■三宅唱監督「旅と日々」。
京橋での試写会に伺いました。
つげ義春「海辺の叙景」・「ほんやら洞のべんさん」の2作品を原作とする作品。
ロカルノ映画祭で最優秀賞を受賞し、俄然注目を集めることになりました。
ぼくはつげ義春原作の映像は観ないようにしていて、でもこらえきれず観ちゃう、これまでも成功作に出会うことはなく、というのもつげ作品ほど受け手の解釈や時間軸に幅のある表現はないと思っていて、それを映像化されると、自分が消化した作品像とのズレが気持ち悪くて仕方ないから。ならいっそ最高級技術で忠実にアニメ化してほしい。
ズレがなかった唯一の例外は、1976年NHK佐々木昭一郎さんのドラマ「紅い花」です。高校一年生、それを見たぼくはマンガが原作と知り翌日、チャリで行った本屋で小学館の「紅い花」と「ねじ式」を買ったところからドップリつげワールドに入った。映像ファーストだったんです。
ということを2008年NHK「私の1冊 日本の100冊」でも語りました。100人が推薦する本のうちぼくだけがマンガ(紅い花)で、番組的にも当時所属した慶応大学的にもどうしたもんかねぇでしたが、ぼくを指名した以上、あきらめろ。
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E7%A7%81%E3%81%AE1%E5%86%8A_%E6%97%A5%E6%9C%AC%E3%81%AE100%E5%86%8A
この試写会は制作側につてがあり、受賞の報も重なり、ならばと出かけました。
楽しみました。
これは「原作」としているが、翻案・リスペクト作品と言ってよい。
人物も物語もマンガとは違う。76年佐々木ドラマに近い演出です。
「アナタ素敵よ」という決めぜりふもないし、鳥追いの子どもたちも現れない
なので純な独自の日本映画として鑑賞できました。
ただ、この対象的なつげ2作品を元にしたのは素敵な選択です。
67年から68年の1年間に書かれた、夏と冬の、世界史的な、奇跡の名作。
夏の昼なのに、黒くて激しい海。冬の夜なのに、白くて静かな山。
ざあざあと、しんしんと。
どちらも一期一会の叙情ながら、かたや若い男女の、ほのかなロマンス。
かたや老人と息子(映画では娘)のような交わらない二人のコミカルな断絶。
どちらもつげさん自身が主役ながら、
映画では若い兄ちゃんと韓国人女性という配役にして、
その おおもとのコントラスト、行きずりの他者が交錯させる視線は見事に表現されました。
この映画、原作2作品を読み、映像を肉体化してから鑑賞すること。必須です。
つげ義春作品はぼくの人生を左右しました。
それを論ずる力量も覚悟もまだありません。
それはフェリーニや川島雄三を語る度胸がまだないことと同じ。
でもこうして外縁をなぞる作品があると、口を開きたくなる。
それだけでありがたいことです。つげファンとしては。




