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2016年4月28日木曜日

AI創作物の知財問題

■AI創作物の知財問題

 知財本部・次世代知財システム検討委員会@霞が関。AI論議の続き。佳境です。
 事務局が整理したAI創作物の論点は、「現行制度のまま」vs「AI創作物を保護」。
 後者の場合、1)著作権以外の新権利、2)創作物登録制、3)AI登録制の3例。
 前回の議論を踏まえ、めっちゃ大胆な整理です。
 AI登録制なんて、赤松さんの提案ですけど、AIに人格を認める制度ですよ!

 しかしやはり議論は逆噴射。委員から意見が噴出しました。とりあえずぼくが引っかかって咄嗟にメモしたものを並べます。脳内変換してますので、正確なところは政府議事録で確認いただければと存じます。

瀬尾委員:これまでの知財は「人が作る」ことを前提にした制度だった。それが大崩れする。時代認識を整理することが重要。

福井委員:創作のあり方がどう変わるかを認識するにはAIの実態やビジネスモデルの把握が必要。その上で、自然権・人格権と投資インセンティブの2つの基本的考え方に基づき、何を守りどういう権利にするかが問われることになる。

柳川委員:人格ならぬ「AI格」の設定はまだ早かろう。また、AIに意思がなければインセンティブによる保護も不要となる。人間とAIとの関わりを場合分けして検討することが必要。

水越委員:他国の保護状況によっても日本の戦略は左右される。放置ないし保護のそれぞれに、メリットもデメリットもあるだろう。

上野委員:前回、赤松委員は、AIを登録するが収入は「P」のものという案を提示したが、AIの収入は文化予算に回すという案はどうか。

赤松委員:この場の目的が、文化発展か産業振興か、その方向を定めないと議論がまとまらないのでは。

福井委員:AI創作に人間が関与するほうがチャンスがある段階であれば現行制度のままでよいが、創作物が爆発的に増えるであろう「次世代」を今のうちに構想しておく必要がある。

喜連川委員:AIはなだらかに進化してきている。これに関する権利は広い世界観に立った整理が必要。

・・このあたりでもう座長=ぼくのキャパをあふれ、収束する気配がなくなってきました。しばしの議論を経て、次のように引き取りました。

 事務局が論点整理したが、議論が引き戻されました。AIによる変化の時代認識についても意見が分かれます。実態やビジネスモデルも、5年後ないし2045年といったタイムスパンによって見え方が異なります。これは仕方のないこと。

 今回の議論は、世界でも例のない挑戦であり、われわれに指針はありません。だが来るべき社会を空想し、制度論に落としこむ意義は共有されています。現行法体系を見直すこともあり得ます。ただ、議論はグルグル回りそうなので、どう落としこむか整理させていただきたい。


 この日は「国境を超えるネット知財侵害」についても議論しました。AI空想論と対称的に、こちらは差し迫った課題。海外サーバの削除、リーチサイト対策、サイトブロッキング、啓発などどのような対策を講じるか。

 CODA後藤専務理事によれば、侵害動画はこの3年で削除要請18.7万件、削除率98%。しかし侵害は巧妙で潜在的になっているそうです。侵害リーチサイトの違法化、サイトブロッキング運用、オンライン広告対策が提案されました。

 瀬尾委員は、侵害対策と正規版コンテンツ流通促進の両方を進めるべきと説きます。海賊版を止めること自体が目的ではなく、コンテンツが流通し権利者がもうかるという全体図を描くことが大事だと。これはコンセンサスです。

福井委員:リーチサイト対策は重要だが、導入に当たっては「炎上」することも覚悟しなければならない。国内に効果はあっても海外の運用がポイントになる。

赤松委員:マガジンは水曜に正規版が出るが、その前の土曜に海賊版が出てしまう。これでは勝てない。だがそういう連中にも「愛」があるので、彼らと「手を組む」ことも考えてよい。

 政策の遂行には「覚悟」が求められるということですね。制度化に当たっては、「炎上しても、やるべきことはやる。」という方針で臨むことになります。

 議論は核心に触れます。
 

福井委員:正規版を流通促進するには権利処理の容易化が重要。ただ、広告なしの有料サービス「YouTube Red」は海賊版を排除する仕組みだが、プラットフォームの力がこの上なく強力になる。

柳川委員:国よりもプラットフォームのほうが執行力を持つという点がポイント。
 

喜連川委員:リーチサイトにリーチできるかどうかが重要であり、それをGoogleが執行すればよいが。

後藤専務:日本は法的根拠がないため、Googleは応じない。

「国会vsプラットフォーム」論に話が至りました。民間どうしのビジネスや利用の秩序を政府が裁くという次元を超えて、国より強大なパワーを持つ世界的な企業に個々の政府はどういうスタンスで臨むかが問われます。

 次世代の制度論は、この議論が避けられません。EUや中国で、課税やセキュリティ、あるいは情報内容を巡り、国際プラットフォームと国家とのせめぎあいが見られますが、知財はどう対応すべきでしょう。悩ましい・・・。

2016年4月25日月曜日

ビッグデータとデータベースの知財問題

■ビッグデータとデータベースの知財問題
 知財本部「次世代知財システム検討委員会」。
 TPPも決着し、「ソーシャル化=スマホ+クラウド+ソーシャル」の次、ビッグデータやAIやIoTといった大波が来ることを受け、知財問題をどうとらえるかという問いです。

 KADOKAWA川上さんが著作権制度を「アメリカと同じにする」ことを提案しました。冗談ぽいが、TPP合意もあり、ぼくはマジに受け止めるべきと考えます。EUと同一、でもいい。次世代の知財は、日本独自の制度を維持することの意味を問うべき。国内制度とグローバルの整理。大論点。しかしこの議論を政府としてどう扱うか。冒頭から荒れ模様です。

 まずはビッグデータとデータベース、BDとDBについての議論が始まりました。川上さんと東大・喜連川さんから、データベースの「創作性」を問い直す問題提起。ネット+AIがどんどんデータを作っていく時代、創作性によって保護する意味とは。過去30年間の著作権制度を脱却する議論に発展しそうです。

 ビッグデータ論議。知財事務局が攻めます。テーマは3点。1)完全権利制限、報酬請求権付き権利制限、集中管理など既存の政策に加え、拡大集中許諾などの新しい制度も整備する。2)権利制限規定に柔軟性を確保した規定を導入する。3)分野ごとの集中管理を促進する。 
 これまで著作権制度に関わってきた人からみれば、ビックリする大胆な提示です。さて、この方向で進めてよいか。


福井さん:方向性に賛成。コンテンツの大量生産、ステークホルダーの増大、利用の多様化というネット化による環境変化を踏まえ、従来の少数による許諾システムが機能不全を起こし、処理コストを下げる多様な手段を構築すべき。でなければ世界的に劣後する。
 →この議論を進める理由をこのように整理することが、まずもって重要。なぜ今この議論をするのか、この議論がどう重要なのか。それを示す必要があります。

田村さん:文化庁はニーズの積み上げによる議論を進めている。知財本部は理論先行で将来展望をしている。その両者の歩み寄りが重要だ。
 →内閣官房知財本部と、法律を所管する文化庁は総論と各論の関係。その両輪がうまく回るよう、運営にも気を配りたい。

瀬尾さん:全ての整理を著作権法に詰め込むことはムリ。それ以外のシステムを含む制度を作るべき。完全権利制限、報酬請求権、裁定制-民間委託、拡大集中許諾、集中許諾・・・
 →知財本部には政府全体の政策を方向づける役割もあります。著作権法だけの問題であれば文化庁が掘り下げればいい。内閣官房の委員会としては、著作権法だけでなく、いろんな制度や仕組みを動員する総合政策を目指したいです。

喜連川さん:オボカタ問題は学界として恥である。これをビッグデータやデータベースの観点でどう問いただすのか。問題提起する。
 →先生、どうしましょう。

水越さん:制度がどうであれ、企業がリスクを取らないという問題は、教育にも起因する。リスクテイク、交渉など、教育も考えるべき。
 →制度にできることはごく一部。教育を含む社会システムとして考える必要があります。政策としてパンチが効かないのが悩みどころです。

赤松さん:次世代の知財というと不安がるクリエイターもいる。そういう層にいたずらに不安を与えない工夫も必要。
 →従来の権利を切り下げたりすることはないので、そうした当然のこともメッセージとしては必要なのでしょう。

 「次世代知財システム」が今なぜ重要か。それは著作権法を含む総合政策であり、教育問題でもある。もちろん従来の権利が切り下げられることはない。という「総論」をしっかり組み立てる必要があると感じます。

2016年4月21日木曜日

コンテンツ海外展開、成果は現れているか

■コンテンツ海外展開、成果は現れているか

 知財本部コンテンツ会合。海外展開について。
 政府:経産省、総務省、外務省の施策を評価・検証し、対策を検討します。

経産省
1) クールジャパン機構の投資--ジャパンチャンネルの展開、正規アニメネット販売、コンテンツローカライズ、海外人材育成など。
2) J-LOPによる海外展開支援。これにより初めて海外展開したのは260社。補正予算で権利情報データベース整備を進める。

総務省
放送コンテンツの海外展開は2013年度13か国43事業、14年度は14か国34事業。タイで北海道のコロッケ番組を流したら16万個が売れた。こういう波及効果を調査研究中。

外務省
国際交流基金による非商業的な放送コンテンツ紹介事業として、70か国330番組を提供。30億円予算。

 コンテンツ海外展開が強化されるようになって5年以上がたち、政府報告のとおり措置も充実してきました。以前に比べると、政府は胸を張っています。ボールが民間に投げられた観もあり、数字としての成果が求められている状況です。

 ここで内山委員が報告。
・地上テレビ番組の輸出は2008年93億円→2013年138億円。5年で48%増。
・映画は10年6560万ドル→15年11760万ドル=79%増。
・アニメ09年153億円→14年195億円=27%増。

 2006年〜11年の5年間ではコンテンツ輸出は軒並み減少していました。ぼくの手元のデータでは、映画は10%、放送は28%減少していました。リーマンショックを契機とする世界不況が痛かった。しかしその後は大幅に回復。政府が力を入れた時期と符合します。成果は現れているとみてよいのでは。

 ところがその間、世界情勢、特にコンテンツのネット流通を巡る状況がさまがわりしました。これをどうとらえばよいでしょう。

 例えば、アニメ・映像の世界市場はネットフリックスとアマゾンが2大買い手。そこでの売上を伸ばすという戦略を国としてどうとらえましょうか。

 海外売上増がミッションであるなら当然の戦術。むかし、コンテンツ売上増を国として考えるならハリウッド企業を国が買収するのが早いと申し上げボコられたことを思い出した。問いと答えはほぼ変わっていません。

 ぼくがメモにとどめた 委員からの指摘。

野間委員:北米のマンガ売上は急拡大している。だが、マンガの電子書籍は国内2万タイトルに比べ、アメリカは100タイトル。まだまだ市場は広がる。
 →マンガの電子書籍の国内市場は拡大中。海外も有望ですね。

瀬尾委員:データベースは各種でそろってきてはいるが、その間の連携が取られていない。インフラとしての整備が必要。
 →デジタル特区CiPが取り組むアーティストコモンズは、その横串を指す企画でもあります。

重村委員:政府予算は9月に採択され、10~3月で制作・放送・評価が行われる。だから春や夏をテーマにした海外向け番組は作られない。単年度予算ではまっとうな制作・評価は不可能。
 →単年度の補助金システムでは成長戦略は不可。まだ基金や出資のほうが親和性がありますね。

林委員:NHKのデジタルコンテンツ50万タイトルをもっと活用して海外展開すべき。
 →賛成。受信料で作られたコンテンツ資産を国としてどう活かすのか。これはなかなか触れられてこなかった重要論点と考えます。

2016年4月18日月曜日

櫻井孝昌さんの思いを継ぎたい

■櫻井孝昌さんの思いを継ぎたい

 2015年12月4日、櫻井孝昌さんが事故で亡くなりました。その前日、「いよいよ時が来た」と喜び合ったばかりでした。

 櫻井孝昌さん。
 "ポップカルチャーの研究家で、日本のアニメ文化などの海外発信をめざして外務省が設けた有識者会議の委員も務めた。著書に「世界カワイイ革命」「アニメ文化外交」などがある。"(朝日新聞)。
 これからその成果が活かされる、その時に。痛恨です。

 櫻井さんは、国際オタクイベント協会IOEAの事務局長を務め、世界のオタクイベントをネットワーク化しました。30か国、58イベントが集う動員200万人の親日イベントコミュニティを作ったんです。偉業であります。
 http://ioea.info/

 2年前にぼくが書いた櫻井さん著書の評です。
 この外交官数十人分に匹敵する役割を、これから担ってくれる人はいるのだろうか。
「櫻井孝昌「日本が好きすぎる中国人女子」(上) -- 日本の認識不足」
 http://ichiyanakamura.blogspot.jp/2013/10/blog-post_7.html
「櫻井孝昌「日本が好きすぎる中国人女子」(下) -- 本気度の問題」
 http://ichiyanakamura.blogspot.jp/2013/10/blog-post_10.html

 最後に会った時、「先日、サハリンのオタクイベントに足を運び、親日コミュニティと交流してきた」と話していました。その後、「シンガポールのオタクイベントで中国オタクの進出に危機感を募らせた」と話していました。この人脈とフットワークを、ぜひ日本の政策・外交にも活かしてほしいとぼくが頼んでいた矢先でした。

 櫻井さんの国際オタクイベント協会と、デジタル特区を作るぼくらのCiP協議会が連携して、国際連携を強化するプランを作ることで合意し、握手した翌日のことでした。その情熱を、ぼくらが受け継げるのか、年をまたいで考え続けています。

 櫻井さんが築いてきた国際オタクコミュニティをみんなで育て、年1000万人を動員する親日ポップコミュニティを作りたい。その思いは変わりません。


 「世界オタク研究所」。櫻井さんが築いてきた世界的な大学ネットワークを育て、各国のオタク研究者のプラットフォームを作りたい。その思いも変わりません。

 櫻井さん一人におぶさってきたオタク外交の機能を、組織化して面的に進められるようにすることがぼくらに投げつけられた宿題だと思います。

 やってみます。あちらから見ていてください。



2016年4月14日木曜日

3D印刷とAIがモンダイなのだ

■3D印刷とAIがモンダイなのだ
 知財本部・次世代知財システム検討委員会@霞が関。
 3DプリンティングとAIに関する議論。スマート化の次に来るIoT、AI、ロボティクスの時代に発生する知財問題という世界に先駆けての政策論です。座長として緊迫しています。

 まずは3Dプリンティング。デジタル化によって本もレコードも映画もネットで流通し、バーチャル化します。この10年、それをどう扱うかを知財本部で議論してきました。3Dプリンターはそのコンテンツがモノに広がり、リアル空間に戻すもの。

 3Dプリンターで拳銃を作ったかどで、武器等製造法と銃刀法で有罪判決が下った例のように、モノの生産がダウンサイズ化し、ソフトウェアやコンテンツに加えてハードウェアの流通が可能となり、既に問題が生じています。

 間もなくスマホに3Dスキャナーが入るといいます。するとカギを撮れば自宅で合鍵がコピーできます。それは便利。だが、それは問題を起こします。
 これらをどう扱うのか、が今回の議論です。

 基本的には現行法で扱い得る問題であり、3Dデータのみを取り上げて知財の特別な保護策を講じる必要はないというのが議論の方向です。ただ、3Dデータでデザインが共創され、個人がメーカーとなる世界を広げるという方向性も共有されています。

 水越委員から、この世界を活性化するため、侵害となる行為の明確化やプラットフォームの責任の明確化を求める意見がありました。そうですね。新しい状況に現行法をどう当てはめるかは、大事なテーマです。

 福井健策委員は、カスタマイズ、デッドストック、小ロット高価品の商品領域にチャンスがあることを示しつつ、3Dデザイン=モノの無料アップロードなど、二次元の世界で起きたことと同様の事態を展望して制度設計すべきことを指摘。そのとおりです。

 本件、論点整理まではたどりつきそうですが、そこからの政策方向性をどう据えるか。もう一段の掘り下げが必要です。

 もう1つはAI論議です。

 人口知能・AIが楽曲もデザインも小説も作り始めました。その生成物の権利をどう考えるか。人とAIの仕事の見分けがつかない創作物が爆発的に増えます。AIを使える者による情報独占や個人クリエイターの締め出しといった懸念をどう考えるか。

 赤松健委員は、萌え萌えをAIがどんどん作って輸出すべきことを提唱、「キャラ立ちした創作キャラは民衆に守られるため、作者より強い」とし、登録したAIが作った創作物は収益を無税にするというパンクな提案!
 これはAIに人格ならぬAI格を認めるプランでもあります。座長を悩ますパンクな委員を尊敬します。

 つまり今回われわれには、AIによる混乱をどう抑えるかという点と、AIによるビジネスや表現をどう伸ばすのかという点とを、同時に解く論点や方向性を設定することが求められているのです。

 福井健策委員は、AIを使って誰もが爆発的に生むコンテンツと、限られた着想者が生むAI創作物とのイメージを踏まえ、その爆発量をどう想定するかというポイントを提示。瀬尾委員は、AI自体に創作性がない以上、著作権で扱うことはその目的から離れることを指摘します。

 川上量生委員は、人が作ったと言い張れば保護対象となるため、根本解決には全ての著作権を登録制に移行すべきという根本的なロジックを指摘。亀井委員は、裁判に任せればよいのではないかという、これも根本的な指摘。

 いずれも重要なコメントです。これをどう落としこむのか。考え込みます。タイムスパンも重要です。目の前の課題、10年後の状況、2045年シンギュラリティのリアリティ、いずれも頭を巡らせて対応を考えなければいけません。

 こんなことを政策論として正面から政府が論議するのは世界初でしょう。指標がないもんですから、実に疲れる行司役であることを、ご理解いただけると幸いです。

2016年4月11日月曜日

海外マンガフェスタ2015

■海外マンガフェスタ2015 
  毎年恒例となった海外マンガフェスタ。東京ビッグサイトで、アニメ・マンガ教育国際シンポ「世界の、そして未来のマンガ・アニメ」を開きました。

※参考:去年までの模様
「マンガの人材育成と国際連携」
 http://ichiyanakamura.blogspot.jp/2015/03/blog-post_9.html

「世界のデジタルマンガ潮流」
 http://ichiyanakamura.blogspot.jp/2015/03/blog-post_16.html

「海外マンガフェスタ2013」
 http://ichiyanakamura.blogspot.jp/2013/12/2013.html


 今回の登壇者はちばてつやさん、手塚プロダクション松谷孝征社長、日本工学院佐藤充カレッジ長、そしてフランス・トゥールーズ漫画レジャー学校のクレール・ペリエ校長。ぼくが司会で、マンガ・アニメの人材育成について議論しました。

 その前に。
 シンポに先立って、同会場内にて「文部科学省 アニメ・マンガ人材養成産学官連携事業」委員会を開催しました。人材育成プロジェクトの現状を共有したんです。産学連携で教育する企画としてぼくが委員長として進めているものです。

 アニメプロジェクトは日本工学院、デジハリなど14校、ぴえろ、ワコムなど7社、そして動画協会などが参加。マンガは京都精華大学、日本デザイナー学院など14校、講談社、小学館、コルクなど10社、日本漫画家協会、デジタルマンガ協会などの組織が参加しています。

 アニメ分野では、収入・職場環境の改善が課題とされ、産業界としての人材キャリアアップ像の提示が求められていました。キャリアアップ体系化と制作学習システムの共同開発が進められています。
 動画協会の松本専務理事は、職域の育成に加えて、子どものアニメ制作教育も進める考えを表明しました。賛成!

 マンガ分野は、マンガ家や出版社のデジタル作画状況、教育機関のデジタル作画教育の状況を把握しながら、カリキュラム、教科書、検定制度などのシステムを開発しようとしています。

 その上で、アニメ・マンガの人材を育成すべく、指導者の育成、カリキュラムの開発、ビジネスマッチング、キャリアアップセミナー、検定制度の導入といった施策を進めようという話になりました。
 さてさて、これを自立運営するとなると大仕事。
 やりますか。


 この腹案を胸に、シンポ会場に向かいました。
 このシンポの前日、パリでテロ事件が発生し、冒頭ぼくは1分間の黙祷を会場のみなさまと捧げました。
 “En hommage aux victimes des terribles attentats qui ont frappé Paris vendredi 13 novembre,  une minute de silence sera respectee en ouverture de festival.”

 冒頭、手塚プロ松谷さんが、鉄腕アトムの1963年版、1980年版、2003年版を見せながら、技術がモノクロ、カラー、CGへと移ってきたこと、そしてその土台となるキャラクターとマンガが不変であること、不易流行を指摘しました。

 ではそれをどう教えるのか。
 文星芸術大学で教鞭をとっておられるちばてつやさんは、「マンガは教えるものではない、ぬすむ・まねぶ」とおっしゃる。松谷さんは、手塚さんもそう言っていたと指摘しました。

 ではちばてつやさんはマンガ家を志望する学生とどう接しているのですか?
「学生たちとは、一緒に作る。こんなマンガ、アニメ、ゲームが出てきたね、と情報を共有して、遊んだり、作ったりするんです。マンガを描く子には引きこもりが多い。学校に出てきただけでホメてあげて、キャッチボールしたりするんです。」
 
 学生たちは、ちばてつやさんとキャッチボールすることのありがたみを理解しているのでしょうか!

「コンピュータを作って描く、それをスマホに発表する。マンガも紙からデジタルへと変わってきました。」と言って、ちばてつやさんは今取り組んでいる「モーションコミック」を紹介してくれました。

 紙に描かれたマンガを、コマごとにアニメ的に動かす技術です。女性二名ユニットのマンガ家・姫川明さんが描いた伝説のマンガ「ゼルダの伝説」をモーション化し、ゲーム音楽つきで見せてくださいまして。

 100年を経たマンガ表現がデジタルでモーションの命を得て、新しい表現となる。それがスマホ向けコンテンツとして、世界に配信される。表現も広がるし、ビジネスも広がりますね。

 松谷さんは、フランスと共同制作中の次作アトムも紹介くださいました。トゥールーズ校のペリエ校長も日仏共同での人材育成を展望しながら、マンガの持つグローバル性を強調していました。

 ちばてつやさんは、前年のこのシンポで、やなせたかし先生の「マンガが読まれている国は平和だ」という言葉を引いて、マンガのもつ平和とグローバルの力を強調しました。ぼくは改めてその言葉思い起こします。

 マンガ・アニメの人材育成を通じて、グローバルな平和に貢献したい、と申し上げて、シンポを締めくくりました。

 また来年。

2016年4月7日木曜日

Innovative Technologies 2015@DCEXPO

■Innovative Technologies 2015@DCEXPO

 日本の優れたコンテンツ技術を発掘・評価する“Innovative Technologies 2015”に審査員として参加しました。経済産業省とデジタルコンテンツ協会の事業です。20件の優れたコンテンツ技術を「Innovative Technologies 2015」として採択し、科学未来館「デジタルコンテンツEXPO2015」で展示、来場客も実際に体験できるものです。経産省、いい仕事です。
 

Industry部門とHuman部門、ダブル受賞「布地に印刷で作る伸縮性筋電センサー」by東大染谷研究室。
銀、フッ素、ゴムによる伸縮する導電性インク。布の上に配線や電極をプリント。切るだけで筋電が計測できるセンサー。これは応用性が高い!



ぼくは背中のケガでさらしのようなものをグルグル巻いていたんだが、このインクに電極いっぱい埋めて電波出して直してくれないかな!



Culture部門「MESH」by SONY。
加速度センサーやLEDを内蔵した消しゴム大のタグと、簡単にプログラミングできるソフトウェア。
ワークショップコレクションでもお世話になりました。
IoT時代のプログラミング学習ツールとして期待しております。



審査員特別賞「らくがき動物園」by ココノエ。
紙の上に自分が描いたパンダやキリンやライオンが、そこから飛び出して動き出す。
子どもの創作ワークショップに最適!


 

NTT「変幻灯」。
静止画やオブジェなど、止まっている対象を錯覚的に動いて見せる光投影技術。
以前、研究所で見せていただいてビックリしたことがあります。


 

東京大学・慶應義塾大学「デジタルおしゃぶり」。
おしゃぶりに内蔵したセンサーで、赤ちゃんが吸う動きを計測し、寝たよ、とか、もうスグ泣くよ、などとママに通知。ゲームもできるんだって。

SIX「リリックスピーカー」。
歌詞を見せるスピーカー。
再生する楽曲の歌詞がクラウドから取り込まれて、曲に合わせて表示される。
音楽の構造やムードも読み取り、優しい曲なら優しいフォントや動きに、エネルギッシュな曲なら力強く表示。これは、新しい。
 


東京大学・群馬大学「るみぺん2」。
動く対象に合わせて投影されるプロジェクションマッピング。
高速に動く物体でも映像が遅れずに投影される。
ピッチャーの投球を火の球に見せられる!
 


筑波大学・宇都宮大学・名古屋工業大学「フェアリーライツ」。
フェムト秒レーザーを使って短時間で消失するプラズマを作り出すことで、空中に映像を描く。
空中の絵に触れると絵が反応する。触った感触もある。
実物の展示じゃなく映像だけだったのがざんねん!


 

東京大学「視触覚クローン」。
遠隔地の手と手が映像で触れると触覚も感じる。
遠隔地の紙風船を、触覚を感じながら動かすことができる。
ここまで来ましたか。


 

さて、今回、DCEXPOでは、超人スポーツEXPOも展示しました。


 



超人ハッカソンの成果などをごらんいただいています。


 




スポーツの開発、身体の拡張、トレーニングの開発、道具の拡張・・・





超人スポーツイラスト大会@日本デザイナー学院の入賞作品も展示しました。

 




超人スポーツ、ご愛顧のほど、お願い申し上げます。

2016年4月4日月曜日

知財本部コンテンツ2015ラウンド、論点整理

■知財本部コンテンツ2015ラウンド、論点整理
 知財本部 検証評価企画委員会。
 コンテンツ分野に関する論点整理が行われました。
 テーマは3つ。1) 海外展開、2) 制作力強化、3) 教育情報化。
 
1) 海外展開

 経産省、総務省、知財事務局が説明。
 経産省によれば、J-LOP事業として2年間で3800件の支援が行われ、ローカライズ支援で73か国への発信、プロモーション支援で45か国への事業が進んだとのこと。利用事業者全体で2015年の海外売上は1249億円の増加、というデータが披露されました。

 総務省は放送コンテンツの海外展開を促進するためのBEAJの設立と、インバウンド効果を見込んでのASEAN中心とする発信強化について報告。日本番組チャンネルWAKU WAKU JAPANの活用や地方発放送コンテンツの発信にも触れました。aRmaが放送コンテンツの権利処理をスタートさせたとの報告も。

 知財事務局からは、コンテンツ海外発信と非コンテンツ産業とのマッチングを進めるため、クールジャパン戦略推進官民連携プラットフォームを設立するとの報告。これにはぼくも参加します。


 こうした報告に対し、委員から「成果が出ている」と評価する声が上がりました。知財本部でコンテンツの検討を始めて10年以上ずっと政府は「成果が出ない」と叩かれてきましたが、支援ツール等が揃い始め、ようやく前向きな評価も現れてきたんですね。

 しかし、コトはそう簡単ではない。
 瀬尾さんから「非コンテンツ連携はASEANを重点とする長期政策。観光は欧米を中心とする短期政策。期間もターゲットも異なる。政策目的を再検討すべきだ。」という指摘がありました。

 読売・野坂さんがASEAN以外の地域にどう政策を拡大していくのかを問うたのに対し、講談社・野間さんは、ビジネス目的なのか、周知拡大なのかを明確にし、施策を絞るべきでは、と指摘。広げるか、絞るか。

 竹宮恵子さんも、海外展開の意味・目的を検証すべきだと指摘。成果が現れてくると同時に、ではそれをどう評価し、方向性を定めるのか。改めてわれわれ委員会が自分の仕事を自己点検する事態となったわけです。


2) 制作力の強化

 アニメーターやゲームクリエイターの育成に関する報告がありました。これに関し、広島大学・佐田さんがクリエイティブ教育の重要性を指摘。ぼくも賛成です。
 
 一方、野坂さんが、制作は「コンテンツが好き」というだけでは続かないのであって、産業界としてキャリアアップを示すことが重要と発言。アニメーターの待遇面の向上策を求めました。
 ぼくが関わる文科省のアニメ・マンガ人材育成事業でも、いままさにそのキャリアアップ像が求められています。

 セガ・岡村さんも「好き」以外のモチベーションを用意すべきとし、クリエイターが対価を得にくい構造を問題視しました。アニメに関しては、世界の8割程度がフルCGという状況を見定めて支援策を考えるべきであり、政府の役割は技術的なソリューションの提供だと提言。


3) 教育情報化

 これは座長の禁を破り、ぼくが発言しました。

「文化庁は教科書を含む教育に関わる著作権問題について幅広い議論をしている。同時に、デジタル教科書の位置づけを文科省が検討している。著作権制度の議論がデジタル教科書制度化のスケジュールの足を引っ張らぬようお願いする。」

「著作権制度の措置は時間がかかるかもしれない。その検討と同時に、集中処理機構のような、著作権処理の円滑化政策を考えるべき。関係業界と連携して、産学官で実証研究を行うなどのプロアクティブな措置があっていい。」

 よろしくお願いします。

 また、最後に、以下のとおり申し上げました。
「TPPの合意を受け、著作権の保護期間延長や非親告罪化など、制度面の措置がどうなるか、文化庁での議論に対し強い関心をもって臨んでいる。
 同時に、それを踏まえて、海外展開等をどうするか、次の長期政策がより重要となってくる。この場でも議論を続けたい。」

 よろしくお願いします。