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2022年5月30日月曜日

文化☓経済というお題目にどう応える

■文化☓経済というお題目にどう応える


文化庁文化審議会に新たに文化経済部会が置かれ、文化と経済の好循環を目指すこととなりました。

文化政策に経済を取り入れる。文化芸術の専門家ムラに外の風を吹き込むものです。

ぼくはグローバル展開WGに参加して、文化の世界展開策を論じました。


美術館・博物館のグローバル化は重要な課題。

パリにしろロンドンにしろNYにしろ、観光のメインに美術館を据えるのはごく普通のことだが、日本に来る外国人がどれだけ美術館を目的にしているだろうか。

これは同じ文化審議会の博物館部会でも議論したいテーマです。


文化政策ではフランスと韓国が際立っています。

いずれも官主導で、資金も投じています。

日本も政策の優先度を高めて資金を投入すべき。

他方、フランスはハイカルチャー+インバウンド重視、韓国はポップカルチャー+アウトバウンド重視。

戦略は異なります。日本は韓国型が適していると思います。





ぼくが強く主張したのは、文化芸術のスコープを広げ、従来の芸術=ハイカルチャーから、ポップカルチャーやデジタルによるUGCの全体を政策領域にすべきという点です。

政策のアプローチは異なるが、全体のポートフォリオをみながら、政策目的に応じて、国の施策を考えていくべきだと。


世界に浸透している日本のコンテンツは圧倒的にアニメ・ゲームであり、日本文化はそれを通じて理解されている。

最も著名なアーティストの一人は初音ミクで、デジタルのUGCが生んだもの。

いずれも富裕層ターゲットではない。

この実態を踏まえて施策を打つ必要があります。


欧米アジア、イスラムからアフリカに至るまで、世界の若年層が同時代性を持って共通に語れる話題はディズニーを除けば日本のアニメ・ゲームをおいてない。

知っている日本のアーティストの名前を挙げてもらえば、アニメ・ゲーム作家とゲーム音楽の作曲家。

その状況を認識した上で施策を講ずべきです。


世界のオタク系の研究者からは、日本のポップカルチャーは、人種、宗教、政治体制などの枠を超えて世界を融和させるという評価を受ける。

その値打ちを自ら認識したい。

この主張は容れられ、広範な文化の政策を扱うこととされ、さらに、ソフトパワー、地球課題解決という大きな構えで論じられました。





報告レポートは、人材の育成・確保を主要な課題に位置づけています。

その人材像の課題は、制作する人はいる・育てられているのだが、それをプロデュースする、マネージする、発信する人がいないという点。

これは知財本部や経産省などでも従前から指摘されてきたこと。政策の融和が必要な事項です。


となると、美大や映画学校をどう強化するかというかつての課題を超えて、経済学部やMBAコースにどう文化産業に向き合ってもらうか、という方向です。

この報告書を読んでもらう相手は誰なのか、を戦略的に考えなければなりません。


デザイン思考はかなり経営層にも認識されるようになりました。

そして今、アート思考やアート経営が経営のバズワードになっています。

世界の経営者はなぜアートを学ぶのか、という特集を雑誌が組んだりしています。

経営者が同意・賛同するところまで政策をブラッシュアップしたいです。


文科省や在外公館、関係機関の理解増進や対応強化ということも強調されています。

すると逆に、そういう法学部・経済学部の集まりに、デザインやアートをどう学んでもらうのか、あるいはデザイナーやアーティストをどれくらい雇ってもらうのか、という話になってくる。

このあたりは政策の発想の転換が必要です。


「文化経済」という政策は未成熟。ようやく発足という段階です。

これを文化芸術の専門家がムラで発信するだけでは伝搬力がなく、外側のかたがたに重要性を認識をしてもらう必要があります。

最大の課題は政策プロモーションでしょう。




2022年5月23日月曜日

紛争を念頭に「人権と国家」

紛争を念頭に「人権と国家



筒井清輝スタンフォード大学アジア太平洋研究所APARC教授著

「人権と国家」

国家が自らの権力を制約する人権システムの発展を許した国際政治のパラドック

スを解く。

ロシアの侵攻直前、22年正月に書かれた、タイムリーにもほどがある、いま読むべき本。

今次の紛争を念頭に、読み進めてみます。


・二次大戦では5-8千万人の犠牲者のうち4-5千万人が民間人だった。

・当時、米(日本人収容)、英(植民地対応)、ソ(スターリン圧制)に対し中国が人権に最もコミットしていた。


民間人に対する残虐さや、国家の態度は、西も東も一貫性はなく、今も確固たる信条とはなってないのでしょう。



911後アメリカによるイラク侵攻に国連決議はなかった。

・キューバグアンタナモ収容所やイラクアググレイブ刑務所での虐待をアメリカは正当化した。


今回ぼくがモヤモヤするのは、まだこれを消化できないでいるから。

20年前にアメリカに賛同した日本がロシアを叩く正当性はどれほどあるでしょう。

  ロシアのウクライナ侵攻で制裁を受けるのはロシア。

 アメリカのイラク侵攻で責めを負ったのはイラク。

 ロシアのシリア内戦介入ではシリアが責めを負った。

 イスラエルのパレスチナ侵攻ではパレスチナが負った。

 91年イラクのクウェート侵攻ではイラクが負った。


 それぞれの正義や正当性をどううまく説明できるでしょう。

  ぼくの手には余ります。

 今後、日本が侵攻されたとして、その立ち位置や力関係によっては、救われず責めを負うこともあり得るってことです。

 今回の件で欧米の態度はダブルスタンダードだと批判する中東の言い分に耳を傾けたくなります。



・国際人権システムはコソボや東ティモールで成果を上げた。状況を改善し得る。

・しかし安保理拒否権のカベにぶつかる。中ロの存在感が高まりアメリカが内向きになれば一層。


今回まさにそのカベを露呈しました。

人権の行方はいかに。バックラッシュで終わるのか、次の希望を見せて決着するのか。



・ロシアの上からの抑圧は経験・ノウハウもあるが、アメリカの下からの反人権バックラッシュ・分断は対応が難しい。


ぼくが気になるのは日本での下からの抑圧です。河瀬直美さんの東大祝辞に対する批判、JR恵比寿駅でのロシア語案内表示の撤去など、不寛容が漂い、他者への抑圧を正義とする空気。


 先の戦争でも、戦争を望み侵攻に熱狂した国民がいて、民の間での監視と抑圧がありました。とぼくは学びました。

 今回の紛争を捉えるに、ぼくたちは果たして進化しているのでしょうか。

 ぼくたちが今回、学ぶべきは何なのでしょうか。


 筒井教授とはスマートシティ竹芝の共同利用策などを相談しているのですが、本書と今回の侵攻で、国際政治を自分ごととしてとらえる大事さを認識しました。

 筒井先生に教えを請いたく存じます。

2022年5月16日月曜日

沖縄国際映画祭にリアルが戻ってきました。

沖縄国際映画祭にリアルが戻ってきました。





沖縄国際映画祭、第
14回。

上映、トーク、展示、ワークショップ。

まだ本格ではないけれど、リアルが戻ってきました。





3年ぶりのレッドカーペット。

迎える観客のみなさんの笑顔をみて、戻ってきた喜びを実感しました。

今も慎重意見が残るものの、地元のみなさんが署名活動までして「これだけは」と映画祭の開催を望んだ結果。

定着しましたね。







「沖縄・記憶と記録」。

立川直樹さん、杉山恒太郎さんという音楽とCMのレジェンドがプロデュースする展示。

沖縄芸能年表をベースに、雑誌・レコード等で表現するインスタレーションです。





デュークボックスには、沖縄民謡も、歌謡曲も、洋楽もいい具合に混じっている。

このチャンプルーが沖縄。

ぼくが行ったときにはベッツィアンドクリス「白い色は恋人の色」がいい具合にくぐもった音色でかかっていました。





レコードは島唄解説人・小浜司さんのコレクション。

一番古いコレクションは1916年のもので、その後アーティストはレコードを作ってはデュークボックスに入れてもらう営業をしていたという。

小浜さん「ちむどんどんの『ちむ』は『きも』のことで、『こころ』のこと。」

ちむに響きます。






「沖縄の音楽史からひもとく、沖縄・記憶と記録」。

立川直樹さんと小浜司さんが、テクニクスの超高級オーディオで古い民謡などのレコードをかけつつ語る。

「十九の春」はこらえたが、「花」のライ・クーダーで不覚にも涙。くやしい。

いい音は、泣かせる。

https://www.youtube.com/watch?v=8Mc8GH7hREQ






立川さんは言う。

ウォークマン以降、音楽をイヤホンで聴くようになり、いいスピーカーからエアで聴いていない。

アメリカは車社会で、まだエアで聴いている。

エアで聴く体験が必要です。

立川さんの近著「音楽の聴き方」でショックを受けたばかりでして、それは別途整理します。





イオンモールライカムでは、「吉本芸人とマネージャーの日常写真展」。

入社5年目までの若手マネージャーが撮った芸人の日常を展示してみた。

芸人という、天才で、クリエイティブで、ストイックで、泣き笑いの生き物を写し取る。

いい企画です。





写真展を企画したのは慶應時代のぼくのゼミ生、玉澤さん。

いいしごとをしている。

京都国際映画祭でもやってよ。






芸人グッズオークション@イオンモールライカム。

このZAZYのフリップ、落札したい。





大西ライオン、コロコロチキチキペッパーズらによるワークショップも。

吉本+NTTの子ども学習プラットフォーム「ラフ&ピース マザー」の施策です。





沖縄出身のスリムクラブにはiUに来てもらったことがあります。

パンクな漫才で、学生はだいぶ置いてきぼりでしたがぼくは転がって悶絶しました。

レッドカーペットで見つけて「また呼んでよ!」ってしゃがれ声を飛ばしてくれました。

BSよしもと」もできたんで、いつでも!





文枝師匠にきよし師匠。

吉本興業110年の半分、55年、第一線を張っているモンスター。

打ち上げ晩ごはんご一緒したら、ず~っと沖縄の歴史・文化に対する質問を周りに投げておられました。

長く頂上にいながらのその探究心に、一流は学び続ける、ということを学びました。





ついでに寄ったDMMかりゆし水族館。

といいつつ、いた動物が好きなヤツらばかり。

ヘソ天してるアルマジロ。アルマジロの意味がない。

さわれるナマケモノ。なまけていられない。


沖縄、また来ます~



2022年5月9日月曜日

知財計画2022、審議佳境。

■ 知財計画2022、審議佳境。


知財本部構想委員会にて知財計画2022が審議されました。

コメントを3点。


1.全体像

データ利活用ルールとメタバース/NFTを柱とすることを評価する。

特に後者は政策論としてどうとらえるかまだ固まらないが、重要課題としての認識を示すべき。グローバルなテーマになるのを先取りする姿勢でいきたい。





2.コンテンツ戦略

コロナによる社会のDXがコンテンツに大きなチャンスと期待できる一方、より大きな地殻変動があり、コンテンツはこれまでの延長線上にない、転換点にあるという認識が重要。ポイントは3つ。


1)GAFAに代表される米プラットフォーマーへの対応と同時に、中国のIT企業も日本に資本投下してくることにどう向き合うか。


2)メタバースやNFTのような 新しいテクノロジーの波が押し寄せていて、これを政策論としてどうとらえるか。


3)総務省で議論が進んでいるとおり、放送業界の構造変化や規制変更もありそうで、これをコンテンツ側としてどうみるか。


これら課題は、これまでのような著作権処理や海外展開とは違う戦略論を要する。

今回それをどう扱うかが大事になっている。





3.クールジャパン

「再起動」ということは、これまでのクールジャパンを一度クリアすること。

ぼくは主にコンテンツの観点で関わってきたが、ほぼその色はなくなった。

どこかで路線変更があったということだが、とすれば、これまでの政策がどうだったのか、成功・失敗面を検証しておくのがよい。


例えば、コロナ後のCJを再起動、ということなら、コロナはCJにとっていかなるダメージを与えたのか、あるいはコロナによって日本のプレゼンスはどのように高まったのか、を分析してはどうか。


また、2025万博がチャンス、総力を結集とあるが、であればオリパラはどうだったのか。CJ的に、いかに成功・いかに失敗したのか。その評価・検証をくぐっておくべき。オリパラでいかなるレガシーを得たのか、私はたくさんあると思うが、それを共有するのがよい。





「スタートアップ対策」に関しては時間切れでコメントできませんでした。ここに。

iUは全員起業を標榜しており、直接の関わりがある。

記載の施策は国公立などの大学院を念頭に、大学や研究室が主体となって起業を進めるビジネスのイメージ。

それが可能な大学はこのクラスの知財問題が重要。


他方、多くの一般の大学で起業を促し、裾野を広げようとすると、よりベタな対応が必要。日々、感じている課題は、ここに書かれている以前の問題。


例えば、就職ではなく起業を選ぶことに対する教員や保護者の理解が低いこと。学生が起業を志したときに、5や6に書いてあるような外部の専門家とつながる仕組み・人脈が乏しい、といったこと。




(ところで会議は予定の時間が来て、webexが落ちてしまいました。

 会議は余裕をもって設定しておきましょう。という教訓。)