Twitter

2025年10月27日月曜日

心に残るマズかったもの上位3つ。

心に残るマズかったもの上位3つ。




1. ハーバード大学博物館のパーティーで出されたクランベリースパゲティ。

2. ロンドン、コヴェント・ガーデンのパブのブラックプディング。

3. 北京、場末の地下街で出された素性の知れない川魚の水煮。


米英中、3つとも仕事での食事でありました。思い起こします。

 


1.

セガ大川会長がMITに37億円の個人寄付をしてメディアと子どもの研究センターを作ることになり、ぼくはプロジェクト担当として客員教授に就任、皮切りにMITに世界から子どもを招いて「ジュニアサミット」を開催することになった。1998年11月。歓迎食事会がハーバード大学の博物館ホールでおごそかに開かれた。米側はMITヴェスト学長、メディアラボ ネグロポンテ所長ら。日本からは大川軍団たる秋元康さん、西和彦さんら。 


ぼくはヴェスト婦人と秋元婦人に挟まれて着座した。まだ住まいを探している最中で、ヴェスト婦人は懇切に相談に乗ってくださった。秋元婦人も美しい気さくなかただと思ったが、宴会後、高井麻巳子さんという超有名なかたと知った。上級の民が集い、米国が威信をかける荘厳な場である。


宴が始まり、個性のないスープに次いで、それは現れた。白地スパゲティの上に、とろりとしたショッピングピンクが乗った一品であった。荘厳に口に運んだ。なんか甘い。何のソースですか?ヴェスト婦人「クランベリー。」田舎者に含めるように、いつものおいしいやつよ的に教えてくださった。なるほどコレがボストンのおいしいやつなのだな。上級の威信だな。ぼくもおいしいと思うぞ、思うことにするぞ。


少し離れた席で、大川さんの三男がつぶやいている。「コレは、本気か?」「ホンマにこの味 出しとうて こうなったんか?」笑いながらの関西弁なので、周りの上級アメリカ人はにこやかにしている。王様は裸だ、言うたはるんやんか。そうか、そうやんな。本気の威信で、マズいんや。


以後、クランベリースパゲティを見つけるたび、注文する。コレは、本気か?と笑いながら喰う。


注:ナパのワインがとても美味しかったのも覚えています。たぶん大川さんの畑のブドウ。

 



2.

2007年1月。政府・知財本部の調査団で渡欧した。通信・放送融合を阻害する日本の制度を直すための海外比較調査のため。当時もう欧米ではテレビのネット配信は本格化していたが日本はまだどこも動いていなかった。融合を唱えるぼくは民放連出禁をくらっていた。ネックの一つが放送と通信を厳密に区別する著作権制度で、どうにかしたかった。調査は綿密に済んだが、NHKが同時配信を可能とし、著作権制度も変えるには、それから10年以上を要した。


それよりメシである。まずミラノやローマの食堂で、前菜・メイン・デザートをぼくはパスタ・パスタ・パスタで攻め上機嫌となり、パリで仔牛の腎臓や頭を満喫して、ロンドンに入った。中華やインド料理がウマいことは知っている。でもせっかくだから、イングランドでしか食えないものがいい。マズいもの一択でよかろう。


そこで調査団員のみなさんと、いかにもマズそうなパブを見極めて入った。そして、めいめい違うものをオーダーし、一等マズいものを頼んだヤツの勝ち勝負を挑んだ。ビーフパイ、フィッシュ&チップス、ソーセージ、焼きトマト、豆のどろりとしたやつ、いろいろマズげな面々がいたが、コレはと睨んでぼくが攻めたブラックプディングが一等マズかった。てゆーか、いちばん味がなくて、パサパサほげほげとおかしげな食感だけが主張する。同じ 血のソーセージでも、フランスのウマいブーダンノワールとなぜ違うのか。他の品はまぁまぁ食えてしまった。どや、堂々たる勝利である。


以後、英国でブラックプディングを見つけるたび、注文する。ホテルの朝食ビュッフェではそればかり喰う。オレ様が一等マズいと胸を張る。


注:タリスカーがとてもマッチしたのも覚えています。その後タリスカ隊を結成し、東京でずいぶん飲みました。

 



3.

これも2007年。翌年、北京五輪が開かれる。鳥の巣と呼ばれる北京国家体育場は完成が遠そう。周りも工事ばかりだが、工夫の動きは鈍く、タバコ吸ったり道に座っていたりやる気が感じられない。ゆるいかんじ。国の首脳と人民の温度に差があるのだろう。


盧溝橋の中国人民抗日戦争記念館を訪れた。日本軍はかくも悪辣、残虐なことを中国にしでかした。鬼畜!ということを示す絵画や写真が所狭しと埋められ、オドロオドロしい気が漂っている。この国の子たちはこういう教育、洗脳を浴びて育つ。やれやれ。


出口の売店に行くと、パアッとした気が漂っている。馴染のある品が並んでいる。テニプリのキーホルダーやキティちゃんのグッズ。などなどなど。なんだ!諸君は、スキなのね。日本は悪い軍事から、憧れの産業から、スキな文化の国に移行した。諸君は、人民は、わかっているのね。首脳はどう見ているのかね。


気を良くして同僚とメシ。だがB級しばりの私としては場末がよい。地下街に入り、老夫婦が営む店に入ってみた。むろんメニューは中国語だけで、写真などない。簡体字で、だいぶわからない。エイヤで頼んでみる。何が来るやら。闇鍋のようなものだ。でも北京だ。ウマいはずだ。


現れたのはアルミ鍋。大ぶりの、フナのような、スズキにも似た、黒めの魚が一尾、悠然と水に入っている。何か野菜もあったかもしれないが覚えていない。オヤジが火にかける。超シンプルなアクアパッツァだ。煮えたので、食ってみる。アハ、超シンプルな無味だ。清い水だ。出汁もない。川魚の臭みしかない。


塩。通じない。ソルト。通じない。塩という字を書いてみる。通じない。振って、ナメて、しょっぱい仕草。通じない。奥から奥さんも出てきたが、わからない。まぁいいや、店内にある酒を片っ端から頼んで、流し込む。


中国にはその後何度もとびきりのガチ中華をいただいたが、コレが最も心に残った。

その後大学の事情でぼくは中国語を学び始め、今後はこのようなことは起こるまいと思う。


注:安物のコーリャン酒がパンチありすぎで、魚はチェイサー代わりと位置づけられました。

 


 

こういう貴重な経験は、フランスやイタリアやスペインや日本では得られないものです。ありがたいことです。

でもこれを超える体験をどこか待ち望んでおります。

2025年10月20日月曜日

ずいずい ずっころばし

■ずいずい ずっころばし

 


去年の自分のメモに

ずいずいずっころばし

と書いてあって、

何のことだったかがわからない。


第一わからないのは、

ずいずいずっころばし

というタイトルである。


ズイズイもズッコロバシもわからない。


わかるのは、ズイズイは副詞で、

ズッコロバシは ずっころばす という動詞の名詞化だろう。

moveをmovementとするようなものだ。

しらんけど


歌詞だって

俵のネズミがコメ喰うてチュウ

以外なんにもわからない。


なんなん


天才バカボンで、パパが巻き込まれた抗争では、

ギャングの持つクラリネットが

ずいずいずっころばし

を一曲吹き終わったら下から一発ズドンと弾が出る。

もどかしい話である。


あのメモが私に指示したことは何だったのか。

明らかにしたいとおもう。

2025年10月13日月曜日

高谷浩樹さん「教育界とデジタル技術」。

高谷浩樹さん「教育界とデジタル技術」。


途上国より下だった日本のデジタル教育を一変させ、あと25年かかると思われた一人一台PCを一気に達成したGIGAスクール。今や日本はデジタル教育先進国と言ってよい。その立役者が文科官僚・高谷さんです。

ぼくはずっと旗を振り、文科省とも対峙してきたが、山は動かず川も流れず、挙げ句には文科省を出禁となり(通信・放送融合推進のかどで民放連出禁となったのと合わせ、2大出禁はわが人生の勲章です)、折れかかっていたところ、担当課長となった高谷さんがグリッと動かされた。パアアってなりました。


コロナの襲来という大嵐や経産省の参加という太陽が現れた要因は大きいけれど、高谷さんという中心人物の降臨なくしてこの偉業は達しなかった。


高谷さんが教育畑ではなく、科学技術畑であり、テクノロジーへの向き合い方がそれまでの行政官とレベル差があったこともありましょう。けれど、もっと根底にある、国としての使命感を腹に据えたかただと感じました。


政策は人が動かす。官僚とひとくくりにするけれど、いろんな人がいるのです。ね、御上先生。


本書は、一人一台に至った経緯や現状だけでなく、その先の、データ利用やAIとの関わりも分析しています。同時に、デジタルと教育の二項対立や教育界の閉鎖性など、ぼくが直面した重たい特殊性にも問題意識を投げかけます。


と、読み終えて気がついた。本書の題名は「教育界とデジタル技術」なのだ。デジタル教育ヤッホーとかビバGIGAスクールとかじゃないんだ。文科省を核とする教育界というムラ、そしてデジタル技術なる必然の、新しいもの。それをどう認識して、反応させ、変えていくか。自分の本拠も含めた、リスクもはらむ啓発書であり、覚悟がみなぎる。


高谷さんにはますます政府で活躍いただき、かつ、民間への提起も期待する次第です。

2025年10月8日水曜日

柳瀬博一さん著「アンパンマンと日本人」。

柳瀬博一さん著「アンパンマンと日本人」。

 


NHKの朝ドラは、どらまっ子AKIちゃんの痛烈批判を読むほうが面白く(https://cyzo.jp/authors/doramachild/)、

やなせたかしさんが気の毒である。

仕事っぷりを正当に評価するにはこの本がよい。

 

アンパンマン。長男が1歳の時分にはどハマリしており、その娘が2歳の今どハマリしている。2002年から15年こども人気1位で、日本の乳幼児が中心なのに累計キャラ市場規模が世界6位。

だがそれは、アンチ・スーパーマンとして生まれたのだという。「自分たちの正義に微塵の疑問も抱いていない」。「正義は悪者を叩きのめす暴力で完遂」。「スーパーマンたちの自己陶酔型の正義感ぶりに直感的に嫌悪感を抱」いたのだという。

 

顔がなくなっても飛びつづける、一見グロテスクな「あんぱんまん」。

73年版絵本の評判は最悪だったという。出版社も専門家も、幼稚園や保育園の先生も全否定。だがその後、乳幼児が支持し、全国に広がった。アニメも当初は全く期待されないで企画され「面白さと可能性をテレビ局も広告代理店もクライアントも見抜けなかった」が、高視聴率で37年続く。

 

アンチ・ヒーローとして生まれた。大人は判ってくれない。けれど子どもは、乳幼児は、見抜き、感じた。それがずっと続いている。普遍である。

 

この偉業が大きすぎ、アンパンマンのひと、と規定されてしまうが、この本を読み認識を深めたのは、やなせさんのマルチクリエイターとしての偉大なる位置づけ。

 

アンパンマンに至るまで、50年代から70年代にかけて、広告、取材記事、表紙デザイン、ラジオ台本、舞台美術、脚本、作詞、いずれも「超一流の成果」を残している。しかもそれらを経験ゼロでいきなり始めている。

 

永六輔、宮城まり子、いずみたく、羽仁進、手塚治虫、向田邦子らかずかずの天才たちが多種多様で誰もやったことのない「初めての仕事」をオファーし、これに応えて一級の作品をつくっている。クリエイティブの世界における「起業家」である天才たちが「起業の仲間としてやなせたかしを選んだ」。

 

子供の頃、田河水泡がお気に入りだったという。70年アニメ版「のらくろ」の主題歌はやなせたかし作詞だという。そうだったか。さきごろ田河水泡さんを描く村田裕子さん作・演出「穿つ泡」という芝居を下北沢で観た。「のらくろ」の著作権をもつ講談社をぼくが紹介したことで実現に至ったという縁で。その芝居で、田河さんが絵画や落語などマルチに活躍していたことを知った。やなせさんもその背中に乗ったのか。

 

マンガブームに乗り遅れ「代表作が一向に生み出せなかった」ことに苦しんだという。9歳下の手塚から千夜一夜物語のキャラデザインを依頼されている。だが、遅咲きだったのではなく、むしろ早すぎた。「時代がやなせたかしの才能に追いつくのに時間がかかった」ということだろう。そこまでの一流マルチ仕事を経て、クリエイターとしてのアンパンマンに至った。

 

ポイントはやなせさんのデザイナー気質。「デザイナーはクライアントからの発注があって初めて仕事が発生」する。「顧客のニーズにきっちり応える」姿勢、「イラスト、4コマ、漫画ルポなど何でもこなせる器用さ」を持つ。アーティスト、クリエイターとしての面以上に、デザイナー、起業家の力量がやなせさんの本質であろう。

 

アンパンマンのやなせさん、マルチデザイナーとしてのやなせさん。ぼくは後者に惹かれる。という視座を与える新書でした。

残りの朝ドラを楽しみにしよう。

2025年10月6日月曜日

サービス産業を日本のソフト・パワーの源泉に

サービス産業を日本のソフト・パワーの源泉に


国際経済交流財団のオンラインシンポ

「サービス産業を日本のソフト・パワーの源泉に」。

豊田正和会長からの質問にお答えしました。

 

Q エンタメ産業のイノベーションという観点から「観光とアニメ」の融合が重要ではないか。

 

Aアニメをトリガーにしてインバウンド観光を増やすのは各地で取組みがある。アニメツーリズム協会が全国88か所を選定して「聖地巡礼」観光を進めている。


水木しげるさん出生地の鳥取県境港市は「ゲゲゲの鬼太郎」で山陰地方最大の観光地になった。アニメ「らき☆すた」の埼玉県「鷲宮神社」は2009年の初詣に42万人が参拝した。3.11被災地の大洗アニメ「ガールズ&パンツァー」で、現地の小売店は震災以前の2割以上の売上げとなった。その後も事例に事欠かない。


海外でも日本のポップカルチャーは人気を高めていて、毎年世界各地で開かれる日本文化イベントは総計2000万人が参加。しかし大半が各地・現地の主催で、日本がビジネスとして活かしているとは言い難い。


アニメなどポップカルチャーの経済効果を考える場合、こうした波及効果が重要。アニメの直接売上を1とすると、観光に加えて、おもちゃなど商品化、関連機器その他の周辺産業の売り上げが10ぐらい。コンテンツ産業の売り上げは年13兆円だが、波及効果を含めると総計100兆円を超えるとされる。GDPの1/5ぐらいになる。


これら波及効果、すなわち外部効果が大きいことが産業を政策的に支援する根拠となる。

 


Q エンタメ産業と通信・放送産業との融合はどうか。eスポーツといった新規領域の開発の可能性はどうか。一方、海賊版対策なども必要ではないか。

 

A コロナでデジタル敗戦を認識した日本だが、コンテンツ産業は巣ごもり需要も活かして大きなきっかけにしている。配信などのオンラインは2011年にコンテンツ売上の13%だったが、23年には47%。約半分まで占めるようになった。書籍、新聞などアナログのコンテンツは縮小しているが、コンテンツの成長はほぼデジタル・オンライン分野が担っている。


ただし、オンラインはGAFAやNetflixといったアメリカのIT企業が主役。日本は放送業界も通信業界もコンテンツ業界との融合に成功しているとは言い難い。


スポーツなど新領域を伸ばし育てることも重要。日本はゲーム大国だったがeスポーツ後進国。テレビのゲームで成功しすぎたため、ネットのゲームに乗り遅れた。だがマンガにしろ音楽にしろ日本は実力があって土壌も豊か。強みを活かす可能性は大きい。


頭痛の種が海賊版。2018年に内閣府が海賊版タスクフォースを設置、私が座長を務め総合対策を立てた。著作権つまり財産権と、通信の秘密という、憲法が保障する価値が対立する難しいテーマで、会議は紛糾・破裂したのだが、対応は強化された。効果を上げてきているが、いたちごっこで、まだまだ対応が必要。

 


Q 海外展開を実現できるプロヂューサーとマーケティング戦略の専門家の育成が重要では。

 

Aコンテンツの人材育成はずっと最重要課題とされている。特に海外ビジネス展開など、売る人材、プロデューサやマネジャーの不足が今の課題となっているが、対応は手薄。経産省で開催している「エンタメ・クリエイティブ産業政策研究会」でも、異口同音に出てくる課題が国際ビジネス人材の育成・確保。コンテンツ各社がOJTで育てているのが現状。大学などでもこれを専門に扱う学校、学部は乏しい。


実はそれでいま私がしかけているのは、エンタメの国際ビジネスを担う人材を育成するビジネススクールを作る計画。ハリウッドのあるLAに本拠を置くエンタメ系MBAを、iUが受け皿となって誘致して、日本のエンタメ業界や政府とも連携して日本校を作るというもの。こういう動きを増やしていくことが必要。