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2016年9月29日木曜日

ヒューマニティの拡張、という一席 (前)

■ヒューマニティの拡張、という一席 (前) 
  SXSW@オースティンに参りましたら、JAPAN HOUSEという座敷がしつらえてございまして、マツコ・デラックスさんのアンドロイドを作っている大阪大学石黒教授らの前座で、「ヒューマニティの拡張」というお題で一席やれやというので、お応えしてきました。前後編に分けて。
 ちゃかちゃんりんちゃんりんちゃんりんちゃんりんでんでん。
ーーーーーーー

 ヒューマニティを技術がどのように拡張できるのか、精神や身体をどのように拡張できるのか。

 ぼくは30年以上前、少年ナイフというバンドのディレクターをしながら、音楽表現を拡張することに挑んでみました。その頃から始まったデジタル化は、人の可能性を拡張しました。今から15年前にはMITメディアラボで、セガ・ドリームキャストやロボットペット・プーチの開発で、スマートデバイスやAIの開拓に挑んでみました。

 当時もうウェアラブル、AI、ロボット、IoTという技術は展望されていました。それがようやく普及段階を迎えます。スマホやネットやソーシャルメディアが広げた精神と身体は、15年を経て、新しい段階に移ります。

 その間、ぼくはスマートメディアがどのように人の精神、パッション、表現を広げられるのかに関して、日本で活動を続けてきました。日本という場は、ティーンエイジャーが中心となって、ITを使いこなし、世界一の情報発信拠点となっていますから。

 初音ミクは3つの要素から構成されます。1つは技術。作詞・作曲すれば歌ってくれるボーカロイドというソフトウェア技術。もう一つが、表現。カワいいアニメ・キャラクターを作り、開放した文化です。

 そしてもう一つが、これをソーシャルメディアでみんなが参加して育てたこと。絵を描いたり、歌ったり、演奏したり、踊ったり、自分ができることをみんなが投稿して育てました。日本が今描いている戦略は、この技術と、表現と、ネットでの参加、という3つの要素を使って、海外展開することです。
 

 しかしポイントは、技術が次の段階に進んだということです。IoTでクルマの自動走行ができるようになります。自動車産業だけでなく、ビジネスも、ライフスタイルも変わります。ロボットとAIで仕事の半分が機械に置き換わるという話もあります。既に金融取引の7割はAIが行っているといいます。

 もうsiriはぼくより物知りです。スマホのバーチャル秘書は、もうぼくより賢くなります。ならばスマホ同士で話してもらえば仕事は済みます。仕事が機械に奪われて怖いという人もいますが、ヒマになったらぼくは何をすればいいかを考えておかねば。機械に置き換わらないものは何でしょう。

 その一つがスポーツです。自分で体を動かして、汗をかくから楽しい。ロボット同士が戦っているのを見てもあまり興奮しません。技術で新しいスポーツを作りましょう。
 そこで、2020年に向けて、ぼくらは「超人スポーツ」というプロジェクトをスタートさせました。

 ドイツ人のマルクス・レームさんは、義足の走り幅跳び選手。ロンドンパラリンピックで金メダルを獲得しました。昨年10月、8m40cmの記録を打ち出しました。ロンドンオリンピックの金メダルは8m31cmだから、それを超えています。

 リオではパラリンピックのほうがオリンピックより高い記録が出るかもしれません。義足や義手の技術が健常者を上回る時代が来ました。

 オリンピアン、パラリンピアンはどちらも超人です。だけど、ぼくも超人になりたい。キミもそうでしょう。幼いころ、草むらで、ふんばって、手の先から「かめはめ波」を出そうとしたことがあるでしょう。それを技術で実現したいと思いませんか?

 人類は技術で身体を拡張しようとしてきました。まず、手足を拡張しようとしました。杖、義足、浮き輪、船、自動車、飛行機、ロケットを作りました。遠く、速く、行けるようにしました。

 視聴覚を拡張しようとしました。メガネ、補聴器、スピーカー、電話、テレビ、ネットを作りました。遠く、速く、コミュニケーションできるようにしました。

 そのように人類は、外へ外へと身体を拡張しました。今度は、それらの技術を全て自分の身体に取り込んで、拡張した身体とは何なのかを問う番です。その一つの答えが「超人スポーツ」です。

 超人スポーツは、ITやロボットなどの新しい技術を身体に取り込んで、人と機械が融合したスポーツ。水の上を走る、空中でサッカーする、といったことをやりたい。サッカーも、ラグビーも、野球も、19世紀の農業社会にできた。21世紀、情報社会のスポーツを作ろう。

 

誰でもスーパーな義手義足やスゴい車いすで超人になれる。機械を身につければ、子どもがウサイン・ボルトより速く走れる。道具も作りたい。ぼくでも魔球を投げられるボールを開発したい。何kmも先の的を射抜くアーチェリーの弓矢を作りたい。

 スポーツの観戦方法も開発したい。マラソン選手一人ひとりの上にドローンを飛ばして、見たいランナーの映像を追いかけることができるといった具合に。

 これを推進する組織として、「超人スポーツ協会」を1年前に設立しました。ぼくは共同代表の一人です。協会の活動は3つ。超人スポーツをplanして、playして、promoteすること。

 協会の目標は、2020年の東京オリンピックに合わせ、超人五種競技の国際大会を開くこと。
競技人口も増やします。これまで、ぼくらの超人スポーツを体験してくれた人は1000人ぐらいですが、それを1万倍に、1000万人に増やしたい。

 協会には、ロボティクス、スポーツ科学、ゲームなどの科学者が集まっています。アーティストやアスリートも参加し、企業も参加したコミュニティを作っています。

 さまざまなバックグラウンドを持つ方々が集まり、「超人スポーツハッカソン」を開催して競技を開発しています。 (つづく)

 

2016年9月26日月曜日

超ヒマ社会の制度設計を求む

■超ヒマ社会の制度設計を求む

 AIがもたらす超ヒマ社会。
 働くこと以外の生き方をみつけなければいけません。
 することはたくさんありましょう。飲食。恋愛。芸術。学問。奉仕。

 ぼくらの一つの解が「超人スポーツ」。スポーツは自分で汗をかくから楽しい。ロボット同士の対戦を観戦しても興奮しない。AI・ロボット後も人類に残される業務であります。だから、新しいスポーツを作って楽しもう、というもの。

 とはいえ、全ての仕事がAI・ロボットに移行することはありますまい。予測どおり、半分ぐらいが奪われる、と考えてみましょうか。
 すると、その超ヒマ社会が経済システムとして回るのか、が巨大テーマとなります。


 彼らが半分の仕事を奪うということは、半分の生産を引き受けてくれるということでしょうが、じゃあぼくたちが半分働かなくなって、世の中の生産量やGDPが変わらないとして、それで世の中が回るのか。生産論よりも分配論の問題かもしれません。

 その一つの回答案がベーシックインカム(最低生活保障、最低所得保障)です。

 働いているか、いないかに関わらず、国民全員に生活に必要最低限のお金を支給するこの制度は、社会福祉コストが増大する超高齢化社会に向けた大胆な政策プランとして注目されていますが、AI・ロボットの台頭も影響しているのでしょう。

 2016年6月、スイスがその是非を国民投票にかけました。月額で大人が2500スイスフラン(約27万5千円)。外国人にも支払う案でした。最低生活保障を導入する代わりに年金や失業手当を廃止する提案。反対約8割で否決されました。議論が生煮えで政府も反対だったんです。

 しかし、可能性のある制度だと思います。社会保障システムをまるごと変える大胆な策だけに、成り立つのかの分析が必要です。まずはいくらのベーシックインカムなら社会保障廃止が実現できるのか、の数式ですね。

 その上で、全ての人に最低所得を渡すことが労働意欲に与える影響と、それが経済にもたらす影響。これが成り立つなら、AI・ロボットが仕事をしてくれても結構、働くヤツは働くさ、となるかもしれません。

 これに関し、中央大学の森信茂樹教授がデータを踏まえた論考を提示しています。
「人工知能に仕事を奪われる人々を、ベーシックインカムで救おうという議論の現実味」

 一人当たり月10万円弱の給付額として、60兆円ばかりの課税が必要という答案。データを用いて、財源調達などの政策論にも踏み込んだ点はさすがです。こうした論考をたたかわせ、AIという技術と、社会経済との折り合いを考える。理系・文系の「学」の出番です。

 こうしたAI社会をどう実現していくのか。
 マレー・シャナハン「シンギュラリティ」は、大きな社会的・政治的意志が必要、とします。
 AIの未来に悲観・楽観であるとを問わず、そうであることに同意します。そしていよいよそういう議論と判断が必要になっていると考えます。

 「シンギュラリティ」は、デジタル・パーソナルアシスタントの可能性をにらみ、AIへの権利、人格を与える議論を進めています。これは日本政府・知財本部で赤松健さんがAI人格論を持ちだしたことを想起させます。

 しかし、AIの人格に関しては、AIが複製・分割・結合されることとの関係をどうみるか。市民権が国にヒモついてきたことをどうとらえるか。筆者はそう指摘します。制度設計は超難問です。

 脳のエミュレーションから高じて、精神のアップロードに話は及びます。これは生命延長装置の誕生を示唆するものです。筆者はその可能性と危険性を丁寧に論じます。

 AIはまだ技術論の段階ですが、実装を展望し、社会、経済、政治、哲学、宗教などの知見を総動員することが求められます。研究者=彼らから、みんな=ぼくらの問題になりました。


 仕事のなくなる社会とベーシックインカム。経済学・政治学などの知恵を国際的にたたかわせて、現実的な仕組みを考えてもらいたいものです。

2016年9月22日木曜日

マカオは燃えているか

■マカオは燃えているか
ラスベガスは世界一インチキです。
砂漠に電飾の楼閣をえっちらおっちら建て、夢のハリボテを作ります。全米の田舎者が訪れます。堂々とした嘘。モナコの気品なぞ糞くらえ。
それに引き換え、マカオは慎ましい。
 





マカオは西洋の二番煎じですから。
後ろめたいですから。
パリやベネチアを模倣したラスベガスをまた模倣したりする、その嘘の二乗に、決して王座など狙わないという謙虚さを見ます。
 



だからデジタルサイネージもどこか慎ましい。
街中ギラギラと主張するラスベガス、上海、シンガポール、バンコクに張り合うような仕掛けはみられません。
図体がでかいだけです。
 


1999年に共に中国に返還されたとはいえ、華々しい香港には引け目を感じます。
親の違いでしょうか。
1887年、アヘン戦争のどさくさにポルトガル領とされた頃には、もう宗主国は没落しており、その後も覇権を握ったイギリスとは、後ろ盾の強さが違っていました。
 


その分、異国情緒では負けません。
南蛮と多湿のアジアとが同居し、500年もの歳月をかけて結合してしまった、よそにはない空気が漂っています。
 


中国にある、ポルトガル植民地の、インド人警官のために、イタリア人建築家が、アラブ様式で作った建物。
それは、奇跡ではあるまいか。
 



それよりもぼくは、裏側に目を奪われます。
さびれたリスボンの路地裏を思わせる光景は、暑くもないのにねっとりと汗をしたたらせる湿気もあいまって、長い間ゆっくりと没落してきた哀しさをたたえます。
好きです。
 




室外機。洗濯物。室外機。洗濯物。漢字とアルファベットの看板。物乞いのばあさん。停電。停電。横を全力疾走するジャージの女子高生。ドドドドド、キューン。ドリルの音。作っている。壊している。90度腰が曲がったじじい。
 


うちわほどの大きさの包丁で、いや、鈍器だ、おばさんが豚の頭を砕いている。顔は横を向き、同僚と楽しく語らいながら、ニコニコと豚の頭を砕いている。脳みそも売ってくれる。この赤い世界、美しい。
それにおばさんは気がついているのでしょうか。
 


8つの広場と22の建造物が世界遺産に指定されています。
これだってそうです。
世界遺産?ああ、ウチにもあるけど何か?  
うん、それでいい。
 


ところがマカオ、景気はいいのです。
カジノ経営権の国際入札で外国からの投資が相次いでいます。
カジノ売上はラスベガスを抜いて世界一になったのだそうです。
チャイナマネーが入っているのだそうです。
ホテル建設ラッシュで槌音が響き渡ります。
 


町外れのマンガ店で日本のカード対戦にうつつを抜かす諸君。
教育・医療は無料で、世界一長生きとされるマカオの若者諸君。
隣の香港は学生がきな臭くなっているが、キミたちは大丈夫か。
 




まぁ、

祈っておきましょう。

2016年9月19日月曜日

超ヒマ社会を待ち望む

■超ヒマ社会を待ち望む

 AI、IoT、そしてロボットを含む超スマート社会、第4次産業革命やSociety 5.0と呼ばれるものには不安がのしかかっています。

 AIがHALのように暴走するのではないかという不安。既にbotがヘイトを吐く事例も世間を賑わせています。

 ロボットが人にケガをさせる事件も、ロボットが殺人をはたらく事例も発生しています。

 何よりも不安を高じさせているのは、AI、IoT、ロボットの普及で半分の仕事が奪われる、という説です。いくつもの有力な研究がそう予測しており、信ぴょう性を帯びています。既に金融取引の7割をAIが担っており、その徴候は現実となりつつあります。

 ただ、古い仕事が失われても新しい仕事が生まれるというのが経済学の教え。ブリニョルフソン=マカフィー「機械との競争」も、産業革命時のラッダイト運動を引き合いにして、長期的な楽観論を見せています。

 産業革命の第一ステージ=蒸気機関も、第二ステージ=電気も、多くの労働者を生んだ。産業革命の第三ステージ=コンピュータとネットも長期にはそうだ。と説きます。

 どの仕事が近いうちになくなるか、を煽る本もあります。競争力を失う仕事を考えるのは簡単です。一方、新しく生まれる仕事を想像するのは大変。今ない仕事ですから。これを創造する力が人類に問われます。AIが創造してくれればいいんですが。


 しかし、AIとロボットは、本当にわれわれの仕事を増やすのでしょうか。人に置き換わって働く頭脳=AIと身体=ロボットは、これまでの技術と違い、ホントに仕事を減らすだけ、ってことはないでしょうか。

 鍬で耕作していた農民が、トラクターを得て農薬を得て、うんとラクに大量の農作物を作るようになった。AIとロボットが全てそれを肩代わりして、何もしなくても収入を得る。仕事が奪われるというより、仕事から開放される。その意味合いが濃いのではないでしょうか。

 てゆーか、そっちに期待してるんですよ。

 子どものワークショップでは、「AIとロボットで半分の仕事が減ったら、倍の仕事をさあ作ろう、未来の仕事は何だ?」なんてことをぼくは語っているのですが、実は、働かなくてもいい社会ってのはどんな風情だろうってのが気になるのです。

 超ヒマ社会です。

 マレー・シャナハン著「シンギュラリティ」。認知ロボット工学者が説くAIの展望。脳科学やロボティクスのアプローチでAI技術を丁寧に分析します。脳のエミュレーションやコピーなどの生理学・情報学的な分析をたっぷり踏まえてから、AIの及ぼすインパクトを論じます。

 筆者はこう説きます。
 有給労働の総量は今後、確実に減少していく。製品とサービスが経済的な底辺層にも行き渡る豊かな時代。教育が与えられる平等な時代。空前の文化表現の時代となる。

 そう願います。

(来週につづく)

2016年9月15日木曜日

オースティンの子ども施設

■オースティンの子ども施設 
テキサス州オースティンにある子ども向け施設、3ヶ所の訪問メモです。

子ども博物館・体験館「Tinkery」。アメリカの子ども施設はボストン、シカゴ、NY、SF・・あちこち見て回りましたが、ここ、出色です。

 






ものづくりあり、理科体験あり、ワークショップあり、お店やさんごっこあり。

 



ガラスにお絵描き。

 





子どもに鉄板の水あそび。
やりだすと離れないんですよね。

 



色使いに気を配っている点がいい。
大事です、色。

 



外で思い切り遊べるのはテキサスらしい。
一日中いたくなる場です。

 








ボンゴボンゴといういい音が鳴るんだよね。

 








コマ撮りアニメ製作。
こういうデジタルものは少なくて、アナログに体を使う出し物が多い施設でした。


 

テキサス科学技術博物館。
町外れまでクルマ飛ばして来ました。

 




15ドル。
なのに、そりゃないだろう、という何もなさでした。

 


 まあいいか。
テルミンいじったし。

 




自然科学博物館。
大きな公園の中にあります。

 






テキサスらしい施設でした。
荒野の少年イサムはこんなところで育ったのかな。

 


すっぱいハム・すっぱいキャベツ・すっぱいパンのサンドイッチと、しょっぱいホワイトソースのかかったハンバーグをいただきました。
これでいいアメリカ人は幸せだと思いました。

2016年9月12日月曜日

超スマート社会の空想を求む

■超スマート社会の空想を求む

 AIの開発競争で日本が出遅れたという記事が目立ちます。IBM、Google、Appleなど米企業がAI研究に先行している、日本政府は「人工知能技術戦略会議」を置いて開発に檄を飛ばすが手遅れでは、といったトーンです。

 人工知能の開発は80年代の加熱がしぼんでから日本は静かになり、ぼくが90年代末にMITメディアラボにいたころもAI一派がブイブイいわせていたものの、日本企業の関心は薄れていました。

 ここに来てディープラーニングで再び火が点いて、慌てたころにはもう税金で大学が取り組むレベルではなく、米企業が兆円単位の資金を投ずる競争になっていました。日本の出遅れは大学の人材問題ではなく、企業の投資問題です。

 勝機があるとすれば開発面ではなく利用面でしょう。IT・モバイル技術の利用で女子高生が絵文字や写メを文化にしたように。米国産技術の利用でTVゲーム産業を産んだように。

 ポップカルチャーなどの得意分野で、あるいは福祉・介護や防災などの日本が課題先進国として取り組むべき分野で、新技術を先導的に取り入れて、産業・文化を産めばいいと考えます。

 そして政府は、AIを積極的に利用するよう誘導する。まずは審議官ポストをAIに与えるなどして、政府自らAIを使うぐらいの本気度を示すのがよろしい。


 ただ、AIを投資と売上の対象として見るのは大事ではあるけれど、それでは大勢を見誤ります。

 AIやIoTを「第4次産業革命」=Industry 4.0と呼ぶならわしとなりつつあります。1次:軽工業、2次:重工業、3次:情報産業に次ぐものだというのです。

 だが、これは「産業」革命なんでしょうか。そりゃ産業が真っ先に革新されるでしょうが、文化や社会にもたらす影響のほうが大きいのではないでしょうか。

 第3次と位置づけられるITにしても、ぼくらにとって産業革命だったんでしょうか?それ以上に文化革命ではなかったですか?IT産業の成長や業界のIT化よりも、誰もが情報装備し、情報発信するようになった変化のほうが大きいと思うんですが。

 17世紀の産業革命が300年に一度の変化だとすれば、ITによる情報革命は1000年に一度の表現の革新だと思います。AI/IoTは人類が到達したことのない、10000年に一度の革新ではないでしょうか。それを「産業」に押し込んでは、戦略も過小なものになりはしませんか。

 そこで日本政府は第4次産業革命と並び、超スマート社会への取組を「Society 5.0」と称することにしました。1:狩猟、2:農業、3:工業、4:情報に次ぐ5番目の「文明」変革だというものです。このほうがAIやIoTの間尺に合います。

 今回、情報通信白書2016は、ITの消費者余剰に着目しました。ITの価値はGDPでは測れない。産業の売上が大きくならなくとも、利用者の金銭・時間・心理的な効用は大きい。それは産業の価値を超えて、社会・文化を含む、文明としてどうとらえるかの問いでもあります。

 AIが投資や売上にどういうインパクトを与えるか、よりもAIに期待することは、AIが文明をどう揺さぶろうとしているのか。それを測る指標を持って、対策を立てたい。ですが、その取組はようやく始まったばかりです。


 こんな話はむかしからあります。
 郵政省に「ニューな茶のみ環境を考えるハイエージメディア対策本部」という研究会がありました。ネット前夜の1992年。脳のダウンロード、表象のみでのコミュニケーション、盆栽翻訳通信などを展望しました。
 いとうせいこうさん、しりあがり寿さん、AV女優の豊丸さん、宜保愛子さんらが委員で、ぼくが事務局。不謹慎だと週刊誌に叩かれもしました。
しかしこれは、ネットの登場を目前に感じつつ、技術と社会の変化を空想する試みでした。
 まだ政策立案が自由だった時代です。

 ネット社会が見えてきて、ITの普及を産業革命とみるか、より大きな社会経済の変化とみるかで青臭い議論もありました。ぼくが20年前に著した「インターネット、自由を我等に」は後者に立っていましたが、コイツ何言ってんだという評価でした。
 90年代後半にぼくは政策現場を離れてMITメディアラボに参加します。そこではAI、IoT、ロボティクスがメインテーマでした。当時もそれがどんな可能性を持つか、大いに空想しました。15年たって、その空想が実装されようとしています。

 改めて、空想が必要です。
 15年前は技術の空想でした。

 いま欲しいのは、それが実現した後の社会経済の空想です。

2016年9月8日木曜日

SXSW、見参。

■SXSW、見参。
  SXSW@テキサス・オースティン。 初めて伺いました。
 音楽、映画、インタラクティブの3部門からなるイベント。最近は教育やエコも追加されました。TwitterやFacebookが世界的なサービスに成長したきっかけと言われています。アメリカに発信する、ないし技術を売り込む、にはいい場です。

 

クリエイターとイノベーションの祭り。87年にインディーズの音楽祭からスタートし、94年からデジタル系に拡大、10日で10万人を集めます。CESやカンヌのような商業色は薄く、草の根オープンな学園祭的イベントで町おこしに成功した例として語られます。

 

注目したのはインタラクティブ部門。VRやロボットに熱気があります。
ただぼくは2000年のネットバブルをはさんでの西海岸・東海岸の狂乱を見て、熱烈なアメリカは斜めに見るクセがついていまして、さてこれも冷静に眺めなければ。

 

アメリカの大学が出しているブースに注目しようと思ったんですが、さほど収穫はなし。
ジャニス・ジョプリンやロジャー・クレメンスを輩出した地元、テキサス大学は不参加かな?

 




英、独、台湾などが国ごとにブースを出していました。
ブラジル、アルゼンチン、メキシコが出しているのもテキサスという地理的な特色かな。
この点、日本は国としては淡白でした。

 

日本は大学や公的機関がコーナーを構えていました。
東大の卒業生などによる出展を川原東大准教授に案内してもらいました。
KMDもちょいと出展。
みなさん遠いところお疲れさま。


どーもくん、バンコクのTokyo Crazy Kawaiiでお会いして以来ですね。
ここでも「NHKクールジャパン」オンエア中。よろしく。

 

ソニーのIoT学習システム「MESH」がデジタルコンテンツ協会DCAJのブースにありました。
往年のソニーらしいイノベーティブさを感じさせる商品です。

 





手ぶらで、周りの音を聞きながら音楽を聴いたり、音声指示で写真を撮ったりできるソニーのウェアラブル。
試作段階で公開し、ユーザの声を商品化に反映させるという。
その場としてSXSWはいいですね。
これもソニーらしい。力が戻ってきたかな?

 

サムソンはアメリカ最大の開発拠点をここオースティンに置くだけあり、プレゼンスも高い。
開発中のVRヘッドセットには長蛇の列ができていました。

 

韓国は政府・コンテンツ振興院KOCCAが大きなブース。
いつも熱心な組織です。
デジタル特区CiPと連携できないか、いま協議しているところです。

 

外の建物を借り切って日本をアピールしていたJAPAN HOUSE。
阪大・石黒教授(右)がアンドロイド(左)とともにご登場。

 

NTTの研究所がアソビシステムのコンテンツで3D展示。
等身大3D映像伝送を目論んでいるが、それをわかりやすく表現するためこうした、とのこと。
ポップ+テックこそがニッポン。がんばって!

 

オレ様がしばし乗り回していたトヨタEVのiROADがここにご出張。
オースティンの街を乗り回して見せびらかしたいな。


ぼくは「身体の拡張」に関するプレゼン。超スポとデジタル特区CiPについて。
ありがとうございました。

 SXSW、熱気ではCANVASのワークショップコレクションのほうがあるし、街の活気では普段の渋谷・秋葉原のほうがスゴい。
 ならば小規模でいいからこれを毎日CiPで開きたい。
そう思わせてくれたのが収穫であります。

2016年9月5日月曜日

新インフラ投資戦略を求む

■新インフラ投資戦略を求む

 7月12日付け日経新聞・経済教室に、柳川義之東大教授が「ITの進展、投資にも変化」を寄稿しています。重要な指摘であり、ぼくはしばしその切り抜きを手元に置いて、意味を咀嚼していました。

 論旨はこうです。
1) ネット、アプリ、SNSなどのITがベースとなってシェアリングやブロックチェーンが盛り上がりを見せている。グーグル、アマゾンなどがAIをオープン化し、関連サービスが開発されている。

2) これら新技術は投資を促すインフラ。こうした新種のインフラが重要であり、ITAIは新インフラを生み出すエンジン=インフラのインフラとなる。

3) 新インフラは民間企業が担い、変化・発展させるという特徴を持つ。優れた新インフラへの投資を高め、利用する新ビジネスを増やすことが戦略となる。


 この論考は、公共経済学の刷新を促すものです。道路、空港、水道、電力などインフラ=公共財はビジネスとして成立せず、国、自治体、公益法人など「公」の役割とされてきました。税金+利用料でまかなってきました。

 新インフラは純民間企業が無償で提供します。規模の経済を働かせることで、派生ビジネスから対価を得るとともに、顧客情報などのビッグデータという対価も収益となります。

 その担い手として柳川さんは、ベンチャーより大企業に期待を寄せます。ぼくも日本では新分野だからといってベンチャーに期待するより、インフラだから大どころに大型投資をさせるのが現実的とみます。

 しかし問題は、これらITAI系インフラはいずれも国境を越え、外資規制などの措置は採られず、強力なグローバル企業が席巻してしまうこと。国家パワーも太刀打ちできないという点です。これもまた主権国家の政策発動を前提とする公共経済学に再考を求めるものです。

 他方、公共経済学にいう市場の失敗はここでも話題になります。インフラ投資が過少となる点をどう克服するかです。また、柳川さんはインフラ活用による設備投資の減少が経済の総需要を引き下げることも言及しています。ここは経済学として分析していただきたい。

 業界横断的になるのも新インフラの特徴でしょう。従来の分野別業法とは別の新ルールが求められるゆえんです。


 これら新インフラの厚生を最大化するには、その投資を促進し、利用の恩恵を幅広く行き渡らせる処方が政策となります。

 政府には、タテ割りを打破して、規制緩和と利用促進ルールの策定が求められます。新インフラの投資や利用を促進する税制措置も有効でしょう。

 一方、特定分野を補助金で育成するターゲティング策は失敗しそうです。それよりも、政府自らが先行的な需要者となることで、民間投資を促すのがよさそうです。

 とはいえ、ITAIそのものの分野はアメリカに首根っこを押さえられていて、巻き返せる気がしません。狙うはその上のレイヤ、IT、ロボット、ブロックチェーンのプラットフォーム、あるいは、教育、医療、防災、農業、都市管理といった応用分野。

 このためには、改めて包括戦略が必要です。政府・IT本部や知財本部がハード・ソフトの戦略を担っており、柳川さんもぼくも参加しているのですが、それとは別種の、新インフラ投資を促す戦略論がほしい。



 ちなみに柳川さんは、高校に通わず独学で、大学も通信教育課程で、東大教授になったパンクなかたで、教え子にmixi笠原さんがいます。新戦略論をたたかわせる会議の議長を柳川さんに引き受けていただきたい。

2016年9月1日木曜日

オープンデータの表彰も大変です。

■オープンデータの表彰も大変です。
 オープンデータ勝手表彰2016授賞式を開催しました。
ぼくが実行委員長。4年目になります。
社団法人オープン&ビッグデータ活用・地方創生推進機構「VLED」が主催です。
おめでとうございます。
というか、勝手に表彰してるんでありまして、
受賞してくださってありがとうございます。

※昨年までの表彰
 2015年
 http://ichiyanakamura.blogspot.jp/2015/08/blog-post_6.html
 2014年
 http://ichiyanakamura.blogspot.jp/2014/05/2014.html
 2013年
 http://ichiyanakamura.blogspot.jp/2013/05/blog-post_23.html


◯最優秀賞

クルマと道の未来を描く もっと!しずみちinfo
静岡市 トヨタIT開発センター
 

しずみちinfoと呼ぶ道路通行規制情報システムのデータと、トヨタIT開発センターの提供する自動車の走行状態データなどを用いた、新しいサービスの創出を目的とした共同実験。
 実験の企画で静岡市道路保全課とトヨタIT開発センターがアイデアソン・ハッカソンを共同で開催し、公共交通分野におけるオープンデータ活用を推進。

◯優秀賞 
 政府標準利用規約改訂(第2.0版)
 内閣官房情報通信技術(IT)総合戦略室

 第1.0版にあった「法令、条例又は公序良俗に反する利用」を禁止する規定などを削除し、国際的に広く利用されている「CC-BY」との互換性を明示する改訂を行った。

◯優秀賞 
 国土地理院におけるオープンイノベーションの取組
 国土地理院 地理空間情報部情報普及課

 国土地理院では、GitHubを用いてオープンデータ及び情報の提供をしており、GitHubがサンフランシスコで開催した開発者向けイベントにおいて活用事例の一つとして紹介され、会場の注目を集めた。

◯広域データ賞 
 福井県・県内17市町におけるオープンデータの共同公開
 福井県及び県内17市町

 福井県・県内17市町のデータを一つのファイルとしてまとめ、「公共施設情報」「ごみ収集日一覧」「ごみ分別一覧」「避難所一覧」を共同公開データとして掲載。

◯CiP協議会賞

社会資源プラットフォームミルモシリーズ
株式会社 ウェルモ
介護サービス、介護保険制度情報、在宅支援関連事業等といった社会資源情報を集約し情報化、PCやタブレット、クラウド上にて管理運用し、各自治体、行政と連携することにより、市民が適切な福祉サービスを選択できるプラットフォーム「ミルモ」においてオープンデータを活用。

 CiP協議会土肥氏「ウェルモ=WELMOなので、Wエルモ=エルモ2体が副賞となりました。」


◯ニューメディアリスク協会賞

政務活動費や国会議員資産の集計結果のCSVファイル公開
朝日新聞デジタル編集部、大阪社会部、政治部
取材の過程で収集・蓄積・集計したデータをCSVファイルで一般に公開。全国の総局網を通じ、2012〜2013年度の収支報告書と13年度の領収書類(計63万枚)を情報公開請求などで入手。都道府県議が関係する政治団体の収支報告書と領収書類(3万枚超)も取り寄せた。

 ニューメディアリスク協会衣川氏「炎上対策の当協会からは、炎上しない程度にハッカということで、オーブントースターを進呈します。」

◯融合研究所賞

Umbrella stand及びDust bin
KDDI株式会社 
BtoCのIoT製品を開発・販売。傘立てやゴミ箱がスマホと連動して、傘の有無やゴミの収集予定を教えてくれるサービス。
 

融合研究所平田氏「データをシェアということだが、どちらも適当なものがなく、Date:ウィスキーの伊達と、シャーのマグカップをセットであげる。」


 さて、最優秀賞は、1年目は福井県鯖江市、2年目はオープンデータシティ地域の集まり、3年目は東京メトロという公益企業でした。今年は自治体と企業のセット。オープンデータの広がりを示していると思います。優秀賞は国の取組が2点。国もがんばっています。
 

 事例が多くなって、探すのも大変になりました。ありがたいことです。ただ、オープンデータは、具体的なアウトプットや成果が求められる時期に来ています。まずはこの広がりをおホメ申し上げ、来年度につなげていきたい。