Twitter

2018年3月29日木曜日

デジタル教科書が正式な教科書になります。

■デジタル教科書が正式な教科書になります。

政府は先月、「デジタル教科書」を正式な教科書と位置づける学校教育法等改正案を閣議決定し、国会提出の運びとなりました。

学校教育法や著作権法上、教科書は「図書」であると定義されており、「紙」でないと教科書として認定されません。この法案は、通常の紙の教科書に代えてデジタル教科書を使うことができるようにするとともに、教科書を作る著作権法上の特例を紙と同様に与えるものです。

これはデジタル教科書教材協議会DiTTが2012年に政策提言して以来、アピールを続けてきた内容です。
以来6年、ようやく結実します。
感慨深いものがあります。

「DiTT政策提言2012」では「デジタル教科書実現のための制度改正:デジタル教科書を教科用図書とするための制度改正を行うこと」を掲げ、さらに法案検討WGも設置して学校教育法や著作権法を改正する法案の概要を公表しました。

当時こうした提案を行うのはDiTTだけで、その意見は過激なものとされ、批判も受けましたが、提言を続けました。
産官学の有識者による「教育情報化ステイトメント」も発出、運動を広げました。

これを受け政府「知財計画2012」は、
「デジタル教科書・教材の位置付け及びこれらに関連する教科書検定制度といった教科書に関する制度の在り方と併せて著作権制度上の課題を検討する。(総務省、文部科学省)」
と明記したのですが、文科省が「デジタル教科書の位置付けに関する検討会議」を設置して検討を開始するには3年を要しました。
それからさらに3年が費やされ、足掛け6年で法案の提出となったわけです。

DiTTはこれに対し、3点のアピールを発出しました。

1 「デジタル教科書」を正式な教科書と位置づける学校教育法及び著作権法の改正案の閣議決定・国会提出を評価し、歓迎致します。

2 法案の早期成立と円滑な施行を求めます。

3 並行して超党派の国会議員からなる「教育における情報通信の利活用促進をめざす議員連盟」が策定している「学校教育情報化推進法案」は、デジタル教科書の利用・普及を後押しするものであり、その国会提出・成立を求めます。




デジタル教科書の制度化、実に喜ばしい事態です。
しかし、小学校で6人に一台にとどまるPC・タブレットの一人一台化や学校クラウドの普及などデジタル環境の整備は日本は途上国なみですし、世界がAIやビッグデータの活用に動く中で、日本の教育情報化はまたも周回遅れになりそうな気配。
待ったなし状態が続きます。

DiTTアピールの3点目にある推進法案は、自治体に教育情報化計画を策定させるなど教育情報化全般を推し進める措置を盛り込むもので、デジタル教科書制度化とセットで揃うとかなりの推進力になります。

政官あげてのプッシュをお願いする次第です。

2018年3月26日月曜日

「イノベーターたちの日本史」

■「イノベーターたちの日本史」

米倉誠一郎さん著「イノベーターたちの日本史」を読みました。

近隣諸国が植民地支配され、戦後も長く経済成長できなかったのに対し、日本が近代・現代を形成した要因を、イノベーターつまり個人の仕事を通じて読み解きます。

徳川幕府は対外的には通商和平、対内的には無血開城を断行。明治の士族は自らの階級を廃絶したうえで殖産興業を担った。財閥は資源で劣位の日本が少数集約型の多事業主体として経済を創出した。それぞれイノベーティブ、と説きます。

ここでイノベーションとは「技術革新」という狭い意味ではなく、組織、企業、社会の組成・変化を通じて起こされる大きなシステムの革新を主軸にとらえています。
テクノロジーやデザインだけでなくマネジメントやポリシーの革新。
士族ら階層レベルのイノベーションという視線は新鮮です。

日本の奇跡の近代化にはあまたのマクロ政治経済分析が加えられてきましたが、本書は高島秋帆、大隈重信、三野村利左衛門、高峰譲吉、大河内正敏といった個人に焦点を当て、その生き様を通して近代像を紡ぎ出す手法を採ります。歴史の共有には具体リアリティーがいい。

明治の若い革命軍事政権が列強の圧力に直面し、徐々に近代国家の体裁を整えざるを得なかった、そして急速に大人びていく。
そのさまは、野球少年が巨人軍で泥まみれに成長する星飛雄馬のよう。
だがそれは決して奇跡ではなく、蓄積、鍛錬、覚悟があってのことでした。

さらに、幕藩体制の打倒は武士階級の打倒であり、新支配階級が自らを否定する行為。旧武士階級という身分を公債で買い入れ、その公債を産業資本に転換するという構想を企画・実行したと本書は解説します。
なるほど、それは今で言えばベーシックインカムを断行するぐらいの革命です。

産業イノベーションを三井や三菱が起こしたことと並び、科学者たちの創造的な対応として理化学研究所の設立と理研コンツェルンの形成を挙げます。
ここに注目するのが本書の白眉たる点だと考えます。

理研はタカヂアスターゼとアドレナリンを発見し、アメリカで成功した高峰譲吉が提唱。
日本工業は欧米の基礎研究の上に形作られており、自製が必要という強い意識。
いま耳を痛くして聞くべき。

当初、理研は長岡半太郎(物理)と池田菊苗(化学)という歴史に名が刻まれた大御所が対立していたといいます。
そのマネジメントに当たった大河内正敏所長のオープンで自由な経営手腕に注目するのも本書の面白さ。

GM中興の祖アルフレッド・スローンを彷彿とさせる」と表されていますが、高峰譲吉と大河内正敏は、ソニー井深大と盛田昭夫、ホンダ本田宗一郎と藤沢武夫のコンビを彷彿とさせます。

「科学とビジネス、基礎研究と応用研究を融合し世界的なスケールで活躍できる人材が求められている21世紀日本において、高峰譲吉と大河内正敏ほど再評価が求められるべき人物はいない。」
実在かを疑われる聖徳太子や 山奥でものをあわれんでいた兼好法師を学ぶヒマがあったら、こっちを学びましょう。

戦後、強大化した理研は解体され、大河内は投獄されました。
GHQが統治を危ぶむほど国家の科学技術政策が成果を挙げた証左。
今ぼくは理研のAI研究をPRする役を担っているのですが、当時のスケールに思いをいたし、職に当たろうと存じます。


米倉先生、ありがとうございました。

2018年3月22日木曜日

「超教育協会」、固まってきました。

■「超教育協会」、固まってきました。

 IT人材育成策やAI・ビッグデータ・ブロックチェーンの教育への導入策など、ITはじめテクノロジーと教育に関する研究、実証、啓発、政策提言などを進め、次世代の教育をつくる。未就学児から社会人まで、そして学び直しリカレント教育を含め、教育×テクノロジーに関する民間の連携体制を構築する。そのための団体「超教育協会」が近く発足します。

「「超教育協会」が立ち上がります」

 会長には小宮山宏 東大元総長が就任を内諾しています。
 参加団体の幹事も人選が進んでおり、例えばAPPLICからは桜井俊理事長(元総務事務次官)、DSKからは寺崎明理事長(元NTTドコモ副社長)、IAjapanからは藤原洋理事長(インターネット総研代表)、安心協は新美育文代表(明治大学教授)が参加されます。ぼくはデジタル教科書教材協議会(DiTT)を代表して参加します。

 5月29日(火)16:00、慶應義塾大学三田キャンパスにて設立イベントが開催される予定です。追って正式アナウンスがあります。
 
 協会の設立趣意書と事業内容ができあがってきましたので、共有しておきます。



超教育協会 設立趣意書

 IT人材の不足は我が国30年来の課題であるが、近年ITが社会経済の各般に浸透し、IT産業やコンテンツ産業だけでなく、全ての産業領域でIT人材の需要が高まる一方、労働人口の減少も相まって、その確保はより一層深刻化している。

 さらに、AI、IoT等が牽引する第4次産業革命は、狩猟・農耕・工業・情報に次ぐ第5の文明刷新 Society5.0でもあるとされ、産業に留まらず社会・文化・暮らしの全場面、全ての人にIT を使いこなす力、それを元に新たな価値を創造する力が必要な素養となると見込まれる。
 
 政府は2020年に小中学校で情報端末やデジタル教科書で学ぶ環境を整備する方針を掲げ、プログラミングを必修化する方針を示した。大学でのオンライン教育の充実、IT即戦力を育てる専門職大学の設置、学び直し「リカレント教育」の拡充など新時代の教育環境も整備されつつある。

 民間企業による教育ビジネスもEdTechという総称のもとで活発化している。教育系の企業だけでなく、通信、IT、ゲーム、玩具等の企業がハード・ソフトの提供に続々と参入。塾や通信教育、家庭においてアプリやデジタル教材の活用が進んでいる。教室の展開や教具の開発等プログラミング教育ビジネスへの参入も相次ぐ。学習履歴等のビッグデータやAIを教材開発に組み込むサービスも提供され、家庭・課外学習の環境変化が起きつつある。
 
 しかし、教育情報化、IT化の面では日本は後進国である。小学校では情報端末は6人に1台の状況であり、IT活用面はOECD諸国で最低レベルだ。IT環境整備以外にもカリキュラムの開発や指導者育成等課題は多い。諸外国がプログラミングを含むコンピュータサイエンス教育やSTEM教育を重視し、クラウド化やソーシャルメディアの利用、そしてビッグデータの活用に進む中、日本はそのはるか手前にある。

 そして情報化はデジタル化、スマート化の次のステージに突入し、AI、IoT、ロボット、ブロックチェーン等からなる一連の技術潮流が教育分野にも押し寄せてくるのは間違いない。

 技術の進展とともに教育も変化してきた。活版印刷の発明は教科書を生み出し、一斉授業という教育手法を確立した。20世紀には映画、ラジオ、テレビなどの新メディアが教育に利用された。21世紀、ITやAIは社会が求める人材像を変え、それがまた教育を刷新する。

 新しい時代は、変化し続ける世である。生涯にわたって学び続けることを求める社会である。子どもからシニアまで。学校の中も外も、家庭・職場・地域も、有機的につながりながら学びの場を創出しなければならない。

 学習・教育環境の開発に力を入れ、先端を切り開くべきである。IT教育のインフラ整備と、先端的なAI・IoT教育の開発の2点、キャッチアップと世界をリードする取組の双方に取り組むべきである。

 これは、従来の学校の枠を取り払った学び、「超教育」を構想する試みでもある。全ての学習者を主体としたデザインが求められる。そしてそれは、この分野に関心のある多くの民間の叡智を集結し、行動を起こすことが重要である。




超教育協会 事業内容案

1 提言
・参加団体の教育・人材育成に関する社会提案、政策提言等を集約した提言の策定・発信

2  新学習・人材育成環境の設計
・未就学児から社会人までの、学校の枠を超えた未来の学習環境のデザイン
・新学習・人材育成環境の実証実験・実装
 (学校・塾・職場・家庭が連動する、リアル+オンラインによる学習者主体の環境)
 *有識者による委員会の設置
 *シンポシリーズの実施

3  先端技術の教育利用推進
・AI、IoT、ビッグデータ、VR/AR、ブロックチェーン等先端技術の
 教育への導入に関する課題整理
・上記に関する実証実験
 *分野ごとのWGの設置
    AI教育WG、IoT教育WG、ブロックチェーン教育WG 等
 *シンポシリーズの実施
 
4  ICT教育の推進
・教育情報化の推進(端末・ネットワーク・教材の整備)
・プログラミング教育を含むCS/ICT教育の推進
 (ポータルサイト拡充、産学マッチング機能の構築その他環境整備支援)
・リテラシー教育等 青少年の安心・安全ICT利活用の促進

5  ICT教育ビジネス支援
・海外展開の支援
・ビジネス実証の場の提供

6  ICT・AI・IoTプロフェッショナルの育成・確保
・大学、専門職大学、専門学校等と産業界との連携促進
・資格認定、企業研修、eラーニング等の普及促進


7 各団体の活動の活性化、広報支援

2018年3月19日月曜日

アルスエレクトロニカ2017

■アルスエレクトロニカ2017

オーストリア・リンツ市「アルスエレクトロニカ」。
1979年に始まったアート☓テック☓市民の祭典です。
ポストシティ、アルスエレクトロニカセンター、大聖堂、美術館などドナウ川をはさむ街中の12会場で開催されました。



人口20万人のオーストリア第3の都市、リンツ。
ヒトラーが郊外に生まれ、幼少期から美大を目指してウィーンに上京するまで過ごしたドナウ川の街、かつての鉄鋼の町に、40か国以上のアーティストが集います。


鷲尾和彦さん著「アルスエレクトロニカの挑戦」。
なぜオーストリアの地方都市で行われるアートフェスティバルに、世界中から人々が集まるのか。
この本の中に大事なことは全部書いてあるので、今回の訪問はそれを追体験・確認する作業です。
それを踏まえメモします。


アルスエレクトロニカは、芸術祭だけでなく、コンペ、センター、ラボ、教育、それら活動全体の名称です。
アートとテックによる街づくりの総称とも言えます。
衰退する工業都市を文化で再生する挑戦、それを40年近く続けているのです。



推進母体たるエンジンは、1996年、ドナウ川沿いに設立された「未来の美術館」、「アルスエレクトロニカセンター」。
展示施設というより、映像やものづくりの教育施設である点が重要です。



もう一つのエンジンは、同じく1996年に設立されたリンツ市の公営企業「アルスエレクトロニカ社」。
アルスエレクトロニカの活動全体を事業として成立させ、産業政策と文化政策とを両立させて推進しています。



今回はリンツの玄関口、中央駅わきの郵便配達センター跡地「ポストシティ」がメイン会場。
テーマはAI Other I」。
AIが人の存在を問う。
技術と人と都市。今年は、これしかない。



とてもたくさんの日本人に会いました。
メディアアート系の研究者やアーティスト、大学関係者をはじめ、デザイン、広告、ゲームなどの業界関係者など。
旧知のかたも多く、まるで同窓会。
みなさんはるばるおつかれさまです。



ぼくは3点に注目して観察しました。
1)アート&テック展示、2)キッズ教育、3)都市開発。
そして、これなら東京でできる。
いや、東京でやるほうがいい。というのが結論です。


1)アート&テック。
12会場を使ったメディアアートの展示。
AIがテーマだけに脳波ゲームなどが目立ちましたが、これが先端だ、というほどのインパクトはありません。
米シーグラフと同様に学会色が強く、SXSWのようなビジネスのギラつきに欠けるからかな。



ワクワク度だと日本のメディア芸術祭が高いですし、ポップ&テック度は東京ゲームショーや東京おもちゃショーのほうが強烈。
超人スポーツをフィーチャーし、β学会から大相撲から政治・軍事まで収容する「ニコニコ超会議」は孤高の先端を行く、というのが素直な感想。



森山朋絵さんプロデュースの、動くとハエがたかってくるビジュアルにたどりつき、ようやく、そうそう、こういうのを見たいんだよな、と気づきました。



指紋をとると、その画像が精子のようにディスプレイを徘徊し始める。
東京芸術大学・桐山先生の作品。
かように日本のアーティストの存在感が大きいです。
日本人の作品を日本人がドアツードアで24時間かけて見に来ている風情であります。



18禁コーナーに、怪人エイドリアン・チェオク教授のキス伝達マシン「キッセンジャー」がありました。
開発者のエマが健気に説明をしています。
ぼくはマレーシアで彼らが運営する研究所の客員なので、お手伝いしなければいけませんが、やり過ごしました。



センターには「DeepSpace8K」という169m8K 3D表示シアターがあり、天体の運行を見せていました。
4K8Kパブリックビューイング場を整備するのはぼくの業務でもあり、アルスに置かれているのは感動モノ。
政府オリパラ事務局長の平田竹男さんも視察していました。
が、であれば先に東京に置きたいな。



2)キッズ☓教育
アルスエレクトロニカは中軸に教育を置いています。
そこが単なるアート&テック祭ではない公益の意義だと考えます。
センターはSTEMを一歩進めてArtを組み込む「STEAM」教育を重視し、ハイテク・プレイグラウンドも設置。2015年には17万人が入場したといいます。



会場でもプログラミングのワークショップや青少年のデジタル表現展示がかなりの規模を占めていました。
工作、マイクロビッツ、3Dプリント。
こちらでも流行りなんですね。



バンダイナムコ「パッカソン」。
マイクロソフトのホロレンズでパックマンに変身して、街でチーム行動をするワークショップ。
パックマンをネタに、新技術や教育に展開する試みです。
ここでも日本企業が高いプレゼンス。



ただ、正直、ワークショップの集積度、レベル、ポップさ、テック度、賑わい、全ての面でぼくらのワークショップコレクションが数段進んでいます。
ぼくらとしてもアルスと連携して、新機軸が打ち出せそうだと感じました。



3)都市開発  
特筆すべきは、この総合活動を都市開発の観点で進め続けているということです。
鉄鋼の町、重工業都市リンツが衰退からの再生を期し、文化芸術都市となる道を自発的に歩み始めた。
それを行政や公営企業が推進し、毎年イベントとして世界中の人々を吸引するビジネスモデルを構築した点です。



それは、ものづくりの工業国家からクールジャパンの文化国家へと脱皮を図る日本のモデルとなります。
1930年代のタバコ工場跡地「タバクファブリーク」。
3.8万㎡の産業集積センターです。
テック、デザイン、メディア、教育の集積拠点。
ぼくらが整備中のポップ&テック特区CiPのモデルです。



アルスエレクトロニカ社は年予算20億円、リンツ市は1/3を支援しているそうです。
アルスエレクトロニカ・フェスティバルの予算は5億円で、公的支援1.5億円、イベント収益1.3億円、スポンサー収入2.5億円。
いいバランスですね。
こうしたモデルを作り上げた公益活動こそが、見えにくいけれど最重要のポイントです。



アルスエレクトロニカ社は2009年から「オープンコモンズ・リンツ」なるオープンデータも進めているそうです。
ぼくらが日本のオープンデータ運動を始める3年前。
公益部門の感度が高いことの証左です。
このあたりは脱帽。



水面を使ったナイトイベント。
ポップ&テック特区竹芝の「海」を使えば、もっと派手なことができます。
国家戦略特区の機能を活かして、さまざまな規制を緩和してもらいましてね。



アート&テック系の学会活動を集め、ワークショップコレクションを中軸に据えて、J-POP業界やeスポーツ業界、通信・放送業界の協力を得つつ、超スポ国際大会などニコ超会議っぽい出し物を揃えてみましょう。


きっと世界一のおもろいポップ&テックのイベントが開催できます。やりましょうよ。