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2018年2月26日月曜日

ブルターニュで ごめんなさい。

■ブルターニュで ごめんなさい。
ブルターニュはロクロナンの「パルドン祭」。
告解の巡礼です。
「パルドン」は「ごめん」の意味なので、「ごめんな祭」ですな。


黒のビロードに白エプロン。
金糸銀糸やピンクの刺繍、そして白いレースの髪飾り。
おごおかに歌い、村々を練り歩く、静かな祭りです。




涼風、いや夏でも冷たい風は、イギリス南部のブライトンやボーマスあたりを思わせる。
2つ煙突、レンガの平小屋、道端の石垣をおおう紫紺や深紅のあじさい。
庭はどこも手入れが行き届いている。
(Quimper)



黄金に刈り取られた麦畑と、緑に続くとうもろこし畑を横切る小道。
ラウンダバウト、ラウンダバウト、何十kmも信号はなく、ぽっこりと小さな教会の塔が現れたら、村。
一軒しかないカフェの軒先、粗末なテーブルに座る老夫婦が、じっとこっちを見ている。
(Rochefort-en-Terre)



「ブルターニュは貧しい」と昔ぼくのドイツ人秘書が繰り返していたが、ルネサンスの頃から変わらないこんな村が貧しいというのは、地上のどこが豊かなのだというのだろう。(Rochefort-en-Terre)



ただ、みな重い過去を背負っている。
第一次世界大戦ではブルターニュも24万人の死者を出したという。
(Locronan)



ブルターニュ。
ブルトン人の地。
ブリテン=イギリスのニオイが濃いわけです。
ウェールズ語に近いケルト語であるブルトン語は、19世紀に禁止され、70年代から復興運動が起きるものの、絶滅危惧種です。



住民の50%はフランス人であるとともにブルトン人であると認識していて、22.5%はフランス人というよりむしろブルトン人だと意識しているそうです。



「ブルターニュはソバしか取れない」
と昔ぼくのドイツ人秘書が繰り返していたが、ハム・チーズ・たまごのガレットをcomplete(完成)と呼ぶのは、もうその上が地上にないことを知っているからではないのか。(Vannes)



「クセがスゴいな」と千鳥・ノブのセリフが飛び出した子羊。
戦後、日本は進駐軍に「こんなもの食ってるヤツらとよく戦争したな」と思ったが、こんなもの食ってるヤツらがなぜいつもドイツに敗けてたんだろうといま思う。(Vitre)



貧しかろうが寒かろうが通年カキを食えるんだから幸せである。
上に行けばイギリスで、左にうんと行けばアメリカである。
(Cancale)



こんなに食えねぇよ。
つうぐらいイワシもいるでよ。
(Quimper)



巡礼に先立ち、みんなで教会に入ります。
司祭が歌うように説きます。
パイプオルガンに合わせて、みんなで歌います。
静かな、美しい祭りです。



ここロクロナンは、ポランスキー「テス」のロケ地でもありました。
あぁ、ナスターシャ・キンスキー。



二十数年前、パリでスパイをしていたころ、フランステレコムの招待でブルターニュを訪れたことがある。
フランステレコムの誇る研究所CNETがパリやソフィア・アンティポリスなどと並んでレンヌに置かれており、当時最先端のマルチメディア技術を見に来たのだった。
(Rennes)



日本では通信・放送融合の議論が始まったばかり。
フランスは放送の電波をフランステレコムが有するハード・ソフト分離で、放送技術もフランステレコムが開発。
CNETはNTT・KDD・NHKの研究所が合体したようなもので、欧州の標準化もリードする存在だった。
(Dinan)



インターネット前夜、ミニテルというAVネットワーク・サービスを普及させていたフランステレコムの戦略を盗むのは、スパイとしてやりがいがあった。
フランステレコムはパリから軍用機(!)を飛ばして招待し、見せてくれたのだった。
(Vannes)



ネット時代が過ぎ、スマート時代も過ぎ、AI/IoT時代に入る。
フランスは再びアメリカに対抗して、AI強者を目指す模様だ。
日本の戦略はいかに。
この地で改めて思う。
(Fougères)



ロクロナンの聖ロナンさんは、背中の痛みを取ってくれる聖人だそうです。
身近な聖人さん。ぼくの五十肩も治してください。



ごめんな祭 byビュッフェ @カンペール美術館。



さて、ブルゴーニュを横切って、帰りました。

2018年2月22日木曜日

知財本部2018、コンテンツ会合スタート

■知財本部2018、コンテンツ会合スタート
知財本部検証・評価・企画委員会、今ラウンド1回目のコンテンツ会合が開催されました。
座長を務めます。

委員は動画協会石川理事長、青学内山教授、吉本興業大崎社長、セガ岡村社長、カドカワ川上社長、NHK木田専務、NII喜連川所長、松竹迫本社長、ニッポン放送重村会長、写真著作権協会瀬尾常務、竹宮恵子先生、講談社野間社長、福井健策弁護士、ホリプロ堀社長、NTV宮島解説委員。

今回のテーマはコンテンツの海外展開。政府の施策を検証します。
2003年に知財本部が発足して以降、施策は厚みを増し、コンテンツの輸出額は2倍以上に増加しました。
成果は現れていると評価していいでしょう。

コンテンツの輸出額。
過去5年間(2011年から16年まで。放送は10年→15年)で、
映画は69→195億円、2.8倍
アニメは2669→7676億円、2.9倍
ゲームは2930→10667億円、3.6倍
放送は66→289億円、4.4倍。

ただし、コンテンツの世界市場5550億ドルに占める日本コンテンツの売上は141億ドルで2.5%。
マンガは世界の27%、ゲームは15%を占めるが、映画は1.1%、放送は0.4%、音楽は0.4%でしかなく、国内産業にとどまっています。
これを「伸びしろ」があるとみて、外へと促すのが戦略です。

総務省は放送コンテンツ輸出に注力し、海外売上の目標を3年前倒しで達成したため、本年6月の閣議決定で、2020年までに500億円に増加させるという強気な新目標を設定しました。
同時に、独禁法・下請法に関し、放送コンテンツの製作取引を適正化するガイドラインの整備・普及という地味で大事な行政も進めています。

経産省は字幕・吹き替えなどローカライズを支援するJ-LOP事業に5年で310億円を費やし、それによる海外売上の増加は2000億円に達したそうです。
他方、製作委員会に代表される資金調達方法について、出資・ファンド組成等の投資方式や国際共同製作など新手法の検証を進めています。

総務省・経産省は資金的支援による海外展開の促進を図る一方、取引適正化や資金調達多様化など構造変化を促す政策を講じています。
前者に注目が集まりがちですが、後者のほうが行政としては長期的にみて本丸であり重要な施策です。
こうした施策の充実を求めます。


委員からは重い指摘が相次ぎました。

瀬尾委員:クールジャパン政策はネーミングを含めコンセプトを再考すべき。省庁間で施策にダブりもあり、むしろ省庁横断の合同プロジェクトを作るべき。

重村委員:ジャンル別に考えるのではなく、全ジャンル一緒に展開すべき。

喜連川委員:ゲーム、アニメなど個別ジャンルでの政策評価よりも、プラットフォーマーが大きく動く中での世の中の動きをデータとして整理し、プロアクティブに動くべきだ。

野間委員:マンガ・アニメは米中韓では配信のほうが大ビジネスになっている。いずれASEANもそうなる。しかし有力なプラットフォーマーが存在せず、日本企業も弱い。

堀委員:純血にこだわりすぎている。日本のウィスキーは世界的に評価されている。日本酒を売るだけでなく、日本だけどウィスキーという発想が欲しい。欧米の先端ミュージカルが見られるとか、美術館でゴッホが見られる、という価値はアジアの人たちにとって高い。

堀委員は、日本の魅力の一つは「ブレードランナー」であり、都心の姿をそのままロケ特区として海外に映像で見せるべきとも提案されました。これは映画ロケ誘致のためのWGを別に走らせているので、そちらでも取り上げてみたい課題です。

また、日本でeスポーツが立ち上がらないことへの問題提起もありました。これは賞金規制を調整することと、関連団体を統一することの2大課題が整理されつつある状況をぼくから説明しつつ、知財本部でもテーマにすることを申し添えました。


住田知財事務局長:クールジャパンはポップカルチャーと古来の深い文化とにまたがる多層・多様なものになっており、整理が必要。もともと海外のものを混ぜ合わせたものがクールジャパン。各省は互いにいい競争をしているが協調も必要。役所の枠を超えた地域発のプロジェクトを作りたい。

クールジャパンのコンセプト見直し、非純血主義化、省庁横割りのプロジェクト編成、メディア構造変化を押さえた分析軸などベーシックな論点が出されました。eスポーツという新分野への言及もありました。

知財計画2018へと向け、議論スタートです。

2018年2月19日月曜日

新4K8K衛星放送まで1年を切りました

■新4K8K衛星放送まで1年を切りました
年末、「新4K8K衛星放送開始1年前セレモニー」がホテル・ニューオータニにて盛大に開催されました。
社団法人放送サービス高度化推進協会(A-PAB)の主催です。
ぼくは4K8Kの「配信」を推進する「映像配信高度化機構」の理事長として出席しました。

現在、試験放送中の4K8Kが2018年12月1日から実用放送に移ることについて、放送、メーカー、コンテンツの業界関係者と総務省による決意表明といいますか、普及啓発を進める出陣式のようなものです。
A-PAB福田俊男理事長は「1年前にセレモニーを開くのは珍しい」としながら、対応の必要性を強調していました。

というのも、家電売場のテレビは4Kが中心となり、受信機330万台に普及しているとはいえ、放送を受信するにはチューナーが必要で、左旋のチャンネルを受けるにはパラボラも必要となり、宅内wifi等との混信防止策も求められるので、対応に時間を要するからです。
1年で間に合うのか、というのが正直なところ。

BSと110度CSにおいて1年後に実用放送となるのは、NHK、民放キー局系5社を含む11社19番組。
このあたりは総務省サイト「4K9K放送の推進」にまとめられています。 

野田聖子総務大臣は「2020年に向け4K8Kの環境を整える」としつつ、「視聴者に選択されるにはコンテンツが鍵」と指摘していました。
NetflixやAmazonなどアメリカの配信プラットフォームも本格上陸する中で、映像環境は地デジ整備のころとは様変わりしており、4K8Kはそれを踏まえた対応が必要です。

これに関しNHK上田会長は4Kの番組を充実させるとともに、8Kはフラッグシップチャンネルとして来年のワールドカップや舞台・コンサート等の番組を作っていくと表明しました。
ぼくは全国の4K8Kパブリックビューイングの整備に携わっておりまして、ぜひそういう場でも見られるよう対応をお願いします。


この新4K8K衛星放送の正式サービス名が公表されました。
「新4K8K衛星放送」というんだそうです。
まんまやんけ。
ビートたけし監督「みんな~やってるか!」で、チャンバラトリオの哲ちゃんが親分の頭にリンゴを乗せて二つ切りにするワザを「これを名付けて、赤いリンゴがまっぷたつ~」と称するシーンを思い浮かべました。


野田聖子総務大臣が推進キャラクターを任命・紹介するというので、地デジカみたいなゆるキャラが登場すると思ってワクワクしていたら、深キョンが現れました。



4K8Kはぼくが代表を務める映像配信高度化機構が推進するように、配信によるパブリックビューイングなどB2B2Cで展開するのが先行しますが、放送で大量に発信されることにより産業化することになります。

放送・通信両面での立ち上げと、その国際展開とをにらんだ動き、始まります。

2018年2月15日木曜日

知財本部2018ラウンド開始

■知財本部2018ラウンド開始

知財本部 検証評価企画委員会が開かれ、知財計画2018に向けたラウンドが始まりました。
コンテンツと産業財産権について、短期・長期の戦略を練ります。
引き続き座長を務めます。

コンテンツ分野は動画協会石川理事長、青学内山教授、吉本興業大崎社長、セガ岡村社長、カドカワ川上社長、NHK木田専務、東大喜連川教授、松竹迫本社長、ニッポン放送重村会長、複製権センター瀬尾代表、竹宮恵子先生、講談社野間社長、福井健策弁護士、ホリプロ堀社長、NTV宮島さん。
重いっす。

冒頭ぼくのあいさつ。
「リオ五輪の閉会式で総理がマリオに扮して登場したのは、2020年に向け日本はコンテンツとテクノロジーの融合と発信を重視するという姿勢の現れ。
 これまでの施策を厳しく検証すべき事項もある一方、アニメや音楽の海外展開は成果が現れている。プラスの評価もすべき。
 一方、ここ10年スマート化の対応をしてきたコンテンツ分野にも、AIやIoT、ビッグデータ、ブロックチェーンなど一連の技術革新が大波となって押し寄せる。
 産業財産権分野とも一体となり、そしてIT戦略や科学技術政策とも連携して、新しいビジョンを作る時期が来たことでもある。」


知財計画の進捗について政府から説明。
・データ利活用促進のための知財制度の構築:
 データ利用権の契約ガイドライン、PDS・情報銀行などの実証実験、AIの作成・利活用促進のガイドライン 等

・第4次産業革命の基盤となる著作権システムの構築:
 柔軟性のある権利制限規定、拡大集中許諾制度の研究、ICT活用教育のための著作権制度改正、知財教育・人材育成:学校での知財教育の推進 等

・コンテンツ海外展開促進と産業基盤の強化:
 クールジャパン機構活用、TV番組支援、アニメ制作下請ガイドライン、新技術によるコンテンツ表現開発の促進:AR・VR・ドローン・AI、模倣品・海賊版対策 等

・映画産業基盤の強化:
 国際共同制作支援、ロケーション支援の強化 等、デジタルアーカイブの構築:アーカイブ間連携と利活用の促進 等

知財計画2017施策の予算要求は593億円。
新規事項は放送コンテンツ海外展開強化事業(総務省)、文化財活用センター機能整備(文科省)など。

これを踏まえ、住田知財事務局長から、IoT、ビッグデータ、AI、ブロックチェーンなどの技術進展を背景として「新・知財戦略ビジョン」を作ることが提案され、了承されました。前回2013年のビジョンはスマート化に対応するためのもの。あれから5年。必要です。


ここからは委員の意見交換。
瀬尾委員:PDCAを回す短期策と長期ビジョンの双方が必要。
相澤委員:成長戦略の中に知財戦略を位置づけろ。
喜連川委員:知財本部で議論したことが他省でも議論されるようになっている。われわれはこうしたプロアクティブな姿勢を続けよう。
迫本委員:AIとの連携でコンテンツも予測できない事態が発生する。民間のアイディアやチャレンジ、山っ気を活かす施策を。計画は立派なので、それを継続したい。
林委員:エビデンスベースの政策が重要。データ利活用最優先の原則を貫きたい。
・・これら意見はみなすんなり受け止められます。

一方、今回は教育に関する議論が活発でした。
福井委員:個人の知財力が重要だが大学での取り組みは薄い。
佐田委員:知財計画は知財教育のバイブル。ビデオ化など分かりやすく伝える工夫が欲しい。
宮島委員:小中高での知財教育は難しい。プログラミング教育と同様、外部教員を活用したい。
江村委員:データ利用やルール作成のリテラシーを上げるべき。
石川委員:アニメの海外展開はまだこれからで、現場の知財教育が基礎となる。
・・小中高、大学、企業現場、全てにおいて知財教育の拡充が求められています。

他にも重要な指摘がありました。
重村委員:日テレの12話ドラマをトルコが32話にリメイクしたら80か国に売れた、という話をトルコの関係者から聞いた。コンテンツ海外展開は順調だが情報がバラバラ。集約・共有が必要。
・・そんなことがあるんですね。

瀬尾委員:著作権法改正を急げ。法案としては世界的にアドバンテージのある内容だが、成立しないとそのアドバンテージが薄れる。ナショナル・デジタルアーカイブはAIのインフラだ。これも急げ。
・・急ぐべき案件、多いです。

内山委員:VRやプロジェクションマッピングなど「フレームのない映像」が注目される。10年後もスマホが主力であるとは限らない。「ポスト・スマホ」をテーマにすべき。

・・賛成。スマホに代表されるスマート時代の次を展望して戦略を立てましょう。

2018年2月12日月曜日

東京どこに住む?

■東京どこに住む?

 速水健朗さん「東京どこに住む?」。「東京β」に続けて読んでみました。
 東京の住むところは西側郊外から中心部、東部へ移っている。圏外から都心部への集中が進んでいる。そして、移動すること、場所を変えることが大事な能力になっている。2冊セット読み、お薦めです。

 現代は都市間格差の時代。職業選び以上に、住む都市が人生の格差を生む時代。自分の置かれた状況を改善する手段として、住んでいる場所を変えることができるかどうかが問われていくといいます。

所属企業・組織よりも、居住都市・地区。縛られずに自己決定するかどうか。同意します。


 本書はR・フロリダ「クリエイティブ都市論」を引用し、社会的な階層の移動と地理的流動性は密接に関わり、移動する能力の有無によって人生の可能性が大きく左右されると説きます。

その書(井口典夫先生訳)は、中でも世界的にみた東京圏の大きさ・強さを特筆しています。
「クリエイティブ都市論」


 そして、一生の間で引越しをする生涯移動回数は日本人は4~5回だとしています。

ぼくは仕事場を含めると、55年の人生で27回引越しをしてます。でもこの本を読んで、もっと動いて攻めてもいいかな、と思い始めました。


 人口増加率は千代田区、中央区、港区、墨田区、文京区、江東区が高い。合わせて、「閑静な住宅街」がマジックワードでなくなったと指摘します。東京の西側は振るわないんです。

新宿・渋谷はともかく、世田谷があこがれでなくなってきたのは地殻的な動きですね。


 2000年代前半、国土の均衡ある発展という国策を放棄した。東京は80年の1163万人から20163月の1354万人に、36年で200万人増を見せたといいます。そして今の人口集中は、東京圏というより東京の中心部への集中だと指摘します。

政策の影響がどの程度か不明ながら、都心集中が進み、なお進行中なのは実感します。


 特にITを扱う会社ほど都心にオフィスを構える。IT系ベンチャーはシリコンバレーからサンフランシスコに移っている、と指摘します。

→創造性がビジネスに重要だから。仕事とプライベートを地続きにしたいから。これは2000年ごろには明確な傾向でした。ビジネスの軸がハードからソフト、コンテンツ、アプリに移ると、担い手は「谷」より「街」を好みますから。


 ここで本書はエドワード・グレイザーの言葉を借ります。ITが人と人の間の直接的コンタクトの需要を生んでいる。スマホの普及で近い距離の価値が高まった。

かつて通信は「いながらにして」の手段だったが、モバイルが「いつでもどこでも」に変え、スマホは「リアル」を求めるようにしました。


 狭くて混んでいて自宅に近い店が人気。個人の店舗が太刀打ちできる時代になった。という観察も。

身近なコミュニティとコミュニケーションがネットで重みを持つ。個々の店が発信力と伝播力を持つ。「遠さ」を克服する通信が「近さ」を際立たせようとしているのは面白い現象です。

 戦前、戦後、高度成長、バブル、そして2020へ。
 西から東へ、周辺から都心へ、そしてコミュニティへ。

 これから始まります。実に楽しみであります。

2018年2月8日木曜日

超ヒマ社会のススメ5:局長はAIでいいんじゃね?

■超ヒマ社会のススメ5:局長はAIでいいんじゃね?

 超ヒマ社会、人のことより、自分はどうするかを夢想しよう。
 特化型AIに専門家の仕事は奪われて、ジェネラリストが有利になる。やたらと企画したり空想したりする、その腕を磨こう。今はいているわらじの数を、もっと増やそう。

超ヒマ社会のススメ2:キリギリスはAIアリのマネジメントを」
 http://ichiyanakamura.blogspot.jp/2018/01/ai.html

超ヒマ社会のススメ3:何足のわらじをはきますか?」
 http://ichiyanakamura.blogspot.jp/2018/01/blog-post_25.html

 そして、自分の遊び方革命だ。超人スポーツやら、お笑いライブ巡りやら、ゲリラバンド活動やらに時間を割く。読んだり観たりするのも増える。そういえばこの数年、読む本の量がどんどん減ってきているのですが、それは他に読むものが増えているせいです。ネットのニュースやらコラムやらまとめサイトやらツイートやらそんなものを大量かつ高速に読んでいるからです。

 カリフォルニア大学サンディエゴ校などの研究によると、インターネットの普及により、1980~2008年に人が「読む量」は3倍に増えたそうです。人はより読む生き物になっているのです。

 この数年ぼくは鑑賞する映画の作品数も減っています。ここで映画というのは、劇場映画ないしそれをDVDやネット配信に落とし込んだ作品のことです。しかし、映像作品を観る時間は格段に増えています。NetflixやhuluやAmazonのせいです。いや、おかげです。

 Netflix「火花」10話、劇場上映はありませんが、あれは映画なのか違うのか。カンヌ映画祭がNetflix作品を認めるか否かで悶着がありましたが、政府・知財本部の映画振興会議でも映画なるものの定義とメディアとの関わりの整理が求められています。かつて蓮實重彦先生が「35mmでないものは映画じゃない」と書いておられましたが、だとするともう映画ってものはないわけで。


 そもそも自分にはムリ、って仕事もたくさんあります。

 タクシーの運転手にはなれません。運転には自信がありますが、どの経路をどう取るか、地理空間の把握力が低くてお客さまに叱られます。赤坂で拾って、西麻布に向かってくれい。「外苑東から星条旗通りですか、青山一丁目から乃木坂にしますか、溜池から六本木に向かいますか」なんて、路線図を脳内に描いてたちどころにルートを割り出すなんて、ぼくから見れば超人技です。

 京都もんにとって道というのは東西南北に碁盤で、出発点と到達点さえわかれば、経路をどう取ろうが距離は一定で、とりあえず向かえば何とかなる。問題は北がどっちにあるかで、常に盆地の山を見て北を確かめ、はじめの一歩を間違えなければ大丈夫。東京は、山はないし、道は斜めったり弧や円を描いたりしてるし、五叉路とかあるし。東京の道はアホや。かしこやないと運転できひん。


 ソムリエもムリ。ブルゴーニュ、ボルドー、トスカーナ、ナパバレー、チリ。ピノ・ノワール、シャルドネ、カベルネ・ソーヴィニヨン。知らんわ。白か赤かロゼか泡か、見たらわかることぐらいしかわかりません。奇跡のマリアージュとか、よう起こさん。繊細な舌センサーと、その記憶データベースから引っ張り出して掛け合わせてマッチングする想像力と、それを再現する創造力が要るんですもんね。

 先生もムリなのです。教授の肩書を持ってはいますが、教えることなどできません。ぼくの持つ知識なんてのは、書き物にしてありますから、読んでもらえば足ります。ぼくにできることは、プロジェクトの場を用意して、そこに参加してもらって学んでいただくことぐらい。教育者っぽいことはできません。世の中の先生のみなさまには頭が下がるのであります。


 自分に向いている仕事って何だろう。生まれ変わったら、何になりたいかな、ぼくは。

 たぶん、最初はまた官僚を選ぶと思います。官僚はジェネラリストで、超ヒマ社会向きだからです。そして官はそこからの道筋が広いから。ぼくは官から学と産(ビジネス)の道に進みました。天下りじゃなくて、天上がり。若くして飛び出しましたんでね。逆に、学や産から官への道はまだ狭い。

 官から他の道に流れて成功した先人って、結構いるんですよ。政治だと吉田茂(外務)、岸信介(農商務)、池田勇人(大蔵)、中曽根(内務)ら戦後の総理大臣たち。最近では地方政治に京都の山田知事(自治)や広島の湯崎知事(通産)など多くの例があります。産業では村上世彰さん(通産)、文化では三島由紀夫さん(大蔵)がおられます。

 いま官僚に2足3足4足のわらじを無理にでもはかせれば、かなり活躍してくれるんじゃないかな。ぼくが現役のころ、もっと緩かったですよ。官僚のかたわら、本を書いたりTVに出演したり、自由に動けました。その後の官僚バッシングと公務員倫理法の縛りとで、国を代表するジェネラリストが縛られているんです。

 AIの超ヒマ社会には、そういう人たちを解放することが大事です。まずは官僚の働き方を改革しましょう。官僚の遊び方を解放する、というほうが正確かな。改革は、まずは、官から。AIは役所から導入しましょう。経産省は国会答弁をAIに作らせてるっていうし、だったら局長や審議官はAIでいけそうだから、そのあたりから置き換えて。そうして役所を超ヒマにして、その分、若い官僚たちに外へ出てもらい、ジェネラルな仕事をしてもらおう。



 ところで、AIで到来する超ヒマ社会は、変化必定の世であり、ジェネラリスト・よろず屋が強い。それに対応するには、変化を楽しみ、学び直しを当然とする姿勢が大事。だけどそれは専門性を捨てることじゃなくて、1-2年に一回、新しい専門領域を作っていく、という作業だと思います。

 てなことを言うのも、ぼくはそういうことを余儀なくされてきたから。大学は5年行ったものの音楽ばかりしていて専門なるものがないまま官僚というジェネラリストの道を選び、その後仕方なく目の前の仕事に応じて勉強させられたからです。

 社会人最初の配属は通信自由化の戦争まっただ中で、伝送・交換技術、情報流通の経済学、独占公益事業の法制度をテッテ的に勉強しなければついていけなかった。担当した自動翻訳プロジェクトを回すには、音声認識や機械翻訳の先端技術をテッテ的に勉強しなければ相手にされなかった。

 次の配属のCATV/衛星部門では、映像技術、電波・放送法制度、広告・コンテンツ業界構造をテッテ的に勉強させられた。郵便局への転出では郵便・貯金・保険の勉強を、パリへの転出ではフランス語や欧州政治経済を。行革担当では行政法や国家組織を。当然のことです。

 でもね、もっとキツかったのは外に出てから。MITに参加したとたん、コンピュータやAIや物理化学やデザインを必死こいてかじり直さないと会話にならないし、セガの仕事ではゲーム制作や半導体のイロハを知らないと会議にも参加できない。そんなことの繰り返し。

 超ヒマ社会は、ヒマを乗り切っていくだけの、幅広い勉強や鍛錬が求められていくと思うんです。ぼくはヒマ社会を熱望しているのですが、それはヒマだからであって、ラクだからじゃないんですよ。けっこうヒリつく刺激的な日々になるかと。


2018年2月5日月曜日

東京βにみるエネルギー

■東京βにみるエネルギー

 速水健朗さん「東京β」。
 映画、テレビ、小説、マンガなど戦後の作品から切り取る東京像。2020東京は、その延長にあるのか、ないのか。次の東京を描くコンテンツは何か。ワクワクと感じながら、読みました。


 まず、川島雄三1962年監督「しとやかな獣」をスケッチ。
 晴海団地の高層アパートに、元海軍中佐の父(伊藤雄之助!)を柱にうさんくさい4人家族が優雅な暮らしを演じる。戦後日本人の新しい生活を皮肉る。本書がこの作品から始まるのは、β感が濃くて実によい。

 「しとやかな獣」は、70年代後半、二次オイルショックのころ、ぼくがいつものように高校をサボってアパートでテレビをつけていたら、昼前にオンエアされて初めて見た映画。
 自分が生まれた時分の東京の、自分がいるのと似たアパートに立ち込める歪んだエネルギーに、言い知れない不安を覚えました。

 それはいずれ自分もそんなエネルギーを発する磁場に出向くのかなぁという、田舎者が何者かになるには上京するしかない時代の高校生が抱く普通の気だるさでした。
 だけど、平日の午前中にそんな妖しい映画を地上波がかけていたのは、ある意味、豊かでした。

「しとやかな獣」と対比させるのが森田芳光1983年「家族ゲーム」。
 東雲の都営アパートが舞台です。前者は戦争、貧困という不安を描きましたが、後者は進学、夫婦仲、いじめという不安です。戦争の不安と、平和の不安。大きな不安と小さな不安。いずれも湾岸が舞台でした。


 そのころは既に東京のシンボルは東京タワーでした。が、東京βはそれ以前の高層シンボルである工場の煙突に着目します。
 小津安二郎作品にはよく登場しますよね。1936年「一人息子」には埋立地から見る煙突が、1953年「東京物語」には江東区の工場の煙突が現れます。戦争をはさみ、東京は煙突の街でした。

 東京タワーはよく壊されます。東京βによれば、最初に破壊した怪獣は1961年「モスラ」で、次いで64年「三大怪獣 地球最大の決戦」のキングギドラ。しかしゴジラは2003年まで壊していないそうです。ゴジラは50年がまんしたんですね。

 ウルトラQでは66年「ガラモンの逆襲」で、セミ人間に電波で操縦されたガラモンが破壊します。電波塔を電波が襲うのです。恐ろしいです。

 東京タワーだってがんばります。東京βに記述はありませんが、ウルトラQ2020年の挑戦」で人間の肉体を奪いに来たケムール人は、神田博士の発明したXチャンネル波を東京タワーから発射されて倒れ、消滅します。電波塔が電波で人類を救うのです。

 「東京氷河期」ではペギラが東京タワーを凍結しましたが、ゼロ戦の名パイロットからアル中に身を落とした沢村照男がセスナで特攻して、東京を救います。ゼロ戦からのアル中は、しとやかな獣の父にだぶる、戦後20年の点描。

 ところでガラモンは電波が途絶えると口から粘液や泡を吐いて目を閉じます。電波を受けたケムール人は頭頂部からピュッと液体を滴らせて消滅します。電波系は最期が汚い。しかし特攻を受けたペギラはきれいに消えます。 東京βとは関係ありませんが。


 東京タワーといえば岡崎京子。本書は「繁栄と消費の帝都である東京がきっとフェイクであると自覚していた岡崎京子」「いつか終わる繁栄と消費の帝都、だからこそ楽しむべき現実という2つの意味で東京タワーを描いてきた」と鋭く分析しています。

 岡崎京子「東京ガールズブラボー」。80年代、北海道から上京した主人公のセリフ「ふしぎふしぎ東京タワーって みてるだけで元気になっちゃう」。バブルに至る80年代の勢いを仮託したのですね。

 ところで東京ガールズブラボーには、主人公が少年ナイフ「バナナリーフ」を口ずさむシーンがあります。そこだけちょっと大阪が出現しまんねん。


 東京β80年代を解釈する題材として、沢田研二「TOKIO」を挙げます。YMOも「テクノポリス」でTOKIOとつぶやきました。「西洋の視点、つまり異文化として見た東洋世界を自らが演じるといった屈折したオリエンタリズムとでもいうべき東京=TOKIOの再解釈」だと。

 東京ではなくTOKIOと記すことで、西洋から見た日本という読み替えを行う必要があった、というのです。西洋に追いついた日本を自己規定する行為がTOKIOだと。クールジャパンが海外からやってくるのはそれから20年後のことです。

 写真家・大山顕さんの日本橋の見方として、水運インフラとしての日本橋川、街道インフラとしての日本橋、昭和の大インフラ・首都高、地下の銀座線、全4層の都市構造という視点を紹介しています。なるほど、江戸から昭和にかけてのインフラの重畳だと。

 悪評高い首都高の景観を、64年五輪に向けてエネルギーにあふれた日本人の魂だと指摘します。なるほど、そう捉え直すほうが自然ですね、半世紀を経た今は。

2018年2月1日木曜日

超ヒマ社会のススメ4:早くぼくの代わりに働いて

■超ヒマ社会のススメ4:早くぼくの代わりに働いて
 コンテンツなる言葉が使われ始めたのは25年前、1993年のこと。デジタル化により、端末はマルチメディアとなり、流通網がインターネットに収束していく。それまで映画、ゲーム、音楽、新聞、書籍などバラバラだった情報サービスも、その上で一体的に流通するようになる。それをとらえて生まれた概念です。
 コンテンツは産業として期待を集めます。経済産業省は「コンテンツ産業は新たなリーディングインダストリーとして、我が国経済を牽引する可能性大」(200311月「コンテンツ産業をコアにしたジャパンブランドの確立」)との認識を示し、20044月、内閣官房・知的財産戦略本部がとりまとめた「コンテンツビジネス振興政策」では、これを押し進め、「コンテンツビジネス振興を国家戦略の柱に」すると述べました。
 しかし、当時ぼくが過去のデータで推計したところ、コンテンツの産業規模はGDPの関数です。GDPのコンテンツ産業規模に対する決定係数は0.988で、GDPが増大する場合のコンテンツ市場拡大への弾力性の値はほぼ1。GDPの伸びを越えてコンテンツが成長する可能性は低い。主客が逆で、そもそもGDPを増やさないと成長しない。
 現に、政府の期待をよそに、コンテンツ産業が経済を牽引するほど成長を見せることはなく、その後むしろデジタル化の影響を受けてコンテンツ産業の規模は縮小傾向にあります。

 他方その間重要性を増したのはソーシャルメディアでした。PCケータイ、インターネット、コンテンツからなる「デジタル化」が一巡した後、スマホ、クラウド、ソーシャルメディアからなる「スマート化」がやってきて、サービス層の主役は産業的にも情報トラフィック的にもコンテンツからソーシャルに重心移動しました。
 コンテンツの重要性が下がったわけではなく、コンテンツをネタにしながら、コミュニケーションやコミュニティの価値が高まった、ということです。コンテンツからみると、ソーシャルメディアはプラットフォームと呼ばれ、自らが活躍する命綱でもありました。
 ソーシャルではなく、コンテンツ配信を本業とするNetflixAmazonなどのプラットフォームも力をつけました。日本の配信プラットフォームはdocomoiモード以来のならわしとして公平なプラットフォームたることに注力し、コンテンツ制作には冷淡でした。
 ところがNetflixAmazonはコンテンツの自社制作に巨額の資金を投じ、プラットフォームとコンテンツの両立を図ります。というより、プラットフォームコンテンツこそが競争力の源とみます。それはもともと任天堂がファミコン時代から採った成功モデルであり、それを映像メディアで実行したということです。
 ついでに言えば、ApplePCiPhoneiTunesのハード+ソフト両面モデルを採り、Googleが検索エンジン→Androidのソフト+ハード両面モデルを採ったのも、ゲーム機+ゲームソフトの任天堂/ソニーモデルです。

 さて、スマート化はシェアという産物をもたらしました。所有より「いいね」を求める人々を生みました。そして家やクルマという大きなモノから、時間やスキルといったバーチャルを共有する方向へと動いています。
 超ヒマ社会のススメ3:何足のわらじをはきますか?」
 http://ichiyanakamura.blogspot.jp/2018/01/blog-post_25.html
 その価値を可視化するサービスも現れました。例えば個人の価値を株式のように評価し、ビットコインで売るVALU。人気YouTuberの売り抜け騒動でヤバいイメージがつきましたが、人の能力や価値を評価・資金化して共有・流通する仕組みは、ソーシャル上での人のコンテンツ化を進める点で、かなり真ん中の球です。
 自分の価値を認識し、自己をコンテンツ化しながら、その時間やスキルをモジュール的に提供する。何足もはいたわらじをあちこちに脱いでいく。それが超ヒマ社会の働き方・遊び方になるでしょう。
 提供する時間やスキルのポートフォリオをどう設計して、どうソーシャルでシェアするか。専門的なスキルを8時間5日提供し続ける。1日を4時間+4時間に2種兼業する。8時間を週3日と2日に分ける。5種兼業で毎日仕事を変える。何だってアリです。いや、週1日だけ働いて、残りの日はAIに存分に働かせる、というのがスタンダードかな。

 そうなると、AIをマネジメントする能力こそが人のコンテンツ価値になりそうです。
 それは使うAIのアルゴリズムとマシンの性能と、学習済みモデルの優秀さに左右されます。自分の配下であるAIアシスタントがどれだけ仕事をしてくれるかです。

 稼ぐインセンティブは、よりよいAIを入手するため。素敵な服やゴージャスな食事よりも、いいAIが欲しいわぁ。そして超ヒマ社会のぼくの暇つぶしは、もっぱらわがAIの調教です。かしこくなあれ、かしこくなあれ。そして一刻も早く、ぼくの代わりに稼いでおくれ。


※イラスト:ピョコタン画伯