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2026年6月29日月曜日

■ビジネスとアート、1冊ずつ

■ビジネスとアート、1冊ずつ


デザイン思考からアート思考へという言説によく接する。ビジネスにアートが重要と聞く。

そうだろうと思いつつうまく言語化できず気持ちが悪い。

そこで、それを唱える経営学者の本や論を読み漁ったのだが、ピクリとも引っかからない。

ここはビジネスとアート、それぞれリアリティをもつ人に聞かねば。

そこで手にした2冊、取り急ぎピクリときた部分のメモ。

 

1 ビジネスのひと

ニール・ヒンディ「世界のビジネスリーダーがいまアートから学んでいること」

・一流芸術大学がMBAコースを始めている。アートの手法、創造性をビジネスに取り入れて、革新性・創造力を育てる。

・ビジネスとアートはともに必要で依存する。アートの世界のイノベーションのプロセスを仕事に取り入れる。

・ルネサンスは美が高邁な思想や価値体系を生み出すという考えに基づいて都市を建設した。

・アーティストと起業家は好奇心と創造意欲に共通点。

・起業家の直感的な右脳型思考と組織が必要とする左脳型思考のバランスを取れ。

・ソフトウェアをつくるには絵画同様、美への徹底したこだわりが必要。

・起業家はアーティストと同じように、人々が見落としていることに目を留め、それを形にする。

・革新的な起業家や企業の創設者は、アーティストが普段から使っている5つのスキル=関連付ける力、質問力、観察力、ネットワーク力、実験力、を身につけている。

 

2 アートのひと

秋元雄史「アート思考」

・ジョン・マエダ:デザイナーが生み出すのは解決策、アーティストが生み出すのは問いかけ。

・世の中の問題解決をするデザイナーの時代から、主観的な世界の問題提起型アーティストの時代へ。

・デザイナーは外側にある課題・クライアントに向き合うのに対し、アーティストは内側から湧き上がるものに向き合う。

・アーティストが自らの想像力と意志により制作したのがアート作品:前例のないアートを探求する孤独。

・アーティストはビジョンを持ち実現することを優先する自由な心をもつ主体性がある人たち。

・アート思考は、わからないものに対して考え続ける態度。問いをつくり出す力は作品の創造性やオリジナリティと相関する。

・日本企業は破壊的イノベーションが苦手--アートの世界でも革命より継承が大切。

・現代アートの三大要素:インパクト、コンセプト、レイヤー(解釈層)。

 

 

全員起業のiUは、ビジネス・アーティスト=起業家を育てる。だが多くは失敗し、そこから学び、社会に出て、組織人となり、ビジネス・デザイナー=創造力ある問題解決者となる。

ただ、孤高のアーティストを目指すメソッドが乏しい。これから腰を据えて「アート」に取り組もうと思います。

2026年6月22日月曜日

和田誠「銀座界隈ドキドキの日々」。

和田誠「銀座界隈ドキドキの日々」。


銀座のデザイン会社、ライト・パブリシティに勤めた和田さん1960年代の思い出。デザイナー、作家、画家、映画監督、翻訳家、経営者、平野レミさんのご主人

93年の本著が綴る銀座の、デザインの、栄光の日々は、伸びゆく日本の縮図であり、その後30年にぼくたちが失った軽やかでギラついたエネルギーを発している。

私淑する杉山恒太郎・現ライト・パブリシティ社長に、この本について語ってもらいたい。

人名がたくさん登場する。この手の本がぼくは好物だ。何より全員、和田さんが交わったひとたちで、当時、銀座というプラットフォームがデザインを軸に爆発的な才能の増殖炉だったことがわかる。

 

宇野亜喜良、横尾忠則、田中一光、向秀男、伊坂芳太良、前田憲男、谷川俊太郎、亀倉雄策、古谷充、寺山修司、真鍋博、植草甚一、武満徹、黛敏郎、高橋悠治、粟津潔、立木義浩、篠田正浩、丸谷才一、吉村実子、水森亜土、三島由紀夫、水谷八重子、都筑道夫、立川談志、湯川れい子、篠山紀信、芥川也寸志、久里洋二、三宅一生、一柳慧、横山隆一、清水崑、手塚治虫、長新太、岸田今日子、石原慎太郎、土方巽、小島良平、赤塚不二夫、黒田征太郎、矢崎泰久、柳原良平、古川タク、山口瞳、浅葉克己、淀川長治、羽仁進、木村恒久、福田繁雄、唐十郎、小松左京、瑳峨三智子、岡本太郎、遠藤周作、鶴田浩二、勝新太郎、小中陽太郎、吉田日出子、宮本信子、小川真由美、木の実ナナ、九重佑三子、倍賞美津子、岸洋子、筒井康隆、永六輔、黒柳徹子、渥美清、いずみたく、中村八大、竹中労、吉行淳之介、小沢昭一、森山良子、恩地日出夫、岡本太郎。

 

どうですか。

おかしくないですか。

当時の全員じゃないですか。

和田誠さんという、銀座の、デザインというプラットフォームが、全部をつないでいた。

それって、今で言うと何でしょう。

 

大友克洋、河瀨直美、松本大洋、庵野秀明、安藤忠雄、草間彌生、米津玄師、椎名林檎、ボーメ、富野由悠季、菅田将暉、東村アキコ、村上春樹、藤本タツキ、宮藤官九郎、きゃりーぱみゅぱみゅ、村上隆、真鍋大度、Mrs. GREEN APPLE、会田誠、松本人志、市川團十郎、宮本茂、三谷幸喜、尾田栄一郎、蜷川実花、猪子寿之、隈研吾、小島秀夫、Ado、役所広司、湯浅政明、竹宮惠子、森見登美彦、奈良美智、山崎貴、宇多田ヒカル、押井守、落合陽一、伊東豊雄、ひろゆき、桑田佳祐、令和ロマン、吉沢亮、矢野顕子、浦沢直樹、宮崎駿。

 

が全員、どこかの、何か、誰かがメディアとなって、つながってるようなもんじゃないですか。

そういう、どこかの、何か、誰かって、今ありますか?

SNSですか?みんなをつないで、価値を生むことができているだろうか?

ほしいなぁ、そういうの。

っておもう本でした。

2026年6月15日月曜日

デジタル政策の論点2026

デジタル政策の論点2026


デジタル政策フォーラム 「デジタル政策の論点2026~」を開催しました@丸の内。

https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000022.000131931.html

 

登壇者:東大宍戸常寿教授、総務省寺村行生特別交渉官、経産省守谷学情報経済課長、デジタル庁山口真吾参事官、デジタル行財政改革会議吉田宏平次長、ロボット革命・産業IoTイニシアティブ協議会入江直彦共同主査、データ社会推進協議会奥井規晶代表理事、落合孝文弁護士、デジタルトラスト協議会吉田理重理事、デジタル政策フォーラム谷脇康彦代表幹事、菊池尚人代表幹事代理。

 

冒頭あいさつ。

 いまAIステートメントver3.0をとりまとめ中。1.0はAIの管理可能性について問題提起した。2.0はAI法を提言した。実際そういう法律ができた。3.0ではテーマごとに深掘りすると思いきや、むしろ論点が広がった。

 要因は2つ。一つは想定以上のスピードでAIが進化し、領域が拡大していること。もう一つはトランプ政権が世界のステージを変えたこと。関税にしろ、ベネズエラへの軍事侵攻にしろ、グリーンランド買収の件にしろ、過去一世紀以上をかけて形作ってきた自由資本主義の定石が通用しなくなっている。自由民主主義の旗手だった米国が専制主義側に回ったようにも見えるし、法の支配という近代国家の拠り所さえ揺らいでいる。

 そういう不安定な政情の上に、強大なパワーを秘めたAIを誰がどのような仕組みでコントロールするのかという論点が乗ってきた。ハードロー派のEUと放任派の米国が相反する構図の中で、ソフトロー主義を取る日本のポジショニングが適切なのかという論点も浮上している。

 

 AIそのものも急速に変化している。「LLM=AI」という考え方で論じられてきたが、そろそろ世界中のオープンなデータは食い尽くされ、個別の組織が持つ良質なデータに基づく分散型AIやパーソナルAIが勃興してくる。そこに日本の勝ち筋も見えてくるかもしれない。2026年にはAI が身体性を持つ、つまりロボットと合体して現実空間に出ていくということが本格化していくだろう。そこでも競争の局面が大きく変わる。AIそのもののが劇的に変わり続けるスピードに、法体系やコントローラビリティなどの議論が追い付けるのか。

 

 有識者のみなさんにも話を聞いた。AIは経済・社会の基盤になりつつある。企業では「効率化」よりも「戦略の基盤」として認識されている。しかし利用格差も顕著だ。AI 利用度の差は、ひとえに経営者のリテラシー差の現れとなってきた。

 そして、メタ認識の議論が盛んになってきた。民主主義や文明論、安全保障が重いテーマとなっている。抽象論だけではだめ、かといって細かい個別領域ごとでの議論だけでもだめ。「鳥の目」をもって全体を俯瞰し、要所にある壁を破らなければならないが、それは日本が不得手とするところだ。どう向き合うか。

 

 経営戦略から国家論、文化、哲学まで様々なことを、みんなで自由に議論できる時代に生きられて本当に幸せに思う。

 1000年に一度めぐってくるかどうかの稀有なチャンスだ。AIよ、どうもありがとうと言いたい。

2026年6月8日月曜日

日本経済AI成長戦略

日本経済AI成長戦略


冨山和彦さん著・松尾豊さん監修「日本経済AI成長戦略」。

DXからAXへ。AIを使い倒せる人材となれ。以下、刺さる~。

・PMもITコンサルも代替されやすいコスト要因。

・組織の小ささとレイヤーの少なさはAXにおいて有利に働く。

・リーダー一人と超優秀AI、そして現場実行部隊だけで相当規模の企業を運営できる。

・仕事はボス力=「決める」「実行する」「責任を引き受ける」に収斂する。

・問いを立てる、意思決定、構成指示、責任を取る。

 =プロンプト設計、判断・決断、チーム設計・コミュ力、リスク選好と覚悟。

・AIに代替されにくい感情労働:歌って踊れる。愛嬌で好かれる。聞き上手。

・現場から始まる経営変革、生産性革命が日本型AXの中核。

・労働供給制約の問題をAXによる労働生産性の革命で解決すれば日本はフロントランナー。

・日本は包摂的社会の下地があり、高い比率のローカル型産業と労働供給制約社会を持つ稀な国。

 

特に、教育に関する洞察が重い。

・教育はデジタルネイティブからAIネイティブを前提にバージョンアップせよ。

・有効なプロンプトのための問う力=真のリベラルアーツ力をつけろ。

・対話型生成AIを使う前提の入試に変革せよ。

 

その上で、こう記します。

「極めてストレートに起業のための実践教育を行っているiU大学のような専門職大学も生まれている。逆に漫然とホワイトカラーを目指す文系大学の頂点に君臨してきた東大法学部の不人気は続いている。」

ご出身である東大法学部と対比してiUを持ち上げてくださっていて、光栄すぎます!

 

冨山さんは前著「ホワイトカラー消滅」でも「専門職大学でも中村伊知哉氏が率いるiU大学のようにイノベーションと起業を専門職と捉える先進的な教育機関が誕生している。」と紹介くださいました。光栄でした。

https://ichiyanakamura.blogspot.com/2024/12/blog-post.html

 

iUは昨年、「AI大学になる!」と宣言したばかりで、AXはまだ緒についたばかりですが、気合い入れます。

まずは日本初で「AIを使う前提の入試」を導入することにしています。

 

Venture For Japanのことも記されます。

地方のベンチャーや中小企業で経営者直下の事業責任者として2年間就職し、その後、転身する仕組みを動かす社団です。

以前、小松洋介代表と対談し、iUとも提携しました。

iU生にとっては起業や就職や進学とは別の進路で、ある種iUにとっての大学院のような存在になり得ます。

自分が高校生だったら目指していただろうな~

https://ventureforjapan.or.jp

2026年6月1日月曜日

スタンフォード大学で日本のポップ。

スタンフォード大学で日本のポップ。


スタンフォード大学「日本のグローバルコンテンツ産業」。

APARC(アジア太平洋研究センター)主催でシンポを開催しました。

アニプレックス小髙洋介さん、作曲家椎名豪さん、ミリアゴン村田千恵子さん。

小高さんは鬼滅の担当。椎名さんは鬼滅の作曲家。村田さんは国宝のプロデューサ。

鬼滅と国宝というアニメと実写の記録破り2作品からお越しいただいた3名です。

デジタル十大ニュース2025の2位を獲った2作品でもあります。

いずれもソニーグループによるものです。

椎名さんは竈門禰豆子のうたをライブ演奏してくれました。



ぼくがかつて身を置いたスタンフォード日本センターはAPARCの機関で、古巣に戻っての登壇でした。

そこにいたころ、GNPP:国民総ポップパワーというプロジェクトを立ち上げました。クールジャパンという言葉がアメリカから発せられた時分で、日本政府が知財本部を創設してコンテンツ政策に取り組み始めた頃です。

20年以上が過ぎ、アニメ・ゲームに加え実写映画も音楽も海外展開が盛んになって、政府は海外売上6兆円を20兆円に拡大する作戦に出ています。

海賊版、人材育成、中国そしてAIと課題は山積しているが韓国と異なり省庁は縦割りで国ばかりも頼れない。そこで改めて民間で立ち上げたのがPPP:ポップパワープロジェクト。そう、これはGNPPの復刻でもあるのです。



てなプレゼンをしつつ、御三方に伺いました。

・日本コンテンツ人気の背景は?

・プラットフォームの功罪は?

・ドラマや音楽の韓国の活躍をどうみる?

・ソニーの強みは何か?

・食、ファッションなどマーチャンダイジングの可能性は?

村田さん「パラサイト、愛の不時着、イカゲーム。韓国が先に地ならしをしてくれたので、日本の実写が受け入れられている。」日韓が競いつつ一体のアジアとして世界に出る。音楽もしかりですね。

椎名さん「アメリカ人もカツ丼をちゃんと食うようになった。以前は上と下を分けて食べていたが一体として食べられるようになった。」別物だった洋と和を、和洋折衷して受け止めるほどに海外が育ったってことなのでしょう。



続いて、京都の老舗4家が語りました。

140年の任天堂山内家、山内万丈さん、150年茶筒の開化堂八木隆裕さん、300年西陣の細尾真孝さん、500年とらやの黒川光晴さん。

いずれも存じ上げる若い挑戦者。細尾さんは12代目。黒川さんは18代目。重い伝統を背負いながらイノベーションに取り組みます。しかも目線は世界に向いている。

スタンフォードも150年の老舗ですが、そのビジネススクールで教えるのは、成長・競争・winner takes allで企業寿命15年。でもこれら京都企業には当てはまらない。八木さんは「小さく細く長く続けることの総体積」の意味を語りました。これは彼らだけが世界に発することのできるサステナビリティのブランド価値。

ぼくはこれら京都の工芸、職人、表現、アートの歴史と蓄積がいまポップカルチャーを花開かせている地続きの土台と考え、一体のものとして語りたい。

そういえば細尾さんとは12年前に京都で開いたクールジャパン会議でご一緒していたのでした。

「地方版クールジャパン推進会議@京都」

https://ichiyanakamura.blogspot.com/2014/04/blog-post_21.html

 

このポップ+伝統に目をつけて一体で開催するスタンフォード大学はセンスがあります。毎年開いてもらいたいな。


https://aparc.fsi.stanford.edu/events/japans-global-content-industries-innovations-and-reinventions-film-animation-and-traditional?fbclid=IwY2xjawQEhylleHRuA2FlbQIxMQBzcnRjBmFwcF9pZBAyMjIwMzkxNzg4MjAwODkyAAEe9Xek0DMXzAZj0tNiErBEaFbS-GubZquT4raH0Rj50VIgOzatsua1F-tZH9g_aem_bjSQFOvSU48JjLOmXqEZaQ

 

https://aparc.fsi.stanford.edu/news/japans-global-content-industries-thrive-expanding-creative-ecosystem