■ ACE2012@ネパール
ACE-
the Advances in Computer Entertainment Conference-。エンタテインメントコンピューティングの学術会議です。第9回を迎える今回、会場を初の途上国、ネパールに定め、各国から100名を超える研究者がカトマンズに集いました。ぼくは初参加なのですが、同志Dr.Adrian Cheokから共同議長に指名され、そう、ホストとしてお迎えしました。デジタル技術が途上国を含む世界の文化と産業の未来を導きますように。
ぼくの基調講演は「21st Century Digital Pop Punk Kids」。Adrianがつけたタイトル。ベタや。ぼくのこと知ってるかたなら何を話すか聞かんでもわかる、という。ネット、キッズ、ポップの政策屋としてのミッションのおはなし。公的な活動としての政策立案やコンソーシアム形成のことと、私的な活動としてのデジタルえほん開発のこと。
いつもと違う話題としては、こんなことも。
・ MIT時代にセガのドリームキャストとプーチの開発にちょい関わり、ゲームのネット対応とロボットのデジタル化、つまりAtom→BitとBit→Atomをやろうとしたが、まだ途上。
・ カンボジアでアニメ作りワークショップを開いた際、電気が不足していたこと以前に、アニメを見たことがない子どもたちにどう理解してもらうか迷ったものの、子どもたちの作品が実に美しく感動的だった。迷わず、まずはデジタルの恩恵を与えることだ。
・ 吉本芸人のようなコメディアンや近藤等則さんのようなアーティスト、そしてアラン・ケイさんのような技術のプロ、それらホンモノに子どもが触れられる経験作りは、予期できない力を互いに与える。技術、場、人。
コンピュータ・エンタメですから、学会とはいえ議論ばかりじゃね。実践もね。そこで学校を2校訪れ、ワークショップも開きました。モジラ主催のパラパラアニメ作りです。
私立校の後に訪れた公立校Shree Rudrayanee Secondary Schoolは強烈でした。眼下に壮大な棚田が広がり、母親たちが収穫に体を動かし続けている、その向こうにはヒマラヤの白い山頂が連なっています。 その村を歩き、4歳から16歳まで、260人子どもたちが熱狂的に迎えてくれる門をくぐると、建物は崩れ落ちそうで、設備も乏しい。
でも、子どもたちは英国風の立派な制服をまとい、レジメンタルのタイを結び、黒の革靴をはいている。ネパールの公立校はこんな感じ、といいます。ハコよりヒトにかけていますね。
「エンタテイメントとは何か?」
「エンタテイメントの研究は必要か?」
ぼくが咄嗟に答えたのは以下のとおり。
1 エンタテイメントとは?
・ 同じアニメワークショップでも、パリの子は芸術作品を作りたがり、東京の子はギャグにしたがり、カンボジアの子は家族への祈りを織り込む。文化、歴史、家族や友達との関係、コミュニケーション様式、コンテキストに依存する。
・ 先刻、眼下に広がっていた棚田の美しさはエンタテイメントだ。この建物と生徒の制服のギャップ、そして子どもたちの目の輝きも、エンタテイメントだ。
・ だが、私にとって最も大事なエンタテイメントは、飲むことだ。(カトマンズに来てからすぐ酔っぱらってしまうんだが、それは標高のせいだろうか。実に効率的でよろしい。)
2 研究は必要か?
・ コンピュータ・エンタメが社会・経済に与える影響の研究は全く不足している。
・ ただ、この場に集まる多くの人が依拠する政府ないし公的セクターによる支援は限界がある。産業界による参加が重要だ。
・ ファミコン登場後、ゲームが子どもに悪影響を及ぼすという批判が広がった際、任天堂の山内さんは(確か)5億円をMITに寄付し、「子どもの創造性にゲームは有効に働く」とMIT教授たちが主張するようになり、批判が減少した。
・ ドリームキャストを発売する前、セガの大川さんは「子どもの創造力」に関する研究所を設立するため、35億円をMITに寄付し、ゲーム界が社会に貢献する未来を予期させてみせた。
・ 近頃こうした話を聞かない。アカデミズム側もエンタテイメント業界に知恵を授けていくことが求められる。
・ 最近、日本のソーシャルゲーム業界のために汗をかいている。放置すると政府が規制しかねないからだ。これに対し、ソーシャルゲーム業界としても、社会にとって、ユーザにとって、役に立ち、新しい文化を拓いていく展望を描かなければ、エンタテイメント産業としての拡大はない。
・ これに対し、アカデミズムが貢献できることは多いし、産業界としても研究コストをかける必要があろう。
さて、国際学会に参加して、改めて限界も感じました。シンポでも「論文とデモ」の位置づけを聞く参加者がいたのですが、そのことです。純粋な科学系と異なり、コンテンツなどの創作系の場合、アウトプットがこうした学会、まして論文だけではいけない。同業の研究者同士でほめ合ったりけなし合ったりしているだけでは解がない。そのユーザたる消費者や企業に向き合わなければ。世間から評価を得るべく足腰を動かさなければ。
そういう意味で、今回、子どものワークショップを組み込んだのは努力の表れ。学会で賞を取ろうが権威あるお方が実践しようがメディアで賞賛されようが、子どもは容赦なくダメ出ししてくれますからね。今回の学会の閉会式で、最高賞が子どもワークショップに与えられたことに拍手。
ACE2013はオランダのEnschedeという街で開催されます。アムステルダムから電車で2時間以上。また遠いところを選んだな。もし来年も参加したら、再会しましょう。





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