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2016年12月29日木曜日

超人スポーツハッカソン3

■超人スポーツハッカソン3

第3回 超人スポーツハッカソンを開催しました。慶應義塾大学日吉キャンパスにて。
5チームが新スポーツを開発しました。

前回やったときの模様はコチラ。
超人スポーツハッカソン

超スポハッカソン。
最優秀賞:スライ・ド・リフト。
ドリフトのできるオムニ電動車イスを開発。コース上の得点ゾーンをドリフトで通過する競技です。
車イスで誰でもドリフト、というパンク。


車イスという介助機具を拡張遊具にするというもの。
ドリフトする車イス。
って、思いついても、手間と時間とコストをかけて、それを作っちゃうのがステキ。


優秀賞:超ホッピング。
ゴムで宙吊りになって、ボールを相手陣地に入れる。子どもでもOK。浮遊感バンザイ。
ボルダリングに応用すると面白そう。


優秀賞:Wheelchair Shooting。
落ち葉を空気で掃除する装置を使って、ピンポン球を相手の網に撃ちこむ車イス競技。
車イスの人がものを投げるのは難しい、という実態から着想したという。
車イスの人も健常者も対等に撃ちあう愛。

車イスじゃなくても、ローラーがついた事務用のイスとか、ほふく前進とかで、オフィスでパンパン撃ち合いたい。


Augmented Style 100m。
4本足で走れば、ボルトより速くなれる。目指せチーター。問題はわれわれは足より腕が短すぎること。そこで腕に拡張装置をつける。みんな、今日から4本足で走るぞ。


バブルランナー。
水の上を走る。風船に入って。走れば、VRが走路とゴールを見せてくれる。コインを取ると、速くなったりするんだって。
これでやっと水の上を走れるようになる。

水上を走る。宙に浮かぶ。4本足や車イスで走る。超人スポーツは陸海空を制覇しました。


超人スポーツは、TechとPopという日本の強みをスポーツで示す。世界展開するが、日本を本場にしたい。そうなる。ことを確信させてくれるハッカソンでした。

2016年12月26日月曜日

AIの知財問題、新局面に

■AIの知財問題、新局面に

 次世代知財システムシンポ、続き。
 次世代知財委員会は(恐らく)世界で初めてAI創作物の知財問題を本格議論しました。AIが生むコンテンツに、著作権以外の新権利を与える、創作物登録制を作る、AIに人格権を認める(赤松健さん案)、という案をたたかわせました。

 しかしシンポでリクルート石山さんが唱えたのは、AIが生む創作物ではなく、AIそのものの知財をどうするという問題提起。AI創作物を生み出す「学習済みモデル」の重要性に注目せよということです。コンテンツよりシステム、ということです。

 全体を整理します。
 1) 生データを入れたデータセット
 2) AIアルゴリズム
 3) 機械学習を経た学習済みモデル
というシステムがAIを構成していて、そこにデータを入れることで生まれるアウトプットが4) AI生成物(創作物)。
 委員会は最後の創作物を議論してきました。これに対し石山さんは3)の重要性を訴えた。

 ところがここで喜連川さんは、それらより1)のデータそのものが最も重く、大事なのだと言う。国として守るべきはデータそのものであると。それ以外はどうでもいい存在だと言うのです。

 そして2)AIプログラムだけが、現行著作権法では保護の対象になっているのです。1)データは著作物ではありませんし、4)AI創作物も現状ではそうなっていません。さあどうしましょう。

 トータルの知財の仕組みをどう構築するかがぼくらへの問いです。著作権で保護するのか、あるいは契約に委ねるのか、オープンにするのか。

 それらとは別に、国の戦略としては1)~4)のどこを重視するのか。これまで以上に大きな問いが生まれてしまいました。大変だ。

 ところで4)創作物に関し、福井さんが、AI女子高生「りんな」のつぶやきがコピーされても経済被害はなかろう、AI創作物を保護すべきかは慎重に、との発言中に、喜連川大先生が「りんな毎日つかってる」とつぶやいていたのが衝撃でした。


 さて、3つ目のテーマに移ります。
 国境を越えるネット上の知財侵害について。次世代委員会では、正規版促進、悪質リーチサイト法的対応、悪質サイト広告調査、プラットフォーム対応検討、ブロッキング検討、といった方向性を示しました。喫緊の課題として踏み込んだつもりです。

 パネル前にドワンゴ・川上さんがプレゼンしました。FC2動画という米登記の日本企業は、創業者が指名手配中で、削除申請には応じることなく徹底抗戦する素晴らしい会社だと。そういうのに国際対応するにも、国といえど消費税や刑事がやっとで、時間がかかると。

 川上さんは、サイトブロッキングしかないと言います。英仏韓など世界40か国が導入していて、日本は児ポのみ認めているが、それを広げるのは可能であり、簡単なことだと。

 これに対してはパネラーも異論はありませんでした。喜連川さんは、ネット創成期に性善説で広げようとした状況は今や変化しているとし、ブロッキングは当然だと言います。この空気感を制度に持ち込むことが問われている。制度担当者は、腹をくくらねば。


 さて、このシンポは、政府委員会の番外編で、気楽に討論したのですが、しかし、もはや次の知財本部のラウンド協議に入り込んだ風情です。次ラウンドの司会役をぼくが務めるかどうかは存じませんが、見えてきたテーマからすると、次も、大変です。


 やりましょう。

2016年12月22日木曜日

ファミコンとその時代

■ファミコンとその時代

 上村雅之・細井浩一・中村彰憲 著「ファミコンとその時代」。
 1998年に実施された産学公のゲームアーカイブ・プロジェクトをもとに記された研究書。推進者である山下晃正・現京都府副知事の名も明記されています。

 MIT界隈で開発されたゲーム技術が米国でブームとなり、アタリショックを経て任天堂が20年の覇権を築く。Vブッシュのmemexやエンゲルバート、アランケイやパパートから紐解くデジタルの進化史が描かれます。
 
 実に面白い。

 ゲーム史は、モノ・技術と、コンテンツ・文化とを掛けあわせ、ビジネスや社会を作ったワクワク感とゾクゾク感の蓄積です。これは超級の資料であり、メディア論の教科書にぼくは認定します。

 AppleやAmazonやGoogleはなぜ日本から生まれないのか?と聞かれることがあります。いやいや、それらはみな任天堂の真似をしてるんです。技術とコンテンツを押さえ、流通を制したモデルです。その流通がネットに変わったんです。

 近ごろ日本企業の失敗論ばかりですが、本書は、なぜ任天堂は、なぜ日本は、レッドオーシャンのゲーム市場を制し、覇権を続けたか、の成功論です。こういうのも読まないとバランスを失します。


 特に、ファミコン生みの親の上村さんが書いた第一部「ビデオゲームの誕生」が貴重です。ぼくがピクっと来たポイントを挙げておきます。

・1964年、シャープとキャノンが電卓用にLSIを開発したことが世界を変えた。
 米アタリ社のブッシュネルが着目し、アメリカに火がついた。
   元は日本企業の技術だったのです。

・アタリに加え、RCA、コレコ、マテルなど米国企業が数々の試作・商品を打ち出した。
 1982年にはLSIゲーム機は14社76機種もあった。
   レッドオーシャンですよね。
   そこになぜ任天堂ら日本勢が入っていったのか、そこがポイントです。

・1982年、アタリとワーナーが提携、
 スピルバーグのレイダースとETのゲームという「約束されたヒット」を開発したが、
 それが大コケ。アタリショックとなる。
   ワーナーの経営責任。
   開発と経営の双方、デザイン・テクノロジとマネジメントが
   揃っていないといけないという教訓です。

・高度な技術ジャンルに対し、日本は家電やPCの企業ではなく、
 子ども相手のおもちゃ会社が主導的に取組み、低価格商品を開発した。
   これは開発より経営の問題ですね。

・任天堂はLSI機は後発で、レッドオーシャンであることを認識していた。
 だが、80年当時、早くも少子化に直面する中で、
 子どもたちがおもちゃよりラジカセに興味を示し、
 市場がハイテクへ動いていることを認識、ゲーム&ウォッチの開発に踏み込んだ。
   市場を見ていた、ということです。

・IBM等のPC普及も始まっていた。
 その中で任天堂は、低コスト+子ども遊び目線+茶の間テレビ目線にこだわって、
 ハイエンド+大人目線+PCの路線から遠い道を行った。
   その仕様の決定に至る洞察にはすさまじいものがあります。

・ファミコンには、ハドソン、ナムコ、コナミ、タイトーらがソフトを提供。
 アタリとの違いは粗製濫造の阻止。
 ソフト企業へのユーザの信頼、ユーザ間の厳しい評価・情報交換、
 流通関係者のソフト評価力、といった土壌があった。

・85年のCESで、コモドール、IBM、AppleらのPC路線を見て、
 家庭ゲーム専用機の市場を確信した。
   気がつけばブルーオーシャンだったのですね。



 米国産のTVゲームが日本で発展し、その後全世界で普及。ゲームはクールジャパンの代表です。またこんなジャンルを生み出してほしい。できると思うんです。本書はその参考書、未来に向けた指南書です。

2016年12月19日月曜日

著作権法をガラポンに?

■著作権法をガラポンに?

 シンポ「次世代の知財システム構築に向けて」@虎ノ門。
 ぼくが座長となって政府知財本部で開かれていた次世代知財システム委員会の続編を東大喜連川さん、福井健策弁護士、瀬尾太一さん、リクルート石山洸さんとともに開催しました。モデレータを務めました。

 委員会の柱は3つでした。
1) 柔軟な著作権システム
2) AI等の新情報財への対応
3) 国境を越える知財侵害対応
 その結果は知財計画2016に反映されましたが、実にスリリングな議論でした。

 シンポではまず柔軟な著作権システムについて議論しました。権利制限、集中管理、裁定精度、報酬請求権を組み合わせるグラデーションをもった取組という方向性をどうみるか。

 福井さんは、権利制限とライセンスを組み合わせる議論は画期的としつつ、孤児著作物の処理のため、裁定+拡大集中許諾に期待するとのこと。瀬尾さんはアメリカ型フェアユースに反対しつつ、権利と利用の2元論じゃ立ちいかないと指摘。

 権利制限、フェアユース規定は既に文化庁の審議会に場を移し、議論が進んでいます。ぼくも参加しています。次期国会に法案を出すよう知財計画は求めているので、どこかに落とし込まれましょう。

 ただぼくは、それ以上に、知財計画に書かれた「ガイドラインを作る」という約束に注目しています。

 法律は大雑把にしか書かれず、結局その解釈や運用が不透明で、企業リスクが残るという点が問題。じゃその解釈をガイドラインに落とし込みましょうよ。その通説を政府、学者、裁判官、企業、弁護士などで作ればいいじゃないですか。けっこう透明になるはず。


 喜連川さんは、アメリカが旧来の企業からIT企業に力がシフトする中で日本は硬直的だとし、ゲームを変えられる国になるよう強く指摘しました。それは著作権だけではなく、全ジャンルに共通する課題です。

 福井さん・瀬尾さんが共に主張するのはアーカイブの重要性。孤児著作物を巡り欧米がしのぎを削る中で、日本もアーカイブ戦略に注力すべき。権利処理のコストを大幅に下げる必要があります。裁定補償金の措置など、スグにやるべき課題が見えていますね。

 喜連川さんは突然、「オボカタ問題を解く制度を!」と言い始めました。コピー論文をチェックするサービスが合法なのは当然だろう、ところがそのサービスを日本はアメリカから買っている、なんたることだ、と。オボカタさん、恐るべし。

 小宮山・元東大総長が進めた「知の構造化」は、東大の全シラバスを見ても何を教えているかがわからん、わかるようにする、というものだった。だから著作権法も読んでわかるようにしろ、という指摘も喜連川さんから。

 そうなんです。権利制限や集中管理といった課題は2020年あたりには決着しておく。問題はその次世代の制度。1971年にできた現著作権法を50年ぶりに大改正する。これに手をつけたいですね。

 福井さんは、1億総発信社会となり、著作権法がお茶の間法になった。わかりやすくスリム化せよ、と説きます。そして、オプトインの仕組みをオプトアウトに変え、著作物を使えるのが基本、という仕組みにすることを示唆しました。

 瀬尾さんは、音楽のようにきちんと仕組みが動いている分野があることを示しつつ、著作物そのものが多様化する中で、文芸作品やデータベースのような異質なものを一括りで扱うことの問題を指摘しました。いずれにしろ限界、ですね。

 文化審議会の委員を務める著作権制度を専門とする方々からは、制度をガラポンにするという議論は出てこないかもしれません。恐れを知らずそれを唱え、道筋をつけるのが知財本部の役目でしょう。本気でこれに取り組む時期だとぼくも思います。

 10年前の通信・放送融合論議でぼくは、10本以上あった関連法を1本化し、通信放送タテ割りの制度をレイヤ別ヨコ割りに再編する「情報通信法」を主張、ボコボコにされましたが、4年の議論を経てほぼその方向で再編され、1本化はできませんでしたが4本まで法律が減りました。

 それをなしとげたのはメディア環境の変化という客観情勢と総務省事務方の情熱。著作権制度も客観情勢は揃っているので、事務方が死ぬ気になれば、できましょう。


 やりましょう。

2016年12月15日木曜日

メディアと自民党

■メディアと自民党


 西田亮介著「メディアと自民党」。
 総務大臣が放送局の電波停止権に言及したり、大物キャスターが番組を降りたりして、政治とメディアの関係にキナ臭さが漂いました。押さえておいていい一冊。

 本書は、記者クラブや番記者制に代表される政治とメディアの「慣れ親しみ」が、ネットやソーシャルメディアの時代にどう変化しているか、中でも自民党だけがいかにメディアとの継続的な関係を築いてきているかを描きます。

 2000年、政府がIT基本戦略を策定したころから、自民党は勘による選挙からデータ重視へと移行しました。特に第2次安倍内閣では、プロの手を借りつつ新広報戦略を打ち出し、コミュニケーション戦略チームを内製化していったといいます。

 しかし民主党(民進党)には、政権時に記者会見のオープン化は図ったものの、自民党のような明示的な広報戦略はなかったそうです。ネット選挙解禁もチャンスがあったのに、実現したのは自民党政権に戻ってからであり、ITへの取組でも遅れをみせました。

 ここで目を引くのが、広報予算に関する記述。2015年政府広報予算は83億円で、各省庁も独自の広報予算を持ち、数百億円規模になる点に着目して、いかに政府・与党がメディアとの関係を強化しているかを分析しています。

 数百億円のスポンサーというのは大きな力を持つクライアントであり、メディアと政治との関わりは権力構造というだけでなく、ビジネスやマネーの観点からも見ておく必要があるでしょう。そしてその影響力は実に大きいのです。政治側はその力を意図的に使い、メディアは黙って使われています。

 政治(自民党)は、メディアやネットに対し明確に戦略的な変化を見せています。国民側は、ネット民が団結してデモを起こし、それは成功とは言えなくても、政治との関わりに変化をもたらす兆しのようにも見えます。

 ここで筆者は「大きく変化していないのがメディア」だといいます。同意します。というより、政権から緩いタマが投げられただけで萎縮してしまう状況は、緩やかな退化に見えます。これに対し筆者は、NewsPicksやSmartNewsのようなニュース配信アプリが「新たな変革者」と見る。期待できましょうか。

 本書は放送法に基づく政府関与について、米FCCのような独立行政委員会論や第三者機関である「BPO」の強化策についても言及しています。日本型の現制度と独立委員会制度を巡っては長い論争があり、ぼくもそれを担当した結果、官僚を辞めることになったので、話が長くなるからここでは抑えておきます。

 ただ、その収めどころの知恵としてできたBPOをさらに強化することは、これまた日本型のいい知恵の出しどころです。政治との距離をどうとるか、ネットとの距離をどうとるか、次の宿題として考えるべきテーマでしょう。

2016年12月12日月曜日

2020年、ラジオの新挑戦

2020年、ラジオの新挑戦

 民放連パネル「2020年、ラジオの新挑戦」を開催しました。
 パネリストは、メディア研究者志村一隆さん(元WOWOW、Yahoo!)、関西大学三浦文夫教授(元電通、radikoの生みの親)、ニッポン放送吉田尚記アナウンサー。ぼくが司会です。

 ライブドアーニッポン放送、楽天ーTBSの騒ぎがあり、通信・放送融合が話題になって10年。 
 ラジオ広告費は1200億円、ネット広告は1.2兆円。ラジオは1/10になりました。

 テレビはキー局を中心に戦略が多様化しています。日テレはhuluを運営、フジはネットフリックスにコンテンツを提供。テレ朝はCAとAbemaTV。TBSはC Channelと提携。

 ラジオ業界もradikoで魅力が再評価されたり、i-dioが新しい電波ビジネスに乗り出したりと、挑戦が始まりました。


志村さん:アメリカは局数が多く(1.5万局)、市場規模も10数倍(2兆円)。ネット、新デバイス、ソーシャルサービスへの対抗を続けてきたが、「音」というラジオらしさの発揮がポイント。

三浦さん:radikoはラジオ離れを食い止めてきたが、ビジネス拡大はこれから。テレビと異なりラジオは聴取率が貨幣となっていない。タイムシフト聴取、ネット、聴取質などを組み合わせた価値指標が必要。

吉田さん:ラジオ番組をやりながら、ニコ生、twitter、AbemaTVなども同時展開している。ラジオは全メディアと組める媒体。営業トーク「ラジオは最古のSNSだ」。


 吉田さんのパンクな行動は、かつてなら社内を通らなかったでしょう。今やニッポン放送内でOKを勝ち得ているだけでなく、部署も独立して好きにさせてもらってるとか。ニッポン放送もパンクやのう!

 ラジオが全メディアと組めるというのは、組んでもらえる、という面もあります。radikoを音楽業界が温かく迎えてくれたように、テレビはキライでもラジオがキライというタレントがいないように、ラジオは愛されている、という強みがあります。

 まずは、どこからカネを取ってくるか。細ってゆくラジオ広告費を取ってくるよりも、吉田さんが試みるように、ネットと組んで、ネット向け投資の中からカネを引っ張ってくるのが戦略かもしれません。


 ラジオは音の、ナマの、ローカルが強み。という話になりました。自動運転車の音空間だとか、IoTの場ヒモ付き情報だとか、これから広がるデジタル環境にチャンスがありそう。

 ラジオのネット利用については、ケータイの通信制限がネックという指摘も。トラフィックがパンパンな状況はしばらく変わらないでしょう。となると、電波をIT利用するi-dioのようなサービスが注目されます。

 ラジオはコンテンツと電波からなります。コンテンツビジネスにはみな熱心なんですが、「電波を安く使える」メリットもこれからは発揮していいはず。

 志村さんの日米比較に立ち返ると、ラジオの利用率は日38%、米90%とか。それは日本のラジオに潜在能力がうんとあるということかもしれません。


 2020年、ラジオ。暗い話になるかと思ったら、案外、成長産業の香りが漂う議論となり、ほっといたしました。

2016年12月9日金曜日

教育情報化を推進するエンジンになります。

■教育情報化を推進するエンジンになります。

 OECDの国際学力調査「PISA」2015年版が発表されました。デジタル教科書教材協議会DiTTが発足したのは、2000年版で数学・科学が1位・2位だった日本がその後大きく順位を落としたことも背景にありました。今回、それらが順位を戻してきたのはうるわしい。

 一方、今回、読解力が低下したことが指摘されています。これに対し文科省は「問題表示や解答が紙での筆記からコンピューターの使用に変わった」ことを要因として挙げているとのこと。だとすれば、教育情報化の後れが学力の差となって現れたということでしょう。
読解力低下、科学・数学順位は過去最高に 国際学力調査

 教育情報化は待ったなしです。これを推進するため、DiTTはパワーアップ策を進めることになりました。

「デジタル教科書教材協議会DiTTは、パワーアップすることにしました。」

「デジタル教科書教材協議会DiTTの成果」

 そして昨日、DiTT臨時総会が開催され、社団法人化が正式に決定しました。法人化決議に当たり、小宮山宏 会長から以下の演説がありました。

「米英、伊仏など混乱が続いている。米国は0.1%が富の30%を保有するなどバランスを欠いている。共産主義は敗れたが、資本主義も限界を見せている。一方、日本は近江商人の三方良し(売り手、買い手、世間)に見られるように、利益最大化ではなく、全ステイクホルダーの幸福を目指してきた。いい社会だ。

 しかし、「遅い」。世界の速さに負けている。思いのある人が「動く」ことが必要。国主導から自律・分散・協調に向かう中、国にも向き合って進む主体が重要だ。

 私は東大総長を終えた後、国の仕事のオファーを10以上断り、自分がすべきことを進めている。学生たちから、小宮山は間違っていると言われてもかまわないが、ウソをついていると言われることはがまんがならなかった。正直に、自立して、正直に、すべきことをしていく。

 DiTTの事務局メンバーの「眼」を見て、理事たちの活動を見て、私も新法人の会長を引き受けることを決意した。DiTTは日本にとって不可欠である。」


 政府・知財計画でのデジタル教科書に関する記載、IT本部等での教育情報化推進の記載、2020年度の一人一台整備の政府決定、デジタル教科書の制度化、電波利用料の活用、プログラミング教育の必修化など、DiTTが提言してきたことが現実となってきており、この分野を先導してきたと自負しています。

 民間企業が本分野のビジネス対応に本腰を入れる一方、先進的に取り組む自治体の首長や全国の学校・先生との連携、超党派の国会議員連盟の結成などの広がりも見せました。このたび、超党派議員連盟は「教育情報化推進法案」を策定することとなりました。設立6年にして、国会、政府、自治体、学校現場、産業界への成果は現れたと考えます。

 それでも日本は後進国のままです。この分野の取組はOECD加盟国中、最低レベルの状況です。いよいよ動き始めたからこそ、この時期に一段の高みに持ち上げなければいけません。国会や政府が動いている中で、改めて民間サイドの姿勢が問われます。

 一昨日、議員連盟の法案策定WGの場で、関連団体からのヒアリングを受けました。DiTTメンバーは事務局サイドで聞いていたのですが、民間の別の教育情報化団体の代表が「紙の教科書をデジタルに移行することに反対する」と強く表明され、驚きました。

 この国で教育情報化を「推進」するエンジンは当面DiTTしかないのではないかと感じた次第です。


 教育情報化の一層の普及と発展を促し、産業の拡大を図るための法人化にご理解をいただき、引き続き業界活動にご協力くださいますよう、お願い申し上げます。

2016年12月8日木曜日

スーパーヒューマン誕生!

■スーパーヒューマン誕生!






 稲見昌彦著「スーパーヒューマン誕生!」。
 KMDから東大教授に移った著者が、人間拡張工学、つまり機器や情報システムを用いて、人の運動機能や感覚を拡張することで超人を作る研究を説きます。

 義手義足に代表されるこれまでの技術が、身体の欠損を「補綴」するものだったのに対し、身体をより「拡張」する。人機一体となる。その技術とデザインを描きます。


 現実感をつくる技術としてのヴァーチャル・リアリティとテレイグジスタンス。分身となるロボットやヒューマノイド。ポスト身体性を展望します。

 ぼくと稲見さんは「超人スポーツ協会」の共同代表を務める同僚で、仲間をホメるのは趣味ではありませんが、この本はぼく的には今年のベストになるでしょう。


 研究の系譜をタテ糸に、内外のSFやポップカルチャーをヨコ糸に紡いで、MITはじめ内外の研究・発明を引き合いにしながら難解な先端工学をグイグイと解説していきます。

 SFはWhat(つくりたいもの)を描き、研究はHow(どう実現するか)を求める、と稲見さんは言います。そこで日米のSFやポップカルチャーを丁寧に合わせ読んでいくことがこの本の魅力です。これはぼくが憧れる筆致。新しい書き手が登場しました。

 2001年宇宙の旅、ザ・フライ、インビジブル、ジュラシック・パーク、マルコヴィッチの穴、マトリックス、リアル・スティール、トータル・リコール、サロゲート。やはりこれらは押さえておかなければなるまい。

 ドラえもん、パーマン、攻殻機動隊、エヴァ、サイボーグ009、コブラ、ジャンボーグA、鉄人28号、寄生獣、ゴルゴ13、アンパンマン、デモクラティア。工学の研究者がこれらをつぶさに追うのは大変なことです。

 本書では、刺激的な知見も数多く得られます。
 例えば、思考は身体に規定される。頭の中で早口言葉を10倍の速度で言うことはできない、という指摘。
 —— 確かにそのとおりです。

 ピンク(マゼンタ)は物理世界には存在せず、赤と紫という両端の波長を同時に見ることで脳が感じる色である。人間の感覚は視覚より聴覚のほうが速いのだが、光速と音速の差を脳内で同時になるよう補正している。
 —— そうだったんですね。

 ジョンソン大統領が専用機の温度変化にうるさいので、大統領の手元にニセの温度調節つまみを作ってやったら文句を言わなくなった、自分が調節したら温度が変わらなくても納得したというエピソード。
 —— シアトルの航空博物館に現物を見に行きたい。

 ヒト型ロボットの開発に重点が置かれるのは、人がロボットにしてほしいことを追求するには人が活動する環境に機能を合わせるためだという指摘。
 —— なるほど、ヒト型の開発には、需要面からの必然があるんですね。

 ここで本書は、ウェアラブル機器に電流を流して人の身体を操る研究や、頭にカメラをつけて遠くにいる人がその映像を追体験する身体シェアの研究を紹介します。肉体を遠隔操作し、体験をシェアする。稲見さんは、身体は一体誰のものなのかと問います。面白い。

 玄関の自動解錠、ピアノの自動演奏や空腹時の自動調理などIoTが空想する多くは、透明ロボットの自動操作のようなものだ、と言います。稲見さんは光学迷彩で透明人間を実現したことで有名ですが、身体・感覚の拡張とIoTとがここに帰結するんですか。面白い。

 スマート革命の次に来る、IoT・AIでいま世間は騒がしい。だが、VRやヒューマノイドで身体と感覚とが分離し、人の存在が問われる近未来は、それ以上にゾクゾクするではありませんか。稲見さんの続編を待ちます。いや、けしかけます。

2016年12月5日月曜日

AI・IoT時代に向かう著作権ビジネス

■AI・IoT時代に向かう著作権ビジネス

 音楽業界の会報誌に一文を寄せました。業界のかた向けですが、ご参考まで。


 AI(人工知能)やIoT(モノのインターネット)で世間は騒がしい。
 近未来に機械が人の仕事の半分を奪うという研究もあります。囲碁は人よりAIのほうが強くなりました。プロ顔負けの作曲をするAIも現れました。私が座長を務める政府・知財本部の委員会でも、AIが作る音楽などの作品に権利を与えるかどうか、熱く論議されています。

 私が文化審議会の録音録画補償金を巡る議論に参加していたのはもう12年前になります。それから制度は動いていません。
 だが、事態は一変しました。

 当時、PC・ハードディスクとCD・DVDを念頭に置いていた世界のコンテンツ消費は、スマホ+クラウド+ソーシャルからなる「スマート」へと軸を移しました。ビジネスの体重はサブスクリプションやライブへとかかります。日本の業界にも波は来ます。
 そしてAIやIoTなど、メディアは早くもスマートの次のステージに移るというのです。

 だからといって必ずしも危機というわけではありません。

 例えば、音楽。
 若い世代は、スマート化で大量の音楽に接し、楽しむ機会を増やしています。私の世代よりカジュアルで自然に音楽をまとっているように見えます。タダで消費されたりするから商売にとって具合は悪いけど、「音楽」にとってはチャンスなのではないでしょうか。

 西海岸のあるミュージシャンが話していました。欧米なら3コードで済ます曲をJ-POPは何十個もコードを使う。そんな豊かな音楽に憧れる、と。そう、日本の音楽は土壌が豊かで、競争力はあります。技術を使ってこれを世界に展開していきたい。

 そこで著作権をどう考えるか。

 制度を巡る議論は今も盛んです。TPPの妥結で保護期間延長などの措置がとられます。政官ではフェアユースに関する議論も進められています。しかし、どういう結論に至ろうと、さしたることはありますまい。先人の知恵と努力で練り上げられた著作権の制度に多少手が入ったところで、もはや抜本的に環境が変わるという事態は考えにくい。

 それよりも、グーグルやアップルやアマゾンがどういう戦略を取るのか。映像配信サービスはテレビの牙城にどう攻めこむのか。スマート化やAIは若い世代の視聴行動にどう影響するのか。これらは一国の制度などおかまいなしに、著作権ビジネスを根底から塗り替えます。
 
 私はもともと制度屋ですが、今は制度の議論にばかり時間を費やしてはいられません。それよりも、今ある枠組みでいいから、それを使って、スマート時代、AI時代の著作権の世界をどう広げるかにエネルギーを注ぎたい。

 このところ政府もコンテンツ支援に熱心で、海外展開向けの大型ファンドを作ったり、aRmaの設置を進めたり、海賊版対策に力を入れたりと、アクションに重きを置いています。昨年のクールジャパン戦略推進会議では、コンテンツ分野は音楽に焦点を当てた施策が論じられました。いい方向だと思います。

 東京オリンピックを迎える2020年に向けて、東京・竹芝の国家戦略特区にデジタルやコンテンツの産業集積地を作る構想「CiP」が進められています。関係業界が中心となり、政府とも連携して、そこに音楽のデータベースやアーカイブを作るプランも動いています。民間としてもこのような機運を活かして、ビジネス実験、異業種連携、インフラ整備などをできるだけ進めておきたい。


 スマートからAI/IoTへと舞台は動きます。対応次第でチャンスにもなれば、ピンチにもなります。制度を考えている間に、ビジネスは終わってしまいます。先を見通して手を打っておくべき時期でしょう。

2016年12月1日木曜日

知財立国が危ない!

■知財立国が危ない!
 荒井寿光・馬場練成 著「知財立国が危ない」。
 2003年、特許庁長官を経て知財本部の初代事務局長に就任、多大な功績を築いた荒井さん。2002年小泉首相の知財立国宣言、03年知財基本法公布、05年知財高裁設置。矢継ぎ早に仕事をされました。ぼくも事務局長時代に知財政策に組み込まれました。

 本書は日本の特許・知財分野がいかにガラパゴス化しているか、ショッキングなデータや事例を並べていきます。知財高裁を作った荒井さんがそう指摘するのだから、絶望的です。ピックアップします。

・特許の海外出願率は、米国は51%、欧州は63%。日本は24%で、国内出願が中心。

・特許の分類方式は、米国も中国も韓国も欧州に合わせる方針。日本は日本方式に固執。

・知財訴訟は、中国8000件、米国4000件、日本は200件。
 しかも知財裁判は、世界の中でも珍しいことに日本は減少している。

・賠償判決は、米国も中国も1000億円規模だが、日本は10億円。1/100。
 プロ野球の年俸でも1/5の開きなのに。
 日本は侵害者天国であり、日本で特許権を行使しても無意味。

・訴訟を起こす印紙代は、1000億円の請求だと1600万円。
 米国は350ドル、フランスはゼロ。
 日本では裁判を起こしにくい。

・日本の知財裁判は「勝てない、少ない、遅い」ため、世界に相手にされていない。

・日本企業は知財裁判を日本で起こさず、米国で起こして判例を残す。

・日本は和解決着が多い。裁判所の体質と能力不足による。

・日本の裁判は秘密主義で裁判の日程も書面も不公表。

・企業が国境を越えて裁判所を選ぶ時代となっている。裁判官にも国際感覚、技術、知識が必要。だが米国では12年勤務するところ、日本は2~3年で交代し、専門家も育っていない。

 そして本書は、科学の進歩に新しい問題が発生した時に法律家は適切な発言をしない、という指摘を投げかけます。法学者や司法関係者は、これにどう答えるでしょうか。


 特許の司法はダメっぽいっですが、いくつか元気の出る指摘もあります。
 
 政府の特許事務は、2008年に滞貨が91万件だったが2014年には19万件に減少、あと2年でゼロとなって、出願すれば待たずに審査されるといいます。荒井さんの成果ですね。

 共同研究による特許料の管理で資金を確保・投入する大村智博士の手法「大村方式」を本書は高く評価しています。これが書かれて1年も経たずに大村さんがノーベル賞を授賞したんですよね。

 カップヌードルを発明した安藤百福さんは、インスタントラーメンの特許を開放することによって市場を創出し、世界で最も影響のある食品を創りだした。この実績を本書はモデルとして描きます。そう、評価すべきです。

 クールジャパンはマンガ・アニメ・ゲームだけではない、給食もそうだと説きます。日本には売り物がまだまだあると。同意します。身の回りのものを掘り起こしてデジタル発信するだけで強みを発揮できるものがあります。

 しかし本書はまた、TPPの知財決着を危惧します。競争力を削ぐのではないかと。これも同意します。そして出版後、ヤバい方向で決着しました。トランプさん当選もあり、まだ揺れますが。国内制度の整備と環境の構築に万全を期す。仕事は多いです。


 荒井さん、引退は遠いですよ。