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2019年8月29日木曜日

ネコとのコミュニケーション

■ネコとのコミュニケーション
 

ネコと暮らしています。
 金さんと銀さん。でも金は男。銀は女です。アンバーとシルバーといいます。ボストンに住んでいたころ大人気だったビニーベイビーズのアンバーとシルバーを幼い息子たちに買い与え可愛がっておりまして、彼らが就職後こんどは実のネコを自分が可愛がることになりました。

 ネコは人生で2度め。最初のネコ、P子。デベソの三毛だった。先の東京五輪の聖火ランナーが近所を走る。親に肩車してもらいそれを見た。左から右に走るのを確かに見た。3歳。映像としてぼくに残る記憶はその日が最初です。
 朝のワイドショーでその話をしたら、鳥越俊太郎さんが「ホントかよー」と信じられない声を上げました。でもホントです。ただ、その映像には続きがある。聖火から帰宅すると、P子が死んでいたんです。ぼくの人生は聖火と死から始まっています。




 以後、半世紀。ネコとの縁はもうないと思っていました。NHKクールジャパンで「猫」の巻を担当し、日本がクールな猫の国であることを解説しましたが、傍観者の観察でした。猫のクールジャパンでは、先駆者「ホワッツマイケル」、わが友 ほしよりこさんの「きょうの猫村さん」、そしてわが友 北本かおりさんが編集した「こねこのチー」があります。ぼくの猫観を定めました。きまぐれで孤高、でも家と人に寄りついて、温かみに目がない。
 アンバーくんとシルバーちゃんは、週刊コミックモーニングに連載中のサライネスさん「ストロベリー」に登場する10kgベランダくんと5kgカグラちゃんにそっくり。カグラちゃんに翻弄されるベランダくん。シルバーちゃんに翻弄されるアンバーくん。仲よくケンカする。

 その二人とのコミュニケーションに、共に暮らして1年を過ぎても、とまどいつつ、学んでいます。
 おはよう。ぼくが起床すると、のっそりついてくる。じゃれるでもなく、鳴きもしない。興味ありげに20cmまで近づいてくることもあれば、2mほど遠巻きに見ていることもある。パソコンを打っていると、わざとキーボードの上をゆっくり歩いていく。「「:。お、7っっctxrぜwqといった文字が打ち込まれる。コラコラと言ってもどかない。だからといってあっちにいる彼らをおーいと親しげに呼んでもプイともっとあっちを向いている。
 ぼくを尊敬するでもなく、軽蔑するでもなく。酔っ払ってアンバーをいじると必ずガブリと噛む。吾輩は猫であると主張する。晩、たいてい酔ってるぼくの腕は傷だらけである。シルバーは抱っこしようとすると必ず飛んで逃げる。だけどこちらがぼうっとしていると、棒やら玉やらで遊べと要求してくる。ベッドの下なのか浴室なのか、姿が見えず、呼んでも来ることはないが、家族とアンバーシルバーの話をヒソヒソしていると、聞いとるで~とばかり必ず悠然と現れる。
 ネコはこんなに可愛かったか。だけどベランダに小鳥が訪れたりすると、脱兎と化して近づき、目を見開いてカカカカカと口を鳴らす。野生なのです。その二面性もいい。




 仕事が絡まない、対等の友人が少なくなった。同級生にもひんぱんに会うわけではない。きみたちは家族であると同時に、目を水平に見つめられる友人でもあるのです。
 そこで、友人と話すようなことを語りかけるようにしている。どう思う?阪神の監督は大丈夫か。嵐は解散か。日本人横綱はもうムリか。レバニラ炒めとニラレバ炒めはどっちが正当か。どう思う?
 たぶん、わかっている。
じっと目を見開いて聞いていることもあれば、不機嫌そうに寝ていることもある。お前の話つまらんとばかり途中でプイと立ち去る。でも、たぶん、わかってる。
 コミュニケーションの妙手です。気を持たせて、寄ると引く。こちらが引けば、存在を示す。喜ばせたり、怒らせたり。その絶妙の間合いは、ためになります。そのコミュニケーション力、ぼくも使えないものか。いやぁ難しい。
 ネコのようなひとになれれば、ストレスは減るでしょう。おまんまと寝床さえあれば、スキな時に寝て起きて、周りの顔色を伺わず、気ままに近づいたり遠ざかったり。いいね。AIとロボットの超ヒマ社会では、ネコのように生きる、がモデルになりそう。アンバー、シルバー、どう思う?

2019年8月26日月曜日

企画と実行、その向こう側

■企画と実行、その向こう側

●企画
 ぼくは政策家を名乗っています。政策立案ばかりしているので。でも造語でして、世間にある呼称としては「社会起業家」が最も近い。40歳手前で役所から大学に転じて20年、公益法人やプロジェクトなど社会起業を20件以上続けてきたんで。
 ちなみに「起業家」と呼ばれる人は多いけど、たいてい当てはまらない。だって、家って、そればかりしてる人ですよね。マンガ家はマンガばかり書いてるひと、作曲家は作曲ばかりしてる人。ベンチャーやNPOを一回立ち上げたってひとは、起業家じゃなくて、起業したことのある人。だと思う。創業者ないし実業家。起業家と呼び得るのは孫正義さんのように次々と事業を興し続ける人。吉本興業の大崎洋さんもそうです。なにせ「興業」と社名にある。
 まぁいいやそんなこと。5年ほど前の社会起業ばやりでは、スタートアップ間もない御仁がドヤ顔で、成果を見ずオール礼賛だった風潮に違和感まんまんでした。このところメディアもメルカリやプリファード・ネットワークスのようなユニコーンはじめ、ベンチャーといえど業績を上げた創業者に光を強く当てるようになり、好ましい。
 とはいえ起業を促そう。その敷居を低めよう。iUは全員起業を目指し、起業家を生んでいきます。ムハマド・ユヌス「3つのゼロの世界」は、80%以上のウガンダ人が生涯のどこかの時点でビジネスを始めるという。小さな店を開いたりヤギを買ったりする、そんな仕事。まずはそんな起業でよろしい。
 そのためには、どんな力があればいい?
 まず企画力。アイディア。Whatを見出す。問題を設定する。これおもしろい、これ問題だ、を見つける。どうすればいいかって学生に聞かれるたび、ぼくは飲み会を真剣にやってる、と答えます。ふとした疑問や妄想をアイディアにする機会はぼくの場合、飲み会が多くて。で、大事なのは、そこで出たアイディアを、翌日ガッツリ企画書に落とし込むことです。

●実行
 さて本題は、Whatより大事なのはHowだということ。どうやって企画を実行するか。どうやって問題を解決するか。どうやって技術を実装するか。実行力とか、解決力とか、実装力とかいうやつです。
 ぼくはKMDで10年間、学生に対しそればかり話してきました。WhatよりHow。頭でっかちな諸君が得意するアイディア起こしや、諸君が学びたがっている企画スキルよりも、世間で問われるのはこっち。iUでもこちらを重視します。
 法律一つ作るにも、「クールジャパン基本法」を作るというお題に、一時間もあれば目的、定義、計画、責務など十条ぐらいの素案は書けましょうが、それはアイディア。What。大学ではこのあたりでとどまってしまいます。でも、これを社会に実装するには、残り10ステップ必要です。
 有識者を集めた研究会を開き報告書を出す。審議会で答申を得る。省議を経て大臣の了解を取る。内閣法制局の了解を得る。全省庁の了解を得る。メディアを通じ世論を伺う。与党の了解を得る。野党に根回しをする。国会を通す。成立後、政省令を作る。これだけある。
 これをやり切る。頭より足腰。へこたれない力。持久力。
 その内実はほとんど説得と調整です。押したり引いたり。聞いたり話したり。頭を下げたり声を張ったり。泣いたり笑ったり。汗、汗、汗。
 そんな泥臭いことを大学で学ぶのか? そうです。こういうコミュニケーション力を産業界は人材に求めているのですが、大学が応えていなかったわけで。でも、プラン立てる力より、それを1年かけてへこたれずやり切る力のほうがずいぶん高度だと思う。そのための作戦、兵站、組織管理、日程調整、なんてことがね。

●向こう側
 いや、今日の本題は、その次です。
 ネットフリックスでミシュラン星付レストランの番組を見ていますとね、レシピを作らないというシェフが案外いるんですよ。「自らにあふれ出すものを作る」。「朝ひらめくものをすくい取って料理にする」。当然の顔で、のたまう。
 企画書がない。設計しないんです。アイディアと実装が一体化しているのです。
 作詞・作曲しないインプロヴィゼーションの音楽家みたいなものか。
 ただそれを、毎日まいにち、マニアではないお客さまに対して作り続け、一級品の評価を得ている。その力の正体は何でしょう。天性のものなのか、鍛え上げた蓄積なのか。
 そしてそのひらめきを、シェフはスタッフに口頭で伝え、チームとして料理と化す。その伝達術も、料理アウトプット水準を保つチーム管理法も、ぼくにはナゾです。
 あふれ出たりひらめいたりするものを、設計図や企画書に落とし込んだり、果ては論文に仕上げたりするのは二流なのかしら。そういう力って、身につけることができる性格のものなのでしょうか。料理学校のかたに聞いてみようかな。

2019年8月22日木曜日

高田昭義さんのことを改めて想う。

■高田昭義さんのことを改めて想う。

 尊敬するかたはたくさんいます。亡きかたで最も尊敬するのは、郵政省官房長だった高田昭義さん。「電気通信事業法案」を執筆した方です。パンクなひとでした。亡くなったのは1999年6月。それから20年になります。
 当時書いた追悼文を引っ張り出します。現役の官僚で彼を知る人のほうが少なくなったでしょう。昔はこんなひともいた。長文ですが、いま読み返す意味があると思うので、全文です。
 
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 あれからさすがにしばらくショックでした。6月25日。高田さんが天国に召されたという郵政省からのメールは、サンノゼで受けました。インターネット99の会場です。Y2Kがどう現れるか。21世紀のネットワーク社会はどう現れるか。その姿を見ることなく、電気通信事業法の父、高田さんは旅立たれました。これからのこと、もっとお話したかった。


 インターネットの世界大会は5年前のプラハ以来です。あのころ、高田さんは通信政策局の次長でしたか、パリに派遣されてスパイのようなことをしていた私はプラハに潜り込めとの指令を受けたのです。

 あのころ、マルチメディア・ブームでした。アメリカはNIIと競争政策を提唱し、ヨーロッパは国家的インフラ整備を前面に出していました。日本はそのミックス政策でしたね。プラハ会場には欧米の政府関係者の姿が目立ち、政策PRのセッションが急に開かれることになりました。私はあわてました。日本の政府関係者はボクだけか?世界大会で日本ハズシをやられるのを眺めることになるのか?

 外国語をしゃべることと、努力と根性と通勤が何より嫌いな私ですが、その時は、ハジかかされる、という思いから、考える前に走ってました。受付のテーブルでメモをなぐりがきしました。「2010年に1兆ドルの市場を光ファイバーで達成することが国家目標であり、そのため競争環境を強力に整備する、と、日本政府代表が会場で言っている。」

 そしてEUのバッジをつけたグループを探し、その中で一番エラそうな人をつかまえました。フランス人っぽい名前だったので、たどたどしいフランス語で言いました。「日本の政府からパリに派遣された者だ。パリを愛している。ヨーロッパ万歳。だからステージでこのメモを読み上げてくれ。」果たしてその人はEU代表のフランス人で、ニコニコしてメモを受け取り壇上に進み、きっちり読み上げてくれました。そんな話は東京には報告しなかったと思いますが。

 あれからインターネットはネットワークを制覇し、各国が制御しようとした目論見は外れ、民間のビジネスとして定着してきました。だから今回はもう政府関係者の姿は少なく、参加者も落ちついた風情でした。時代が変わった。実感しました。


 今も激動期、あのころも激動期。私が役所に入った84年ごろも激動期でした。データ通信課の新人からみれば、隣で電気通信事業法案を作っているチームのヘッドだった高田調査官は雲の上の存在でした。しかし、そのころの高田さんは今の私と同じ年頃ですね(※中村注:30代半ば)。その方が通信自由化の法案を仕切っていたのですね。

 しかも、どうも実際に法案を書いているのは補佐や係長の方々で、その上司たる調査官は昼間から酔っぱらってるオッサンのように私には映りました。つい15年前のことですが、あのころは若い役人が大きな仕事をしていましたね。

 法案が終わって政省令づくりの段階に来るとアメリカが門戸開放だの技術基準緩和だの勝手なことを言ってきましたが、交渉団が乗り込んできたとき、会議室のあっち側にアメリカが座って、こっち側に郵政省幹部や外務省代表が座って、おや、高田クンがいないぞ高田クンがいないと始まらないぞ、となりました。

 私が地下の売店に探しに行くと、やはり高田さんは禁煙パイポを買っている。皆さん呼んでますよと言うと、「あーそーか」と思い出したようにつぶやいて、パイポを2本、こう、キバのように口から出して、「怖い?怖い?」と聞いてくる。このオッサン変なこと考えてるなと思って答えずにいたら案の定、そのまま会議室に入っていって、しばらく敵の交渉団をにらんでんの。効果ありませんでしたね、あのパイポ。


 それからデータ通信課長として直属の上司と仰ぐこととなり、徹底的に勉強させられました。通信自由化後の法運用に当たり、実態を通じて制度を作っていった時期です。昼間から酔っぱらってるオッサンのくせに、私は政策の議論で勝ったためしがありません。

 だからいつも宿題を抱えている。忙しかった。忙しかった。ところが夕方になると課長は「遊ぼう遊ぼう」と人を誘う。私はヒラなので逃げられず、そしていつものスナックでいつも課長は寝入るから、閉店後、テーブルとイスを片づけて、掃除機をかけて、タクシーで宿舎まで送る、毎日でした。


 土日もなく働いてました。制度、政策、実態を作り上げている最中ですから、楽しかった。でもたまにサボって、ある平日の真っ昼間、日比谷サウナにしけこんでいたら、高田課長が入ってきた。サウナだから逃げられない。

 「キミこんな所でナニしてんの」と見ればわかることを聞くので、課長こそ、と言い返すと、「オレは床屋から役所に戻る途中だぞ」との答えでした。床屋さん、逆方向じゃないスか。勝てない。この方には。でもここしばらくは官僚たたきがひどくて、今そんなことしてバレたら懲戒ものですかね。当時もそうだったんですかね。


 その頃もまたアメリカは国際VANでガタガタ言ってきました。そのとき高田課長は敵の団長を自宅に呼んでメシ食わせて「気楽にやろうや」なんて話してましたけど、役所でこっそり「今回はこっちが勝つから、ヤツは政府をクビになる。仕事の世話してやらないといけないな」などと言って外資系企業に電話したりしてましたね。教科書にはない、新聞にも載らない、官僚の仕事のごくヒトコマが、そうやって積み重ねられていきました。
   
 10年後、私が官房で規制緩和を担当しているとき、与党の委員会で役所がこてんぱんに叩かれる場がありました。何日もかかって準備した資料をお渡ししたのに、高田総務審議官は読みもせずに会議に臨み、案の定、通信やCATVの外資規制撤廃などの難しい議論を切り抜けてしまわれました。通信政策局政策課長、放送行政局総務課長、官房国際課長などの行政実績に裏打ちされた度胸と、生来の天才ぶりは、私には到底マネのできないものでした。

 今をときめく孫さんが衛星ビジネスやりたいと言うので、高田さんに引きあわせたこともありましたね。孫さんにしてみれば、守旧派の権化たる高級官僚にガツンと言うつもりだったんでしょうが、高田さんが「ギョーカイ秩序を崩すよーなそーゆーことはもっと早くガーンとやってくれ」と言ったので、孫さんが目を白黒させてビックリしてた。おかしかった。
(※中村注:1996年、孫正義さんがマードックとテレ朝に出資したころのお話。)


 最後にお仕えしたのは省庁再編の時です。いちど体を壊され、退院なさった後だったというのに、役所の組織をどうするかをめぐって連日お伺いし、ご心労をおかけ致しました。メディア政策を担当する2局をハードとソフトに分けるという高田案は、10年後の行政の姿を念頭に置いて、組織の姿を逆算するものであり、理想主義で政策主義の高田さんを知る者としては納得のいくものでした。実際の組織をどうするかという現実主義からみると突飛なプランであり、恐らく実現に至るにはまだ時間がかかるでしょう。
(※中村注:省庁再編当初の総務省は通信・放送は1局減って2局とされ、それを設計する話です。その後、菅義偉総務大臣の際に現在の3局に戻されました。)

 しかし議論の価値はあったと信じます。個々の議論では、かなり乱暴なことも申し上げたような気もします。若い官僚が政策論を幹部に突き上げていく、ここしばらくの霞ヶ関で薄れている気風をいまいちど取り戻したい。ましてや人類にとって当面もっとも重要なメディアという分野の政策をどう編成するかの瀬戸際だ。のめり込んでいたので、そんな具合に熱くなっておりました。楽しかったです。楽しかったです。

 しかしそれでもなお目を開かされたのは、高田さんがその案の中で、料金政策をソフトに位置づけたことです。通信料金はいわばインフラの提供価格ですから、電波行政や事業許可などのハード部門に位置づけるのが自然と思いこんでいたところ、高田さんはそうではないと言う。
 「料金は提供者と利用者のインターフェースであり、利用の条件だ。これからはインフラのコストから料金を見るのではなく、利用者からみた望ましい料金というアプローチが重要だ。料金規制がなくなっても、行政の視点は利用者サイドに置くべきだ。」つまり2局は提供と利用という性格でもあるんですね。うーん、鋭い、この方には勝てない。
   

 一段落ついて、あれこれ考えた結果、私が役所を出て渡米するとの話を申し上げ、私事でご迷惑をおかけしてしまいました。ただ考えてみれば、ことの発端は高田さんでした。95年2月、ブラッセルでの情報通信G7、パリから潜り込んだ私をつかまえて、高田さんはおっしゃった。「さっきCSKの大川会長とメシ食っていて、こんど東京でジュニアサミットをやろうという話になった。あした記者発表する。セットしてくれ。」

 あれから4年たち、2回目のジュニアサミットをMITで実施しました。子供のためのセンターを作ることにもなりました。あの時の理念は着実に育っています。これからもそれを育てるため、私は努力を続けます。


 「キミなんかが役所の外に出たって世間様の役には立たないよ。」とおっしゃいました。高田さん流でお引き留め頂きました。でも私がいよいよ決意すると、「じゃあキミが先に外に出て、地ならしして、それから1年後に真打ちのオレが出ていくということにするかな。」と高田さん流に支援して下さいました。

 高田さんはその直後に官房長になられましたから、1年後に外に出られる可能性はないと思っておりましたが、まさかちょうど1年後にこの世界からおられなくなるとは、不覚にも、思い至りませんでした。
  
 「もうキミたちの時代なんだから。」よくそうおっしゃいました。しかし言葉の裏腹に、先輩たちは手綱を緩めません。ボクたちの時代はまだ来ていませんでした。これは役所の話というより、民間も含めて、日本ぜんたいのことです。

 それは先輩たちの仕切りが強いということではなく、ボクたちが時代をたぐりよせる努力を怠っていたということでしょう。先輩たちの路線で食い続けることに、甘えてきたということでしょう。いや、ボク「たち」という部分に既に甘えが表れます。「ボク」がサボっていたんだ。

 どうもありがとうございました。がんばります。今は厳しい時代ですが、これまでも結局ずっと厳しい時代で、これからもずっとそうなんだろうと思います。自分で考えて歩いて行きますが、たまに、がんばれ、とか、何やってんだとか、声をかけて下さい。

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 追記。料金政策を利用者行政に位置づけろ。総務省にはいま消費者行政課が2課置かれています。消費者行政が重みを増してきました。しかし当時、そうした重要性がほぼ認識されてはいませんでした。
 
 同時に高田さんは、著作権行政にどう取り組むのかと省内で盛んに問題提起していました。コンテンツ行政が重要になるのは明白で、その提供と利用のインタフェースが著作権である。著作権政策はIT政策と一体化する。今は役所が分かれている(郵政省と文部省)が、今後そこにどう取り組むのかと。慧眼。IT政策と知財政策の融合は、今なお重いテーマです。

 改めて、霞が関があれやこれや縮こまっています。そして電気通信事業法を巡っては、携帯料金値下げとかブロッキングだとか、改めて厄介な時期にあります。胸を張って行政ができるようになってもらいたい。

 高田さんが病に倒れ亡くなったのは50歳を過ぎたあたり。ぼくはとうにその歳を経て、うんとシニアになりました。もうキミたちの時代なんだから。と語る世代です。ボクたちの時代は来たのか。キミたちの時代は来ているのか。
 高田さん、どうごらんになっていますか?

2019年8月19日月曜日

「ねじれの国、日本。」を乱暴に読んでみた

■「ねじれの国、日本。」を乱暴に読んでみた

堀井憲一郎さん著「ホリイのずんずん調査 かつて誰も調べなかった100の謎」。
1995年から2011年まで週刊文春に連載されたコラム。
最初は読み飛ばしていたが、だんだんくだらなさが気になり、真っ先に読むようになり、次第に憧れるようになり、中高の先輩だと気がついた、その抜粋本です。

食べてみる、外に出て調べる、スポーツを測る、テレビを数える。
寿司を1カン2カンと数えるのは平成に始まった。
1983年から2009年までの雑誌を総ざらいして調べた結果だという。
馬鹿げた調査パワーだ。

つゆだくが許せないからと、並を頼んだのにつゆだくが出る牛丼店を148日連続で食べ歩く。
チョコボール1021箱で金のエンゼルは1枚だった。
東海道五十三次を歩いてみた。
7年で1万席の落語を聞いてかからなかったネタ。
上沼恵美子のほら話を全部並べる。 
くだらない。

この堀井先輩の角度と筆致は鏡とするものです。
そして、「ひよっこ」がスゴいドラマであることを気づかせてくれたかたであり、
「50年間、朝ドラを見てきた私が断言したい「『ひよっこ』はスゴい」」

高校の歴史出身高校に何があったかを教えてくれる存在でもあります。
「1971年、京都で起きた高校紛争の記録~左翼運動はなぜ衰退したか」

その堀井憲一郎さん著「ねじれの国、日本。」を読みました。
いつもの角度と筆致でありながら、日本の国家観をざくざく切って曼荼羅っぽく示す熱量の高い本で、精緻でないぶん難解な、そして刺激的な作品でした。
誤読を怖れず、自分用にメモしておきます。

日本はウチ向けには言葉にしない思念を示し、外向けには虚構を示す。ねじれ。
思念とは同調すること。日本は地政学的にも自然的にも元気で、暴力を内包する。
虚構とは日本という国家、仏教を抜き去った神道、偶像としての天皇。
それらは7世紀の中国に、19世紀のナショナリズムに、対抗して作った。

建国記念日は何の日か。
(正解は神武天皇の即位日)
知らなければ日本人で、ぺらぺらしゃべったら敵国スパイ。
教育をしていないし、説明するつもりもない。
国民にはウソとわかるサインを出しつつ、世界にはそう説明する。ねじれ。
アメリカ独立記念日やフランス革命記念日は教えるのに。

7世紀、律令国家を世界(中国)に宣言。
聖徳太子から天智・天武天皇、中国向けに日本という国号を決めた。
唐という巨大な中央政権が建った危機感。
独自の共同体として。
海と山があり、狭い平野に密集して住む。 
左側ばかり見ていた。

昭和17年、開戦から半年の連勝に知識人は「近代の超克」に高揚し、国民も興奮した。
明治以来、西洋から無理を強いられた近代への恨み。
西洋の近代を敗戦でより大きく受け入れるハメとなった。
日本は大きく変わったというウソのスローガンで戦前と戦後を切った。

日本はいつも大陸の王朝に向いている。
古来、野蛮で元気。半島をまたいで攻め込む厄介者。秀吉も日中戦争も。
逆はない(元は世界史上の奇態とみる)。

中国は何度も王朝が変わったが日本はずっと日本。
中国も朝鮮も日本が怖い。
中国はいろんな民族が暴力で王朝を建てる続けた「ステージ」であり、日本も秀吉や陸軍がエントリーした。

日本が攻め込んでも背後(右側)から突かれない。
逆に日本に左から攻めるのは困難で、コストに合わない。
すると右側からペリーが大砲を鳴らしたからビックリした。

神様は善意とも正邪とも関係なく、ただ在る。
願いは五穀豊穣=生活安定のみの、未開で原始的。
教義も理論もない。共同体。
世界宗教は原始共同体を壊していったが、日本は枠組みを壊さず、仏教も儒教も取り入れキャッチアップした。
言語化することなく同調するのが民族的な基調。

国の根幹に関わる言説を「ねじる」。それによって安定する。
鎖国はきちんとねじった200余年。ねじったままでいい。

地政学的・自然的に有利な条件の下、ずっと一まとまりだった共同体が、実体をぼやかして国の姿をまといつつ、フィクションを編み出して対外的に格好をつける。
そんなことが書いてあります。
たぶん。

とすれば、戦争も動乱もなかった平成は、そのねじれを維持し固めた30年だったのでしょう。

令和はどうでしょう。堀井さんが令和をどう読むのか、聞いてみたいです。

2019年8月15日木曜日

シェアリングエコノミー、第二次報告書とりまとめ

■シェアリングエコノミー、第二次報告書とりまとめ

ぼくが参加した内閣官房「シェアリングエコノミー検討会議」が第二次報告書をまとめました。

2年前の中間報告は、
1) 自主的ルールによる安全性・信頼性の確保
2) グレーゾーン解消に向けた取組
3) 自治体等による先行的なベストプラクティスの構築・共有
を柱としていました。
「シェアリングエコノミー中間報告」

その後の動きとしては、以下が挙げられます。
1) 政府相談窓口の開設:シェアリングエコノミー促進室
2) 認証制度の構築・運用:21サービスがマークを取得
3) 自治体での導入事例の創出:シェア・ニッポン100の作成

取組の成果としては、以下が挙げられます。
1) サービスの普及:認知度が1年で11.8%増加し42.4%に
2) 市場規模の拡大:2016年度で503億円、2021年度には1071億円に

推進方策として、以下を三位一体で取り組むこととしています。
1) プラットフォーマーによる取引等への関与の充実
2) 提供者・利用者が安全性・信頼性を判断するための仕掛けの整備
3) 社会実装・国際展開の支援

その上で「シェアリングエコノミー推進加速化アクションプラン」として、
1) モデルガイドラインの改定、認証基準のアップデート
2) 消費者向け指針(シェアリングエコノミーの歩き方)、レビューに関する国際標準への準拠、信用を可視化する仕掛けの検討
3) 地域での活用100事例の創出
等を掲げています。

具体化に向け今後検討を深めていく事項として下記を記し、
1) 紛争解決機能のスマート化
2) 「認証シェアワーカー制度(仮称)」の創設
併せて、中間報告で示したシ ェアリングエコノミー・モデルガイドラインをバージョンアップしています。

会議にてぼくは3点コメントしました。
1)利用面の不安を取り除くこと、空気を換えること最重要だが、実に難しい。
改元、五輪、万博という弾みに合わせた施策を打つことが効果的。
ただし、時間がかかる。時間をかける、という認識と覚悟が大事。持続する、続ける、という政策決定が重みを持つ。

2)市場規模は500億円。これを経済政策と位置づけると政策の優先度が高まらない。
消費者利便を高め満足度を上げるという社会・文化政策の位置づけが重要。
これをどう測定してエビデンスベースの政策論に持ち込むのか。
そこはアカデミアの出番であり、そうした問いかけを学に投げかけたい。

3)東京港区竹芝に、AI・ロボットはじめ先端技術を集積して実装する特区を建設していて、オリンピック直前に街開き。イベントも行う。
その地域が生むデータを管理・利用する情報銀行の設計を始めたところ。
技術実装都市と情報銀行がシェアエコに役立つように準備してまいりたい。

会議ではライドシェアについて記載するか否かで委員と政府との緊迫したやりとりがありました。
規制を巡ってはまだ突破できない壁もありますが、事態は好転しています。
令和の時間をたっぷり使い、前進しましょう。

2019年8月12日月曜日

札幌・東京・神戸・福岡をつなごう! 078Kobe2019にて

■札幌・東京・神戸・福岡をつなごう! 078Kobe2019にて

パパヤパヤパヤ神戸泣いてどうなるのか。
078Kobe。
神戸の魅力や活力を発信するための複合型+参加型+都市型フェスティバル。
第一回は3.7万人、昨年は7.5万人が参加。
今回は第3回。育ってきています。

複数のテーマを掲げたイベントです。
音楽・映画・IT・食・ファッション・キッズ・アニメの7ジャンル。
このラインアップを揃えられる国はそうありません。これがニッポンの強み。
そしてポップカルチャーにテクノロジーを掛け合わせている点がミソ。

昨年参加した模様はここに記してあります。
「078Kobe 2018」

「都市型フェスティバルの未来」というパネルに参加しました。
078実行委員長・藤井信忠神戸大学准教授
NoMaps廣瀬岳史事務局長
明星和楽松口健司実行委員長
ぼくはCiPのYouGoEx代表としてです。

078藤井さん。
「米オースティンのSXSWを参考にして開催したが、SXSWは30年であそこまで育った。078も30年続ける。」
「チャリティー音楽イベントが源流なので、全て無料にしている。」
骨があります。

福岡で10月に4日間開催される「明星和楽」。
「異種交創」を体現するムーブメントとして2011年より開催。
スポーツ、音楽、エンタメ、ビジネス。
「異種」な人々が交わる場であり、新しいモノ・コトを創り出す装置。
実行委員会を世代交代して壁を突破しているそうです。

10月、札幌の「No Maps」。
テクノロジーとアイディアでより良い社会を実現する。
学び、教える。表現、発表、体験。つながり、共創。
音楽、映画、テクノロジー、ピッチ。

で、ぼくの出番です。
以下、申し上げました。
オースティンのSXSWやリンツのアルスエレクトロニカなどテックやアートのイベントは、ポップさというかユルさが足りないし飯がマズい。
パリのJapanExpoはポップで飯ウマだが、テックが足りない。

そしてこういうイベントに共通しているのは、日本人が多いということ。出展も客も。
じゃあポップテック飯ウマイベントは日本でやればいい。
しかも、各地で開いて、それをつなぐポップテックイベント列島にすればいい。

ぼくはまず東京でポップ&テックの街づくりCiPを進めている。
港区・竹芝にデジタルとコンテンツの集積拠点を作る。
2020年、オリパラの前に街開き。
シリコンバレーとハリウッドを合体、だけど、ポップで、みんなが集う、日本にしかできない街。
すべての先端技術を実装します。

これはきっかけ。渋谷、羽田などにも構想がある。
羽田空港脇にイベントや研究開発を行う地域が開発されていて、ここも来年の7月に街開き。
そこと竹芝を直結して共同イベントを開いたり、ドローンで行き来できるようにしたりする。
ほかにも東京には似た構想があるので、みなデジタルでつなぎたい。

竹芝でポップテックイベントを開催する。
昨年2018年の夏、その第一弾として、YouGoExというイベントを開催した。
音楽オタクeスポーツ超スポキッズビジネステクノロジーを集結。
要するに078のパクリ。明星和楽、NoMapsのパクリ。
吉本芸人にもたくさんお越しいただきネット配信も行ってもらった。

2020年、来年の街開きに本格開催し、毎年実施する。
吉本興業のパワーも結集しつつ、慶応大学などアカデミアも参加し、ポップとテックの集結したものにしていきたい。
各地のイベントと連携して、ゆくゆくはSXSWを超えるものに育てたい。
日本が世界のポップテックイベントの本場になりたい。

幕張で6月に開催するデジタルサイネージジャパンは13万人が集うテック+コンテンツのイベントで、既にサイネージ業界では世界トップになった。
テックポップキッズのワークショップコレクションも2日で10万人が集まる世界最大の子ども創作イベントになった。

ぼくが実行委員長を務める京都国際映画祭も、アートやテックにつぎ込む。
ぼくが関わるイベントだけでもいろいろある。
そして078もその他も含め、こういう力を日本は持っているんだけど、総合力として世界に発揮していない。それをみんなでつながって発信したい。

藤井さんから質問「突破すべき壁は?」
YouGoExという名前は、タコ壺の壁を取っ払って融合させる趣旨。化学反応をこれから起こす。でもプロモーションを高めるネーミングはまだ悩み中。
078(神戸の市外局番)は抜群。
ウチもパクって東京03にしようかと思ったが、人力舎に文句言われそうなのでヤメた。

札幌NoMaps、神戸078、福岡 明星和楽。アルファベットと数字と漢字。
東京はカタカナがいいかなぁ。
10月に札幌と福岡、その頃までに名前を決めて、来年の078に内容をアナウンスできるようにして、7月に開催します。



福岡・松口さんが世代交代して突破したと言う。
それで気がついた。
ぼくが壁です。
なのでウチも若い世代に交代して、委ねます。
ではまた~
パパヤパヤパヤ
(高架下で豚足)

2019年8月8日木曜日

超大学でAIとIoTの前線を聞きました。

■超大学でAIとIoTの前線を聞きました。


超大学。
次世代リーダーを育成する先端テクノロジーの講義、ワークショップ、コミュニティを大学の壁を壊して提供するコースを超教育協会で開催しました。
慶應義塾大学三田キャンパスにて3日間。
若手経営者や大企業の役員候補など数十名が参加しました。

1日目の講義は東大・小宮山宏 元総長と東大・稲見昌彦教授。
2日目は、東大・松尾豊教授と東大・越塚登教授の講義。
3日目は隈研吾さん。
大学の壁を壊そうと考えているんですが、結果的に東大勢w
やっぱりコンテンツ持ってるもんねぇ。

その2日目、AIとIoTのお話。
松尾さん「人工知能の未来 -ディープラーニングの先にあるもの」
越塚さん「Society5.0に向けたIoT, AIの利活用及びデータ戦略」
いずれもアカデミックなテクノロジーに立脚しながら、ビジネスのリアリティを語る。
そして社会論・制度論に踏み込む。
客層に合った展開力、さすがです。

松尾さん「GAFAはじめメディアは広告の取り合いをしているが、まだ自動化・AIが入り込んでいない農業、建設、食は広告よりはるかに巨大。」
そのとおりです。
広告6兆。
農業9兆、建設50兆、食680兆。
教育20兆、医療30兆もでかいです。
まだ取れていません。

AIはネットの20年遅れで進んでいるという。
ネットだと1999年の状況。
ぼくが「インターネット自由を我等に」を著したのが1996年。
とすればAIはかなり見えてきた、「みんな」が踏み込む時期。
みんなの自覚はどうかな?

松尾さんは言う。
「これまでの世の中は人の認知の限界から、少数パラメータだけで扱えることをモデル化してきた。ディープラーニングで多数パラメータ系の分析・対応ができるようになる。」
つまりようやく人が認知の限界を自覚し、それを超える技術を使うようになるということですね。

そして、ディープラーニングは「深い関数を使った最小二乗法」だと断定する。
「深い関数」によって表現力が革命的に上がり、アルゴリズム的な挙動も含め表現できるんだと。
実にスッキリした説明で、わかった気にさせてくださるのが気持ちいい。

これに対し、越塚さんは「IoTはインターネットを軸にしつつ、AI、ロボット、ビーコン、データ、無線、サーバなどの技術群」だとします。「その全部だ」と。「多様で複雑な体系」だと。「だから大変」だと。
AIとIoTはセットで語られるが、真逆の性格なのかもしれませんね。

越塚さん「GAFAは世界のデータの0.1%しか持っていない。99.9%の分散したサイロ化された門外不出のデータがデータ流通上の課題。」
GAFAと同じビジネスをしようと考えるから危機感を持つが、すべきことは違うということですね。
それは松尾さんが指摘した、狙うべきビジネス領域の話と同根。

越塚さん「AIIoTビジネスは、地方が当前に解決すべき課題に対応すべき。ベンダーはビッグ困難な領域ばかり狙い3000万円以上の仕様を書いてGAFAに負けていくが、それより地方のスモールイージーの100万円仕事を掘り起こし、1788自治体に広げるのがいい。」
実体験に基づくリアリティがあります。

越塚さん「AI・ロボットに仕事を奪ってもらい、生産性を上げてもらい、ぼくたちは楽になろう。」
御意。ぼくが「超ヒマ社会」を望むのと同趣旨。
「問題は分配だ。」
御意。AI・ロボットが働く超ヒマ社会の最大の課題は成長戦略ではなく分配戦略になります。

越塚さん「AIの長所はめげないこと。ストレスフルな仕事をやってもらおう。
・リストラ担当の人事部長
・クレーム対応の電話対応
・教師(モンスターペアレンツ対応)」
ですよね。仕事を奪ってもらおう。

越塚さん「ロボットにやってほしいこと。人に見られたくない、人にしてほしくない仕事。
・介護でお風呂に入れてもらう
・ウォシュレットにお尻洗ってもらう」
いろいろありますよね。仕事を奪ってもらおう。

という授業のご紹介は、今後も超大学を開くに当たり、ネタバレにならない程度のチョイ見です。
またやりましょう。

2019年8月5日月曜日

よしもと住みます芸人によるSDGsのいま

■よしもと住みます芸人によるSDGsのいま


「ユヌス・よしもとソーシャルアクション」の報告会が新宿・吉本興業にて開かれました。
ユヌス・よしもとソーシャルアクションというのは、吉本興業がノーベル平和賞ムハマド・ユヌス氏と連携し、社会問題をビジネスで解決していく取組み。

貧困、失業、環境破壊などさまざまな社会問題を、みんなに起業させ、仕事を作りながら解決していくものです。

全国47都道府県「住みます芸人」が各地の課題に光を当てて、楽しみながら解決する。
芸人がセンサーとなって課題をおもろく抽出しつつ、IT企業などとマッチングしていく手法で解きほぐす、という活動です。

2018年3月、そのキックオフを行いました。今回はその進捗を共有するものです。
「ユヌス・よしもとソーシャルアクションが始まります。」

全国から集まった住みます芸人にプレゼンしていただきました。
ぼくは南海キャンディーズ山里亮太さん、キクチウソツカナイさんとともにモデレーターを務めました。
山里さんが蒼井優さんと結婚会見を開く直前のこと。

代表6件の事例をメモしておきます。

山梨:移動詰め放題屋
 芸人が県内をクルマで巡り、詰め放題タイムセールを実施。山間部の買い物弱者に、市場への流通が難しい高齢農家の規格外品を届ける。高齢者と高齢者のマッチング。店がないところの高齢者と、売るのが難しい高齢者、その需要と供給を芸人がグルグルと面白く結ぶ。

岡山:渋川マリン水族館再生
 存続の危機にある玉野市の水族館をイベントなどの仕掛けで再生する。日本は世界で一番水族館が多い水族館大国で、隠れたクールジャパン。だけど「おもしろい」水族館はない。
 エクストラクター社の技術を使ってライブ配信、そしてクリエイター1万2千人を擁するフーモア(CiPファンドが出資しています)によるアートプロデュース。

栃木:お笑い介護レクリエーション
 芸人がレクリエーション介護士2級を取得して介護職員の負担を減らす。高齢化で介護のニーズはどんどん増える。問題は人材不足。リデル社の協力で、シニア向けSNS、スマホ教室も。芸人とスタートアップが手を合わせて楽しく解決。全国に広がるモデルになるか。

4. 京都:丹後野菜市と芸人ふぁーむファンクラブ
 ポケットマルシェのシステムを使い京丹後の農作物を都市で販売。農業体験もネットで販売する。農業で人と市場をマッチング。農地と都市の連結。体験も売る。コトおこし。これがポイント。

福岡:畳の世界発信
 畳屋ラッパーがいぐさを原料にした畳アメを製造。いぐさが製造の危機にあったこと、そして食べられることをぼくは知りませんでした。いぐさの味がすると言われて、アメをなめてみたが、そもそも いぐさの味 を知らないので、畳感は口に広がりませんでした。
 畳万博も開催するという。何をするのか気になる。むかしパリに住んでいたころ、フランス語でLe タタミと呼ばれた畳はファッショナブルな高級家具として人気がありました。海外にチャンスがあるのでは。

静岡:深海魚ふりかけ
 沼津の水族館は世界初の深海生物の水族館。それをふりかけにして食べる。おいしい。ふりかけはアメリカでは魔法の粉と呼ばれ、サラダやフライドポテトなどにも使われています。そして深海魚はキャラが立ってるから、キャラも作って、おもしろくプロデュースできそう。

スタートから一年、少しずつ形が見えてきました。
報告会の冒頭、ユヌスさんが「おもしろいアクションで社会を変える」とおっしゃいました。各地で奮闘する芸人たちが社会を変えてくれるのか? 
みなさま、応援のほど、よろしく。

2019年8月1日木曜日

「EU新著作権指令の意義」メモ

■「EU新著作権指令の意義」メモ

ジュリスト6月号の鼎談「EU新著作権指令の意義」by東洋大学生貝直人さん、京都大学曽我部真裕さん、弁護士中川隆太郎さん。
インターネット上の著作権強化を掲げるEU指令について、得にプラットフォーム政策、リンク税、フィルタリング条項に関し議論しています。
重要なので引用メモ。


リンク税と呼ばれるプレス隣接権は、新聞社や報道機関にオンライン利用に特化した著作隣接権を付与するもの。
曽我部さんは「プラットフォーム事業者にいってしまっている広告収入を、一定程度、報道機関の側に取り戻すというような仕掛けは絶対に必要」と指摘します。

同時に「Googleは以前からデジタルニュースイノベーション基金というのをやっていまして、基金を積んで、いろいろな報道のプロジェクトに資金を提供するという形で支えている」と指摘。
言論やコンテンツを支える仕組みは、著作権のような制度か、企業やビジネスの仕組みか。重要な論点。

生貝さん「アメリカでも(略)インターネット上の情報流通はできるだけ自由にして、補償金のような形で対価を還元する仕組みに大きくシフトする提案がなされています」。

日本もそろそろ(ようやく)ネット配信の権利を補償金に移行する仕組みの議論が始まりそうです。

生貝さん「真のフェイクニュース対策は、質の低い、偽の情報を消去していくというよりは、質の高い、正にプレス出版物などの信頼できる情報が、インターネット上で健全に豊富に流通できる環境をどのように作るかだ」。
同意します。


もう一つの論点、フィルタリング条項。
EUでは電子商取引指令で一定要件下でプロバイダの侵害責任を免責する条項が置かれていたのに対し、ユーザがアップロードした違法コンテンツについて、プラットフォーマーが侵害主体になるように加盟国法で定めることが義務付けられています。

生貝さんはこの背景にバリューギャップ問題があるとします。
コンテンツ利用に関し巨大プラットフォーマーばかりが巨大な利益を得ていて、クリエイターたちに利益分配されていないという問題意識。
そしてEU委員会はほぼ全てのプラットフォーム規制に関し共同規制的なアプローチを取っていると指摘します。

日本でも海賊版対策で議論になったが、「プラットフォーマーが権利侵害コンテンツのフィルタリングなどを広く行うようになると救済や公正性、あるいはアルゴリズムに関する一定の透明性の確保というのがどうしても不可欠になってくる」。(生貝さん)


また、指令には権利制限も導入されているといいます。
拡張集中権利管理制度によって文化遺産機関がアウトオブコマース作品のライセンスを得やすくして電子利用を促す措置などです。
これも日本のデジタルアーカイブ戦略に参考となります。

生貝さんが「著作権法の民法特別法的なアプローチに加え、だんだんと事業者規制的アプローチの性質すらも帯び始めている」と指摘し鼎談を締めています。
知財本部で著作権法と競争法を結合した議論を行う、ないし文化審議会に競争法の専門家を投入するといった工夫が必要になってきていますね。