■クールジャパンをめぐる疑問にコメントします。
クールジャパン機構と、クールジャパン政策と、コンテンツ政策はそれぞれ別物です。
コンテンツは成功、クールジャパンは途上、機構は検証が必要、がぼくのスタンスです。
Q1. 機構の失敗を検証しろ
ぼくは機構の設立に関わっていないし(2013年の政府決定後に知財会議で聞いた)、
運営にも関わってもいません(何のポジションにもついてない)。
逆に、評価・検証しろと求めていた側で、10年間唱える急先鋒でした。
24年に知財本部で検証議論が行われたが不十分となり、
なぜかその後も赤字幅が広がって、今日に至ります。
その結末は政府が検証する運びと聞くので、結果を待ちます。
機構の設立には賛成でした。原資は税金でなく産投(NTT株の配当など)で、
乏しかったコンテンツ支援にいい材料でした。アナウンス効果もあったでしょう。
正負の両面を評価すべきと考えます。
Q2. 吉本の関わりを総括しろ
社外取締役として吉本興業が関わる事業が
機構の出資を受けることには賛成しました。
ぼくは機構と無関係なので推すことに疑問もありませんでした。
コンテンツ・ビジネスの挑戦にとって有益な資金方策でした。
しかしビジネスの失敗はありました。
関与が指摘されるLPマザーはNTT:吉本=2:1のNTT主導事業でした。
子ども向け映像教育という新市場を開拓する事業でした。
が、成功に至らずサービスは終了しました。
ぼくはマザーの役員ではありませんでした。
サービス終了前にぼくは吉本の役員を退任していました。
コンテンツでは通常の高リスク事業であり、機構の出資で可能となった挑戦であり、意義はありました。
Q3. クールジャパン政策を検証しろ
クールジャパンは食、観光、化粧品、伝統工芸品なども対象とする広い政策です。
ぼくはこれを進める「クールジャパン官民連携プラットフォーム」のメンバーではありません。
ぼくは自分が関わるコンテンツ政策とクールジャパン政策が
離れてしまったことに繰り返し疑問を呈しています。
また、クールジャパンの範囲が不明確な点を正そうとしています。
その上で、過去の政策の検証・評価を求めています。
同時にコンテンツが先兵となって後に続く食、観光、伝統工芸などの産業は、
幅も厚みも大きく、今後の本丸と言ってよい。
つまりクールジャパン政策は失敗しているのではなく、
途上にあるというのがぼくの認識です。
Q4. コンテンツ政策は成功と言えるのか
コンテンツ、取り分けマンガ・アニメ・ゲーム・音楽・実写のポップカルチャーは
日本のメイン文化であり、その発展はぼくが役人時代から最も注力してきた政策領域です。
メディア整備、技術開発、人材育成、権利・制度整備、そして資金手当。
政策は多岐にわたります。
2000年ごろから知財本部や総務省、文化庁、経産省の委員も務め、
2010年からは座長職に就いています。
2010年当時、国内市場は縮小し、海外売上も減っていました。
政府は海外+デジタルへのシフトを鮮明にしました。
国の会議や業界を通じ、海外+デジタルのメッセージが繰り返し発せられ、施策も伴いました。
その後、海外+ネット市場は急拡大し、海外売上は自動車に次ぐ2位の地位を占めるようになりました。
全て政策の帰結とは申しませんが、効果はあったと見ます。
ただ、その評価・検証は十分とは言えません。
Q5. なぜまだIP360が必要なのか
コンテンツは成長産業から基幹産業へと呼び方が改まるほど成熟してきました。
しかし支援措置は伴いません。
主要国は産業支援を四半世紀以上続け、
日本のコンテンツ予算は米仏韓の1/5~1/15という規模です。
まずそれらと戦える規模に産業政策を強化せよ、が産業界の意見で、
ぼくらPPPも年1千億円予算を提言しています。
コンテンツが国の戦略領域と認知された今がラストチャンスで、
これを逃して劣勢になる危険のほうをぼくは重視しています。
なお、資金手当は政策のごく一部です。
インフラ、技術、人材、制度、さまざまな施策を数十年単位で推進してもらいたい。
そしてこれも長年求めている、政策の司令塔機能を構築してほしいです。
Q6. コンテンツに国は介入するな
コンテンツと国の距離感は重要な課題です。
支援するが内容に介入しない。
経産省が「作品の中身に口を出さない」という方針を強調しているのもその意思表示です。
著作権制度や海賊版対策など国にしかできない役割もあります。
人材育成も国は機能を強化すべきです。
国にはコンテンツに高い関心を持ち続けてもらいたい。
ぼくが最重視するのが「自由」と「教育」です。
政党など政治に呼ばれ主張するのは、表現の自由を死守することと、
初中等からの創作教育を拡充すること。
この2点が日本の表現文化を支える礎であり、産業の基盤です。




