■ ITUワークショップonデジタルサイネージ
2011年12月、「ITUワークショップonデジタルサイネージ」が2日間にわたり開催されました。国連機関であるITU(国際電気通信連合)が主催、総務省とデジタルサイネージコンソーシアムが共催です。
世界初のサイネージ国際会議です。
まずはこれを日本で、それもポップのメッカ、アキハバラで開催できたのは慶賀に堪えません。
国内の通信事業者、システム開発事業者、サービス提供者、ユーザー等に加え、欧米の関連標準化団体、通信、システム開発事業者、そしてラオス、インド、ベトナム、モンゴル、インドネシア、タイ、中国、フィリピン、マレーシアの主管庁を含む16か国400名のかたがたに参加いただきました。
冒頭、ITUのトーレ事務総局長と松崎総務副大臣からのあいさつがありました。デジタルサイネージとその標準化の意義を熱く語られたのですが、通信政策を司るかたがたがサイネージを推進する姿に、やっとここまで来たかと感慨。コンソーシアムの目的の一つが「サイネージを認知させること」でしたから。
ぼくはその後、あいさつと基調講演に立ちました。いつもの話ですが概略をメモしますと、
・ DSCが設立されたのは2007年6月。以来、メディアとしての形は大きく変化した。屋外の大型ビジョンだけでなく、屋内を含むあらゆる場所に、小さなサイズのディスプレイも多数配備されるようになった。スタンドアロンのディスプレイが通信・放送網で接続されていき、街を覆うネットワークメディアに進化してきた。そして、広告での利用だけでなく、学校や病院、行政機関など、公共の役に立つ情報の共有手段として機能を発揮するようになった。
・ サイネージが各国で発展していくには、3つの課題がある。1)作る。新しいコンテンツやビジネスモデルを開発していく。2)つながる。普及を進めるには標準化が課題。まさにこの場がその推進を担っている。3)育てる。特に、新しいメディアを支える人材を育成する。そのためにも、こうした国際的な場を用意し、情報を共有し、人材の交流を進めることが重要。
・ 今年日本のデジタル業界には2つのトピック。1)地デジの全国整備。放送の電波がデジタル回線として使える。それまで使っていたアナログ波なども有効に使える。2)通信放送制度の大改正。電波利用の規制緩和が行われ、融合サービスが柔軟にできる仕組みとなった。サイネージをネットワーク整備面で後押しする機運が高まっている。
・ しかし、3/11、津波が東北地方を襲った。当日、東京で家に帰れなくなった人々は、街角のサイネージでTVニュースを見て、状況を把握して、それぞれの行動を取った。その瞬間サイネージは人々の役に立った。しかし、悲壮な空気が全国を被った。自粛ムードが広がった。原発事故もあり、節電の要請もあった。東京のサイネージの多くはスイッチをオフにした。
・ その後、長引く復旧作業の中で、サイネージも変化した。広告・エンタメ中心だったものが、再びスイッチオンしていく際には、より役立つ情報を提供するサイネージが目立つようになった。これからサイネージは新しい道を辿っていく。
・ システムが世界に広がっていく中で期待するのは、その上でより多様で楽しいサイネージが開発されていくこと。それは、国により、地域により、文化により、さまざまなモデルがあるだろう。日本は日本らしいサイネージを拡げたい。
さて、各国ゲストのスピーチやシステム展示、東京サイネージツアーなど盛りだくさんの国際会議でしたが、パネルディスカッションが刺激的でした。佐々木俊尚さん、電通の奥律哉さん、ニワンゴの杉本誠司さん、司会はDSC江口さん。
まずは佐々木さんが、広告というサイネージの位置づけに疑問を投げかけます。そして、ソーシャル、ローカル(地理空間情報)、モバイルとサイネージがどう連携するかを問う。パーソナライズとサイネージは相性が悪く、ソーシャライズされたサイネージの方が合っている、という指摘です。これはまだ海外のかたにはピンと来ないかもしれない。日本のサイネージとソーシャルメディアの先進性を物語っています。
奥さんは屋外広告などアウトオブホームメディアの市場が伸びていることを報告したうえで、ソーシャルグラフからインタラクトグラフへ、空間と共感とをつなぐしかけへ、というサイネージの未来像を提示。杉本さんはサイネージの目的が不明確であり、雑多なメディアをDSとして一からげにした状況であることを指摘しました。良くも悪くもそういう混沌とした場面にあります。
さて、今回の会議のテーマは「標準化」。さまざまなシステムがつながるように技術の標準を考えるというものです。サイネージ産業は国際化するが、地域密着性も高いメディア。その性格が混じるサイネージは標準化をどう捉えればいいか。この問いに佐々木さんは、「看板」であれば地域メディアにとどまるが、将来はネットワークとして世界中につながるのだから、グローバルなプラットフォームをどうするかが重要と答えました。ですね。
しかもHTML5でサイネージ、スマホ、タブレット、スマートテレビ、全てのスクリーンが連結していく。「つなぐ」こと一つ考えるにしても、マルチスクリーンで、クラウドで、ボーダレスな環境を前提に考える必要があります。
最後に、「規格化や標準化より、起業化が重要だ。」という発言がありました。そのとおり!確かに標準化は重要なテーマなのですが、産業やシステムが成長途上の現状では、それ以上に民間から爆発的な開発・創造・提供が沸き起こってくることが大切。サイネージ、来るよ!というムードと環境が必要です。もう自粛ムードはおしまい。役立つ・つながる サイネージを拡げよう。国連も、政府も、どしどし電波を出して、規制を緩和して、サイネージの重要性を説いて、あれこれご支援くださいませ。














