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2013年5月30日木曜日

ワークショップコレクション、10万人!

■ワークショップコレクション、10万人!

 ワークショップコレクション9。
 3月9日、10日の2日間、100以上のものコンテンツ創作やものづくりや実験が体験できるワークショップが慶應義塾大学日吉キャンパスで集結して開催されました。

 http://youtu.be/i0KqY0_tWhM

 2日間の参加者数、10万人。
 9年前の第一回は500人からスタートし、毎年、倍々に成長し、10万人到達です。
 世界最大規模の子ども創作イベントです。
 4階建ての校舎2棟と中庭を占有し、教室ごとにさまざまなワークショップや体験コーナーが展開されました。
 今年で9年目。日吉での開催も4回目。混雑するのは来場者もよく知っていて、事前にホームページなどで内容を調べて目当ての会場に向かっていく人も多数。テーマパークのように待ち行列をこなす親子も見受けられました。

 2012
 http://ichiyanakamura.blogspot.jp/2012/07/2012.html
 http://ichiyanakamura.blogspot.jp/2012/07/2012_12.html

 2011
 http://ichiyanakamura.blogspot.jp/2011/04/2011_07.html
 http://ichiyanakamura.blogspot.jp/2011/04/2011_14.html
 2010
 http://ichiyanakamura.blogspot.jp/2010/03/2009.html
 http://ichiyanakamura.blogspot.jp/2010/03/2009_19.html




ワークショップはみな「創作」系。作ってみよう、表してみよう。ねんど細工、毛玉工作、空間演出、音楽づくり。

デジタル系の活動も豊富です。アニメ、ゲーム、ロボット。列挙しておきます。
・かんたんマイ動画~あなたもNHKの映像の中に入ってみませんか?
 NHKクリエイティブ・ライブラリー
・「ビスケット」でつくる家族で手作り!デジタルリレー絵本
 NPO法人デジタルポケット
・ゲームで遊んで、無料プレゼント!頭の良くなる簡単パズル
 大阪私学情報化研究LICT研究会 米田謙三(羽衣学園中学校高等学校)
・惑星づくり~Make Your Planet~
 神奈川工科大学 鈴木研究室
・君もアニメ家督!ガンバと一緒にねんどCGアニメを作ろう
 株式会社白組
・みんなでオリジナルの水族館をつくろう!
 中京大学 情報理工学部 宮田研究室
・パソコンと魔法のソフト「スクイークEtoys」でゲームを作ろう
 特定非営利活動法人 スーパーサイエンスキッズ
・何が見える? ロボットと一緒にアートを見よう!
 人ロボット共生学/東大×アート・コミュニケーション研究センター/京都造形芸大
・みんなで学ぼう!遊ぼう!インターネット
 グリー株式会社
・目指せ、かいとうキッズ!
 株式会社ディー・エヌ・エー
・子ども海賊隊~キーワードを探し、ネット通信で親分を救え!
 一般社団法人ソーシャルゲーム協会
 
 その他、ワークショップ全てを紹介したいところですが、ひとまず、スペシャル枠で提供してもらったものを挙げておきます。





 

■よしもとキッズ CANVAS×吉本興業 PaPaPark
「有名パパ芸人といっしょに「でんとうを感じる」ワークショップを体験しよう!」
 われらがCANVASと吉本興業「PaPaPark!」が展開する「おもしろかし子」プロジェクトのプロデュースによるスペシャルワークショップです。
 人気パパ芸人といっしょにこどもたちが日本の「でんとう」を感じる3種のワークショップツアーに出かけます。
 茶道の「遠州流」、かまぼこの「鈴廣」、伝統を次世代につなぐ「和える」の3ワークショップをめぐります。
【協力】 遠州流茶道/鈴廣かまぼこ/和える


 










■tap*rapへんしん コマドリアニメーション  季里

「大人気のデジタルえほんアプリにちなんだアニメーションをつくろう!」
 こちらもわれらがデジタルえほん社とDNPの企画。
 2012年度グッドデザイン賞&キッズデザイン賞ダブル受賞、デジタルえほん「tap*rapへんしん」を楽しむアニメ制作ワークショップです。








■アニメーション映画 美術監督 山本二三

「巨匠といっしょにチャレンジ!あなたはどんな雲をえがく?」
 「天空の城ラピュタ」「もののけ姫」「時をかける少女」等の美術監督として背景画を手がけた山本二三さんによるワークショップです。
 う~ん、ぜいたく。 保護者がキンチョーしてます。





 





■えほん作家 きむらゆういち

「あなたのステキなアイデアで「しかけえほん」をつくろう!」
 「あらしのよるに」「あかちゃんのあそびえほん」など500冊以上の有名絵本を生み出した、絵本作家きむらゆういちさんによるワークショップです。
 う~ん、ぜいたく。 ぼくが受けたいよ。

2013年5月27日月曜日

30年たって実現した自動翻訳電話

■30年たって実現した自動翻訳電話 
NTTドコモが英語・中国語・韓国語・ドイツ語・フランス語・イタリア語・スペイン語・ポルトガル語・タイ語・インドネシア語の10カ国語に対応した会話翻訳アプリを提供しはじめました。クラウドのサービス。対面や電話で利用することができるといいます。
日本語の認識精度が90%、英語が80%程度といいます。おそらくこれはビッグデータを使ったデータベースの増強により、急速に向上していくでしょう。ネット上ではエキサイト翻訳やグーグル翻訳が活躍してきましたけど、いよいよ会話の本格実用です。

人一倍、感動しています。
ぼくは世界で初めて、自動翻訳電話に関わったからです。
ホントです。

昭和60年、1985年、「自動翻訳電話システム開発マスタープラン」が政府・郵政省から発表されました。ぼくが取りまとめ役でした。社会人になって初めての仕事でした。
前年、1984年、役所に入ったぼくは、通信自由化、郵政・通産戦争、対米交渉の最前線、データ通信課に配属されました。全20名でその仕事をこなす狂乱の職場でしたが、それなのに、通産省が進めていた第五世代コンピュータという国家プロジェクトの向こうを張り、第六世代の人工知能を必要とする通信プロジェクトを立ち上げてしまったのです。新人のくせに、周りがあまりに多忙なため、オマエやれ、と任されました。
動機は不純でした。翌年の電電公社民営化により、NTT株2兆円が政府に入る、それをいただけないでしょうか、当時の郵政省の政策予算200億円の100倍でっせ、ピクピクしまんがな。そのために、巨額の研究開発費を要するプロジェクトを用意しようとしたわけです。
やろうという方針は出たけれど、どうしていいかわからず、母校に頼もうと思い、教授になったばかりの京都大学長尾先生を突撃し、座長になっていただきました。京大学長や国会図書館長にまで上られる偉い先生とは知りませんでした。音声入力、機械翻訳、音声合成の三要素を組み合わせて一つのシステムを作る。巨大なデータベースの構築が必要になる。学界や関係業界による大型プロジェクトを作るための研究会を設け、プランを作っていました。

山場は1984年の暮れ。2兆円を郵政省が取る企ては大蔵省にあえなく潰されましたが、国庫に入る様式の運用益を研究開発に回そうという件はまとまりました。でも、それを受け持つスクラップ組織を通産省が差し出していたため、郵政省が参加させてもらうために熾烈な政治抗争が持ち上がりました。
研究開発への投融資制度の設計、自動翻訳電話を含む具体的なプロジェクトのラインアップ、投融資とR&Dの組織作り、それらを一週間で揃えて闘う必要がありました。投融資組織なんて全く経験のない郵政省は、日本興業銀行や第一勧業銀行を恫喝するかのように人材を出してもらって泊まり込みで知恵を絞ってもらいました。そのうんと後にその銀行が合併するなど思いもよりませんでした。
すさまじい年末でした。一週間で10時間しか眠りませんでした。でも人間、何とかなると知りました。社会人一年生でそれを経験させてもらったのが人生最大の収入です。郵政・通産・大蔵の調停役は橋本龍太郎さんでした。最後、全部を足して3で割る決着となりました。政治決着の瞬間、それを聞いた首謀者・内海善雄課長、その後国連機関ITUの事務総長に上られました、が、胸を押さえてバタッと倒れたスローモーションを覚えています。
内海さんは当時42歳。若いなぁ。昔の役人は、若いころに巨大な仕事をしていたんだなぁ。

投融資機関として基盤技術研究促進センターが設立されて、そこから京阪奈学研都市にATR(国際電気通信基礎技術研究所)が設けられることになりました。
ATRは世界的に著名なメディア研究機関に成長しました。ぼくは生みの親の一人です。そう主張する人はたくさんいるかもしれませんが、ぼくも主張します。

さて、あれから30年近く。自動翻訳電話が実現しました。もう一つ、感動的なことは、当時想像していた姿とは全く違っていたことです。ぼくらが思い描いていたのは、黒電話で話す中身が回線交換を通じ海外の人に翻訳される姿。当時、日米の電話代は3分1530円でした。企業ユーザがどれくらい使うかね、というイメージ。だから、研究の中心は、国際通信を法的独占していたKDDの研究所でした。
ところが、実現してみたら、それはスマートフォンというモバイル端末を使って、インターネットという通信網で翻訳される。ほぼタダ。しかも、海外の人とつながるというより、目の前にいる対話相手に対し、ネット経由で通訳してもらうという使用法。それを開発したのがKDDじゃなくて電電公社の末裔。じぇんじぇんちゃうやん。
おもしろいです。メディアは。

2013年5月23日木曜日

オープンデータの優れモノを勝手に表彰してみた

■オープンデータの優れモノを勝手に表彰してみた

 さて、オープンデータの運動は、公共データをオープンにさせる、カナテコで開くことが当初の眼目だったのですが、やり始めたとたん、そんなことは些末なことだということが明らかになってきました。それよりも、個々人や企業のもつ超大量のデータを公共データとともに共有すること。「みんなのデータ」が公共性を持つことがハッキリしてきました。
 頭が下がります。オープンデータは直接の見返りがない運動であるにもかかわらず、政府も自治体も企業も個人もみな、嬉々として参加し、前のめりに動いてるんですよね。
 こういうのは、ホメるしかない。
 そこで、2013年3月には優れた取り組みを見せる関係者をコンソーシアムとして勝手に表彰するという無謀なイベントをやってみました。

 模様は、以下のとおり。
 http://www.opendata.gr.jp/news/1303/130314_000080.php
  政府・自治体の公共的な取り組み、企業や個人の情報公開の努力、その他いろんな汗をできるだけすくい上げて、ホメたい。

■最優秀賞/Google賞 :データシティ鯖江
 福井県鯖江市。
 データシティ鯖江として様々なデータをXML等の形式で公開。
・避難所の施設名、位置情報
・消火栓の名称と位置情報
・市が運営するコミュティバス「つつじバス」の運行情報
・西山動物園の動物情報
・鯖江市内の文化財の写真、説明
・市内の農産物直売所
・鯖江市議会議員の情報など

■優秀賞/日本IBM賞:2013 International Open Data Day
 Open Knowledge Foundation 及び開催8都市。
 2013年2月23日に世界中の都市で、オープンデータイベントを開催。
 日本では、東京、横浜、千葉、名古屋/東海、鯖江、青森、会津若松などで開催。

■優秀賞:図書館横断検索サービス「カーリル」
 株式会社カーリル。
 全国6,000以上の図書館の蔵書・貸出情報を横断検索可能。
 APIも提供しており、様々なアプリが開発されている。

■優秀賞:Where Does My Money Go? の日本語化と横浜市版の作成
 税金はどこへ行った?チーム。
 イギリスの Open Knowledge Foundation が開発した Where Does My Money Go? (英語版) をベースに日本語化し、さらに横浜市民が横浜市に納めている市税を対象として構築。
 自分の年間総収入をスライドで設定し、単身世帯か扶養一人世帯かを選択 すると、給与所得者であるという前提で、横浜市に納めている市税年総額と10分野毎に一日当たり支払っている市税額が表示される。

■優秀賞:気象庁の一連の取り組み
 気象庁。
 気象統計データなどをウェブサイトで公開。
 2012年12月からは防災情報XMLフォーマット形式電文を試験的にサイトで公開。
 2012年11月~12月にはコンソーシアム等と協力して、気象データアイデアソン/ハッカソンを開催。

■優秀賞:あおもり映像コンテンツ・プロモーション
 青森県。
 観光プロモーションに活用できる映像素材を県職員が自ら撮影し、YouTube等に公開。
 二次利用可能な独自の利用規約を作成し、幅広く活用されることを目指している。

■優秀賞:LODチャレンジ
 LODチャレンジ実行委員会。
 2011年に続き2回目の開催。
 データセット部門、アイデア部門、アプリケーション部門、ビジュアライゼーション部門の4部門に対し計205作品の応募があった。

■優秀賞:CKANを用いたデータカタログサイト
 CKAN日本語化コミュニティ。
 データポータルソフトウェアであるCKAN(http://ckan.org)を用いて、日本のデータカタログをまとめたサイトを構築。
 現在、有志のコ ミュニティで運営。
 2013年1月31日現在、オープンガバメントを推進している地方公共団体のデータを中心に、125のデータセットを掲載。

■日本マイクロソフト賞:横浜オープンデータソリューション発展委員会の活動
 横浜オープンデータソリューション発展委員会。
 横浜から世界に向けてオープンデータによって成長・発展する新しい都市の姿を発信していくことを目的として設立。
 アイデアソンやハッカソンの開催、情報発信など積極的に活動。

■国際大学GLOCOM賞:東日本大震災アーカイブほか3件 震災の被害状況を可視化し、災害の実相を世界につたえる多元的デジタルアーカイブズ。
 個別に存在していた被災地の写真、パノラマ画像、被災者の証言、TV 報道映像、ジオタグ付きツイート等のデータを一元化し、Google Earthの三次元地形に重ね、俯瞰的に閲覧することができる。

■ソフトバンクテレコム賞:エレクトリカル・ジャパン

 東日本大震災後の日本の電力事情を理解するための電力データ集約・可視化サイト。
 電力の供給に関するデータとしては、日本全国約3300ヶ所の発電所の位置や出力を独自に調査してデータベース化するとともに、各電力会社が提供するリアルタイム電力供給データをアーカイブして利用。

■全国地質調査業協会連合会賞:流山市/流山市議会の取組み
 流山市/流山市議会。
 市と市議会両方のサイトでオープンデータに取り組んでいる。
 市議会のサイトでは、議員基本情報や定例会議審議結果などをcsv形式で公開。

■Open Knowledge Foundation Japan賞:電脳みやしろ
 埼玉県宮代町。
 オープンデータの活動が広がる以前からホームページ上に多様な種類のデータ提供を実施。

 
 表彰に当たり、ぼくが申し上げた講評は以下のとおりです。
 ------------------------
 受賞おめでとうございます、というのも変ですよね、コッチが勝手に表彰してるんだから。
 受賞していただき ありがとうございます。
 ノミネート活動を眺めて、さまざまな活動が展開されていることに、心を打たれました。
 新しい活動は、お金がもうかるか、やれという命令があってやるか、が相場です。ところがオープンデータは、みなさんの純粋な公共心と熱意でスタートしていることに感動する次第です。
 ここに、より多くのレスペクトが集まり、かつ、ビジネスとしても花開くよう努めたいところです。
 さらに、今回、より心強く感じたのは、受賞されたかたがたの多様性。
 中央官庁もあれば、首都圏の大都市もある。
 地方の県もあれば、市も町もある。
 企業も、非営利団体もある。
 国立の研究所も、学生もある。
 地方も中央も、大組織も個人も、同じく熱意を持って取り組む主役がいる。
 非常に大きな可能性を感じます。
 今はまだ、点が散らばる活動かもしれません。
 これを面に広げていき、オープンデータ列島を形成していきたい。
 受賞者のみなさんには、ぜひ引き続き力強くそれを主導していただきたいと存じます。

2013年5月20日月曜日

「機械との競争」

■「機械との競争」

 エリック・ブリニョルフソン、アンドリュー・マカフィーの著「機械との競争」。
 MITビジネススクール「Sloan」の教授たちによる情報経済論です。
 コンピュータが人間の領域を浸食することで、特に中間層の雇用が減り、雇用は高所得を得られる創造的な仕事と低賃金の肉体労働に二極化すると警告します。
 自動車の運転も翻訳もコンピュータがカバーします。ホワイトカラーの仕事は機械に肩代わりされ、人間が勝るのは音楽、ソフトウェア、スポーツといったクリエイティブな仕事と、肉体労働とに集約されるというのです。
 所得の中央値は過去10年で減少し、1人当たりGDPは増加したといいます。富の増加分の80%以上が上位5%の世界に集中しています。中間レベルの所得が失われ、格差が拡大しているのです。

 って、なつかしいなぁ、というのが第一の感想。
 こういう議論は15年前にありました。
 PCやネットの普及は、そのために進められる。
 経営者がムダなホワイトカラー、中間管理層を切るために、ネットの普及を浸透させる、というのがアメリカの空気感でした。特にぼくがいた、MITのある東海岸では、それが正当な行為として賞賛されていました。
 そのころ日本でも企業でのネット利用がぼちぼち進んでいましたが、その目的はハッキリせず、ベンダーやソフトハウスやシンクタンクや通信会社の営業に押される形で恐る恐る導入する会社が多くて、投資も本格化しませんでした。
 だんだん「中抜き」論が勃興し、ネットの普及はホワイトカラーの危機感をあおり、普及にドライブがかからないままでした。
 女子高生などの末端ユーザがデジタルをガンガン使いこなし、世界で群を抜いて情報を発信する国になっているにもかかわらず、企業のネット利用という点では、情報通信白書が示すように、経営者のIT利用偏差値が先進国最下位を記録するというありさまです。

 そんな古いテーマを今になって気鋭のビジネススクールの看板教授が持ち出しているのは、ようやく議論できるだけの実証データが揃ってきたということなのでしょう。
 実はエリック・ブリニョルフソン教授は、2000年にeBizセンターをMITに立ち上げた教授でして、当時MITメディアラボに所属していたぼくは、CSKを口説いてセンターの設立スポンサーとして参加しました。
 ネットバブル崩壊前、アメリカIT分野の鼻息が最も荒いころです。いやぁ、荒かった。それから曲折を経て、東海岸はIT分野で西に引き離され、十数年経って、ITはヤバいよ、という実証を持ち出してきたのですね。
 気持ちはわかる。
 当時のぼくは、アメリカの鼻持ちならないIT攻勢に辟易としながら、MITによる、デザイン+テクノロジー(メディアラボ)とマネジメント+ポリシー(スローン)のかけ算プロジェクトに、並々ならぬ興味を抱いておりまして、そのモデルを一つの組織=大学院でやってみたい、というのが今ぼくが所属するKMDへの期待となっているのです。

 ま、いいかそんな話は。
 本書は警告を発するものの、1811年のラッダイト運動を引き合いに出し、古い仕事が失われても新しい仕事が生まれるというのが経済学の教えと説きます。そのとおりです。
 産業革命の第一ステージ=蒸気機関も、第二ステージ=電気も、多くの労働者を生みました。
産業革命の第三ステージ=コンピュータとネットも長期にはそうだと説きます。
 基本は楽観的なのです。デジタル技術は人類は豊かにする、というのが基調です。
 なお、コンピュータやネットを第三次の産業革命と見るのは公文俊平先生と同じですね。
 ぼくはコンピュータやネットは300年単位の産業革命ではなく、1000年単位の文化革命だと見ていて、蒸気機関や電気とはレイヤが違うと思っています。長期の経済からみて楽観なのは同じですけど。

 ぼくが本書に刺激を受けたのは、「教育」に関する分析と、「提言」の2点。
 まず、本書はアメリカの教育が停滞していることを批判します。
 情報化が進んでいない、指導法は何世紀も変わっていない、という指摘です。
 MITメディアラボのシーモア・パパート一派が唱え続けていることですね。
 そこで本書も教育情報化を説くのですが、意を強くしたのは、美術、音楽など「ソフトスキル」をつける重要性を語っていることです。
 MITメディアラボから転じたジョン前田が、「イノベーション力を高めるにはSTEAM=科学、技術、工学、Art、数学が重要」としてArt教育をプッシュしていることに言及しています。
 まさにそれこそぼくがMITから日本に戻って10年続けている創造力・表現力を高めるデジタル学習活動のベース。

 そして、本書のクライマックスが「19の提言」。
 アメリカに対する提言なのですが、そっくり日本にぶつけたい政策集になっています。
ありがたいことです。だよねエリック!という事項を並べてみましょう。()はぼくの感想。
・教育に投資し、先生の報酬を増額すべき
 (日本はOECD中、公教育支出のGDP比がほぼ最下位。日本こそ投資すべき。)
・大学教授の終身在職権を剥奪せよ
 (よく言った。最も競争が少ない分野。日本もそうすべき。自分のクビを絞めるが。)
・義務教育の授業時間数を増やせ
 (ゆとっている余裕はない。)
・スキルを持つ労働者の移民を増やせ
 (少子化の著しい日本向け政策。女性と外人を活かすほかなし。)
・起業に関する規制を緩和せよ
 (ややこしい認可の廃止は急務。)
・通信・輸送インフラの強化
 (電波開放、運輸規制緩和。)
・基礎研究への予算を増額せよ
 (R&Dで劣後しては日本に未来なし。)
・労働市場の高い流動性を維持せよ
 (日本こそ成長戦略でこれを実現すべき。アメリカは自らの強みをわかっている。)
・新ネットワークビジネスへの規制を控えよ
 (アメリカが強みをより強くする前に、日本がビジネス環境を整えなければ。)
・著作権の保護期間を短縮せよ
 (これは驚いた。アメリカが海外に保護期間の延長を求めてきたことに対する重大なアンチテーゼ。ぼくもアメリカは短縮したほうが国益にかなうと考えるが、ここにきてこうした議論が米国内から公然と起こり始めた。IT経済の専門家が唱え始めた意味は大きい。TPP交渉で保護期間延長は重大なテーマになると目されているが、アメリカの攻勢も一辺倒ではなくなる可能性がある。)

2013年5月16日木曜日

オープンデータ運動

■オープンデータ運動のご報告
 オープンデータ流通推進コンソーシアム。
 81社の企業会員とともに、政府・自治体その他さまざまな情報のオープン化を進めています。
 いわゆるビッグデータをビッガーにほじくり出し、共有し、活用して、価値を生んでいく運動です。
 ぼくは理事・普及委員長として関わっています。
 コンソーシアムの年度末会合での状況報告を共有しておきます。

1) 実証実験
 総務省が推進した実証実験が成果をあげています。
●交通分野では、鉄道やバスの運行情報、駅や停留所の施設情報を共通のデータ規格でオープン化し、都市部の交通状況を可視化。
 JR東日本、東京都交通局、東京地下鉄と横須賀リサーチパークが連携。
 電車やバスの位置・遅延情報を地図上で可視化し、都営バスの到着予想時間と列車運行情報を音声通知。
また、地盤情報に関し、国や自治体が持つボーリングの地盤データを活用して、防災に資する精緻なハザードマップを提供。災害情報についても、ITSジャパン、NTTらが連携。
 東日本大震災時に、トヨタ、ホンダらのカーナビ情報を活用して通行情報をGoogle Mapsで配信。
 さらに、被災地の自治体が持つ通行止め情報を国土地理院でデータ統合、それらも可視化。

2) 公共データ利用調査
 経団連が公共データの産業利用に関する調査を会員企業に実施しました。
ニーズが高い公共データは、地図、交通、防災。次いで都市計画、医療・介護、統計。
 データを保有する機関としては、地方自治体、国土交通省、総務省(統計)。
利用イメージ
・ 交通量や道路交通情報などを活用したスマホやカーナビのサービスの充実、事故の予測に基づく新たな保険商品の開発
・地域の世帯構成、収入、大気汚染、犯罪情報などを活用した不動産取引の判断材料の多様化と正確化を高める
 (土地登記簿は電子化がなされていないのが現状)
・人口データ、家計調査などを活用した高齢者への宅配サービスの開発、保険商品の開発、きめ細かい介護サービスの開発
 こういう機関の持つこういうデータをオープンにしてくれれば、こういうサービスやビジネスを開発できる、という産業界の需要ということです。そのマッチングがぼくらの役割となります。
 ビッグデータは産業界の期待が高いものの、今一つそのイメージがぼんやりしていたのですが、だんだん実像が焦点を定めてきました。

3)技術・ガバナンス
 ぼくは普及啓発を担当していますが、コンソーシアムには、技術委員会とデータガバナンス委員会の2委員会が置かれています。技術委員会はオープンデータを流通させるための技術仕様を検討しています。データガバナンス委員会では、公共データの知財問題に取り組んでいます。
 国の保有するデータを活用しやすくするためには、著作権の利用の自由度を高める必要があります。国が保有する公共データには著作権が発生しないよう著作権法を改正する、国がその権利を自ら放棄する、クリエイティブコモンズなど二次利用促進のためのライセンスを採用する、などのアプローチが考えられます。
 これに対し、一部省庁も前向きです。しかし、全省庁・全国の自治体に拡げるには相当な大仕事となります。IT本部や知財本部でも問題提起していきたいと思います。もし道が開かれれば、大変な成果となります。

2013年5月13日月曜日

人には人のスマート感

■人には人のスマート感

ソーシャルメディアウィークというイベントで、マルチスクリーンとソーシャルメディアの展望についてニコニコ動画の杉本さんとのトークショーに出演しました。

ぼくのマルチスクリーン仕事というと、デジタルサイネージの普及を促進したりスマートテレビの市場を開発したりしておりまして、いずれも日本型のモデルを作ろうとしています。放送の電波にIPプロトコルを乗せる「IPDC」を使って、大阪のマルチスクリーン型放送研究会が技術やサービスを開発していますが、そんなお仕事です。
さきごろYouTubeがテレビ化しているという記事がありました。元々ソーシャルメディアであったYouTubeがPCからTVへと領域を伸ばして、広告ビジネスに力を入れているわけです。当然ですな。一方、英BBCは、TVのオンエア前にネットに流すという戦略を打ち出してきました。アメリカの戦略に対し、ヨーロッパは公共放送局が身を乗り出します。
NHKは太刀打ちできませんね。日本「放送」協会だから、まずは放送番組を作るってのがあって、それをネットに流す、のがせいぜい。とりあえずのコンテンツをネットやモバイルやソーシャルで展開して、それからTV、なんて芸当は、日本「メディア」協会や日本「デジタル」協会に改名しなければ。

中村さんのマルチスクリーン暮らしは?と聞かれて、はて、気がつきました。マルチスクリーンって言ったって、イメージが共有されていませんよね。
ぼくは基本ノマドで、自宅と、3カ所のオフィスの間をぐるぐるしておりまして、そこにはテレビとPCが置いてある。スクリーンはマルチに存在します。でも使うときは1スクリーンです。移動中はてぶらでかまいません。一方、自分の息子たちは、居間でテレビにネットをつなぎ、そのスクリーンの前でノートPCを開きつつ、スマホもいじり、3スクリーン同時利用。同僚には、PCとタブレットとスマホとガラケーをカバンに持ち歩き、電車の中でもマルチスクリーンってのもいます。
人には人のマルチスクリーン、てことです。

そこで、いろんなデバイスを使ってコンテンツが展開されるビジネスが紹介されました。
家のテレビで見ていたドラマの続きを、電車のスマホで見る。テレビのCMを、街角のデジタルサイネージやオフィスのPCにも届ける。1コンテンツ・マルチスクリーン。この場合のマルチスクリーンは、あちこちにデバイスがあるけど、使うときは1スクリーンのタイプですね。
でもぼくは、別の方向、息子たちがやってる3スクリーン同時利用に可能性を見出します。テレビのコンテンツと、PCの情報と、スマホのソーシャルサービスが渾然となって1ユーザを取り囲む構図。マルチスクリーンに対し、通信・放送のマルチチャンネルで、マルチなコンテンツを届けるサービス。
これまでテレビ局は地デジで番組を届け、ネット企業はブロードバンドでウェブサイトを開き、通信会社はモバイルネットでケータイコンテンツを送ってきたのですが、それじゃダメだということでもあります。一人のユーザを捕まえきれない。マルチなデバイス+チャンネル+コンテンツを、トータルに設計しなければ。

ユーザに頼りすぎなんですよ。
親子丼とギョーザとカルボナーラをコンビニで買ってきて食卓に並べて同時に喰っているぼく。楽しいです。でもそれは、ぼくに「コレが喰いたい」という欲求がハッキリしていて、それを編集する力があり、コンビニがそれを可能にしてくれるから。でもね、ホントはその渾然メニューを、ぼくが同時に喰いたいメニューを、セットでパックにしつらえてハイって定食にしてほしいわけです、食堂には。ぼくが3スクリーンのばらばらなサービスを自分で編集して楽しまなくても、1パッケージで誰かが構成してくれるといいのに、と思うわけです。

それをビジネスとしてどう見るか?という問いもありました。
広告の地合いが少し上向いてきたとはいえ、6兆円市場を奪い合うのは消耗しますよ。課金で成功しているのはニコ動とソーシャルゲームだけですが、広告と課金のポートフォリオを組み立てざるを得ません。日本はガラケーで大きなコンテンツ市場を作ったものの、スマホへの移行で広告市場がガラポンになっているので、再設計ですね。
それより大事になってるのがコマース。ネット小売り40社で合計1兆円、売上に占める比率が5%になったという報道がありました。2007年の日本のネット小売り/小売り全体の売上比は1.5%でしたから、急拡大です。ここをどう広げるか。
それについて、プラットフォームの競争が本質的に行方を左右するのですが、これもさきごろ海外へのテレビ配信サービスに関し、最高裁が原告のテレビ局への勝訴を確定させました。コンテンツの権利が守られたかに見えるものの、それは日本国内でコンテンツのクラウドサービスを行うのは難しいということを明確にしたものでもあります。
とすると、そうしたプラットフォームはGoogleやAppleなど海外のプレイヤーに取られるということでもあり、結局、テレビ局は生殺与奪を海外に握られることになりかねない。勝ったように見えて実は、国ごと負けるのかもしれません。

肝心なのは、コンテンツよりソーシャルサービスだってことでしょう。
マルチスクリーンをソーシャルメディアがどう絡み取って行くか。マルチスクリーンは、ぼく的なノマドだったり、息子的な3スクリーンだったり、同僚的なモバイルだったりしますが、その人たちはみなソーシャルメディアでつながります。
でもそのソーシャルは、twitterだったりmixiだったりFacebookだったりLINEだったり・・。それは毎年変わっているわけで。まだまだ落ち着きません。
人には人のソーシャルメディア、ということです。
そのメディア環境がどう発展するかはユーザの力量に左右されます。
この点、日本のユーザ力は高い。ドワンゴの川上会長が言うには、日本のニートはネットができる程度に豊かで、かつ24時間つながってるヒマ人であって、その人たちのクリエイティビティがやたら高い。その100万人を超えるユーザが日本のネット社会を構築している、と。ですよね。だからこそバルスで世界記録を打ち立てるわけだし、初音ミクも育つわけだし、炎上大国と称されるほどのトラブルも巻き起こすわけです。

では、これからのマルチスクリーン×ソーシャルメディアはどうなりますか?との問い。
わかりません。10年前にはソーシャルメディアなんてなかったわけですからね。だけど、ハッキリしていることは、日本は欧米と違って、若い世代が新分野を作っていくということ。欧米がビジネス主導で新しいサービスや商品が広がるのに対し、日本はティーンズが遊びの中から作り出して行きます。
デバイス?
次のイノベーションは、スクリーンじゃないんじゃないでしょうか。先日、TV60周年をお祝いしていましたが、TVが60年、そしてPCとケータイが20年。その後をスマホやタブレット、そしてデジタルサイネージが襲い、マルチスクリーンと呼ばれるようになったわけですが、そこにまたスマートTVが現れて、一巡しました。この次のイノベーションは別のところから来るのでは。
例えば、ロボットやウェアラブル。ロボットやおもちゃが電波を受けてダンスをするなど、「モノ」が表現して、コンテンツになる。あるいは、服や家電やクルマがネットでつながって交信する。技術的には難しくありません。あるいは、ファブラボ。ハードウェアを自分で作ってしまい、ダウンサイズする。
非言語コミュニケーションになる?
そうですね、人と人のコミュニケーションだけでなく、モノとモノ、マシン・トゥ・マシンになっていきますので、情報そのものが爆発的に増えます。そうしたビッグデータの世界と、いま議論しているマルチスクリーンの世界は、恐らくですが、地続きなのでしょう。

2013年5月9日木曜日

アニメやマンガの人材育成

■アニメやマンガの人材育成

 アニメやマンガの人材育成を進める産官学連携コンソーシアム。モンキーパンチ先生やちばてつや先生らが参加しておられます。ぼくはその総括委員長というのをやっております。マンガ業界のかたがたとアニメ業界のかたがたが寄り添って、どう人材育成すればいいのか、その共通カリキュラムを作ろうというものです。文科省の仕事なんですけど、アニメやマンガは大事なもので、その人材育成が課題なんだが、役所で考えるのはムリなので、民間に委託する、という正しい政策。

 なんですが、現場のかたがたの声を聞くと、似たように見えて、ずいぶん両業界には違いがあります。
 マンガの人材育成は、アーティストを養成することが基本。基本的に一人で作り上げる。単独で制作できる人を育てるのが狙いです。コミュニケーションを遮断してでも描き上げる人。マンガが自営業であるのに対し、アニメは組織の分業仕事。だから、アニメ業界が欲する人材はサラリーマン。コミュニケーション力があって、話を理解して、手の動く人。全く別種ですね。だからカリキュラムも異なります。

 デジタル化対策も課題です。音楽はデジタル化によって設備産業からデスクトップ制作へと構造転換しました。映像もそうなってきています。アニメは分業の工程により、デジタルをフルに活かしています。テレビやDVDなどのアウトプットもデジタルですから、もはやデジタル表現と言ってよい。
 ですが、映像や音楽よりはるかに情報量の少ないマンガなどの書籍はこれからの課題。制作現場では、先生はフルアナログで、アシスタントがデジタル担当、というケースが多いようです。まだデジタルの作画技術を取得するには苦労もあるそうです。ただ、コミケ系はフルデジタル制作が主流だとか。そちらから移行していくんでしょうね。市場としても侮るなかれ、商業マンガ4000億円に対し、同人市場は500億円に上るそうです。
 アニメ・マンガの生産現場はデジタルに進んでいるものの、それよりも出版社のほうが遅れているとか。ふしぎですね。資本力のある装置産業のほうが中小の生産現場より投資が遅いって。音楽も映像も必要としなかった国の支援を仰いで出版デジタル機構ってのを作っているわけですが。でも、アマゾンで同人マンガが売れる日は近い。もはや正念場だと思います。

 問題は、育成された人材の出口。アニメ制作者の人件費問題がひんぱんに取りざたされますが、それは産業側の重要課題として認識しつつも、就職という概念はあります。一方、マンガには就職はありません。出版社に勤めるわけではなく、作家になるか、作家に弟子入りするかなんですよね。人材育成を考えるに当たっては、この違いを押さえておく必要があります。
 ところで、東京芸大の卒業生の就職先はコンビニが最も多いそうです。そこは問題があるというのか、芸大を目指すというのはそういうことであり、そのイグジットとしてコンビニが確保されていると見るべきか、悩ましい。
 
 ぼくのところにも海外からアニメ・マンガ業界を目指して来る留学生がいます。そうしたインバウンドをどうするかという課題もあります。アニメは日本の方式がガラパゴスで、外国人留学生がなじめないという声も聞きます。アメリカのアニメはCG主体の3Dですが、日本は2Dを手で描く。これは人材育成というより、どういうアニメで生きるかのアイデンティティー問題です。
 留学しようとしたものの、文科省のスカラーシップを2度落ちた学生が、その担当に「マンガは芸術ではないからダメだ」と告げられたという話を聞きました。真偽は確かめていませんが、そういう面があるとすれば変えてもらわないと。もうそろそろ声高に。
 手塚治虫さんが亡くなった1989年、国民栄誉賞は「マンガはダメ」と却下されたが、2年後、長谷川町子さんは受賞に至りました。そのころから国の認識は変わってきたと思っているんですが。まだダメでしょうか。東京芸大にマンガ・アニメ学科を作ってもらわないといけませんかね。

2013年5月6日月曜日

政府はニコ超会議を支援できるだろうか

■政府はニコ超会議を支援できるだろうか
オーイ、ひろゆき~っ!」
 頭上で叫び声がする。あっ、ホリエモンだ。コッチから来た山車の上に乗っている堀江貴文さんが、アッチの端でシンポに登壇している西村博之さんに声援を送っているのです。でも、声は届くまい。幕張メッセのだだっ広い会場を埋め尽くす人混みの中では。
 ニコニコ超会議。昨年に続いて、いそいそとやって来ました。でも、不思議な感覚。その前夜、堀江さんがぼくのオフィスを訪ねてきたのです。子育てビジネスをしている起業家を紹介しろというのでセッティングしたのです。でも、堀江さん、しゃべる、しゃべる。仮出所後に走らせているいろんなプロジェクトについて、一方的に、速射砲のように。
 2年以上も休んでいたので、貯まってるんでしょうけど、ちょっと生き急いでない?大丈夫? だって、そのままテレビ局に行って朝ナマに出演、ぼくが支援しているTOKYO PANDAちゃんとからみあってたし、また今は幕張で叫んでるし、寝てないよね?リアルで会い、バーチャルで見て、またリアル。
 そういや堀江さんは去年この場では檻の中に写真が飾ってあるバーチャルな存在でしたね、ぼくはそこで猪子さんと記念写真を撮りました。

 超会議。超歌ってみた。超演奏してみた。超ボカニコ村。超鉄道エリア。超クリエイターズサミット。超ニコニコ言論コロシアム。超ゲームエリア。超ニコニコ結婚式。戦車もあれば痛車もある。ミクもいればアベもいる。バーチャルのニコ動がリアル空間に進出して、どいつもこいつも入り乱れる。
 だからといって、バーチャルとリアルが調和している、というわけでもなさそう。ドワンゴの川上会長によれば、ここは「ネット民とリアル民の戦いの場」。分断されているリア充文化とネト充文化が衝突する最前線だというのです。今はぶつかる段階。それを経て「ネットとリアルの和解」がもたらされるかどうか。壮大な実験場であり、公益的な挑戦であります。
 かつてニコラス・ネグロポンテ師匠がBits meet Atomsを唱え、リアルはバーチャルに、そしていずれはバーチャルがリアルに、と喝破しました。その後段、B→A、つまりV→Rの運動をいま世界で最も体現しているのがここ、ニコ超会議です。それは無論、ユビキタスを夢見ていた強者どもの想像を超えた、ポップで脱力的で非論理的でカオスな、でも考えてみればネットなんだから当然の、現実です。

 とうとう、そのパワーに大人も気がつきました。自民、民主、維新、そして共産!それぞれブースを出して迎合しています。国会議員だけで80人!ぐらい来ていたそうです。ここで国会開けばいいじゃん。恥ずかしいほど実現しなかったネット選挙運動がやっと始まります。それを目前にして、政治がデジタルネイティブに向き合う切迫度も増したのですな。フフンと見向きもしなかったマスメディアも、日経、朝日、NHKともに大きく扱っていました。
 ものづくり、コンテンツ、お祭り、何でもあります。ものづくりの技術力と、コンテンツの文化力のかけ算が日本の地力。さらにみんなが参加して作ってみたりいじってみたりする、ソーシャルな力、それが日本の強みである増殖炉。ぼくが議長を務めた政府ポップカルチャー分科会の提言でも、まずは「みんな」の力を活かすことを第一に据えました。
 傍観者は、まるで学園祭のようだ、と言います。でも、昨年の超会議は4億7千万円の大赤字。今年も1億円ばかり赤字の模様。ハナからそのつもりで運営しているんだから、覚悟が違います。
 パッション!
 そうなんですよね。クールジャパンを発信するには、あれこれややこしいことを提言するより、政府には「ニコニコ超会議ヲ支援セヨ」とだけ要求すればいいんだ。ネットの力でアラブの春が到来し、ソーシャルの力でロンドンやニューヨークでは格差デモが勃発したけど、日本ではニコニコの力で超会議でありますと。どうだいクールだろ、と。
 でも、ヘタに支援するとネット民もリアル民も引くだろうし、そこんとこ、難しいです。首相も来れば、仮出所も来る、そのカオスの応援というのは。

 ところで、「刑務所なう2」にサインをもらってしまい、汚すのがイヤだから、iPad miniで読みました。ホリエモンのまるでバーチャルなリアリティーを、リアルの本じゃなくてバーチャルなタブレットで読む。で、そのバーチャル書店に小林秀雄「考えるヒント」をみつけ、ついでにゲット。
 高校でイヤイヤ読まされたその本の冒頭は「常識」というコラム。すっかり忘れていましたが、東大原子核研究所の電子頭脳が将棋を指すお話。将棋の神様同士が駒のコンビネーションを計算し尽くして対戦するとどうなるか、それを考えると「不愉快になって来て」「無意味な結果が出る筈だ」とあります。1959年の作。
 ドワンゴが主催した「第2回将棋電王戦」は、人間vsコンピュータ、リアルとバーチャルの関係を問い直しました。とうとう人がコンピュータに敗れた。なのに、プロ棋士側もコンピュータ運営側も感動と感謝を表しているのは、実際の対戦にしろ、プログラムの管理や棋譜データベースの構築にしろ、つまるところリアルの人と人の所業だったからでしょう。
 機械は人を超えたのか。いやあ、その問いは、小林秀雄が記すとおり、無意味ですね。自動車と競争したって人は勝てません。飛行機とは競争になりません。じゃあ人は自動車や飛行機に敗れたのか。はい、それがなにか? 百年ぐらい経って、コンピュータがニコニコ超会議をグランドデザインするパッション!を示すようになれば、そのときは、実に敗北感にまみえるかもしれません。そうなってくれれば楽しいけど、それでも首相も仮出所も動員するカオスを実現するのはムリなんじゃないかなぁ。

 来年のニコ超会議もこっそり足を運びます。

2013年5月2日木曜日

クールジャパン推進会議への提言

■クールジャパン推進会議への提言

 一昨日(4月30日)、クールジャパン推進会議が開催されました。稲田担当大臣、寺田副大臣、山際政務官、財務・外務、農水・国交・文科政務官ら霞ヶ関そろい踏み。委員は秋元康さん、角川歴彦さん、金美齢さん、コシノジュンコさん、佐竹力総さん、千宗室さん、依田巽さん。ぼくはポップカルチャー分科会の議長として出席し、その席で、ポップカルチャー分科会がとりまとめた提言を報告しました。以下、全文です。
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飛び出せ、日本ポップカルチャー。
 ポップカルチャーが世界に飛び出す「発信力」を強化する。
 このため、「参加」(短期)、「融合」(中期)、「育成」(長期)の三策を講ずる。
 「みんなで」「つながって」「そだてる」。

■みんなで    ・・・「参加」(短期)
 世界中の子どもが知っているアニメもゲームも、海外の若者が憧れるファッションも、支えているのは消費者、ファンの愛情。クリエイター、キャラクター、事業者、そして何よりそれらを愛する国内と海外のファン。「みんな」の力を活かしたい。インターネットで多言語発信し、内外でイベントを開き、交流できる場や特区、さらには「聖地」を形作るなど、みんなが「参加」して情報を発信する仕組みを構築しよう。政府主導ではなくて、みんな。

■つながって   ・・・「融合」(中期)
 クールジャパンは、マンガやJ-popだけではない。歴史、風土、精神文化、ものづくりの技術、それら全てが「融合」した総合力。そしてカワいいキャラクターやカッコいいヒーローは、政治体制の壁も乗り越えて世界に受け容れられる。ポップカルチャーには海外への先導役をお願いしつつ、食、観光はじめ多くの産業や伝統芸術、精神文化とも「つながって」、日本の総合力を発揮してもらおう。

■そだてる    ・・・「育成」(長期)
 ポップカルチャーを生むのは人。楽しむのも人。内外の人財を「育成」しよう。時間をかけて、トップを引き上げ、ボトムを厚くしたい。一流のクリエイターやプロデューサを育てる。彼らが意気に感じ、意欲をもって仕事に取り組むことができる環境を与えたい。海外のファンに正しい知識を与え、日本への視線を熱くする。子どものポップな創造力と表現力を育み、誰もがアニメを作れて作曲ができるようにする。このための制作環境や教育基盤を整えよう。
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 分科会委員のみなさんやネットでの意見も取り入れ、この三点にしました。特に、「政府主導ではなく、みんなで」を強調。
 クールジャパン推進会議では、この方向性を示した上で、この下に具体的なアクションを打つことが大事だと述べ、配信サイトやファンサイトに外国語翻訳をつけていくこと、海外向けテレビチャンネルとネット配信を整備すること、食・観光などと組み合わせた特区を作ること、内外の大学にポップ講座を設けること、子ども向けワークショップやデジタル教材を開発すること等を例示しました。
 一方、これもぼくが会長を務める知財本部コンテンツ専門調査会でも、著作権制度や海賊版対策などに力を入れており、それらも合わせて日本のソフトパワーが発揮できるよう、委員や政府関係者にお願いをした次第です。
 
 会議では、金さんが「日本人が日本の良さを知らないのが問題」と発言。そうです。クールジャパンは10年前にアメリカから入って来た概念。日本が最もクリエイティブな国だと世界から評価されながら、日本人だけがそう評価していないという国際調査結果もあります。自らが自らを認識するのが出発点。
 秋元さんがクールジャパンを牽引するプロデューサーの重要性を説いていました。そのとおり。中でも大事なのは、トップで引っ張る政治リーダーシップ。政府のみなさん、よろしく。また、金さんがある町で包装紙が統一されている例を紹介していました。そう、自治体がご当地キャラで町おこしをしているように、ローカルから動きが広がっています。それをくみ取ることが重要。トップもローカルも力を入れる。
 オールジャパンで、という発言もいくつかありましたが、政府と民間委員が組合交渉のように対峙する会議じゃなくて、さまざまな「みんな」に入ってもらい、ジャパンを超えて世界の方々も巻き込んで政策を作っていくことが必要。
 ぼくの役目はここまで。
 後は一国民として、これから練られるクールジャパン推進会議や政府のアウトプットを注視すると同時に、ハッパかけたりプレッシャーかけたりしていきます。