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2010年9月29日水曜日

デジタル教科書への期待

Kids デジタル教科書への期待 
 「これまでの教科書は間違っている。」ソフトバンクの孫正義社長は、2010727日、デジタル教科書教材協議会の設立シンポジウムで言い放ちました。「日本の競争力が低下している。このままでは30年後に取り返しのつかないことになる。今すぐ日本の教育を改革しなければならない。」

 「知識が爆発的に増加して、処理しきれなくなっている。これが教育に影響を与えないわけがない。その多くがICTを活用することで解決される。デジタル教科書は理科、英語、芸術等の教育に有効だ。」同じシンポジウムで、前東大総長の小宮山宏 協議会会長もデジタル技術への期待を表明しています。

 来賓として訪れた原口一博総務大臣(当時)は「つながっていることで違う世界が生まれる。常時つながることで生まれてくるものが大事だ。2015年には光の道を実現する。この20年間の停滞、内向き志向を変えよう。デジタル教科書は単に紙から電子に変化するものではなく、停滞を解消するための大きな変化なのだ。」と力を入れました。

 自民党政権のスクールニューディール構想で小中学校にクラス1台の電子黒板を導入する政策が進められてきましたが、民主党に政権交代して以降、一人一台の情報端末とデジタル教科書を普及させる議論が高まってきました。文部科学省の鈴木寛副大臣が音頭を取って20104月に立ち上げた「学校教育の情報化に関する懇談会」は、こうした環境を実現する方策を検討しています。

 2020年には一人一台を達成するのが政府の方針であり、小学校706万人、中学校360万人、合わせて約1000万人が情報端末とデジタル教科書を持つことになります。生徒に一人一台、もちろん教員も一人一台、教室には電子黒板、それらがブロードバンドで常時接続、全ての教科書や教材がオンラインで入手でき、文字・映像・音声で表現できます。

 ICTを駆使した授業は既に各地の小中学校で事例が積み重ねられており、NPOなどが新しい学習プログラムを開発したりもしています。
 映像や音声を再生できるので、わかりやすく楽しい学習ができます。生徒の理解力に応じて指導を分けることもできます。
 みんながつながって、教え合い、伝え合い、創作し、表現する授業が実現します。
 教室の風景も、家庭の学習方法も様変わりする可能性があります。教師の指導法も、教科書検定や学習指導要領などの制度も見直しが必要となります。

 政府や教育関係者だけではありません。産業界も熱い視線を送ります。情報端末の価格を仮に2万円とすれば、ハードだけで2000億円の市場が出現します。いや、小中学生だけではない。高校生や大学生など全ての学生が対象となります。
 「1800万人の学生全員に2万円の端末を配ると3600億円。八ツ場ダムの総事業費より安い。」と孫社長は言いますが、デジタル教科書や教材というコンテンツは端末とは別の大型ビジネスを形作ります。また、情報端末やコンテンツをつなぐ通信・放送ネットワークの巨大ビジネスも広がります。

 アメリカでもデジタル教科書の市場は注目されています。マイクロソフト、アップル、アマゾン、ソニーといった企業が教育市場に進出しており、電子書籍リーダーの最大の市場は教科書関連になるという分析もあります。

 しかし、こうした動きへの懸念もあります。
 次回、それについて話します。

2010年9月27日月曜日

なぜデジタル教科書なのか

Kids なぜデジタル教科書なのか
 ---生徒全員が持つタブレットパソコンで、「わたしの未来の学校」の絵を描いた。先生はそれを電子黒板に集めてみんなに見せる。そして、平面のデザインを3D(立体)に変換し、実際に設計できそうか、意見を聞く。みんながパソコンにペンで書き込む。話もする。どんな学校がいいの。だんだん「わたしたちの未来の学校」ができる。でも、正解は一つじゃない。考える。
 授業の模様はアーカイブに蓄積されていて、家からも見られる。家に帰ると、家族が「未来の学校」のアイディアを出す。明日、学校で発表してみようと思う。地域の人も見る。給食に意見のあるスーパーの経営者や見回りボランティアのおじさんたちが未来の学校を考える授業に来てくれることになった。
 全員の端末がネットでつながっている。今日の社会科のテーマは政府の仕組み。家でサイトを調べて、共有画面にレポート結果を投稿する。学校の授業では、先生がそれをまとめて電子黒板に表示して、みんなで議論する。
 「じゃあアメリカはどうなの中国はどうなの。」知らないわからない。じゃあ外務省の人に聞いてみよう。テレビ会議システムでつないで、教えてもらう。アメリカや中国にも問いかけてみる。日本語で送れば機械翻訳される。あ、メールが返ってきた。なぜ?って思うことはきっと答えてもらえる。---
 そんな近未来はどうでしょう。いずれ学校でも家庭でも、情報端末やデジタル教材を使って、これまでにない教育・学習ができるようになるでしょう。

 2010年、教育の情報化が急速に動き始めました。きっかけは二つあります。
 まず、政権交代後、政府が力を入れ始めたこと。
 文部科学省が4月、「学校教育の情報化に関する懇談会」を開催し、総合的な推進方策を検討し始めた。2020年に一人一台の情報端末とデジタル教科書が使える環境を実現するのが政府目標となっています。総務省も「フューチャースクール」と名づけた学校情報化の実験を強力に推し進めています。
 もう一つは、新しいデバイスが一斉に登場してきたこと。アップルのiPadのようなスマートパッド、アマゾンのキンドルのような電子書籍リーダー、先生が使う電子黒板など。教育向けのタブレットパソコンも今後、続々と市場に投入される見込みです。デジタル教育で役立ちそうな機器やツールの具体像が見えるようになってきたのです。2010年は電子書籍元年とも呼ばれ、出版業界が大揺れとなりました。紙の書籍が急速にデジタル版に置き換わっていくかもしれません。教科書や教材もデジタル版が増えていきます。
 
 しかし、日本は動きが遅かった。デジタル教育の後進国と言ってもよいでしょう。アメリカ、イギリス、ポルトガル等が力強い足取りを見せています。さらに、韓国やシンガポールは20122013年にデジタル教科書の本格利用を予定しており、世界をリードしています。日本の7〜8年先を行きます。日本の取組はフィリピンやタイにも後れを取るという意見もあります。
 そこで20107月、教育のデジタル化を推進する母体「デジタル教科書教材協議会」が発足しました。現在の会員数は88社。出版、教育、通信・放送、ソフトウェア、メーカその他さまざまな業界から、次の世代の教育を考え、サービスやビジネスを花開かせようと集っています。ぼくが事務局長を務めています。文部科学省や総務省など政府関係者と意見を交換するとともに、内外の教育分野の研究者や全国の学校の先生たちとも連携して活動していきます。

 世界中とつながる。文字、音声、映像、データを駆使して知識を得て、考え、創作し、表現する手段が手に入る。論理力や思考力を養う。創造力や表現力、コミュニケーション力を育む。このためには情報技術の活用が不可欠。デジタル技術により、どこに住んでいても、豊富な知識に接することができ、地球上の人たちと交流することができるようになる。
 少子高齢化の進む日本は、少なくなる若年層の能力を高め、その活動領域を拡げていくことが最重要課題。教育の水準を高め、機会を拡げるための社会投資が必要です。工業社会から情報社会に切り替わる今、ふさわしい教育をわれわれ大人は提供できるでしょうか。
 日本に最先端の教育環境を整えたい。豊かな教育を子どもたちに授けたい。これは恐らく詰め込み・暗記型の教育から、思考や創造、表現を重視する学習へと教育の中味にも変化をもたらすのではないでしょうか。
 しかし、急激な変化に対する不安もあります。学校現場は対応できるのか。忙しい先生の負荷を増すことにならないか。情報化の予算は大丈夫か。そもそも情報化は子どもたちの学力向上に効果があるのか。子どもたちの成長にとってデジタル機器に危険なことはないのか。画一的な教育、無味乾燥な教育がはびこるのではないか。紙の教科書と黒板と先生による授業に勝るものはないのではないか・・・。
 もちろん、現時点で、「全く心配はない」などということはできません。デジタル技術も、その上で使われる教科書や教材も、それを使った授業の手法も、開発途上です。開発しながら、学校の現場で先生たちに試してもらいながら、生徒たちにも使ってもらいながら、よりよいものに進化させていく必要があります。不安を取り除いていく必要があります。
 紙の教科書も、ノートや鉛筆などの文具も、先生の授業の手法も、長い年月と愛情をかけて、進化を遂げてきました。そこにデジタル技術が投入されて、学校の状況が変わっても、年月をかけ、愛情をかけて、教育や学習を進歩させていくことに変わりはありません。
 紙には紙のよさがあります。黒板には黒板のよさがあります。そろばんには電卓にないよさがあります。だが、デジタルにはデジタルにしかできないことがあります。それを使いながら、次の世代の教育を作ることはできないか。日本は今、その入口に立つのかどうか、ということが問われているのだと思います。

2010年9月25日土曜日

ローカル・プロモーションメディア

■YouGo ローカル・プロモーションメディア

 ローカルなアナログ広告をデジタル化するのも重要。
 マスコミ4媒体やインターネット広告とは別に、プロモーションメディア広告費というのがあります。
 狭義の販売促進費と呼んでもいいでしょう。

 屋外広告や交通広告、折り込みチラシやダイレクトメール。フリーペーパー。
 本屋さんやスーパーなどの商品売り場に置かれているPOPなどです。

 看板やポスター、紙チラシやパンフといったアナログな広告メディア。
 これらをデジタル化し、ネットワークでつないで、活き活きとさせる。
 これがデジタルサイネージの狙う主要ターゲットとなります。

 そして、これらプロモーションメディア広告費は合計2.8兆円もの規模があります。
 テレビと新聞の広告合計と同規模なのです。
 折り込みチラシは6500億円。屋外広告は4000億円。
 いずれも雑誌広告より大きい。

 単純に言うと、マスコミ4媒体=広告は広報部が扱いロットが大きいので社の決裁が必要ですが、店頭POP=販促は事業部単位のコストで、ロットは小さいが取りやすい。

 全国を相手とするマスコミ4媒体と比べ、プロモーションメディアはローカルに立脚しています。
 地域の駅、会社、商店などのニーズをきめ細かくすくいとり、機動的にコンテンツを作って流していく。
 そこから広がっていくことになります。
 デジタルサイネージの市場は、東京の大手よりも、地元に密着したローカル・プレイヤーがチャンスをつかんでいくのではないでしょうか。

2010年9月24日金曜日

福岡の戦略

■YouGo 福岡の戦略


 福岡市は自治体が行政としてデジタルサイネージに積極的に取り組んでいます。
 総務省が2008年に創設したユビキタス特区をはじめ、ICT利活用モデル構築事業、ユビキタスタウン事業といったスキームを使い、無線のマルチメディア放送を活用した実証実験を行っています。
 マルチメディア放送とは、20011年にアナログテレビが終了した後のVHF周波数の跡地を利用する新しい放送方式。テレビ、ラジオといった従来の放送ではないサービスが可能になり、ケータイ向けの放送やデジタルサイネージでの利用に期待が寄せられています。
 福岡市では、ユビキタス特区でマルチメディア放送の先行実験を行っているエフエム東京とCSKシステムズをパートナーに、デジタル放送による地域情報、行政情報の新たな活用に取り組んでいます。
 デジタルサイネージはそのなかでも中核になる事業モデルのひとつです。
「公共情報に関心が薄い層や情報リテラシーの壁を越えて、観光、防災情報などをどのように市民に届けるかが課題でしたが、マルチメディア放送を活用した情報配信手段としてのデジタルサイネージは最適なメディアです。」(福岡市 長尾友夫氏)
 実証実験のテーマは3つ。
1)レイヤー体系の放送
 地上波の放送は、電波を持つ会社が番組の編成責任を負う「ハード・ソフト一致」という制度となっています。福岡特区では、電波を持つ会社と番組編成を行う会社などが別々の「ハード・ソフト分離」型で実証実験を行います。
2)放送波ダウンロードコンテンツ課金の検証
 放送波により暗号化されたコンテンツをダウンロードさせ、鍵を通信経由で販売するサービスモデルの検証を行います。
3)放送によるIP伝送
 デジタル放送でIPパケットを伝送するIPDCIP Data Cast)を用いたインターネットと放送の連携技術を検討します。

 福岡タワーから放送波を使い、地上及び地下鉄構内の携帯電話型受信端末に向けて生活・観光・エンターティメント情報や防災緊急放送などの公共情報番組を配信します。
 モニター200人に端末を提供し、実証実験の効果を探っています。

2010年9月22日水曜日

国内の広告プラットフォーム

■YouGo 国内の広告プラットフォーム

 急激な伸びを見せているインターネット広告費。
 1999年にはわずか240億円でしたが、2008年には7000億円に成長。
 2004年にはラジオ広告を、2006年には雑誌を抜きました。
 2009年には新聞の広告を追い抜き、いずれテレビにも手が届くともみられています。

 しかし、より大きな問題は、それらを合計した総額、6兆円が大きくなっておらず、むしろ減少している点。
 広告全体として新しい市場をプロデュースできていないのです。
 しかも、もはやその6兆円のパイを奪い合っている場合ではありません。
 国内の6兆円市場は安泰ではない。
 アメリカのネット企業が日本の広告費を吸い上げる動きもあるからです。
 自動車メーカーなど大手スポンサーがCMをテレビからネットに移しつつあります。

 ネットには国境がありません。
 You Tubeには日本のコンテンツが大量に置いてあります。
 日本のマスコミに支払っていた広告費をアメリカのサイトに振り向けたらどうなるでしょう。
 6兆円のいくらかが海外流出し、国内が空洞化しかねません。

 これに対し、デジタルサイネージは、国内のプラットフォームになるのではないでしょうか。
 新しい成長領域を作り出せるのではないでしょうか。
 一つのパイを新旧の業界で食い合うのではなく、これからみんなで開拓する新大陸となり得ないでしょうか。
 期待はそこにあります。いまのうちに、国内に広告市場とプラットフォームを作っておきたい。

 とはいえ、まずターゲットとするのは、現在の広告市場からビジネスを取ってくること。
 まずはネット広告市場がデジタルサイネージに広がる展開が考えられます。
 デジタルサイネージのシステムは、コンピュータのディスプレイにインターネットで配信するものが基本形。
 だから、テレビ型のマス広告よりも、ネット広告の配信ビジネスに親和性があります。

 ネット広告が家庭やオフィスのパソコンから街へと場を広げます。
 ネット広告を屋外のディスプレイやタッチパネルと連動させていきます。
 広告がバーチャルからリアル空間に飛び出します。
 急成長している6000億円のネット広告市場を再構成し、新展開させるということです。

2010年9月20日月曜日

クロスメディア・マーケティングの担い手

■YouGo クロスメディア・マーケティングの担い手

 消費者が激しく変化しています。
 マス媒体の接触が減少し、パソコンやケータイが増加しています。
 博報堂DYメディアパートナーズによれば、一日のメディア接触総時間は、2006年から2008年までの2年で16分減少。そのうちテレビは10分、新聞は4分と短縮。
 他方、パソコンは3分、ケータイは8分増加しました。
 世代間の差は明白。マス媒体はシニア層の利用が多く、若年層はネットやケータイに傾いています。
 50代以上は新聞とラジオへの接触時間が長いが、20代はPCのネット利用に時間を費やし、10代は圧倒的にケータイに時間をかけています。
 だが、単純にこれをマス媒体からネットへのシフトとみることはできません。
 テレビはいまだ全世代が接触しています。ネットも50代、60代の女性は雑誌の接触時間を超えています。
 ただし10代ではテレビとPCとケータイを同時に開いて「ながら」で情報を駆使する「3スクリーン」派が増えています。
 新旧さまざまなメディアを使いこなす、多様化が進んでいるとみるべきでしょう。

 そこで、「クロスメディア」が大切となります。
 テレビ、ネット、ケータイ、さらにデジタルサイネージなど、あらゆるメディアを通じて消費者に接する考え方です。
 メディアというタテ軸に、時間や場所といったヨコ軸も組み合わせて、マーケティングをとらえるものです。
 消費者の一日の行動の導線、効果的にメディアを使い分けていきます。家ではテレビやネット。電車ではケータイや車内広告。店頭や街ではサイネージ。
 消費者と接する場所、コンタクトポイントのうち、どこが印象に残るかを電通が調べたところ、1位がテレビCM 72%。2位が屋外ポスター・看板66%、3位が駅のポスター 66%。雑誌や新聞の広告はいずれも59%。
 屋外や駅ナカのサイネージは高い効果が見込めます。
 これは、広告費だけでなく、営業活動や店舗対策などの販売促進費をターゲットとする領域となってきます。
 日本の広告費は総額7兆円だが、広義の販売促進費は13兆円。
 いかに企業の販売促進活動をデジタルサイネージなどのメディアが取り込めるか。
 きめ細かい消費者への刺さり込みを企業にアピールできるか。ポイントです。

2010年9月18日土曜日

サイネージ:上海とソウル

■Net サイネージ:上海とソウル

 万博の上海。
 成長する勢いをサイネージで表現しています。
 天然色の看板が縦横無尽に立ち並びます。
 大小の広告塔がわれ先に主張します。
 そうした従来からのアジア的な看板文化がデジタル化し、動画化しているのが上海のサイネージの姿。
 商店街にはタテ型のディスプレイが数メートルおきに配置され、公園のステージやビルの壁面にも巨大な表示システムが埋め込まれています。
 南京東路/Nike3LED、歩道の連続サイネージ、浦東/高層ビル一面のサイネージ。
 圧巻です。

 ソウルもサイネージが街に溶け込んでいます。
 空港では、フライト情報などは無論、ファミマのレジ、電話カードの自販機、公衆電話機、ホテル案内、ATM、ビビンバ屋のメニュー、スタバ店内の宣伝、ダンキンのカウンター6面。
 ありとあらゆる場所にサイネージが入ります。
 こんなにサイネージな空間は見たことがありません。
 江南にあるのはメディアポール。
 道路脇に高さ12.38メートルの塔型タッチパネル22本が30メートル間隔で並びます。
 韓中日英の4カ国語で、プリクラメール、おえかき、ゲーム、エンターテイメント、ニュースを楽しむことができます。
 100インチ級タッチパネルもあちこちにあふれ、がらりとサイネージ街になっています。

 それぞれの国やコミュニティによって、デジタルサイネージの姿も変わります。
 それがまたサイネージの魅力でもあります。
 町のたたずまいや色彩に気を配り、その街に溶け込んだサイネージをプロデュースできるといいですね。
 いずれ全ての空間がサイネージで埋め尽くされます。
 技術が行き着く先は、「デジタルサイネージがなくなる」ということでしょう。
 すべてのモノがメディア化し、五感サイネージとなります。
 そうなると、もはやサイネージはサイネージとして意識されなくなります。
 今は「目立つ」ためのメディアですが、いずれは人間社会に自然に溶け込んで「目立たなく」なっていくこと。
 長期的には、そのようなことも模索されていくはずです。

2010年9月16日木曜日

三都サイネージ物語

■Pop 三都サイネージ物語

 京都、大阪、神戸。
 師走を迎えるとこの三都は光に包まれます。

 神戸はルミナリエ。
 きらびやかな夜の光アートはこの街のシンボルとなりました。
 阪神・淡路大震災を風化させず、震災の記憶を後世に語りつぐ催しとして、2009年で15回目を迎えました。
 大阪の中之島エリアを中心としたイルミネーションイベントは「OSAKA光のルネサンス」。
 温かな光で大阪を元気づけたいという願いのもと、2009年で7年目を数える催しです。
 LEDを駆使してアート表現します。街をプロデュースするサイネージの一種とも言えます。

 そして京都「嵐山花灯路」。
 渡月橋周辺一帯をさまざまな形の行灯で埋め尽くすライトアップイベントです。
 宝厳院の燃えるような紅葉や鮮緑の竹林が淡い白熱級の中に浮かび上がります。
 竹林の小径は幻想的な黄緑の空間に迷い込んだ気分にさせます。

 この世とは思えないが、確かにこの国でしかない、そんな空間を演出する常寂光寺に点在するのは、竹の台に和紙を巻き、ろうそくがゆらめく行灯。
 どこもこの上なくアナログな風情。
 だが、この季節、その場所でしか体験できない空間ディスプレイを浮かび上がらせている点で、サイネージに強く通ずるものがあります。

 その中でひときわ目を引いたのが法輪寺で行われたD-K LIVEと銘打つイベントです。
 1300年前、行基がひらいたこの寺の夜を舞台に、約100万枚の画像を十数面の大型プロジェクターで投影します。
 遠くに京の町を睥睨する丘の闇にたたずむ寺に豊かな色彩の紋様を映し出し、打楽器の演奏とともに異次元の空間をプロデュースします。
 千年の時空を超え、古来の営みと現代の表現とが、そこでしかないという場所で交差します。
 サイネージがたどりつく一つの答えです。

2010年9月14日火曜日

サイネージの空間演出

■Pop サイネージの空間演出

 フィンランドの「郵便博物館」。
 入り口の左右に等身大タテ長のディスプレイが2枚。
 左にはクラシックな装いの婦人、右にはこれも古風ないでたちの紳士が、互いにやりとりしたり、こちらを向いて挨拶したり手招きしたりしています。
 その間を行く廊下の奥、正面には、4枚の液晶をつないだディスプレイで、19世紀の郵便局員の衣装を着けた男性が手招きしています。
 歩いて近づくと、画面から立ち去り、博物館の案内情報が提示されます。
 クラシックな郵便車や古い局舎のセットがレイアウトされた館内では、あちこちの黒壁にプロジェクターから動画が投影されています。
 クラシックでアナログな空間と展示物に、緻密に計算され、美しくプロデュースされたデジタルサイネージが融合し、全体を幻想的に演出しています。

 ロンドンの美術館「TATE museum」は現代美術のショウルームにふさわしく、デジタルサイネージを駆使しています。
 タッチパネルで館内を案内するシステム、美術史を表示するビデオ、親子連れもあそべる美術ゲーム、テート美術館を学ぶシステムなど、さまざまな映像展示があちこちに配置され、いずれも鮮やかな深紅のフレームで館内を演出しています。

 銀座「シャネル・ビル」は、壁面全体にアート表示。雨の日は傘が降ってくるといった映像を放映。
 お台場のパナソニックセンターでは、壁が一面ディスプレイになっていて、身振りで操作できるインタフェースを備えています。

 ヨーロッパではこうした建築物の表面を使ったビデオ映像による表現が「メディア・ファサード」いうひとつのジャンルを形成しており、アートフェスティバルも開催されています。
 建築の一部としてデジタルサイネージが組み込まれ都市の景観を形作っていくというのが当たり前になるでしょう。
 壁、道路、地面などをサイネージ化して、街をメディア化します。
 ビルのオーナーやデベロッパーが土地や建物のバリューを上げるために取り入れていくことも考えられます。

2010年9月12日日曜日

街にとけこむサイネージ

■Net 街にとけこむサイネージ

 デジタルサイネージは、バーチャルなメディア空間と、リアルな物理空間とをつなぐメディア。
 オンラインの情報と、屋内・屋外の場所とを結合させます。
 今、ありとあらゆる空間、そして街はデジタルサイネージで埋め尽くされようとしています。
 空間プロデュースの一環としてのサイネージ、都市の景観の一部としてのサイネージがキーワードになりつつあります。
 ニューヨークのノキアショップの店内は、壁一面スクリーンとなり、近未来の店舗を演出しています。
 ケータイのデモ機を手に取ると、連動してスクリーンの映像が変わります。
 音も映像とシンクロし、この店舗でしか体験できない特別空間を演出します。

 人材派遣の「パソナ」大手町本社。
 1Fのショールームでは、パソナの企業理念や派遣希望者の登録業務などを150インチの大型プロジェクター画面11面でタッチパネル表示。
 スマートなカフェ空間を巨大映像システムで演出しながら、来客に企業イメージとブランド力を理解してもらいます。

 2007年にオープンした国立新美術館。
 全面ガラス張りの曲面の威容は黒川紀章の手による。
 2階と3階の通路には、しとやかに表示板が置かれています。
 展示室の案内、講演会のスケジュール、観覧料などを静止画と文字で表示。
 3階奥の端末では、彫刻家が黒御影石を使った作品づくりのワークショップを開いた模様を解説しています。
 打ち放しのコンクリートの壁に、深い茶の木材による床、そこに黒いソファが点在。
 表がまばゆく明るい建築物ですが、内装はシンプルで落ち着いています。
 その脇に、黒いツヤなしの筐体と、液晶のディスプレイ。2階に3台、3階に2台。
 でしゃばらず、静かにたたずむサイネージ。
 一方、2階のVogue Cafeと3階のレストラン Paul Bocuseでは、入口に大型のディスプレイを2台配備。
 案内板とは対照的に、あざやかな動画で料理を演出しています。