■ Buenos 尊敬するひと「チャンバラトリオ」
「女子高生に“尊敬するひと”って聞いたら、櫻井翔くんと答えられて困ったよ」と同僚が話していました。翔くんの父親はぼくの役人時代の先輩で、同じ官舎の上に住んでいました。幼稚園のころ、いつも礼儀正しく挨拶する彼に、もうすぐ小学校だねと話しかけたら、「慶應に行くんです」と答えたので、さすが幼稚舎、しっかり選んでるなと思った記憶があります。まさかうんと後になってぼくも慶應の門をくぐるとは思いませんでした。だから翔くん尊敬してていいじゃないですか。
「いや男子高生に聞くと、AKBのメンバーを挙げたりするだよ」といいます。ははぁ、なるほど、昔タイプの尊敬するひと像が失われて、アイドルを尊敬するひとリストのトップに上げてしまう彼らの視野の狭さに困惑しておられるのですな。確かにそれは危ういことかもしれない。彼らの問題というより、尊敬するひと像を提供できていない大人社会の問題でありましょう。現在の総理大臣から何代も遡って、尊敬するひとリストにランクインしそうな方がいますでしょうか。
じゃぼくはどうだろう。子どものころには西郷さんなんて言ったりしてましたが、真剣だったわけではありません。今のほうがうんと西郷どんを尊敬していますが。あとは?強いてガチで挙げるなら、郵政省官房長のまま1999年に亡くなった高田昭義さん(追悼文をhttp://www.ichiya.org/jpn/column/newmedia/12.html に掲載しています)、2001年に亡くなった大川功セガ会長(追悼文をhttp://www.ichiya.org/jpn/ASCII24/okawa.PDF に掲載)、MITニコラス・ネグロポンテ教授、・・・と思いを巡らせていたら、ふと思い出しました。
週刊アスキーの創刊ゼロ号で「憧れるのはチャンバラトリオ」というぼくのインタビューが掲載されていたことを。
確かにそう答えました。
チャンバラトリオ。吉本興業所属の芸人です。今はもうメンバーの形が変わっていますが、ぼくが指す全盛期のチャントリは、カシラ:故・南方英二、リーダー:山根伸介、結城哲也、伊吹太郎の4名。4人でトリオというところからもう ひざカックンのカッコよさ。カシラとリーダーがいるガバナンス不明もステキ。
ぼくがあこがれたのは「自在性」です。
まず、伝統と破壊。チャントリは、彼らの出身母体である東映時代劇の「型」がキッチリしたチャンバラが基本の芸。舞台での立ち回りだけで拍手がわく力量を持っています。それをグダグダのコントで一気にバラす。伝統芸を壊して自由形で表現する。つまり、正統パンクなのです。
同時に、構成やセリフのしっかりした「芝居」を「即興」のボケやツッコミで崩しても行きます。険しい表情と所作で時代劇を展開しているところに、急にカシラがカン高い叫び声をあげ、しゃーないしゃーないとみんなで芝居を降りてハリセンを始める、毎度お約束のパターンも、故・桂枝雀師匠の「緊張と緩和」をチャントリにしかできない落差で崩すというモデル。(そういえば昨晩、大阪の飲み屋で枝雀師匠のご子息にお目にかかりました。)
4人のキャラがどっしりとそびえているのは当然なれどそれぞれがボケ+ツッコミを併せ持つ実力。カシラはヤクザの親分が似合う強面だが女の子のような奇声でボケをかます。リーダーは殺陣の中心だが、直線的に力みすぎるのが芸の域に達し、イジられてボケと化す。哲っちゃんはいつも気合いが入らずどこか他人事で脱力ダンスの太っちょボケなのだが役回りはツッコミ。伊吹さんはツッコミなのに舞台の最後はハリセンを受ける役という鉄板ボケギャグを持つ。
そしてチャントリがすごいのは、個々人の力量があるため、それぞれピンでも舞台を回せるうえ、各モジュールが自在にユニットを組める点。4人で殺陣をすることもあれば、ABC、ABD、ACD、BCDの組み合わせでトリオのコントも、AB/AC/AD/BC/BD/CDで漫才を行うこともできるのです。自在です。バンドでもビジネスでも、こういうユニットが組めれば最高でしょう。
カルテットでは、玉川カルテットや先代のおやじさんがいた横山ホットブラザーズの例がありますが、楽器が介在する音楽モノという性格が成立させているのであって、チャントリのようなスタイルはちょっとお目にかかりません。
その真骨頂を世界に伝えたのが北野武「ソナチネ」。ぼくは90年代前半、パリで観ました。カシラが演じる無言の殺し屋は、アジアの男がカッコいいことをフラットに示してくれたのです。ぼくはシャンゼリゼの映画館でカッコいーっ!と叫びました。
もっとスゴいのがビートたけし「みんな〜やってるか!」です。監督はコレを失敗作と断じているようですがぼくは大好き。チャンバラトリオの面々をこの上なくうまく使ってくれているから。特に哲ちゃんが親分の頭にリンゴを乗せて二つ切りにするワザを「これを名付けて、赤いリンゴがまっぷたつ〜」と称するシーンなど、だれも映画では突っ込まないから、客席から「まんまやんけ!」と突っ込んだのは関西人の礼儀というものであります。






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