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2019年6月27日木曜日

教育情報化推進法が成立しました。

■教育情報化推進法が成立しました。
 「学校教育の情報化の推進に関する法律」(教育情報化推進法)が国会にて可決・成立しました。
 昨年、政府が提出した学校教育法等の改正により、「デジタル教科書」の制度化が実現しました。
 そして今回の法律は、自治体が推進計画を策定・実施する等の総合的な施策により、学校教育情報化が大きく進展するもう一つのエンジンです。

 めでたし、めでたし。
 
 以下のような内容です。
○国の責務(4条):学校教育情報化施策を総合的かつ計画的に策定・実施 
○地方公共団体の責務(5条)
○学校教育情報化推進計画(8条):文科大臣が総務・経産大臣と協議し公表
○都道府県学校教育情報化推進計画等(9条):都道府県、市町村は定め公表する努力
○デジタル教材等の開発及び普及の促進 (10条)
○教科書に係る制度の見直し(11条):検定等の制度を検討・措置、不断の見直し
○教職員の資質の向上(14条)
○情報通信技術の活用のための環境整備(15条)
○調査研究等の推進(19条)

 デジタル教科書やプログラミングと言っても、PCやネットがなく、そもそも使えない。
 早くEdTechに行きたいがまだ遠い。
 国は年1800億円の予算を措置しているものの、地方交付税措置で、自治体が他の用途に流用している。
 それを教育分野に振り向けるエンジンが弱かった。

 デジタル教科書も制度化されるものの、紙の教科書を前提とする仕組であり、授業時間の半分までしか使えないとする規制も導入されます。
 これら法律・ガイドラインを見直し、利用を促進すべき。
 推進法11条も、教科書制度を見直すとしています。
 現場の裁量で前に進めるよう仕組みを整えてもらいたい。

 この法律は、与野党の超党派国会議員による「教育におけるICT利活用促進をめざす議員連盟」が策定したものです。
 2015年2月に発足、会長 遠藤利明衆議院議員、事務局長 石橋通宏参議院議員のほか与野党の大臣経験者はじめ83名が参加しています。

 ぼくら民間アドバイザーも作業に加わって法案を作り国会提出、このたび成立に至ったものです。
 元はデジタル教科書教材協議会DiTT(現 超教育協会)が2015年6月、「教育情報化推進法の制定」を提言し、これを受けて2016年10月、議連として法案を制定する方針となったのが発端です。

 以来2年半、関係のみなさまの努力に頭が下がります。ぼくらグループが情報化推進の法律が必要と訴えたのが2005年(14年前)。
 そしてDiTTが2012年に「デジタル教科書法」を提言したものが2018年に政府提案の学校教育法改正で実現し、このたび「推進法」も議員提案で成立、目標が達成したわけです。

 今だから言いますけど、厄介なこともありました。
 当初、政治的に動くのが気に召さないのか、ぼくを筆頭に、議連に出席する者は某省のブラックリストに載せられ、業界のかたがたが協力を躊躇しました。
 官僚は1-2年で交代するがこっちは20年交代してないし、出禁は慣れてるんで無視して走りました。

 そんなことは、いっぱい、ありました。

 教育デジタル政策の優先度を高めたい。
 ここに資金や人材が投下されるように。
 だけど政府がそれじゃムリ。
 「官民データ活用基本法」も議員立法だが、有能な官僚と政治家が組み、ぐいぐいデータ政策を進めた結果、そのプライオリティは政権のトップ級に上りました。
 
 G20でのデータ論議を日本が主導しています。
 それを見るにつけ、なぜ教育デジタル政策はそうならないのか疑問でした。

 先に進みましょう。
 議連で意見を求められたぼくは、世界は2周先、AI時代の教育に進んでいることを指摘しました。
 このため民間として超教育協会を立ち上げ、産学連携体制を講ずる。
 BYODやクラウドなどインフラの整備、AIやブロックチェーンなど先端の開拓の双方が大事だと申し上げた次第です。

 光は射しています。
 文科省は部局も担当も変わって前向きとなり、クラウド利活用の促進を挙げるようになりました。
 自分の端末を持ち込んで勉強できるBYODにも道が開かれます。
 データ+AI利用の教育にも積極姿勢を見せています。
 これまでにない、政策転換だと言えます。

 そしてこの法案も最後は文科省が汗をかいて通ったという面もあります。
 感謝申し上げます。

 現政権のAI推し、経産省のEdTech推し、さらには最近、規制改革会議が教育情報化を論点に据えたことなど、政府全体の動きも力強くなってきました。
 子どもたちのため、政官産学で前進させたい。
 法律の成立をテコに、次、行ってみよう。

2019年6月24日月曜日

断食、してみた。

■断食、してみた。


断食道場に入門してきました。
伊豆高原、5日コース。
ひとりで。
誰もつきあってくれない。

5日まるごと飲まず食わず、というわけではなく、前半は酵母ジュースだけ、後半は粥や野菜の煮付けなどのわずかな補食を朝晩にいただきます。
とはいえ日頃、暴飲暴飲暴食の身を戒めるには強力です。
それなら家でもできるだろう? 
それは強者。
弱者は環境を変え、冷蔵庫もお菓子箱もない所に閉じ込められなければムリっ。

結論としては、だいじょうぶ。
直前に力石徹の番組を見たのが間違いで、道場に着いたときには腹ぎゅうぎゅう鳴ってましたが、その後さほどの飢餓感はなく、上機嫌に過ごしました。
合計3kg減。
そんなもんかな。
それよりも断食はデトックスや体質改善が一義で、その効果はにわかにはわからず。

空腹だとよく眠れます。
10時間ぐらい寝ていました。
で、頭は冴えます。
仕事しましたよ。
道場つったってぼくはヨガやらマッサージやらコース散策やらオプション的なものを一切拒否して個室に引きこもり、テレワークでうんと会議をこなし、レポートもどしどし仕上げました。
独りでできるデスクワークを持ち込むにはよいところ。

「はらへった」は死語なのでしょうか。
ぼくが子どもの頃は日常語でした。
宇野誠一郎さんの名曲「ちびっこ怪獣ヤダモン」(1967年)は「はらへった」で終わります。
「おどるポンポコリン」(1990年)ピーヒャラピお腹がへったよ、あたりが最後かなぁ。さくらももこ世代。
思えば、いつも腹ペコで、いつも元気だったんだよな。

戦時中から戦後はこの道場の補食みたいな日々だったんだろうか。
とすればぼくはサバイブできそう。
敵国の捕虜になっても、仮病で重労働さえ免れれば、機嫌よく熟睡する。
かつてパリでスパイをしていたころの、朝昼晩3食フルコースで接待する日々のほうが吐くほどつらかった。

驚いたのが、ぽつんと置いてあるAI+IoTマッサージチェア。
身体を測り、こりや疲れに合わせAIが最適なリズムでもんでくれる。
肩、背中、腕、腰、ふくらはぎ。
血圧・体重・脈拍をウェアラブルに測定し、LTEの先にいるAIドクターがチェックしてくれる。
日本のマッサージチェアはそこまで進化していたのか!

NHKクールジャパンで、自国に持ち帰りたいものを聞いたところ「マッサージチェア」と答えた外国人がいました。
なぜ?ツボを細かく探知してもみほぐしてくれるテクノロジーと、インテリアとしても優れるデザインの合体、と答えました。
ニッポンをよく見ている。ボーカロイドというテクノロジーと、可愛いキャラのデザインが合体した初音ミクと同様、テックとポップの総合が日本の強みです。

マッサージチェア、5年しばりで月々定額制。
ケータイ端末なのです。
そこまで進化する必要があるのか?という気もしつつ、5GとビッグデータのAIでまだまだ行きそう。
ほしくなってきた。
この道場はこれを契約させるためのケータイショップだったのか?

ほかにもたくさんマシンがありまして。
ウォーターベッドの上にのってくねくねするやつとか、足とお腹と頭に輪っかを乗せて磁気っぽいものを浴びるやつとか、背中に通したヒモがブルブル激しく動いてもんでるっぽいやつ(日本最古の健康機械とのこと)とか、
効いているのか、いないのか、判然としませんが、そこそこ楽しく。

その部屋に流れるBGMに、聞き覚えのあるメロディー。
そうだNHK朝ドラ「心はいつもラムネ色」のOPだ。
あれはぼくが社会人になった年だから35年前、主人公のモデルは漫才作家の秋田實さん、吉本興業創設者の吉本せいさんも登場した。
物忘れ激しく、この人だれだっけ?を連発しているぼくが35年ぶりの曲をたちどころに特定できたのも、頭が冴えてるってことなのかな。

AIやロボットが仕事の大半をしてくれる「超ヒマ社会」が来る。2030年ごろかなあ。
そのとき、何をするだろう。
エンタメ、スポーツ、食事、恋愛、勉強。実は断食道場に(周りの反対を押し切り)飛び込んだのは、スポッと超ヒマな状況に身をおいたらどんな心持ちかを探るのが狙いでした。

案の定、超ヒマは忙しい。
ヒマならヒマで、やるこたぁしこたま現れる。
電波の届かない電波特区を作って世間と隔絶しなければ難しいですな。

2019年6月20日木曜日

VRイベント「LAVAL VIRTUAL」、また来たよ!

VRイベント「LAVAL VIRTUAL」、また来たよ!
世界最大のVRイベント「LAVAL VIRTUAL」。
フランス、LAVAL。
パリからTGVで2時間、人口5万人の落ち着いたロワールの町。
ノルマンディーとブルターニュの結節点。
カマンベールの宝庫です。
日本でもみかける「PRESIDENT」はここで作ってるそうで。

この小さな町に、1万人の参加者が集います。
8,000㎡の会場いっぱいに、240の出展者。20年続く、名門イベントです。
参加者の60%がフランスで、その多くが地元のかたがた、20%が欧州、残りはその他の国々から。
地域と国際のバランスがいい具合です。
一般参加日には、大勢の親子連れが押し寄せます。

自治体、スポンサー、研究者、ベンチャー企業、学生、そして一般参加者のバランスがいい。
運営は非営利で、地元自治体、スポンサー、参加者の入場料からの収入でまかなう。
公益と商業のバランスも勉強になります。

LAVAL市が運営し、スポンサーには国鉄、通信、電力、農林中金、通信などインフラ企業が並びます。
VRという先端技術が町づくり行政に意味を持つだけでなく、多様な分野に溶け込むインフラという意識が見えます。


ジャック・シラク大統領時代に、この地域の知事も務めた産業大臣がデジタル技術での町おこしを図ったのがスタートだそうです。このイベントを開催するだけでなく、VR関連の企業や研究所、大学機関などを誘致し、それを育てていったといいます。

立ち上げに際しては日本の岐阜を参考にしたそうです。
梶原知事時代のソフトピアジャパンやIAMASのことですね。
今度は日本がLAVALを都市づくりの参考にしたい。
ポップテック特区CiPとも連携できないか、相談を持ちかけてみます。
(ここはアンリ・ルソーの生家だそうです。)

日本からの展示が多数。
これは神奈川工科大学山崎研究室。


風がふいてくるやつ。
東京電機大学松浦研究室。

もちろん慶應義塾大学KMDもがんばっています。
ウソをつくと鼻が伸びるピノキオシステム。

これもKMDの学生。
視線で操作するVR。

これもKMDの学生。
超福祉展でも展示した楽器。

これはKMDを卒業して、音楽とビジュアルをシンクロさせるアプリを商用化しようとしている兄ちゃん。

でもそれより、立教の中高が部活で「防災VR」を展示していました。
ウソつくと鼻が伸びるとか作ってる大学院よりイケてなくね?



てことで、また。
左上から時計回りに、焼き豚足、仔牛の腎臓、タルタルステーキ、ブルターニュのガレット。

2019年6月17日月曜日

ワークショップコレクションinよしもと!

ワークショップコレクションinよしもと!

ワークショップコレクションinよしもと。
慶應義塾大学や九州大学でのワーコレに芸人が参加したり、京都国際映画祭でミニ版を開催したりとこれまでもいろいろ吉本ワーコレはありましたが、吉本ベースでの本格開催は初めて。
これから始まります。

小学校の跡地である吉本興業 新宿本社にて開催しました。
プログラミングや映像制作、アニメ制作、工作や漫才作り。
18ワークショップが集合しました。

くまだまさしさんはワークショップの常連。
必ず親子の空気を持っていきます。
吉本興業には6000人の芸人がいまして、その全員がコミュニケーションの達人。
実にワークショップとの相性がいい。

ロバート山本さんの「むちゃぶりかみしばい」。
紙芝居作りです。
アートで名を成したり、芥川賞を受賞したり、音楽をヒットさせたり、絵本や映画を作ったり。
芸人はお笑い以外のマルチな才能を花開かせています。

田畑藤本「楽しい算数」。
東大工学部卒と立命館大経営学部卒、ベンチャー起業したほうがええんちゃうかと思うコンビ。
コミュニケーション力だけでなく、創造力と表現力を育むのがワークショップ。
それを吉本が提供するって、おもしろいですよね。

iUの客員教授もお願いしているチャドマレーンさん「英語で楽しもう」。
実は吉本興業は真剣に教育企業になろうとしているのです。
沖縄でエンタメ学校を経営することに加え、エチャイナ・メディア・キャピタルと上海に学校を設立することも決定、iUとも連携します。

漫才ワークショップ。
2002年にCANVASを設立する際、漫才ワークショップができないかと吉本興業に相談しました。
コンビでどついてコミュニケーション、それで人を笑わせる。
最高の日本型創作・表現ワークショップになると考えたのです。
根づいてきて、とてもうれしい。



ワークショップコレクションに欠かせない常連さんも出展。
原田博士の「ビスケット」によるプログラミングです。
今後、よしもとがワークショップを全国・海外展開するのと共同歩調が取れるといいですね。

竹芝CiPのイベントYouGoExでiUを紹介してくれた「ランパンプス」が子どもたちと大喜利を考えて、Pepperくんにインプット。
お笑いロボットプログラミング。これはお得ですねぇ。
ちなみにPepperくんの中味ってよしもとロボット研究所が作ってるんですよ!

これもワーコレの常連、深沢アート研究所「こわしてつくって工夫する。せんたくばさみ山。」
大量の洗濯バサミを置いておけば、これだけ創造的で愉快なワークショップになる。
ということがわかっている、というところが深沢アートの凄み。

iPadアプリKOMAKOMAでのコマ撮りアニメ作り。本家CANVASが提供しています。
ところで。
吉本興業の出資を得て、NPO法人CANVASとは別に、株式会社CANVASを設立し、ワークショップの全国・海外展開を図ることになりました。よろしく!

これもおなじみデジタルえほんコーナー。
世界のデジタルえほんを体験できます。
日本をデジタルえほんの本場にするという目論見は、だいぶいい線きています。

わが慶應義塾大学KMDも参戦。
ぼくのゼミの渡慶次さんと小宮くん。

わが超人スポーツも参戦。
スケルトニクスvsバブルジャンパー。
よしもとは超スポにも力を入れています。


吉本興業・大崎会長は「よしもとはNPOでええ」と言います。
元来、大勢の芸人さんのコミュニティであり、人を笑わせて幸せにすることが本業。
Laugh & Peaceを社是に掲げる。
利益を追求する企業というより、公益に近いんですよね。
こうした活動との親和性が高いのです。
今後もよろしゅうに。

2019年6月13日木曜日

イギリスからみた日本のテレビ、その未来(後編)

■イギリスからみた日本のテレビ、その未来(後編)

民放連の英国調査、つづき。
プラットフォーム、IPクラウド化、データ利用。
10年後のテレビ局の構造を左右するこの3ポイントを探りました。

1.プラットフォーム
  ネット配信が根付いた英国だが、ビジネスの行方は。取り分けテレビ局が集うプラットフォームの可能性と、OTTとの競合関係はいかに。日本はラジオはラジコでプラットフォームができましたが、テレビはまだ。日本のテレビ局にとっても差し迫った課題と考えます。

かつてBBC+民放のネット配信「カンガルー」構想を英競争政策当局(日本の公取)がストップしました。しかし今、ネットフリックスなどOTT対抗策として、BBC+ITVによる「ブリットボックス」が推進されており、Ch4など他の放送局も合流する気配です。

2007年からBBCのiPlayerなどVODが始まり、民放も追従してきた。当初はYouTubeへの対抗策で、YouTubeが60%のシェアを占めていたが、今は8%にまで下がった。一方、2012年以降、ネットフリックスやアマゾンが参入、これに放送局がブリットボックスで対抗しようとしているのです。

一方、VirginMediaのようなケーブル会社は、有料テレビのチャンネルから、VODによるコンテンツ=サービスへとシフトし、その中でネットフリックスやアマゾンを取り込んでいく戦略。視聴者はキャリアを選ぶのではなくコンテンツを選ぶ。改めて「コンテンツ」戦略がクローズアップされています。

プラットフォームよりもコンテンツ・アグリゲータないしコンテンツ・ゲートウェイが重要になるという見立てです。米OTTはコンテンツ制作に大量の資金を投下し、コンテンツ囲い込み戦略に動いています。英国にも日本にも、脅威に映ります。

ネットフリックスは日本アニメにも力を入れてますもんね。ただ、これに対し日本の放送局からは、そうして制作するコンテンツは海外市場向けであり、国内市場への影響は少ないとの声も。それよりも資金投入によってコンテンツ制作のコストアップに跳ね返るほうが脅威だといいます。

ローカル局はどうする。グラスゴーのSTV(ITVとともに構成するチャンネル3のスコットランド・ローカル局)は、テレビ放送もネット配信も同じスコットランド地域を担当しCM収入を得ています。いわば道州制の棲み分け。県域単位で多数の局がひしめく日本とは事情が異なります。

NHK+キー局によるテレビ番組のプラットフォームをOTT対抗策として用意すべきか。できるのか。県域ごとにテレビ局が存在し、その局数も異なる日本で、エリア分けを含め、どう整理するのか。この問題、15年ほどの検討期間がありながら、まだ落とし所がありません。でも時間はもうない。


2. IPクラウド化
  「BBCは10年後、地上波の放送をやめる意向だ」という衝撃的な噂が流れていました。2006年総務省のいわゆる竹中懇で「オールIP時代の放送」つまり全てネットを基盤とする放送を展望しようとして物議となりましたが、英国では現実問題として進行している気配。

英国はハード・ソフトが分離されています。電波を送出するハード主体と番組を編成するソフト主体とが別組織。TBS電波とTBS番組が別会社、って感じ。

そのハードのうち送出(プレイアウト)を担う会社「Red BEE」は英国テレビの80%相当のチャンネルを送出しています。ちなみに送信網はArqivaという別の会社が所有・運営しています。

2003年、BBCの送出部門分離から始まり、民放も請負い、フランスなどの送信にも広がり、2014年からエリクソン傘下となっています。電波の免許を持っているわけではなく、免許は放送局とマルチプレックスが持っているとのことなので、局からの業務委託による擬似的ないし実質的な分離ですね。

日本は竹中懇での議論の結果、紆余曲折ありながらも、放送法・電波法・電気通信事業法・有線テレビジョン放送法などなど10本程度の法律を大改正し、放送のハード・ソフト分離を選択できる規制緩和を断行しましたが、それを適用した放送局はほぼなく、基本はハード・ソフト一致です。

ただ、電波の送出機能をエリア毎に、ないし系列ごとに束ねたり、さらにはネット配信部門を切り出したりする経営もあり得る。スカパーなど衛星ではハード・ソフト分離ですし。経営戦略の選択肢として練っておくべきポイントです。

でも今回、Red BEEで見たものは、そのうんと先を行くものでした。全てのコンテンツをIPベースのクラウド環境でソフトウェア管理するシステムを実装していたのです。アマゾンAWSにコンテンツを乗せ、電波、ケーブル、OTT、あらゆるネットワークで、テレビ、スマホ、PC、あらゆるデバイスに送る。

オールIP、オールクラウド。マルチネットワーク、マルチデバイス。コンテンツ管理、加入者管理・課金、それらのマネジメントサービスも一体。
そうなるよね。だけどまだ先だよね。と見ないフリをしていたものを見せていただいた。
どうですニッポンのテレビ局様もこれにお乗りになっては。という営業。

オールIPクラウド。マルチネットワークデバイス。遠からずこの潮は来ます。日本は欧州や米国が用意するこうした環境に乗り、世界市場もにらんで事業展開の絵を描くのか。国産のIPクラウド環境を自ら構築する気概を見せるのか。何もせず各社バラバラの対応に委ねるのか。これも時間がない。



3.データ利用
  AI時代はデータ主導。ネットフリックスのヘイスティングスCEOは、ユーザーの嗜好を2000にまで細分化・整理し、世界中のコンテンツから個々のユーザーに適した動画を推薦しているという。日本でもネットCMの8割はターゲティング広告で、つまり視聴者のデータが主導するビジネスとなった。

総務省の放送諸課題検討会報告でも「融合サービス推進」として映像配信と並び「視聴データ活用」が重要項目として挙げられています。すべての産業がデータ主導に構造が変わる中で、放送は全国民をユーザとしながらデータを使えていません。通信・放送融合よりうんと高速に押し寄せている波です。

英国では「Digital UK」というNPOが地上デジタル放送の統一プラットフォームFreeViewを運営するとともに、そのネット版であるFreeviewPlayを運営し、そこで得た視聴データをテレビ局に渡す仕事をしています。

FreeviewPlayをコネクテッドテレビに実装してもらうために、機器メーカ(シャープ、パナソニック、ソニーなど日本企業を含む)らの規格をコミュニティとして結んでいます。

このデータ・プラットフォームが得る視聴データは各放送局に返し、各局が囲い込んで家庭ごとのプロファイルでCMを分けるといったビジネスに利用できる。このコミュニティによるエコシステムも米OTTへの対抗策だと言います。

ただ、視聴データを集め、全放送局にデータを販売・シェアしたいものの、一般データ保護規則GDPRで難しくなったという恨み節も。ブレグジットでGDPR外れたらいいんですかねと聞いたら、そしたら英国から視聴者がいなくなってるんじゃないか・・いう切り返し。冗談か本気かわかりませんでした。



さて、この3点。日本型のモデルは構築できるでしょうか。難しいでしょうか。
まだそこまで頭の整理ができていません。
でも、通信・放送融合のレベルをうんと超えた地平での戦略が必要になっている、ということはしかと認識しました。
大きな宿題です。

2019年6月10日月曜日

イギリスからみた日本のテレビ、その未来(前編)

■イギリスからみた日本のテレビ、その未来(前編)


民放連の調査で英国を訪れました。ぼくが座長を務める「デジタル・ネット研究会」の一環で、キー局・ローカル局混成チームにより、英国のテレビネットを見聞したのです。日本のテレビにとって、UKが最も参考になるモデルと考えた次第です。

島国として方やEU大陸に、こなた中国に向き合い、互いにGAFAに苦しむ二国。
ブレグジットが国内も対EUも折り合いがつかず、首相がビッグベンと仏ストラスブール(欧州議会)を行き来し、ロンドンのタブロイドには「メイのバカ」という文字が踊るさなかでした。

テレビは似ています。公民二元体制:NHK/BBCと民放。キー局とローカル局の併存。そして映像はテレビが面白く娯楽の中心で、産業としてもさほど傷んではいない。けれどもネットフリックスなどOTTはそこまで侵入してきている。

相違点もいくつかあります。キー5局の競合は日本が激しい。イギリスは事実上、ハード・ソフト分離だが日本は電波と番組の運営は一体。アメリカの脅威は言葉の壁があり日本はまだ緩い。超高画質の4K8Kは日本が先行。ネット同時配信やデータ利用はイギリスが圧倒的に先行。

折しも日本は国会でNHKのネット同時配信に道を開く放送法改正の審議が始まろうとしていました。BBCが同時配信を始めたのが2008年、日本は・年の開きがあります。英国は米IT+TVが2006年に映像配信に打って出る否や防波堤を築いたのですが、日本はそこまで対応せずに済んだ、という構図です。

放送局(キー局、ローカル局)、ケーブル、配信、VOD(ビデオオンデマンド)、データ、広告などさまざまな企業や団体を精力的に訪れました。どこも丁寧に、いや、あけすけに、状況や戦略を共有してくれたのには驚きました。日本の放送局との親和性を読み取っているのか、連携の期待感が響いた次第。

この報告は民放連としていずれ整理される運びですが、取り急ぎ、ぼくが感じた点をざっくりとメモしておきましょう。深読み・朝読み・勘違いなどあると思いますが、それはいずれ正式な報告を待って訂正されたし。



まず英国テレビの状況。
業界人はテレビが圧倒的に強いエンタメと口を揃えます。若年層はリアルタイムのテレビを見なくなっているが、テレビの強さは維持。メディア視聴時間のうちテレビが76%で、オンライン・VODが20%。ネットが伸びているもののテレビは傷んでいない。

英国は一人あたりコンテンツ支払い額が世界最大で、メディア接触時間は2012~18年で557分→733分に32%増加。ゲームとコミュニケーションが上昇しているが、映像視聴も248分→261分に5%上昇している。

世代格差が広がっているのは日本と同様。
BBCの平均視聴者は2017年で61歳。上昇中。若者はOTT(YouTube、ネットフリックス、アマゾン)がTV(地上波、衛星、ケーブル、IPTV)の視聴時間を超えている。

TV局の番組の視聴時間(ライブ+録画再生+キャッチアップ+VOD)は減少している。2010年の一日当たり242分から2018年には197分へと低下。
オンライン、DVD、ゲームなどを含む映像視聴時間の合計に占めるTV番組の比率は全体では71%だが、16-34歳では46%.

だが、放送事業者の収入は横ばい程度を維持していることに注意。テレビのITサービスはオンエア番組のキャッチアップが圧倒的な比重。テレビ局は番組をデジタルで自由にセールスしている。
テレビ収入が横ばいで、ネット収入が高まっている構図。カニバっていないということです。


さて、その上で、今回の論点は3つありました。
プラットフォーム:ネット配信の総合プラットフォームは成り立つのか
IPクラウド化:ハード・ソフト分離を超え、IPのクラウド化へ進むのか
データ利用:AI時代にどう立ち向かうのか
10年後のテレビ局の構造を左右するこのポイントを探りました。
(つづく)

2019年6月6日木曜日

理研AI研究センター「AIP」からのご報告

■理研AI研究センター「AIP」からのご報告
理研のAI研究センターであるAIPがシンポジウムを開催しました。ぼくはセンターのコーディネーターを仰せつかっており、冒頭ごあいさつを申し上げました。

ぼくは元は政府の役人。80年代半ば、新人のころ電電公社民営化の株式を活用して自動翻訳電話を開発するプロジェクトを担当。その結果、関西のATRができたのだが、その後MITに渡り、マービン・ミンスキーらとプロジェクトを開発。AIPセンターのコーディネーターはAI3度めの関わり。

世界的に最もホットなイシューとなっているAI。新聞にAIの文字が載らない日はない。先日、ビックカメラに行ったら、ご高齢の女性がマッサージチェアーを試しながら、さすがAIつきは違うとおっしゃっていて、もう開発から実装の段階でAIを人工知能と言い換えることもない、ここまで来ていると感じた。

AI、IoTそしてその基盤となるデータ駆動社会を示す言葉として、ドイツがIndustry4.0を唱えた。軽工業、重工業、情報業に次ぐ第4の産業という位置づけ。これに対し日本政府はSociety5.0を打ち出した。狩猟、農業、工業、情報に次ぐ第5の社会、ないし第5の文明。みなさんはどちらがお好みですか。

ぼくは、人類の創造物たるAIが人類の能力を超える、人類の創造物たるモノ同士がコミュニケーションするというのは、人類史を前記・後期に分けるほどの事件であって、18世紀からわずか2-3世紀の産業革命の一部門ではない。少なくとも日本がいう 文明論の文脈で捉えておくべきと考える。

もちろんそんなことは各国は承知している。からこそ、アメリカも中国もEUも、データを巡りつばぜり合いを繰り返す。GAFAは並の国家を超えるパワーを手にしたが、個人情報の流出のかどでCEOたちが批判されている。

EUはGDPRを施行し、フランスやイギリスはデジタル課税を導入する。アメリカと中国は5Gの設備を扱う会社に関して鋭く対立している。これらはみなデータが主導する社会のヘゲモニー争い。

農業社会は土地が資源。工業社会は石油が資源。情報社会は情報が資源。AI/IoT社会はデータが資源。土地や石油を求め国家は戦争を繰り返した。情報メディアのヘゲモニーも国家間の争いはあった。データを巡る争いは本格化していく。

政府は内閣府に「人間中心のAI社会原則検討会議」を設け、G7やOECDなどとの国際的な議論をリードする構え。ぼくが座長を務める知財本部でもAIの知財戦略を世界に先駆けて論じてきた。だが議論以上に、中身となるAIの開発と実装が重要。そちらに力を入れたい。その点で理研が担う役割は重いと認識。


米中欧がせめぎ合う状況はチャンスでもある。AIやデータを脇に置いても、米中は貿易戦争に収まりが見えない。EUはイギリス、ドイツ、フランス、イタリア、国内政治が大揺れ。人類にとって次の共通テーマであるAIに関し、日本はそれらを融和させる役割を果たすポジションにいる。

高齢化や災害。日本は課題先進国。それらにいかにAIで立ち向かうのか。SDGsにいかに寄与できるのか。日本が示すソリューションを世界に届けるチャンスではないか。

AIPセンターの3層建て。汎用基盤技術研究グループ、目的指向基盤技術研究グループ、社会における人工知能研究グループ。これは不可欠の構造。
汎用基盤の基礎研究。ここは杉山センター長が常々指摘するとおり個人勝負で、数理に強い研究者による直球の原理勝負。国家として力を入れるべき部分。

目的指向の応用研究。世界的な激戦区であり、大きな資本が主導している。研究機関に閉じず、オープンな連携がポイント。その点、NEC、東芝、富士通、富士フィルムとの連携センターも作られ、ハブとしてのフォーメーションができてきた。

世界知的所有権機関WIPOによれば、AIの特許出願は2013年から急増しており、3年で20倍に増加。2016年の出願件数ではトップ30のうち12が日本企業。全体では中国の活躍が目立つが日本もがんばっている。

加えて重要なのは社会課題への取組を内製化している点。倫理、プライバシー、制度なども研究対象として、文理融合でAI社会の構築を目指す。AIが世間に希望だけでなく不安も与える中、研究開発の本丸が世間と対話をすることが大切。単純なAI推進では立ち行かない。私も対話役として貢献したい。

AIやロボットが仕事を奪う。オックスフォード大学などの研究結果に日本では不安が広がった。日本ほど安全な国はないのに、日本ほど不安を抱える国もない。
不安だからキャッシュレスも進まない。小学校のIT化も進まない。シェアリングエコノミーも広がらない。これは空気の問題。空気を換えたい。

AIが9割の仕事を受け持ってくれて、生産が落ちず、ベーシックインカムなどで分配がうまくなされれば、われわれは1割しか働かなくて暮らせる。こんな朗報はない。私は「超ヒマ社会」が来る、早く来て欲しいと考える。

それは「働き方」革命よりも、「遊び方」革命を求める社会。超エンタテイメント、超スポーツ、超教育、超恋愛の社会。創造的な暇つぶしが大切になる。恐らく今より忙しい社会になると思う。

さきごろユーキャンが調査したところ、AI・ロボットで仕事が代替されることに20~40代のビジネスパーソンは過半数が期待しているという結果が出た。AIへの理解が広がっているのではないか。そしてこの期待感を高めるのがよいのではないか。

日本はAIの開発大国以上に利用大国を目指すのがよい。IT・モバイル技術の利用で女子高生が絵文字や写メを文化にしたように。米国産技術の利用でTVゲーム産業を産んだように。ポップカルチャーなどの得意分野で、福祉や防災など日本が課題先進国として取り組む分野で、新技術を先導的に取り入れる。

政府には理研などの研究に政策資源を集中投下してもらいたい。そしてそれ以上に、AIを積極利用するよう誘導してもらいたい。まずは自ら使うことだ。国会答弁は全部AIが書く。読むのもAIでいい。

来年の夏、東京に世界中の視線が集まる。AIを開発・実装する姿をお見せする大チャンス。私も自分の仕事として、AI、ロボット、5G、8Kなどの全技術を実装する特区を港区・竹芝に作るプロジェクトを進めている。その5年後、大阪では万博が開かれる。AIPも機会を捉えて、開かれた活動を進めたい。

2019年6月3日月曜日

ワークショップコレクションin福岡2019

■ワークショップコレクションin福岡2019
ワークショップコレクションin福岡。
4回目の開催にして、約60の子ども創作ワークショップが集結、2日間の来場者数27000人!
福岡がワーコレの本場になりました。

会場は九州大学伊都キャンパス。
自然に恵まれ日本一を誇る広大な土地でありながら、福岡市中心部から15キロという立地を活かし、未来社会の実証実験場になることを宣言しています。
そこが移転記念トリイベントとしてワークショップコレクションを受け入れてくれました。

主催はCANVASとホームセンターの「グッデイ」。
グッデイの若き社長、柳瀬隆志さんのリーダーシップ、
文科省から九州大学総務部長に出向した新津さんの手腕、
そして福岡の全関係者の熱意が結実したものです。


企業の協賛・出展も地元大手企業がかなり参画。
電力、ガス、鉄道、銀行。インフラの参加が力強い。
このイベントが福岡に根付いてきたことを感じます。
吉本興業も芸人による漫才ワークショップを開きました。

人気が高すぎて、長い行列や受付終了が見られるのもワーコレの特色。
毎度の要改善事項でございます。
申し訳ない。


さて、いくつかワークショップをのぞいてみましょう。
グッデイ×ファブラボ太宰府×イーケイジャパン:まちをつくろう!まちを走ろう!
グッデイ、電子工作キットやロボット工作キットを開発する「イーケイジャパン」、3Dプリンタなどの機材が集まったまちの工房「ファブラボ太宰府」による合同出展。

福岡ビスケットの会:自分で描いた絵が動く。プログラミング言語 Viscuit(ビスケット)を体験しよう。
原田博士の作ったビスケットのワークショップが福岡で自立。頼もしいです。

littleBits / KORG:ワクワク電子工作体験しよう!
マグネット式のモジュールをつなぎ合わせて簡単に電子工作が楽しめるlittleBitsを使用した体験型ワークショップ。

NPO法人QUEST & PCN福岡・百道・大名:IchigoJamで子供プログラミング
子どもパソコンIchigoJam(イチゴジャム)で、プログラミング言語BASICを使いコードを書きます。けっこうガチなコーディング教室。

九州電力:でんきを作ってみよう!
自転車を使った発電模型等を用いて、電気ができる仕組みを体感。
九電は九州各地の小中学校を訪問し、理科実験等の出前授業も行っているんですって。

西部ガス:ガス管で作る万華鏡
地中に埋まっているガス管(PE管)で作る万華鏡。
ガス管なんか見たことない。それを覗いてみる。ガスが身近になりますね。

しあげギャラリー:左官職人になろう!
「建築物に使用されるタイルや塗り壁材をワークショップを通じて子どもたちに身近に感じてもらい楽しんでもらいたい。」左官職人さんが指導してくれます。
日本は職人の国。いいね!

福岡県中学校技術・家庭科研究会:ロボットを操作して遊ぼう
スイッチ、電源、モータ、導線。とてもシンプルなロボットの操作を体験。
福岡県内の中学校で技術の授業を担当している先生たちが学校を飛び出しました。
頭が下がります。

福岡雙葉高等学校 GCコース:世界にひとつだけのバッグ・バースデイベアをつくってみよう! 福岡雙葉の学生さんたちがたくさんボランティアを務めてくれていました。
どうもありがとう!

九州産業大学造形短期大学部 森下研究室:かいじゅうの時間
怪獣になって遊びます。怪獣の着ぐるみをデザインして、怪獣の世界にいって遊びます。
いろんなデザインの怪獣を考えて、作って、体験するワークショップ。

九州大学化学研究部:まるで雪みたい!尿素の結晶を作ろう!
九州大学がいくつもワークショップを出展。総長もお越しになったほか、10名の教員が子供向けに授業も行いました。憲法学の授業に200名教室が満員御礼。みんなエラいなぁ。

学食も開いていました。いいねー
当たり前と思う?
慶應義塾大学でワーコレをやった時には学食も売店も開いてもらえませんでしてね。
逆に人が来すぎてもうダメって言われて追い出されたんですよ。
九大はエラい。これからも続けてくださるとうれしいです。応援します。

参考:過去の模様です。
ワークショップコレクションin福岡2018
ワークショップコレクション ミニ@福岡