■ Kids デジタル教科書への期待
「これまでの教科書は間違っている。」ソフトバンクの孫正義社長は、2010年7月27日、デジタル教科書教材協議会の設立シンポジウムで言い放ちました。「日本の競争力が低下している。このままでは30年後に取り返しのつかないことになる。今すぐ日本の教育を改革しなければならない。」
「知識が爆発的に増加して、処理しきれなくなっている。これが教育に影響を与えないわけがない。その多くがICTを活用することで解決される。デジタル教科書は理科、英語、芸術等の教育に有効だ。」同じシンポジウムで、前東大総長の小宮山宏 協議会会長もデジタル技術への期待を表明しています。
来賓として訪れた原口一博総務大臣(当時)は「つながっていることで違う世界が生まれる。常時つながることで生まれてくるものが大事だ。2015年には光の道を実現する。この20年間の停滞、内向き志向を変えよう。デジタル教科書は単に紙から電子に変化するものではなく、停滞を解消するための大きな変化なのだ。」と力を入れました。
自民党政権のスクールニューディール構想で小中学校にクラス1台の電子黒板を導入する政策が進められてきましたが、民主党に政権交代して以降、一人一台の情報端末とデジタル教科書を普及させる議論が高まってきました。文部科学省の鈴木寛副大臣が音頭を取って2010年4月に立ち上げた「学校教育の情報化に関する懇談会」は、こうした環境を実現する方策を検討しています。
2020年には一人一台を達成するのが政府の方針であり、小学校706万人、中学校360万人、合わせて約1000万人が情報端末とデジタル教科書を持つことになります。生徒に一人一台、もちろん教員も一人一台、教室には電子黒板、それらがブロードバンドで常時接続、全ての教科書や教材がオンラインで入手でき、文字・映像・音声で表現できます。
ICTを駆使した授業は既に各地の小中学校で事例が積み重ねられており、NPOなどが新しい学習プログラムを開発したりもしています。
映像や音声を再生できるので、わかりやすく楽しい学習ができます。生徒の理解力に応じて指導を分けることもできます。
みんながつながって、教え合い、伝え合い、創作し、表現する授業が実現します。
教室の風景も、家庭の学習方法も様変わりする可能性があります。教師の指導法も、教科書検定や学習指導要領などの制度も見直しが必要となります。
政府や教育関係者だけではありません。産業界も熱い視線を送ります。情報端末の価格を仮に2万円とすれば、ハードだけで2000億円の市場が出現します。いや、小中学生だけではない。高校生や大学生など全ての学生が対象となります。
「1800万人の学生全員に2万円の端末を配ると3600億円。八ツ場ダムの総事業費より安い。」と孫社長は言いますが、デジタル教科書や教材というコンテンツは端末とは別の大型ビジネスを形作ります。また、情報端末やコンテンツをつなぐ通信・放送ネットワークの巨大ビジネスも広がります。
アメリカでもデジタル教科書の市場は注目されています。マイクロソフト、アップル、アマゾン、ソニーといった企業が教育市場に進出しており、電子書籍リーダーの最大の市場は教科書関連になるという分析もあります。
しかし、こうした動きへの懸念もあります。
次回、それについて話します。















