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2015年3月30日月曜日

誰が「知」を独占するのか

■誰が「知」を独占するのか 
 


 福井健策さん著「誰が「知」を独占するのか」。
 インフラとしてのデジタルアーカイブの意味と、しのぎを削る欧米の戦略、そして日本の採るべき道。
 アーカイブに関しては、昨年、政府・知財本部にアーカイブ・タスクフォースを置いて議論を進めてきました。ぼくもブログで書きました。
「世界一のアーカイブ大国になりませんか?」
 http://ichiyanakamura.blogspot.jp/2014/04/blog-post_17.html

 その場で議論になったことも多いのですが、改めて本書に触れ、刺激となりました。ピックアップします。(→はぼくの感想。)

 EUの電子博物館ユーロピアーナは3000万点をデジタル公開。サルコジ政権は1000億円予算をつけたという。日本の国立国会図書館は48万点。
 →2ケタ違いますね。

 フランスの国立映像アーカイブINAは2006年に10万点を公開。年1000本ずつ増加している。NHKは2013年で4351番組公開。
 →2ケタ違いますね。

 EUは12年に孤児著作物指令を発出。調査経過を記録すればデジタル化・公開が可能に。この指令と、権利情報データベースARROWとユーロピアーナアーカイブの3点セット。
 →戦略的に組み立てられています。

 EUユーロピアーナの13年の検索語4位は「Japan」。しかしマンガやJ-popやファッションの情報はヒットしない。
 →関心を持たれているのに、こちらからの発信が少ない。日本の対応が急がれます。

 ハーバードなどが中心になってアメリカが2013年に立ち上げた米国デジタル公共図書館は既に700万作品が登録。オンライン講座MOOCの受講生は700万人。米国立公文書館の職員は2500名。日本の公文書館は50名。
 →これも2ケタ違います。

 アメリカでも流通を促進したいIT業界の思惑もあり、著作権保護期間短縮論が登場。期間を延長したら孤児著作物が激増したというのが背景。
 →いかに保護するか、から、いかに利用するか、にフェーズが移ってきました。

 日本の国会図書館は2012年の著作権法改正で他の図書館への配信が可能に。131万点の配信が始まっている。だが国会図書館のデジタル化予算は2000万円。道路工事の25cm分。日本の一人あたり文化予算はフランスの1/8。
 →カネをかけましょう。


 本書の巻末に10の政策提言がなされています。強く同意するものがいくつもあります。これもピックアップします。

1)全国のアーカイブのネットワーク化。
 →各種のアーカイブを分散型で設け、ネットワーク化するアーカイブ列島という思想。巨大ハコモノよりもこちらの方向だと考えます。

2)海外との著作物利用協定と各国アーカイブとの相互接続。
 →海外との連結を深め、世界ネットワークを作る。対応が遅れた日本は、これを先導できないか。

3)オープンデータ化。
 →文化庁の業務をアウトソース化することを含め、オープン化と連携を進めること。

4)字幕化。
 →発信強化。むかし東浩紀さんからもアイディアをもらいながら実現していない、日本の各種情報に外国語訳をどんどんつけていく構想を進めたい。

5)デジタル化予算200億円。
 →安いものです。文化予算でもハコモノ案を見受けますが、ハコは竹芝のように「ある」ので、コンテンツに回してください。

6)デジタルアーカイブ推進法の制定。
 →やりましょう。要するに必要なのは、本件政策の優先度アップ。大事な問題だと政治が認識するかどうかです。

2015年3月26日木曜日

もしもしにっぽん:サービスエリア

■もしもしにっぽん:サービスエリア

 きゃりーぱみゅぱみゅさん主演の「もしもしにっぽん」。
 http://www.jibtv.com/programs/moshimoshinippon/
 ICHIYA’s POP EYE、「サービスエリア」の巻。

 アメリカやヨーロッパの高速道路をドライブすると、サービスエリアに寄るのが楽しみです。レストランでゆっくりコーヒーを飲んだりします。日本ではトイレに寄って休憩するぐらいで、楽しむというイメージはありませんでした。
 ところが最近、日本のサービスエリアは様変わりしました。その地域の食べ物や文化に基づいたエンタテイメントが盛り込まれた、ユニークな施設がたくさんできているのです。どこかに行く途中にある休憩所ではなくて、サービスエリアが目的地になってきています。

 桃、メロン、みかん、じゃがいも、とうもろこし。その地域で採れた新鮮な野菜や魚を売るサービスエリアのマーケットには、全国的に有名なものもあります。海老名SAのメロンパン, 守谷SAの納豆天ぷらのように、そこに行かないと食べられない人気商品もあります。
 http://bit.ly/1wpN7hu

 温泉とか、サウナとか、マッサージチェアを用意しているところもあります。いやされるね。
  http://bit.ly/1wpNKYv

 観覧車やアスレチックゾーンもある遊園地のようなサービスエリアもあります。こうなると、休憩地というより目的地です。
 http://iko-yo.net/facilities/2172

 人のための場所だけではありません。ペットの犬用に、天然芝で犬が走れる専門の公園もあります。
 http://bit.ly/1wpN9WX


 注目されているのがテーマパーク型のサービスエリア。
 江戸を再現した羽生SAは、今とても話題になっている施設です。江戸時代を舞台にした人気小説「鬼平犯科帳」の東京の町並みを再現して、レストランや商店が立ち並んでいます。200年前にタイムスリップした気分を味わえます。
 建物や街づくりには専門家が関わり、柱の傷や壁のコケまでとてもリアルに200年前の東京を再現しています。春の朝にはウグイスが鳴き、夜明けには納豆売りの声が聞こえるなど、季節や時間に応じたBGMを流しています。
 食べ物にもこだわっています。小説に登場する鶏(しゃも)鍋やソバ屋、うなぎ屋。このSAでしか食べられないオリジナルメニューを並べています。それを食べるために遠くからドライブしてくる人も多いといいます。
 1625年に創業した唐辛子屋、1688年に創業したみそ屋など、古くからのお店も並んでいます。日本らしくこだわりをみせたサービスエリアです。

 このようなユニークなSAがあると、長旅も更に楽しくなるし、ここでしか味わえない楽しさを体験することができますね。
 どう?日本のユニークなSA、あなたも行ってみたくなった? 日本にドライブしに来ないか?

2015年3月23日月曜日

逢沢りく


■逢沢りく  


 


 10歳以上年下の旧友、「きょうの猫村さん」の作者 ほしよりこさんと、祇園で話し込みました。
 デビュー作の猫村さんも「ポーク」も、訳あって原画はぼくのところにあったのですが、それが世に出て数百万部の人気を誇る大作家になられるとは。実に爽快。

 新作、初の長編マンガ「逢沢りく」上下巻をいただきました。
 画家としての手腕を示す鬼気迫る表紙。ほしさんは、マンガでもなく絵本でもなく小説でもなく、その全てである「ほしよりこ」というジャンルを作ったのです。

 逢沢りくは、実質10日で一気に描き上げたといいます。鉛筆1本で、削りながら削りながら描き上げた。
 書き始めて3日も経つと、キャラの人格が定まって、勝手に生きていく。それを作者として自由にさせじと追い詰める。追い詰めると、また生きる。それで物語ができる。といいます。この感覚は、ぼくには空想もできない次元のものです。

 ほしさんはプロットを立てず、浮かんだ構想をそのまま絵・文字同時に描き始めるそうです。「構想をそのまま」。非論理。ほとばしる感性。その制作法って言語化が難しくて、他人に教えられないですよね。
 長期展望を構成したりせずにガンガン描ける秘訣は?と聞くと、「欲求」とのこと。それは、日テレのT部長、土屋敏男さんのいう「個の狂気」に近いですね。

 以前、浦沢直樹さんに授業にお越しいただいたとき、最初に大きなムードを着想して、「頭の中に溜まる”おもしろ水”を運ぶ」話をしてもらいました。ほしさんの構想もそれに近そうです。
 その授業の模様はこちらに。
「浦沢直樹さんの授業(後編)「おもしろ水」」
 http://ichiyanakamura.blogspot.kr/2013/09/blog-post_5.html

 北野武さんがラストシーンの絵がまず浮かんで取り始めたというキッズ・リターンのエピソードも思い出します。

 ほしさんは8月まで京都国際マンガミュージアムで全原画展を開いていた故・土田世紀さんの大ファンだったといいます。土田さんは生前、猫村さんの大ファンだったそうです。作風は真逆ですから、生前、二人をつなぐ機会はなかったそうですが、通じていたんですね。


 あ、肝心なこと。
「逢沢りく」、スリリングで、温かくて、おもろくて、深い。
 老若男女の機微を繊細に切り詰めた会話で織りなす。
 名作です。

 母、父、浮気相手との乾いたコミュニケーションの中で育った特殊な少女が、関西の大叔母、大叔父、叔母、従兄弟、子ども、同級生、小鳥とのコミュニケーションの中でほんのり殻がむける物語。
 でも、文字では解説不能です。
 読んでね。

 ほしんさんに教えてもらった 祇園のサバサンド。
 締め具合、沢庵の歯ごたえ、パンの加減、それらの調和、絶品。