別賞には町田萌(国際デザイン・ビューティーカレッジ)「たたかいの一幕」が選ばれました。
 おめでとうございます。

 自分でやっておいて何ですが、意義のあるプロジェクトだと思います。
 マンガという日本の宝の表現文化とデジタルという技術とを掛けあわせ、人材と産業を生む。
 プロのマンガ家、学校、出版社・関係企業が手を組んでいて、大勢の若者が参加するものです。

 昨年、里中先生が指摘された2点が忘れられません。
 まず、人は育つし、学校もあるが、問題は出口だ、という指摘。プロとして羽ばたいて活躍する場と産業。われわれは入口も出口も用意しなければならないと認識しました。

 もう1つ、マンガは総合表現だということ。絵を描くだけでなく、シナリオもストーリーもある。誰もが参加できる。だからアンタも作りなさい。と言われたんですが、この宿題はまだ果たせていません。引き続き努力します。

 去年ぼくは、この取組の最大の課題は続けることと申しました。何とか2回めにこぎつけました。3回、5回、10回、100回と発展するよう、みなさんにお願いする次第です。

 里中満智子先生の業界と学生たち双方に向けた総括談話が沁みました。

「描きたい才能はまだまだある。出口を増やすことが大事。若い才能を面白がって育てよう。水を上げたり肥料をやったりすることも大事だが、育つのをじっくり待つのも大事。
 受賞したみなさんは、これが単なるスタートであることを認識してほしい。自分が何を描きたいのか、を見つめること。こう書いたらうける、採用される、と計算してしまうが、それは短い階段を登ること。長い階段を見つめよう。
 十代で輝いていたのに25歳ぐらいで諦めるケースが結構ある。ちょっとした挫折で諦めるのは惜しい。粘ってこそ手に入るものがある。粘れ。
 最初のデビューの場がダメでも、出版社はいろいろある。大丈夫。強大で怖いプロダクションがあるわけではない。個人の力だけで勝負。この世界はみな平等。一緒にがんばろう。」

 一緒にがんばろう。

2016年7月11日月曜日

2045 未来の学び おとなの部

■2045 未来の学び おとなの部
「2045年 未来の学びを考えるアイデアソン おとなの部」。
 こどもの部の翌週、デジタル教科書教材協議会DiTT主催、NPO「CANVAS」企画協力で東京・赤坂にて開催しました。
 学校の先生、関係業界のかた、一般のかた、さまざまな方に参加いただきました。

 今の学校の問題は?こどもの部と同様、まずそれを聞きました。
「教育格差」「教師依存」「創造性の欠如」「いじめ」「先生が足りない」「一方通行の授業」「画一性」「社会とのつながりの薄さ」「現場の裁量の低さ」「地域格差」「塾との分担」・・・でるでるでるでる

 4グループから提案が出されました。
 まず「バーチャルシェアハウス」。バーチャル空間で学びたいことを一緒に学べるコミュニティを作る。
 →寺子屋をITで再現するものですね。これは2045年をまたずスグ作れる案です。

 続いて「金八2045」。学習履歴やいじめモニタを実装する「金八ロイド」と、創造性・コミュニケーションを育む「リアル金八」を組み合わせる。
 →AI/IoTと人、バーチャルとリアルの組み合わせで21世紀スキルを学ぶ、というアプローチ。

「データベースプラットフォーム」。「知識を一斉に教える教育」から、一人ひとりの状況に応じて関心・体験を共有する学びへと転換する手法。
 →先生の役割が、知識の伝授から、サポート、ファシリテートへと変わることを意味します。

 そして「ロボットコミュニケーション」。人間はロボットに危害を加えない、といった新三原則を作り、ロボットと共存しながら学ぶシステム。
 →こどもの部で一人1台ロボットという案がありました。必須アイテムですね。

 さて、こどもの部と比べてみると、さすがおとなです。「空中に絵を描けるクレヨン」「最強スーツ」「すべり台で登下校」といった技術者を困らせる案はありませんし、「先生がいない学校」「授業がない学校」といった先生を困らせる案もありません。

 その分パンク度は低く、2045年を待たずともスグ開発できそうな教育環境が並びます。こういう場に参加するかたがたは、デジタルのデメリットから入って、できない理由を並べる性質の連中とは違って前向きなので、スグ一緒にやりましょう、と言いたくなります。

 ただ、まとまった提案に至らずとも、なるほどもっと煮詰めたいというアイディアもたくさんありました。例えば「1人1データベース。」学習履歴、関心事項など生涯にわたって使うDBを作り、それをマッチングしたりビッグデータ活用したりするのは重要課題になりそう。

 知識を脳にダウンロードする。それが可能になれば、例えば「100テラ1000万円東大パック」などのビジネスが発生するという意見。
 →可能になるでしょうし、膨大な教育ビジネスの未来が予期できます。基本パック無料版は、税金で手当て?

「ヒトラーと一緒にものづくり」というアイディアを出した女性がいました。反社会的な人や歴史上の怪人、つまり考えや生き様の異なる人と擬似バーチャルで交わって考える学び。
 →2045年には可能になっているでしょう。そしてこの構想は具現化する価値があると思います。

 共通するのは、「知識を授ける」教育は機械に任せればよく、必要な学びはもっと別のところにある、という考えですね。そしてそれは、創造力やコミュニケーション力にとどまらない、もっと強く「生きる力」といったものなのでしょう。

 震災後の停電で、平気で楽しく過ごしていた子と、パニックになった子の差は何か。AI・ロボット社会になった後の生き抜く力とは何か。と問題提起する人もいました。おとなが考えるべきは、そういうことでしょう。

 10歳で限界集落暮らしをさせ、また学校に戻し、15歳で社会に出し、改めて学び直させる、それをAIでサポート、という案を出す人もいました。その趣旨や設計の可否はともかく、「学び直し」「生涯学習」を重視する点は共有。

 30年後の学び。「ダイヤル回して手を止めたから30年ですからね。」との声。そうか、あれは通信自由化の頃の歌だ。湯川れい子先生作詞だ。これから30年、どう変わっていますかね。
 引き続き考えていきましょ。

2016年7月7日木曜日

バンコク4年ぶり

■バンコク4年ぶり
前回バンコクに来たのは2011年10月。この4年でデジタルサイネージが爆発的に増えていました。前回は探さなければならなかったのに、今回はうるさいぐらい。東京を凌ぐ電脳都市。


トイレ、洗面台の鏡に仕込まれたサイネージ。トイレの活用は羽田空港の個室やセガのトイレッツなど日本に先行モデルがあるが、この真正面さは新しい。
 


すしおにぎりデジタルサイネージ。
街でおにぎりを食う人をよく見かけました。コメ食う人々には親しさを覚えます。
 


和食とデジタルサイネージは相性がいい。
和食が美しいからです。
高精細で見よ、和食。
 



TCK会場付近にフードコート「88食堂NIPPON」がオープン。今回の目当ての一つ。
寿司小松、ぷれじでんと千房、麺屋武蔵武骨、日本橋だし場、グリル満天星、焼きとりの八兵衛、WIRED CAFE、COOK COOP BOOK。
 
そう、「88食堂NIPPON」はカフェ・カンパニー楠本修二郎さんのプロデュースなのです。

WIRED CAFE。コーヒーがとてもおいしい。
180円ぐらい。 
毎日来たいなぁ。赤坂にできないかなぁ、88食堂。
 


タイのマンガは日本テイストです。
日本マンガで育った世代が描き手に成長してきているということかな。
 








でも国王マンガやムエタイマンガというジャンルはタイならではですな。
 




もちろん日本のマンガも本屋さんにはたっぷりあります。
 



タイの一流大学、チュラロンコン大学の売店にはワンピースのコーナーがあります。みんな、よく学べよ!
 



KMD研究員、モーニング編集部北本さん担当のチーズスイートホーム、「チー」の巾着袋。
これって無許諾?ひとまずみやげに買って帰ります。
 


前回訪れたのは4年前、大洪水のさなかでした。
日本企業全員撤退の中、水が押し寄せてるのに市場は何事もなく営業していて、大人も子どももみんなとても楽しそうで、つられてぼくもここに座ってメシ喰いました。(当時の写真です)
 


食堂のおばちゃんがビーサンに履き替えたから大丈夫!と金歯を見せて笑っていたのが忘れられません。この国スキ、と思いました。でも今回来てみたらそこはキレいに撤去されてました・・・(当時の写真です)

 

今回も一つ残念だったのは、激辛つけ麺ばくだん屋が撤退していたこと。前回は一人で入店して全く言葉が通じず、50倍を遥かに超えた辛さのブツを2杯食わされた。一生に残る思い出。(当時の写真です)

 

もっと残念だったのは、バラック建ての電脳ゲーム市場「サパーンレック」が取り壊されてしまっていたこと。おびただしいフィギュア、アニメ、マンガ、ゲーム機、ラジカセなどヤバいもの満載、日本の業界が目の敵にしていましたが、きれいサッパリぽんでした。(当時の写真です)



古いゲーム機やコントローラーやラジカセを古い工具で修理していたおっちゃんたちは、どこに行ってしまったんでしょう。(当時の写真です)
 



タイ人?うん知ってるよ。
ポーン・キングピッチ(F原田、海老原博幸)、ベルクレック・チャルバンチャイ(大場政 夫)、チャチャイ・チオノイ(大場政夫)、センサク・ムアンスリン(ライオン古山、ガッツ石松)、パヤオ・プーンタラット(渡辺二郎)、カオサイ・ギャラ クシー(松村謙二)、タノムサク・シスボーベー(鬼塚勝也)、ウィラポン・ナコンルアンプロモーション(辰吉丈一郎、西岡利晃、長谷川穂積)。




ボクサーの名前ばかりスラスラ出る。が、他に知らないや。街角に流れる国家が耳に馴染んでいるのも、日本人と対戦したタイトルマッチのおかげだね。4年前に会ったムエタイ戦士を目指す彼、大きくなったかな・・。(当時の写真です) 






デジタルが浸透して、清潔で美しくなるバンコクがゴチャゴチャして臭いバンコクを捨てゆくのは、臭くて怖かった大阪・新世界が「正規化」していくような寂しさを覚えますが、それはよそ者の視座。
 








でも勝手な旅人としては、異臭たちこめる市場でぬめぬめしたナマズをさばき、ガチョウや鶏のクビを締めてハエのたかる肉を売る東南アジアの風情をできるだけ残しておいてほしいと思う次第です。


2016年7月4日月曜日

2045 未来の学びアイディアソン

■2045 未来の学びアイディアソン


「2045年 未来の学びを考えるアイデアソン」。
 デジタル教科書教材協議会DiTT主催、NPO「CANVAS」企画協力で、東京・赤坂にて開催しました。

 1人1台、クラウド、SNSによる「スマート教育」がなかなか実現しない中、もはやデジタル技術はビッグデータ、IoT、ロボット、AIへと急進しています。未来の学校、未来の学びをどうデザインするのか。想像と創造が今こそ求められます。

 

2045年、人工知能が人の力を超え、自立していく。
いわゆるシンギュラリティ。
その時代を見据えて、学校を、教育を、学びを、考えてみよう。

 まずは子どもの部。

 30人の子どもたちが未来の学校や学びの環境を出し合ってもらいました。

 今の学校に不満は?まずそれを聞きました。
「給食がマズい。」「体育館が寒い。」「学校が遠い。」
 うん、それは切実ですな。
「ケータイやタブレットが使えない。」「教科書が重い。」
 うん、デジタル屋が仕事します。

 「先生が自分勝手だ。」という声も。「エアコンをつけるかどうかを勝手に決める。」「おかわりを食べてしまう。」「漢字を間違えると合ってるのも書き直しさせる。」「自分が忘れ物をする。」先生、ワークショップってのを開くと、こんな声があふれてくるんですよ。



 

こんな思いを解消しよう。
まず提案されたのはデジタル教育。
「全員タブレットは当たりまえ。」
「マンガ・ゲームで勉強できる。」
「みんなのノートを共有する。」
「有名人と勉強する。」
「昔の人とiPadで歴史を学ぶ。」

 

「理科室ならぬ「社会室」では、世界360度で世界が見られる。」
「空中に絵を描けるクレヨン。」
「思ったものをタブレットが書いてくれる。」
 うん、このあたりなら実現できると思うよ。
「勉強しなくても頭に入る機械。」
 キミたちは頭に入れる必要さえなくなるのかもしれないよ。

 

「世界の先生とバーチャルでつながっている。」
「先生がいない学校。」
「授業がない学校。」
 MOOCsが当たり前ってことだよね。学校がいらなくなるね。
「実際にコミュニケーションするために学校があるんです。」
 学校は対話と共創の場。子どもは、わかっています。



ロボットを求める声、多数。
「1人1台ロボット。」
 そうか、PCよりロボットか。何をさせるの?
「そうじしてくれる。」
「給食を配る。」
「ドローンで配膳。」
「休んだとき学校に行ってくれる。」
かなりこき使うつもりだな。

 男子はスポーツ系も。
「絶対打てるバット。」「速く走れるサッカー用ブースト。」「キーパーの手がデカくなる。」
このあたりは超人スポーツ協会としても話をうかがいたい。

「最強スーツ。スカイモード、アクアモード、スノーモード、ダークモードがある。ダークモードだとオーラが出る。」
オーラ出したいわぁ。

移動革命を論じる者、多数。
「ワープしたい。」「風船で飛んでいける。」「家の前に学校が現れる。」「ロボットに乗ってく。」
東京の子たち、私学の子もいて、学校が遠いというのが切実みたい。

 

 「すべり台で登下校。」
あ、これ、ケツが痛くなってもいいからぼくも大学までそうやって通いたいっていつも思ってる。

気が合うな、キミ。

「給食を選べる。」「ハーゲンダッツが出る。」「体育館が床暖房だ。」「男子が女子トイレに入るとブザーが鳴る。」
 なるほど。毎日のリアリティーの中から出てくる貴重なコメントだ。

「排気ガスを吸ってくれる。」「ゴミを分別する。」
 こういうコメントが多かったんだけど、ぼくらの頃には思いつかなかったな。空気はぼくらのほうが汚れていたけど。
 エコ志向ってのは、ホントにそれを願っているの?大人の顔色をうかがって言ってるんじゃなくて?

「ダメな先生を訴えると、放課後その先生はセンターに送られて、優しい先生になって帰ってくる。」
 恐らくこれが最も連中のニーズが高い未来。恐ろしや。
 Les Enfants Terribles!