Twitter

2012年4月19日木曜日

知はいかにして再発明されたか


■知はいかにして再発明されたか
 イアン・マクニーリー/ライザ・ウルヴァートン著「知はいかにして再発明されたか」を読みました。

 6点ばかり視点を得たのでピックアップし、これらに対するメモをつけておきます。



視点1:始皇帝のもと焚書を実施した李斯は中国語の書き言葉の標準化を推進。;中国が一つの国として今に至るのはそのおかげ。

→焚書は文化を殺すものだが、同時に、文字の標準化=多様性の否定は、大きな統合文化圏を形成した。中国は複数民族国家だが、それをとりまとめているのは文字だという。日本はどうだろう。日本語という文字で成立している部分もあろうか。




視点2:世界初の大学ボローニャでは教師は学生に雇われていて、学生が教師より優位だった。


→日本は今そうすべきではないか。少子化で大学間競争が激化する中、資金の出し手=クライアントである学生とサービス提供者としての教師との関係を大学側は点検したほうがよい。


 東大の議論を契機に9月入学への移行が取りざたされている。大学の国際競争に打って出るか(秋入学)、国内競争で生きるか(春入学)の分かれ道。大学はどう生きるかを問う場面が来ている。



視点3:グーテンベルクの発明後も、知は書籍ではなく手紙を中心に組織された。

→ソーシャル(手紙)後にコンテンツ(書物)が登場した。今、改めてデジタルはコンテンツからソーシャルへとコミュニケーションのベースが移行しつつある。




視点4:ラボワジェの夫人の愛人の息子がデュポンを創設した。


→知らなかった。




視点5:マルクスはドイツの遅れを憂い、「政治においてドイツ人は他の国が"している”ことを"考えてきた”にすぎない」と述べた。


→今の日本だ。


「考える」から「する」に転化するにはエネルギーが必要。

 これは次の視点6と共通する。

 アンディ・アンドルーズ『希望をはこぶ人』の中に、こういうくだりがある。

「五羽のカモメが防波堤にとまっている。そのうちの一羽が飛び立つことを決意した。残っているのは何羽だい?四羽です。そうじゃない。五羽だよ。飛び立とうと決意することと、実際に飛び立つことはまったく別物だからね。いいかい?誤解されがちだが、決意そのものには何の力もないんだよ。」

 そうだね。



視点6:パスツールが開発したワクチンを農場に投入するには、大変なエネルギーをかけて農場関係者を説得せねばならなかった。


→「何を」より「どう」が難しい事例。いま日本に横たわる問題の大半は、「何を」すべきか明白ながら、「どう」実現するかの調整と決断ができないという状況。しかし、多くの場合、「何を」ばかりが論じられ、前に進まない。


 政策論では、「何を」のアイディア、つまり法案や予算措置を企画するエネルギーを1とすれば、「どう」実現するか、説得と調整と決定と実行と検証にかかる裏側のエネルギーは10。

 社会人になりたての頃、上司から「仕事の9割は調整だ」と叩き込まれた。これは組織人はわかっているが、当たり前すぎて言わないだけ。だが、文系の学者をはじめ、企画と論評で満足する人が発言力を持っていたりするので、遂行するエンジンが働かないと停滞する。

 霞ヶ関の功罪の「功」は、政策面でその裏側を黙々とこなしていたということで、今はそこが機能不全を起こしているから、どうにもバランスの悪い状況となっている。

 某市長が学者や評論家に「ならあんたがやってみろ」とタンカを切るのは、「どう」の重さを知事時代に負ってきたからリアリティーがあり、しかし切られた側の多くはその重さを無視する地点にいるからリアリティーが伝わらない。

2012年4月16日月曜日

IT 復興円卓会議「政治」 7/10

■IT 復興円卓会議「政治」 7/10

 IT復興円卓会議「政治」の第7回。
 藤末建三民主党参議院議員、高井崇民主党衆議院議員、世耕弘成自民党参議院議員、池田信夫さん、菊池尚人さん。

周波数オークション

—総務省が政府の政策仕分けの提言を事実上無視する形で、直近の3.9世代ではなく、第4世代の携帯電話から入れるということで議論は進んでいるようですが、オークションで入って来たお金はどう使うのかがまだまとまっていないようです。(中村)



—入ってくる免許料を一般会計に入れるか特別会計に入れるかに総務省の方はこだわっているようですが、それはどうでもいいことだと考えています。何割かは今の電波利用料の代わりに免許料を事実上の特別会計に入れてITの予算に使うということは何ら問題ないことでしょう。なぜなら目的は国庫収入を得ることではないですから。
目的はとにかく競争促進することと、たくさんの電波を速やかに利用可能にすることです。今電波を持って居座っている人たちをどかせるということも重要なのです。私は10年前逆オークションというのを提案したことがあります。それは電波を持っている人たちにお金を渡して、その場からどいてもらうということを意図していました。今回900MHZ帯で、不透明なやり方で2100億円という上限を決めてしまったものですから、あれでは明らかに2100億円に張り付いてしまいます。そのあとはデューティコンテストになってしまうのです。これではオークションでもなんでもありません。
従って、こういったやり方はやめ、マーケットで決めてやることが大事です。マーケットで最初にルールを決めてやれば、いちいちチューニングをしなくても、自動的に新しい帯域を開放する立ち退きの仕組みが出来上がる可能性があるのです。立ち退きの仕組みを考えることが必要なのです。(池田)



—最初におっしゃった財源をどちらにするかというのは、霞が関で言うと総務省か財務省なのかということですね。ここの折り合いがつけば進むということなのでしょうか。(中村)



—池田さんのように、国庫収入は二の次で、透明性と効率性の確保が目的だと言い切る人が少ないように思います。(菊池)



—財源が乏しいので奪い合いになってしまうというのはしょうがないという面もありますからね。今電波を持っている人たちにお金を払うこと自体への反対論も当然あります。なぜなら彼らはタダで電波を使うことからスタートしているわけですから。
しかし、例えば数十億円を彼らに渡して電波を開放し、国民にとって大きい価値があるのであればそれでいいのではないでしょうか。同じ発想で言うと、全体としてみれば国民にとって何兆円もの価値があるので、総務省のポケットに数百億円を入れるのは安いものでしょう。(池田)


—オークションをすると何兆円になるとして、しかしそれが国民の携帯の利用料などに跳ね返ってくるということはないのでしょうか。(中村)



—それはありません。理論的にもありませんし、現実にオークションをやった国とやっていない国を比較した研究もありますが、オークションをした国の方が、国民が電波に使うお金は安くなっているのです。なぜなら免許料は最初に支払う固定費ですよね。この固定費を取り戻すために値上げをしてしまうと、他の業者との競争に勝てないことになってしまうのです。
そして、オークションをすると何が起こるかというと、既存業者と違う業者が市場に入ってくることになります。例えばアメリカではマッコウセルラーという全く関係の無い業者が市場に参入してきました。彼らは1ドル携帯などのビジネスを行い、業界水準が乱れ、結果利用料金が下がりました。ですから今回のオークションで既得権を持っていない、例えば外資系、チャイナモバイルなどが参入し、彼らが日本の業界水準を無視してビジネスを行えば、現在ある談合の輪も崩れていきます。ですから競争を促進するということが目的なのです。(池田)



—とすると、今の話ですと、もしかして外資系企業が市場に参入した方が国民にとって良いのかも知れませんね。(中村)



—私は外資系への一定の規制は必要だと思います。日本は何もないのです。アメリカにはエクソン・フロリオ条項という伝家の宝刀がありまして、国防上の懸念ということを振りかざして全て止められます。(世耕)



—日本にはなぜそういった条項のある法律がないのでしょうか。(菊池)



—日本にも外為法がありますが、これは竹光のようなものですから抜いたことがありません。(藤末)



—皆さんそんなに心配することはないと思いますよ。むしろ日本がマーケットとしてジャパンバッシングの対象のような状態になってしまっているので、外資が入ってきてくれることは、私は1ユーザーとしては大賛成です。ただ、業界が一番恐れているのはチャイナモバイルの参入でしょうね。(池田)



—かつてヨーロッパで何兆円という数字はありましたが、今の4Gからの帯域のみでその数字は期待できないですよね。ですからこの先どういう帯域を空けていくかが重要だと思っています。そして池田さんは、財源は二の次だとおっしゃっていましたが、私は財源にすることには思い入れがあります。と申しますのも、私は国会議員になる前総務省で働いておりましたが、私が総務省、当時は郵政省でしたが、入庁した際からIT分野の予算は増えていないのです。アメリカや韓国ではIT分野への予算がどんどん増えているという世界的な潮流の中にあっても、です。(高井)



—実は予算は増えているのです。しかし農水省だとか、バラバラに予算がついてしまっていることが失敗でした。(世耕)



—ええ。ですので、縦割り行政で各所バラバラにやるのではなく、世耕さんがおっしゃったようにIT戦略本部のようなところが力を持った上でコントロールをする。そしてそこに財源をつけてあげることが重要だと思っています。そうじゃないと予算の振り分けは難しいです。ですからオークションというのはIT分野の成長に役立てる財源を持たせるチャンスなのです。(高井)



—私はなんで総務省が言わないのかと思っていることがあります。オークションに対する有力な反対論は、オークションというのは本来育成しなければならない通信産業に対する課税であるという論なのです。さっき高井さんがおっしゃったように、オークションで課税することが避けられないのであれば、IT分野に還元するという仕組みとワンセットにすればそういった反対も避けられます。(池田)



—成長分野の資金をばら撒きに使ってはならないということですね。(菊池)



—成長分野に還元し、成長分野で税収を上げることが重要です。(高井)



—ポルトガルは周波数オークションのお金でデジタル教科書を配布したりしています。知恵の出し所はあると思います。(中村)



—役所の人々にインセンティブを与えないといけないと思います。官僚を人参でもって動かす仕組みをつくるのがいいのではないでしょうか。(池田)

2012年4月12日木曜日

ニューメディアリスク協会の設立


■ ニューメディアリスク協会の設立

 2012年2月13日、一般社団法人「ニューメディアリスク協会」が設立されました。インターネット上で特定の企業や従業員が一斉に批判を浴びる「炎上」が相次いでいることを受け、防止策を研究し、ソーシャルメディアを企業が活用する際のリスクを低減するための手法を考えるためのものです。
 ぼくが理事長を務めます。企業、自治体などのリスクマネジメントや広報の担当者の参加を募っています。 定期的な勉強会などを通じて、ソーシャルメディア活用に関するリスクや対策に関する情報を共有する予定です。

 ソーシャルメディアが急激に普及し、スマートフォンなどデバイスも進化した2011年は、ネットのリスクが飛躍的に高まった年でもあります。 “炎上”は、2011年には前年度の倍以上に増加したといいます。 ソーシャルにより一瞬でメッセージが拡散するようになることに加え、スマホは誰でも写真で簡単にソーシャル参加するようにします。この傾向はこれから拍車がかかります。
 有名人の来店を店員がツイートし、その店のサイトが炎上。内定学生がツイートで暴言を吐き、その企業のサイトが炎上。テレビ局への批判がそのスポンサー批判にまで引火。職員のやらせメールがソーシャルサービスで発覚し問題化。いろんな炎上、情報漏洩、さまざまなパタンがみられます。会社で行ったことが批判されるだけでなく、職員が個人で行ったことが会社に被害を与えたり、関係者は何にもしてないのにとばっちりで炎上してしまったり。
 根拠のないネット上のつぶやきが一瞬で拡散して、大問題に発展することもあります。企業にとってはその存在すら脅かされる死活問題となり得ます。技術的 に、あるいは制度的に対応することも考えられますが、それだけでは頼りになりません。企業や個人が自ら、こうした問題に対応できる体力を養う必要がありま す。

 女子高生が10年前にはもう親指一つでケータイメールを打っていたように、日本は老いも若きも情報を発信する「ネットユーザ力」の高い国。世界一と言ってもよい。世界のブログで使われている言語は日本語が最も多い、という調査結果もあります。
 だから、こうした問題も発生しがちです。日本は「炎上先進国」と言ってもいい。日本のネットユーザがマイナス面でも世界をリードしているのです。急激なメディアの変化と普及に社会が追いついていないわけです。スマホやソーシャルの普及により、これまで以上に多くの国民がネット社会に参加するようになり、それで新たなリスクが生じてきているのです。
 他国に対処法や事例を求めても答えはありません。日本は、われわれ自身が方法を探り答えを見つけて行かなければなりません。そのノウハウを海外に教えてあげる、くらいの対応が求められていると思います。

 ソーシャルサービスが社会経済に大きな恩恵をもたらすことは説明を要しません。震災後も瞬時にさまざまなソーシャルサービスが立ち上がり、被災地と全国の情報共有に活躍しました。人々の絆を強め、コミュニケーションを活性化させています。企業のビジネスにも組み込まれています。
 しかし、デジタル技術を不安視する見方にも根強いものがあります。4年前、青少年のケータイ所持を巡る問題では、ケータイを規制せよという政治的動きが高まりました。結局、法律まで策定されてしまいました。当時、ぼくは規制でフタをするのは逆効果であり、使わせるべきだという論陣を張り、さまざまな運動をたばねるコンソーシアムとして「安心ネットづくり促進協議会」を立ち上げました。これでようやく事態は収まってきましたが、民間が努力を怠ると、また政治が入ってくる可能性も残ります。
 本件も同様です。炎上などの新しいリスクに、民間が情報を共有して、対策を練っていくことが大切。民間がきちんと対策を講じておかないと、政治や規制が入ってくるという危機意識を持っておく必要があります。そして、そのためにも政治や関係省庁とも連絡をとりながら、努力していくことが求められます。このため、設立総会には、オブザーバとして、国会議員や総務省、経済産業省のかたがたにも参加いただきました。

 入会金5万円、年会費12万円で企業や自治体、大学などの会員を募って月次の勉強会を開催し、ネットメディアを利用するうえでの注意点の啓蒙や伝達、風 評被害の防止と事後対策についての意見交換などを行います。さらに小グループに分かれた分科会で、過去に炎上被害に遭った企業の担当者に、炎上終結までの具体的なプロセスを聞く機会なども設ける予定です。
 安全で活発な情報社会を共に築くことができればと祈念する次第です。

2012年4月9日月曜日

IT 復興円卓会議「政治」 6/10

■ IT 復興円卓会議「政治」 6/10

 IT復興円卓会議「政治」の第6回。
 藤末建三民主党参議院議員、高井崇民主党衆議院議員、世耕弘成自民党参議院議員、池田信夫さん、菊池尚人さん。


光の道

—さて、この番組はIT復興をキーワードとしていまして、「ITで」どうするのかということと、「ITを」どうするのかという部分を議論する場です。今、電波の話が出たので、無線なのか有線なのか等も含めて、「ITを」どうするのか、議論を進めましょう。(中村)



—高井さん、「光の道」構想の現状はどうなのでしょうか。(菊池)



—今回も予算は組んでいます。自民党政権時代の補正予算でかなり予算がずっとついていまして、自治体からの要望は落ち着いてきている状況です。ただ超高速ブロードバンドの整備はまだ進んでいないというところと、利用に関しては全然進んでいません。インフラ整備は90%進んでいますが、利用は30%程度です。この利用の部分を2015年に100%にするというのが原口総務大臣の時の光の道構想です。(高井)



—先日某大手通信キャリア役員の方と話した際、彼は「光の道」という名前をやめて欲しいと言っていました。震災復興の際も、光より無線を優先していますでしょう。ユーザーも光より携帯を使いたいと思っていますよね。従って「光の道」という名前が既に時代錯誤であり、「電波の道」、アメリカでは全米ブロードバンドプランが始まっていますが、ワイヤレスブロードバンドがこれからの主要インフラだという発想の切り替えを是非して頂きたいということを、その方に代わりこの場で申し上げます。(池田)



—もちろん「光の道」には無線も入っています。ただネーミングがちょっとそぐわないという事実はありますが。(高井)



—池田先生にお伺いしたいのですが、電波は周波数の限界がありますよね。ラインには物理的にそれがありません。ですので、将来的にラインは必要になるのではないでしょうか。現在でもバックボーンはラインですし。(藤末)



—それは通信業界の言葉で言いますと中継系の話ですよね。それはもう100%光ですよ。しかしラストワンマイルのところでは、5年以内くらいに光は減っていくだろうと思います。(池田)



—非常に気になっているのですが、我が国において、例えばNTTは会社として、電波とラインが会社として分かれています。これは大きい問題ではないでしょうか。(藤末)



—ですからNTTはもう無線を中心とした会社になるとのことらしいですが。(池田)



—私はそういったNTTの経営形態は、経営者が考えればいいことだと思っています。(世耕)



—NTTの中でも水平分離だというのは全くナンセンスな話で、分離するのであれば固定系と無線系に分け、固定系は売ってしまえばよいのです。世界のキャリアの話を聞いても、固定系の話をするところはもうないですよ。(池田)



—KDDIも無線と有線一体型のサービスを打ち出しています。(中村)


—今アメリカのキャリアにおける収益源は圧倒的に無線で、いかに固定系は売却をするかという話をしている状況です。まずその切り替えをして頂きたい。しかし、世耕さんも仰っていましたが、基幹インフラとして利用するには圧倒的に周波数が足りません。ですので、防災無線の周波数割り当てなどはやめて周波数の整理をし、皆が使える汎用の周波数にしていくことが重要です。周波数オークションは一つの方法に過ぎず、一番大きな目的は大量の帯域を、早く、多くの人に、汎用の帯域として使えるようにすることだと思います。(池田)

2012年4月5日木曜日

スマートテレビ考 後編


■スマートテレビ考 後編

 では、日本はどんなスマートテレビのサービスを生んでいくのか。
 放送・通信融合では3年出遅れた日本ですが、それでも既に日本型の融合モデルが生まれてきています。
 NHK「デジタル教材」。教育番組クリップをウェブサイトで開放しつつ、教材や教授法を学校の先生方と共有するという「テレビ+ネット+学校」のコミュニティ。学校教育とテレビが強く結びついているのは日本の特徴で、これをネットでも活かしているんですね。
「ウェザーニュース」は、衛星、ネット、モバイルでテレビ、PC、ケータイに番組を届ける放送・通信融合局ですが、刻々とセンターに届く視聴者からの写メ情報を天候の実況や予報に役立てています。海外でもスマホが普及し始めたとはいえ、老若男女がユビキタスに映像情報発信できるのは未だ日本特有のポジション。このモデルを構築し、いずれ海外展開を、というのがウェザーニュースの戦略だそうです。
 他にもいろいろあるのですが、そこでやってきたのが次のステージとしてのスマートテレビ。マルチスクリーンにソーシャルメディアを組み合わせる。

 放送局、広告代理店、メーカ、ソフトウェアハウス、さまざまな関係者がサービスを企画しています。そしていま日本で検討されているサービスの多くは、GoogleやAppleが提案するようなタイプ、つまりテレビ受像器をPCに変身させ、ネットのコンテンツもソーシャルサービスも大画面にぶち込むスタイル=「オーバーレイ」とは異なります。
 それは第一に放送局がいやがるからです。テレビの画面を汚すな、と彼らはいいます。テレビはテレビでそのままに。で、スマホやタブレットを組み合わせ、小画面側でソーシャルとヒモつけよう=「マルチスクリーン」というのが今の基本的な方向です。
 既にマルチなスクリーンを同時に使いこなす若者の情報行動スタイルを一歩進め、テレビ番組を放送局がソーシャルサービスに結びつけていく。日本型のアプローチとしては、こちらでしょうね。となると、放送局がどう出てくるのか、これが行方を左右します。

 NHK技研「ハイブリッドキャスト」でも、テレビとタブレットなどダブルスクリーンでテレビ番組とヒモつき情報を連動させる提案がなされています。放送とネットの情報を同期させる技術がキモで、それがもう実用段階にあるといいます。
 在阪テレビ局が中心となって結成した「マルチスクリーン型放送研究会」も、スマホなどセカンド端末での放送連動サービスを念頭に実験を計画しています。同じく大阪から実験協議会としてスタートしたラジオのネット配信サービス「radiko」は、4月から全国70局が参加するプラットフォームへと成長し、ツイッターなどマルチスクリーンによるソーシャル連動サービスに本腰を入れるとのことです。
 もちろん、全てがマルチスクリーンになったり、逆に全てがオーバーレイにされたりするわけではないでしょう。コンテンツによって向き不向きがあります。討論番組ならニコニコ動画のようにオーバーレイでみんなの声を投じればいいし、ドラマなら画面を汚さずセカンドスクリーンで遊べばいい。多様なコンテンツに応じ多彩なサービスが開発されていくことになるのでしょうが、日本の場合、ややそのバランスがマルチスクリーンに置かれるということではないでしょうか。

 こうしたサービスの開発には課題もあります。放送に通信をかませるので、両制度の違いが問題となります。例えばコンテンツの責任の所在。放送コンテンツは放送局が法的責任を負うのですが、通信コンテンツは表現の自由が大原則で、発信者に介入ができない。となると、放送局が送る番組に通信でオーバーレイした情報が問題を引き起こしたら、その画面の責任はどこに所在するのか。ま、放送局が「画面を汚すな」とオーバーレイに拒否反応を示すのも、コンテンツの管理ができないという点に集約されるわけですが。
 著作権も同様の問題を提起します。放送コンテンツと通信コンテンツでは著作権法上の取り扱いが違う。放送コンテンツとする場合には比較的ラクに処理できるのですが、同じコンテンツを通信で流そうとすると改めて権利者の許諾を要したりする。地デジネットワークやブロードバンドなどを混合して伝送する場合、その処理をどうするのか、なかなか厄介な問題です。
 著作権はそもそも「そんなサービスを国内で展開できるのか」という問題も提起しています。「まねきTV」判決が示すように、いわゆるクラウドサービスを日本で展開しようとしても、アメリカなどと異なり非常に制約がある。ま、これはテレビ局が提訴した結果ですから自業自得の面が強いのですが。

 そんな制度面のことよりもぼくが課題だと思うのは、そういう新しいサービスを「やる根性」。震災で縮こまるずっと以前、そう、失われた20年とされるその20年前あたりから、日本を覆い続ける縮み志向。これを吹っ飛ばして、チャンスを活かして海外に展開する意気込みを、スマテレ関係者のみなさんがたくわえているのかどうか、という点です。
 放送・通信融合は、いいポジションにつけながら、この20年、日本はチャンスを逃してきました。GoogleやAppleやHuluなどの攻勢に、改めてオタオタしておりますが、これを逆にチャンスととらえ、打って出る根性や気合いがあるか。
 ここはひとつ、やってみませんか。

2012年4月3日火曜日

韓国の教育情報化に驚いた。


■韓国の教育情報化に驚いた。
 先週のデジタル教科書教材協議会で、趙章恩さんに韓国事情をプレゼンしてもらいました。
 その話が衝撃的。これほど日本が後進的だと思ったことはありません。
 デジタル教科書の計画は日本より6年早く、デジタルネイティブを想定した教育環境が設計されています。デジタルの是非を議論している日本とは異なり、デジタルが当たり前という認識が現場にも定着しています。
 その背景として、「教育とITで生きる」という韓国の明確な国民・産業界の意識があり、教育とITに資源を集中投下している実態もあります。先生はIT利用で評価が左右され、教材作りにも熱心。日本の現場から聞こえる声とは異なります。
 そして何より、政治リーダーシップの違い。教育をはじめ国全体のIT化を強力に進める決断と、断固推進する実行力。国家管理色の強かった韓国が法律も変えて、デジタル教科書が現場主導で生まれる仕組みも揃えています。
 日本は内側からは変われないのでしょうか。97年の韓国IMF危機のような国難にぶつかる必要があるのでしょうか。いや3/11の国難で教育クラウド化の必要性は明確となったのに、未だ議論が交錯する状況ではいかんともしがたいのでしょうか。

 断片的ですが、趙さんの話をメモします。  →はぼくのコメントです。

■教育情報化
・デジタル教科書は2014年に小中学校、2015年に高校で全面利用の計画。
  →日本は2020年目標。差が開く。
・端末はどれでもよく、個人が買う方向。PC、スマホ、タブレット、スマートテレビ、全デバイスから利用可能に。
  →端末論議を脱却、クラウド+コンテンツ論に。進んでる。
・全学校でクラウド環境を整える。2012年に1Gbps、2020年に10Gbpsを達成する。5年間で政府が5389億ウォン、民間が37兆6000億ウォンをかけて推進。
  →どこが大事か、わかってる。
・紙とデジタルは当面併存。
  →でもどうやら早期移行をイメージしているようだ。
・SMART教育を標榜:Self Directed, Motivated, Adaptive, Resource Free, Technology Embedded
  →うまいね。
・授業では、柔軟体操、端末+電子黒板の利用、PPT使っての発表、が定番。
  →授業スタイルも開発されてきている。
・実証実験ではタブレット+キーボード+入力ペンの組み合わせ。3年生でPPT使っての発表は当たり前。
  →進んでるなぁ。
・推進の目的:学生一人ひとりに合わせた教育、所得格差による教育格差をなくす、カバンを軽くする、評価・指導の記録・可視化。
  →格差是正やカバン軽量化は日本ではあまり聞かない論議。
・韓国の子どもはモニターのほうが紙より字を読みやすくなってきている。デジタル読解力がOECD1位(日本は4位)。デジタルが当然。
  →デジタルネイティブのことをきちんと見ているからこその教育情報化。
・「教科書法」が改訂され、校長が認めればデジタルも教科書として扱われるようになった。
  →日本は法律上「紙」しか認められていない。まして校長が認めれば、など・・

■産業界の対応
・eラーニングの利用率は2010年で小中高の74%。夜10時以降の営業を法律で禁止された塾が注力。初等教育から生涯学習まで利用されている。
  →リアルの制約をデジタルが補っているんだ。
・サムソンのスマホ、タブレット、スマートテレビは教育が主軸。そのCMは「教育のために必要」。
  →日本のメーカや通信会社でそんなCMあった?
・ITの経済における比重が高く、デジタル教育も輸出産業と認識。デジタル教科書を既に輸出しつつある。
  →その世界市場を日本も押さえに行かないと。
・紙の教科書会社は全アプリ化を進めているほか、通信会社と連携し教科書・参考書を月3000円でスマホ利用できるサービスも提供。
  →日本も通信会社がここに大きな投資をしなければ市場が立ち上がらないのでは。

■教育熱
・「幸せは成績順にやってくる」という言葉が定着している。
  →うわ~っ!
・入試競争が激しい+少子化で、食べる以外のコストは教育にかける。「38度線」で出世は見切りをつけ、40歳定年が普通。再教育にもコストをかける。
  →そもそもの教育熱の高さがデジタルに結びついている。
・教員能力評価制度を2010年に導入。同僚教師・専門家・学生・保護者も評価する。ITを使わない先生の評価は下がる。
  →この厳しさがエンジン。
・ほぼ全員の教師が当然のようにオリジナル教材を作る。日本の先生が「教材作りが大変」というのを韓国の先生が聞いたら「ふざけるな」と怒るだろう。
  →これに日本の先生がどう答えるか、聞いてみたい。
・デジタルネイティブ世代に合わせた教育で教師世代の差を克服することに教師は熱心に取り組んでいて、「先生がITを使わない」という日本の議論は不思議。
  →ううむ

■IT先進国
・韓国は国民の45%がスマホ利用(日本2012.3で23%)。40-50代の主婦向けスマホ、タブレットも販売。先生も使って当たり前。
  →日本もPCより「スマホ使お」アプローチが有効かも。
・韓国は新聞の信頼度が低い一方、SNSの信頼度が高く、教育情報もSNSで入手。
  →日本は逆にデジタルへの信頼度が低いから・・。
・韓国は低所得者層にPC、NETを無料で利用させている。
  →これは日本でも導入すべき政策。
・医療情報化も進展。処方箋などもスマホでもらい、アプリに記録が残るシステム。
  →これも日本は見習うべき。
・教育だけでなく、生活、医療、国の「スマート化」が進められている。教育はその中の一つという位置づけ。
  →日本こそパブリック分野でのIT利用が遅れており、同時並行で教化すべき。
・97年の経済危機で「ITでしか生きられない」という覚悟が浸透したことと、大統領制に基づく政治リーダーシップが原動力。
  →日本も覚悟と政治が必要。
・成績を含む個人情報をクラウドに置くことに教師からの反対もあったが、有無を言わさず「押し倒した」。
  →日本にも押し倒し力が欲しい。

2012年4月2日月曜日

IT 復興円卓会議「政治」 5/10

■ IT 復興円卓会議「政治」 5/10

 IT復興円卓会議「政治」の第5回。
 藤末建三民主党参議院議員、高井崇民主党衆議院議員、世耕弘成自民党参議院議員、池田信夫さん、菊池尚人さん。

質疑応答

Q—パブリックコメントは議員に届くのでしょうか。

A—大体ホームページに公開されますので、自分が担当している委員会のパブコメに関しては目を通します。中には良いことが書かれているケースもありますので、そういった場合は質問に盛り込んだりしますね。(世耕)



Q—現場の声はどのように届くのか、そのプロセスを教えて下さい。

A—選 挙区へ帰ってミニ集会や車座集会などをやるのです。まずこれが一つ。あとはツイッターやフェイスブック、あとはEメールなども返事は難しいですが目を通し ます。例えばクスリのネット販売規制に関しては、薬剤師の方にEメールを頂き、気づかされた部分がありました。意外とメールは読まれていますよ。(世耕)



—色々 なところに出向いて直接話を伺う方が情報としては多いように思います。ですから、例えば中村先生にお願いしたいのが、ネットで色々な意見を集約して政策的 にまとめて、我々政治家に渡してもらうというような、ブリッジして頂くような仕組みを作ってもらえないかということです。そういう仕組みがあると政治も活 性化していくのではないでしょうか。(藤末)



—政 治の側からお願いしたいこともありまして、政治家の活動とか業績とか能力を、当選回数だけではなく、きちっと深堀して評価していくシステムを作ってほしい と思います。それはある程度好き嫌いもあるでしょうから、食べログではないですが信頼できる評価者がいて、自分はこの人がこの政治家をどう評価しているの か気になるから見てみようというような、しっかりしたシステムです。(世耕)



—ネットで、テーマを決めて公開討論会をやったらよいと思います。地上波の放送番組は肩書で呼ばれることが多いです。そうではなく、見えないところでやっている政治家の方が出てくる場所があれば、より良いと思います。(藤末)



Q—議員の仕事は法律を作って議論を行うことですが、我々国民の目に触れる機会、議員自らの情報発信が少ないのはなぜでしょうか。UstreamやYoutubeの活用をしてもよいのでは。


A—現 在では、参議院/衆議院のホームページからはいっていけば、国会の審議は全部ネットで見ることができます。実は、放送で中継している国会は一番面白くない ところなのです。中継しているのは本会議と言う答弁まで原稿で決まって読み合うもの、そして予算委員会というある意味ショーに近いところです。そうではな く、各委員会の法案審議って面白いですよ。(世耕)



—法 律が本当に出来る場所というのは国会ではないのです。薬事法の例は典型ですが、役所が決めたことを国会が修正するという、憲法とは逆転している現象が起 こっています。従って、役所が法律を作る時どうするかというと、審議会なるものに諮問するのですが、それはあくまで形の上だけです。なぜならそこにいる先 生方は役所の決めた通りの結論を出す御用学者ですから。結局は誰も責任を取らない仕組みになってしまっています。審議会の先生は形だけ責任はあるけれども 実質的にはない、役所は皆で責任を持っているから一体誰が決めているのかわからない、政治家の先生方は出来た法案に修正を行うだけです。IT分野に限らず、この逆転現象をなんとかしなくては、政治のおかしな状態というのはなくならないかもしれません。(池田)



—そういう意味では先程議員立法が増えてきたという話が出ましたが、立法府から法案出して決めていくということが一つのリズムになってくるかもしれません。(中村)



—も うひとつは東浩紀氏も言っていましたが、実質的に法律を作る審議会の大部分は非公開形式ですが、そういうものを全てガラス張りの状態にすることも有効では ないでしょうか。電波監理審議会など何も審議せず終わるひどいものです。こういうものこそネット中継をして、これが御用学者だということを国民の目に晒せ ばいいのです。(池田)



—私も関わっている審議会があるのですが、ニコニコ生放送を取り入れたらどうかと提案しています。(中村)



防災無線

—さて話は少し戻りますが、防災無線のシステムはまだ進んでいないというのは、政府がやる気が無いからなのでしょうか。(菊池)



—防災無線は電波行政上、問題を抱えています。私も防災無線の業者の会合に呼ばれ出席したことがあるのですが、業者も実は困っている状況です。というのも、国と県と市町村がバラバラに作っていて、周波数もバラバラなのです。それでは意味がありません。周波数を集約しないまま、ただアナログの機材をデジタル化してどうするのだろうと業者の方も首を傾げておられました。(池田)



—そちらの問題の解決に関しても予算に計上しています。防災無線というのは現状、一律音声のみでやっています。そうすると例えば、車の中でラジオを聴いていたら防災無線が聞こえなかったという状況も有り得るわけです。従って、音声だけではなくワンセグを使うなど、様々な方法でデジタルサイネージなどの様々なメディアに発信する「多メディア化」を行おうとしています。(藤末)



—防災無線が機能しない理由の一つに、市町村役場の人手不足が挙げられます。勿論これは全般的に言えることですが。防災無線も結局、気象庁や河川事務所や道路交通情報などの情報を一人でとりまとめ、その人が流すという仕組みでした。そうすると、色々な情報が次々やってくるので、処理しきれないという事態を招きかねないのです。従って今回の予算案は、この問題をシステムで解決しようという意図があります。(高井)



—電波行政的に言えば、防災無線に固有の周波数を割り当てるのは辞めた方がいいのです。現在の汎用の携帯電話用の電波で、専用のデバイスやアプリケーションを使えば、いくらでも防災用途で使うことが可能なのです。そうするともっと効率的に電波を扱えます。ところが総務省の人々はまた同じように縦割りの周波数を割り当ててしまい、防災無線用の作りこんだハードウェアを決めてしまうのです。(池田)



—これはタクシー用無線などにも当てはまることですね。(中村)



—そうですね、ただこれは自分たちの既得権になってしまっているので中々手放すことは難しいのでしょう。(池田)



—民間に任せた方がよいものが出来るようにも思いますしね。(世耕)



—防災無線の民間業者も困っているのです。というのも、防災無線のデジタル化は先の無い技術なのです。そんなことにコストを使って技術開発をやるということは全くナンセンスです。(池田)